麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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 アニメ様も面白いし、原作様も面白い。
 ワノ国編見て空島編見るといろいろ感じるものが。


第67話 エネル⑦

 

 黒い雷雲に空は閉ざされていて。

 威圧するようにゴロゴロと咆哮を放つ。

 

 いまだ雷神として巨大化したままのエネルは歯噛みしながら、再び雷雲をかき集めている。

 

「なぜだ。なぜ貴様らは我を崇めず、群れて立ち向かう。恐怖し跪けば、それで我が創る新世界の民としてやるのに……」

 

 がんばれーってルフィを応援する人々の叫び声は、私の耳に届いているように、エネルにも聴こえているんだろう。なんなら島のあちこちからみんなが叫んでいるから、覇気とか関係なしで、雷に負けない声が響いているし。

 

 そういえば、エネルは少数とはいえ、仲間を欲しがっていたようにも思えてきた。1人ならいつでも、この舟で冒険へ出かけることができるのにね。ただ、エネルが認めるくらい強くて、他にも『何か条件』があったから。

 

「何言ってんだ。お前にもいたじゃねぇか」

 

 私自身も神官の1人と戦ったし、ゾロたちの元々の傷を考えると、あれ以上に強い神官は他にもいたはずだよね。でも今は大地に伏していると思うし、動けないと思う。この空に浮かぶ舟までやってきたのは、ルフィと私たちだけで。

 だったら、神としてはともかく、船長としては。

 

「お前は何でもかんでも求めすぎなんじゃねぇか?」

 

 ルフィは、金の重りがついた腕を動かしやすいように、片腕で支えた。

 

「ゾロはよく道に迷うし」

「てめぇには言われたくねぇ」

 

「ナミは意外と泣き虫だし」

「そんなことないわよ!」

 

「ウソップはよくビビるし」

「怖いもんは怖いだろ!」

 

「サンジはつまみ食い許させねぇし」

「俺らの分がなくなるだろうが!」

 

「チョッパーは過保護だし」

「お前らすぐ無茶するからな!」

 

「ロビンは天然だし」

「そうかしら?」

 

「昔からウタなんてな。こいつ放っておいたらすぐ1人になりたがるんだぞ。それって凄く寂しいことなのによ。1人で夢に向かって突っ走っていきそうになる」

「勇敢なボディーガードがいるからいいんだもん。それにあんただって」

 

 すぐ面白そうなところへ行くし、昔から泣き虫だし、怖いもの知らずで無茶苦茶するし、女子として我慢してる夜食を食べるし、ずっと過保護だし、これからもたくさんの女の子が惚れてしまいそうだし。

 ほんと、そんなところも好きなんだけどね。

 

 そんなルフィだから、私たちは別々の夢を持っていても一緒の船に乗った。

 

「……もうよい! 貴様らはウンザリだ! この大きさで充分だろう!」

 

 何かを吹っ切るように、エネルは天へ腕を向ける。

 

 この舟へ向かって、再びあの巨大な雷雲の塊を落とす気なんだ。

 ひどくなった落雷に、大地もみんなも耐えているけど、あの規模はヤバい。それに、エネルたちが何年もかかって作ってきたこの巨大な舟だって、壊れてしまうだろう。

 

 たった1人で乗るには、巨大すぎる舟が。

 

雷迎(らいごう)!!」

 

 どこか躊躇いを見せながらも、巨大な力を振り下ろす。

 

「俺はお前を倒して! 黄金の鐘を鳴らす!」

 

 でも私たちだって危ないのに、不思議と安心しちゃってる。彼は大きく左腕を伸ばして、舟の煙突を掴んでから勢いよくロケットのように飛んだ。

 

「鳴らすだと? もう一度鳴る時、戦いの終焉を知らせるというが、そんな言い伝えでやつらが和解するとでも?」

 

「ああ! そう頼まれたからな!!」

 

 ゆっくりと倒れていた豆のツルがドンッと音を立てた。

 

「ヤハハハ お前みたいな青海人に、何ができる?」

 

 試すようなエネルの質問に、ルフィは何も答えない。

 

 たぶん、空島に元々住んでいた人だとか、大地に先に住んでいた民族の人だとか、海からやってきた青海人だとか、そういうの気にしてないからね。

 だって、ルフィの夢は。

 

「ゴロゴロ ゴロゴロと、せっかくの空島なのに、天気悪くしやがって!」

 

