ナミとウソップ、それにサンジはメリー号の船番をやってくれることになった。運河を移動して脱出準備をしておくって言っていたけど、私は動くほうが危ないと思うな。
私とルフィと、それにゾロとロビンとチョッパーは黄金探しに出かけていた。
「おいゾロ! そっちは逆だろ!」
「ったく、話聞いてねぇのか?」
青々とした森の風景がずっと続いていて、虫もいるから今回はミニスカ探検服にタイツを履いているからバッチリだね。ロビンは腕も足も素肌を見せていて、森の虫の怖さを教えてあげたいくらい。
「やれやれまったく、南はこっちだってのによ。太陽を見てみろよ。それが東だ!」
「ドクロの右目なんだから、とりあえず右のほうだろ? ならこっちじゃねぇか?」
ルフィは北を指差して、ゾロは顎で西をクイッとする。
「え、それ東じゃ? あれ、右?」
「相変わらずルフィは…」
がんばって方向音痴を直そうとしても、いつも太陽が昇るのが東ってだけしか分かってないもん。ゾロに至っては、ずっと自分の右に進んでグルグルしそうじゃん。
「副船長さん、南はこっちだと伝えてもらえる?」
「お~い、先に黄金とか神官とか、見つけちゃうよ~」
「「なにっ!? そっちか!!」」
競争するように、ドタバタと腕を振って、追いついてきた。
「誰もいないじゃねぇか」
「面白いものもねぇしなぁ」
そしてゾロは大あくび、ルフィは木の枝をブンブンと振る。飽きっぽいというか、いつまでも子どもなんだから。まあ、そこが可愛いままカッコいいから、良いんだけどね。
「それ、なんかいい雰囲気の棒だな!」
「いいだろ! お前らも見つけろよ!」
「これとかステッキみたいでいい感じ♪」
ルフィを真似して私も拾って、魔法使いになりきってクルクルと振ってみせる。杖の先に星をつけてみたいな。
「俺も探すぞ! すげぇ長い棒!」
「ゾロは刀があるから別にいいよな?」
「その辺の棒なんかと一緒にするな」
「私もサーベルとか持ったほうがいいのかな」
「……愉快な人たちね」
シャンクスの剣って、昔の私の背より大きくて、あれを片手で振り回してたはず。今は、その、片腕だけど、大丈夫なのかな。
麦わら帽子に帯紐に縫い付けたポケットに入れているビブルカードの様子、また見たくなっちゃった。
「この音、かなり大きい動物だ…」
「あれ、この臭い…」
私とチョッパーが近づいてくる何かに反応すると、ルフィやゾロはニヤリと笑った。ロビンも腕を交差させていつでも能力を発動できるようにした。
「この覇気、たぶん海王類クラスだ」
「毒の臭いがする。蛇、なのか?」
バキバキと森の枝を壊しながら、無理やり道を作るように這いずる音が、何メートルも断続的に続いている。
「ししし こりゃでけぇ!」
「こりゃ逃げたほうがっ!」
「ええ、良そうね…」
「私、蛇は何となく苦手で…」
「ぎゃあああ 猛毒だぞ~!?」
蛇独特の眼で見つめられて、ぞわぞわっと寒気がした。
たぶん全長は軽く100メートル以上はある。
ジュララララって舌を前後に動かしながら、ぽたぽたとキバから出る毒は、太い木の根を溶かしている。お腹が空いているとかじゃなくて、どこか怒っている感情が伝わってくるような気がした。
「お前ら、毒液に触れるなよ!」
「う、うわああああ!?」
チョッパーが鹿の姿になってから、慌てて逃げ始めたのを追いかけるように、さらに大蛇は距離を詰めてくる。エネルと戦う前に、あまり消耗は避けたいけど。
この巨体を防ぐウタは……
「ギューフ ニイド お願いムジカちゃん!」
創られた割れ目から鍵盤の腕を伸ばして、チョップで突進を打ち落としてくれた。
ドシーンって大きな音が鳴るけど、大したダメージではなさそう。
「あれは!? まさか魔王!?」
「取り込んだとは言ってたが、これがっ!?」
「すっげぇ~! これウタの歌なのか!?」
「ウタ! 無茶はするなよ!!」
「ごめん、慌てちゃった……」
たった1回、それも腕だけでこの脱力感、ルフィのことは言えないね。
もし私が使いこなせれば、覇気以外でエネルに対抗策ができるのに。
「よしっ、とりあえず目的地まで逃げるぞ!」
「悔しいが、そうするしかねぇかっ!」
「ぎゃああああ また動き始めたああ!?」
「ちょっ、あんたらそっちは逆ぅ!?」
ゾロは北へ、ルフィは南へ、それなら私も南に行こうとして。
ズガガーって大樹が倒れてきた。
ルフィは先導していると思っているのか、どんどん見えなくなっていく。
置いて、いかないで……
「とりあえず、ここを離れましょう!」
「あっ、うん……」
ロビンに腕を引かれて、チョッパーの逃げた方角へ走り始める。
近くにいる以上、大蛇が追いかけてくるのは私たちのようで、後ろを見ればどんどん迫ってきている。
「副船長さん、火を起こせるかしら? 蛇は熱で感知すると聞いたことがあるわ!」
「ひ、火よ! 燃え上がれ!」
ボッと木の幹を燃やせば、大蛇はそこへ頭突きをした。
もしかして火を消そうとしている?