 黄金に輝く重りが、まるで太陽のように空を照らしながら、ルフィは真っ黒な雷雲に飛び込んでいった。

 

「ヤハハハ! バカげている!! 大地と共に消え去れ、ゴムの男!!」

 

 高笑いしながらエネルですら、天を見上げる。

 

 ルフィを追撃することだって、私たちだって攻撃できるはずなのに、エネルは何かを期待するように、ルフィへ見聞色の覇気(マントラ)を研ぎ澄ましていると思う。

 

「ゴムゴムの花火!! 黄金牡丹(おうごんぼたん)!!」

 

 雷は自然現象で、人間の力で扱えるのもすごいことだけど、その中で耐え続けるルフィはもっとすごい。どう考えたってバカなことをやっているのに、あの雷と気流の嵐の中で、しっかりと彼の覇気が感じ取れるんだ。その王様のような覇気に、私たちは思わず指を組んで祈っちゃう。

 

 パンチの衝撃を受けるように雷が飛び出す。

 まぶしいくらいに光輝いていて。

 

 やがて。

 その黒くて巨大な雷雲が。

 

 パーーーーンと切り(ひら)かれる。

 

晴れた~~~~!

 

 アッハッハッハッハって。

 その愉快な高笑いは青空へ響いた。

 

 重りが溶けたのかどうかは分からないけど、自由になった両腕と両足を突き上げながら笑いながらルフィは空からこっちへ落ちてくる。顎紐で結ばれた麦わら帽子もパタパタと揺れて無事みたい。

 

 エネルもどこか納得したように、笑顔になる。

 

「ヤハハハ 2億……、いや3億だッ!!」

 

 雷神状態のエネルは金の装飾に腕を伸ばそうとしたのをやめて、楽しそうにそう叫んだ。

 

「3億V 雷神の裁き(アマル・トール)!!」

 

 さらに威力を増した雷のパンチがゴロゴロと音を立てて、ルフィへ伸ばされる。

 

 対するルフィは。

 

「ギア(サード)!」

 

 ルフィは指の骨へ思い切ってブゥーーーって息を吹き込むことで、風船のように腕がどんどん大きく膨らむ。

 そして、左腕から一度身体を通して、その空気は。

 

 右足に集約されていった。

 

「ゴムゴムのォ……ッ!」

 

「我は神なり! このゴロゴロの実の能力をもって、貴様を(ひね)り潰す!」

 

 ルフィは巨大で固い足を構えたまま。

 そのエネルの雷をその身体で受け止めた。

 

 耐えきって、そしてギアを2段階上げて進化した技のために、身体を大きく振りかぶった。

 

「武装 ゴムゴムの! 巨人の雷斧(ギガントトール アックス)!!」

 

 足の振り下ろしをエネルは避けない。

 両腕を交差させて、受け止めるつもりなんだ。 

 

「今の貴様の全力か! 面白い!! ヤハハハ!!」

 

「効かないはずなのにビリビリする! おもしれぇ!」

 

 ドーーーンっと 力と力がぶつかり合って。

 

 3億Vの放電と、巨人族のようなゴム。

 能力どうこうじゃなくて、意地と意地だ。

 

 でも、いつかは決着がつく。

 

「認めよう。今はお前が、強い!!」

 

「この喧嘩、俺の勝ちだァ~~!!」

 

 ルフィの叫び声で押し切って、雷神の姿が崩れ落ちたエネルの身体は、大地へ突き飛ばされて墜落していく。

 

 これで。

 ようやく。

 

 エネルとの喧嘩に勝ったんだ。

 

 嵐は通り過ぎたように。

 でも不思議な静寂は続いていて。

 

「ルフィは勝ったん、だよね……?」

 

 本当にみんなが助かったのかどうか、確証は持てない。

 綺麗な青空と、白くてふわふわな雲、緑が生い茂る大地は、太陽に照らされながら何かを期待するように待っているみたいに。

 

 たぶん、この戦いはエネルに勝つためだけじゃないんだと思う。他にももっともっといろんな思いが紡ぎ合っているんだ。だから、みんなが大地を巡る戦いすらやめて、何かを待っている。

 

「ギャーー!?」

「ふ、舟が!?」

「なんで、いやそうか!」

「これはあいつが浮かせてたんだ!」

「え~~~じゃあ!?」

「みんなで真っ逆さまね」

 

「ムジカちゃん!」

 

 私は顕現したムジカちゃんに、私たちを腕に抱えさせる。

 