「
ガサガサと枝を、咲いた手が揺らす。
そちらへ大蛇は向かっていったけど。
「あ、あの、ルフィの方角なのですが、ロビンさん……?」
「船医さんよりは、逃げ足が早いでしょう?」
確かにそれが最善ではあるけど。
ますますルフィを追いかけられくなった。
「……誤算だったのは、船長さんと剣士さんが1人で目的地までたどり着けないことかしら」
「その通りだよ……」
もしかして、ロビンはちょっと天然なところ、あるんじゃないかな。
「こうなった以上、船医さんが単独行動していることが最も危険ね」
「それは……そうだね。チョッパーを追いかけよ!」
ルフィが不在のとき、副船長の私が代わりにしっかりしないとね。なんだか、あちこちで戦う音が聴こえ始めているし、いくらチョッパーがある程度戦えるといっても、もし神官に会った場合が心配だ。
私はまずはゆっくり、そこから次第に早く走り始めた。
ロビンはこういう森にも慣れているのか、足元の枝につまずくことなく、私に並走してくる。
「驚いたわ。あなた、森育ち?」
「そ。ルフィとそのお兄ちゃんたちとね」
あの3人……、2人には最後まで支えてもらってばかりだったけどね。
「あら、兄がいたの?」
「1人はエース、白ひげ海賊団に今はいるよ! もう1人はサボで、うーんと、海賊だとは思う」
エースにはこの前アラバスタで会えたけど、サボも元気しているといいな。どんな大人になっているんだろう。昔の時点ですごく紳士的で、優しいお兄ちゃんだったから、女の子にモテモテだろうなぁ。
「フフ それは兄弟揃って問題児ね」
「そだ! サボの冒険誌とか読んだことはない? あれから10年以上だから、そろそろ出版してるかなって!」
思い出そうとしているのか、ロビンは視線を足元にずらして。
やがて、微笑んだ。
「いえ、ないわね」
「そっかぁ……」
サボってば、ワンピースをとるまで出版しないつもりなんだろうか。
「ところで、船医さんは見つかりそう?」
「えーと、たぶん範囲外、かな」
騒がしくなってきた森の中で、知っている気配はヒットしない。それに、エネルの強い覇気もまだ感じ取れないし、雷の音もまだ聴こえない。
「もしかすると、船医さんすらこのルートに戻ってこないかも」
「そんな最悪のケース、考えないでよ~」
探索組、完全にバラバラになっちゃった。
てか、1時間も一緒じゃなかったでしょ。
「一旦休みましょうか。あまり体力を消費しては戦闘に支障が出るわ」
「そうだね。ちょうど、建物が見えてきたし」
私たちはペースを落として、息を整えながら、石畳をトコトコと歩き始める。
「ここは都市から離れた民家ね。やはり森に飲み込まれている。肝心の都市の遺跡は無事だといいけれど……」
「ふひゃ~ お水ぅ~」
私は木の幹によっこいしょって座る。
ふにゃふにゃな鳥がデザインされたリュックから、水筒を出してゴクゴクと飲むけど。
このお水、ルフィと一緒に作って。
でもルフィは今、隣にいない。
「あれだけ走って、これ以外に建造物はなかった。ならば、この広い土地を少人数で独占していることになるわね」
「誰か来た……神官、ではないかな」
ガシャーンってスケート靴で、壊れた家の屋根に乗ったから、バラバラと石が崩れた。
「女2人!? 青海人か!? この先は」
「そこから降りなさい。」
羊の能力者ってわけじゃなくて、羊に似たおじさんだ。
そんな人に対して、ロビンは言葉を遮って、怒りの感情を込めてそう言った。
「貴様らこそ、神聖な地に踏み入れるとは、無礼なり!」
「あなたには遺跡というものの歴史的価値が分からないようね。そこから降りなさい。」
そう、再び怒気を込めて注意する。
よかったぁ、そこにある石に座らなくて。
ほら、これが石碑かもしれないし。
「何を生意気な!? ええい!」
「あら、私たちへ攻撃を?」
構えた手のひらには、ダイアルが取り付けられていて、
「神の命により、シャンディア及び青海人はこの
花のように咲いた腕にビックリしているし、覇気使いではなさそう。
「
「腕だとぉ!?」
しなやかな腕は花びらが折り畳まれるように動き始めて。
「ツイスト」
「ガァ!?」
ボキボキって、身震いするような音が鳴り響いた。
ドサッて頭から落ちたのも痛そうで、ひどい攻撃だ。
「ひどいことするわ」
「アハハ、そだね~」
再び、遺跡を観察し始めたロビン、ちょっとクールビューティすぎるよ。
「これが
暇つぶしに手から取ってみたけど、カチッって押し込んだら、ビューンって『飛ぶ斬撃』が出た。
「わお!」
ミホークさんもやってたやつだけど、これをウタやダイアルなしってことは、単なる剣圧でやってたってことだよね。
押すだけで木の幹を深く削るくらいの威力だから、いわゆる空島の鉄砲と言えるかもね。
「でも強く押し込んだら、1発しか出ないの不便だね」
またカチカチしてみたら、もう何も出ないし、毎度ゾロとかにチャージしてもらう必要があるね。
えっ
「……声がっ!?」
雷の音がゴロゴロと聴こえ始めた。
次々と声が消えていくのがなんとなく聴こえる。
たぶん死んではいないけど、それに近いから、その断末魔のような悲痛な声が、島のあちこちから上がっている。こんな無差別に酷いこと、あの火事を起こしたやつらの、えっ、火事って何?
ルフィたちと、合流しないと。
「ごめんロビン! 黄金見つけてナミたちと合流して!」
私はダイアルをリュックに入れて、背負い直す。
「……一体、どうしたのかしら」
「どこにいるの、ルフィ!!」
直感に従って、走るけど。
いつまでたっても。
ルフィの気配は感じ取れず、声も聴こえなくて。
もしかして、って言葉が頭をぐるぐると回り続ける。