「「「た、たすかった~~~」」」

 

 方舟は真っ逆さまに落ちていって、雲へ突き刺さった。

 

「よっと」

 

 ギア3の反動で小さくなったルフィはその頭に降りてきて、麦わら帽子を被り直した。

 

「うぷっ、もう限界……」

「「「えぇ~~~!?」」」

 

「このまままっすぐだ! そこにあったんだよ!!」

 

 無事に降りるまで体力がもたないと思っていたら、何かを喜んでいるルフィの声でもう少し頑張れそう。普段より声が高くてかわいいし。

 

「あれは、まさか!」

「でっけぇ~」

「なによ。黄金郷かと思ったら」

「こりゃ持ち帰るわけにはいかねぇな」

「ロマンあるじゃねぇの!」

「1番乗りはお前らだろ、船長(キャプテン)?」

 

 小島へ降りることはできたけど、もうヘトヘトだよ。

 

「ん。 立てるか?」

「ん~ もう少し~」

 

 このまま寝てもいいくらいで。

 そんな私の身体、急に浮いた感じがして。

 

「ちょっ、ルフィ!? えっ!!」

「見ろよウタ! 黄金の鐘だ!!」

 

 お姫様抱っこも恥ずかしいってのに。

 こんな素敵なもの。

 

 ルフィったら、どれだけたくさんのステキな冒険を、私にくれるんだろう。ほんと……どんどん 想いで胸が高まる。

 

「『おれたちはここにいる』……、これがシャンドラの()、先祖の霊魂がいつでも戻ってこれるように、故郷の所在を知らせるものね」

「大地を奪われた戦士たちが求めたもの、か」

「それも400年間だろ?」

「すべて金だなんて、さすが黄金都市ね」

「おっさんたちに知らせるには」

「ちょうどいいってわけだな!」

 

 腕で支えながらルフィは私の手をとって、大きな鐘に触れさせてくれたけど、お日さまの光でポカポカしてて。

 

 すごく重く感じる。

 

 途方もない歴史も、人々の思いも、私は声から知ったつもりになってるだけなんじゃないかな。ちゃんと共感するには、この鐘に込められた夢があまりにも大きすぎる。

 

「栗のおっさんたちや空島のやつらだけじゃなくて、シャンクスたちにも届くかな~、この鐘の音は?」

 

 ししし って呑気で、楽しそうな声が。

 私を思考の渦から引っ張り出してくれた。

 

 やっぱり、私は。

 

「うん! マキノやダダンたち、ガープさん、ビビたち、エースにも! そして、サボにも、ね……?」

 

 今まで出会えてきた大切な人たち、もう指だけじゃ数えきれないくらい増えちゃった。

 

 『ここにいる』って伝えたいから。

 だから今はそのためにも。

 私たちへ鐘を貸してください。

 

「ねぇルフィ、あんたはいなくならないでよ」

「ああ、ずっと一緒だ。夢の果てのその先でも」

 

 『私 はあなた を愛しています』

 この気持ちも込めるのは欲張りかな?

 

 まあ海賊の娘で、未来の海賊王のお嫁さんだから、自由でいいのかな。

 

「「せーのっ♪」」

 

 カラァ~~~ン

 

 ご先祖様たちに場所を伝えること。

 もう大地を巡る戦いは終わること。

 空島の支配は終わって解放されたこと。

 探した黄金郷は空にあったこと。

 私たちはここにいるってこと。

 

 そんな音色(おもい)が みんなに届きますように。

 

 あなたへずっと 歌声 届けられますように。

 

 

 

 

「ヤハハハ、遅いではないか……ゲホッ」

 

 青海人は強かったか、と神官たちに問う。

 彼らはその身体を支えて立ち上がらせる。

 

「またやつらへ喧嘩を挑むとするか。だが今は進もう」

 

 『試練を乗り越えて神の世界へたどり着く』という夢のために方舟へ乗ってくれる。そこに各々の強さはあまり関係なかったのだと、ようやく気づけた。

 

 その点くらいは、感謝しなければならないだろう。

 

「まだ神ではない俺だが、ついてきてくれるか?」

「「「はっ!!」」」

 

 また会おう、未来のカイゾク王とやら。

 そして、その隣にいる美しい歌姫よ。

 

 

 今日も限りない大地(フェアリーヴァース)は、優しく包み込むように夜空を照らし始める。

 

 

 






歌詞引用:
40mP「Evidence」
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