カラァ~~~ン
カラァ~~~ン
って、黄金の鐘が鳴り続ける。
私やルフィが満足した後、ゾロ、サンジ、ナミ、チョッパー、ウソップ、ロビンもそれぞれ鐘を鳴らした。だって、こんな貴重な機会はもう2度とないかもしれないからね。
空に浮かぶ小島で私たちは一旦、休息をとっていた。
「大丈夫? ヒリヒリするよね?」
「こ、こんなの平気だっての」
チョッパーに治療道具を貸してもらって、私はルフィの両手に包帯をグルグルと巻く。昔からよく強がるけど、ルフィだってケガした時は痛いでいいし、泣きたいときは泣いていいのに。
「ありがとうナミさん。ナミさんに手当てしてもらえるなんて、最高の気分だぜ」
「まっ、今回はサービスしといてあげるわ」
チョッパーが来るまで、私とナミで無茶をする男子たちの手当てしてたのを思い出すね。
「ゾロ、寝てていいんだぞ?」
「お楽しみがあるんだ。寝てられるか」
「チョッパー、こんな感じでいいか?」
満身創痍のゾロの次に、サンジの傷が酷くて、チョッパーやウソップだって決して軽くない。ロビンだって戦ったらしいし、その後にエネルと交戦したみたいで、今回はみんなボロボロだね。
キュッって包帯を結び終える。
みんな無事に戦いを終えられたことを実感できて、私とルフィはししし って笑い合った。
そういえばロビンは、アラバスタの地下にもあった黒い石をじっと見つめているけど、もう解読できたのかな。
「ねぇロビン、なんだったの?」
「美味い飯屋の場所か?」
「古代兵器ポセイドン、それがある場所よ」
「空島にあるの?」
「それなら見てみてぇなぁ」
私たちの質問に軽く首を振ったロビンもあまり興味がなさそうだ。まあ私たちとしても実物を見ないことには、黄金の鐘以上の驚きはないや。
「あれ、こっちも何か書いてあるよ?」
「なんだなんだ、古代の飯屋か?」
「『我ここに至り この文を最果てへと導く』……『海賊 ゴール・D・ロジャー』」
その人って確か。
「えっ、すごっ」
「ししし 面白いじゃねぇか」
ルフィは被っている麦わら帽子に手を当てながら、笑った。
たぶん、海賊王と呼ばれる前に、先代の海賊王たちもこの空島を訪れたんだ。そしてその一味の誰かが、この古代の文を読めたし、書けるってことにもなる。
「ロビン、俺たちも書くぞ!」
「えっと、いいの?」
歴史的に価値ありそうなもので、えっと、落書きなわけでして。
「いいわよ。もう誰かさんがすでに文字を刻んだ、この台座なら」
「よしっ、『麦わらの一味 参上!! 海賊 モンキー・D・ルフィ』で頼む」
道具を使ってロビンが文字を掘り進める。
なんとも海賊らしいことをやっちゃった。
次にこの文字を読める人が来たら、呆れて笑っちゃいそう文章だね。
でもかつての海賊王ロジャーが残した文章になんだか歴史的価値を感じるように、ルフィも海賊王になれば、この文章だって価値が生まれるはずだもん。
せっかくだしってことで、私たちは黄金の鐘をこの小島から降ろすことにした。住んでいた人にとって大事なものだろうし、これからはいっぱい鳴らしてほしいから。
私のムジカちゃんと、ルフィのゴム風船でなんとか、みんなで土がある場所まで戻ってきた。私たちは海賊だけど、なんだか地面があるってのは安心するね。
黄金の鐘はまあ、ここの広場でいいや。
それに、建物も多くてちょうどいい場所だし。
「で、どうする? 船に戻る?」
ひと息ついた私たちに、ナミがそう提案してきたけど。
「そんなもったいないことするなよ」
「やれやれだよ、ナミ」
「あんたら元気かっ! ……もう」
仕方ない、といった風にナミがテキパキとみんなに指示を出し始めてくれた。神官たちが根城にしていた場所に、食糧庫があるらしいし、そこから調達すればよさそうだね。
「みなさ~ん!」
「コニス!!」
その声に私は思わず、ギューって抱きつく。
コニスたちが住んでいた島が壊されたし、コニスにもたぶんいろいろあったんだろうけど、無事でよかった。別れ方もあまりよくなかったから、私たちは涙を流し合いながら再会を喜び合う。
「そうだ。これウタさんの帽子ですよね?」
「うぅ~ コニス~」
私の麦わら帽子を、雲ギツネのスーが頭に乗せて運んできてくれた。私はさらに涙が溢れてきて、コニスの胸に顔をぐりぐりと押しつけちゃう。
この麦わら帽子はマキノから貰ったものだし、お父さんとエースのビブルカードも縫い付けてあって、大切な宝物だから。
「すみませ~ん。皆様ご無事ですか~?」
「父上!?」
コニスのお父さん、それにみんなも無事だったんだ。
一旦、別の階層に避難してたんだけど、もう住む場所もないから、この島に移住することを決めたみたい。
元々エネルが率いた神官たちが独占していただけで、相当広い土地でもあるし、いいことだと思う。でも私たちはあまり関わっていなかったけど、空島の人と先住民の争い、それ次第なのもあるのかな。
広場の中心にある黄金の鐘を挟んで、お互いの派閥が牽制し合っているようにも見える。
その中から、それぞれ1人ずつこっちへやってくる。
「麦わら……、やったんだな?」
「まさかあのエネルを倒すとはな」
「バズーカのやつ! ペガサスのおっさん! お前らのおかげでエネルのとこまで行けたぞ。助かった!」
仮面がないのは初めてだけど確かにあのバズーカの人だし、装備は失っているけどガン・フォールのおじいちゃんだ。どっちも包帯まみれでボロボロだし、立つこともやっとに見える。
ある意味、派閥のリーダーって感じだけど。
もうルフィにとって2人とも友達だからね。
「で、お前らもみんなに手伝うように言ってくれ!」
ルフィの友達は、無茶ぶりに苦労するよ。
「ああ。お前の頼みならな」
「はてさて、何をすればよいのだ?」
「宴だぁ~~~!」
ギクシャクしていたみんなの雰囲気を、ルフィは笑いに変えてしまった。
「宴か。そういえば初めてかもしれん」
「もう誰1人、戦いなど望んでいないようだ」
さっきまで堅そうな2人だったのに、表情が一気に柔らかくなって、ルフィの提案を快諾した。
こうなってはもう、立場も生まれも関係ない。
ルフィもいっぱい食べて踊り回って。
ウソップも雷も耐える輪ゴムを見せたり。
サンジもいろんな料理を作り合ったり。
ゾロもいろんなお酒を味わってみたり。
ナミも戦士や騎士たちと飲み比べたり。
チョッパーも大蛇たちと踊ったり。
ロビンもご老人たちと歴史的な話をしたり。
私もコニスたちといろんな音楽を共有し合う。
民謡に込められたメッセージ性は感動するくらい強いし、楽器だって珍しいものだらけだった。私は歌を新しく作ることが多いけど、みんなが踊るくらいにノってくれるのが嬉しい。
「お~い ウタ~! お前も踊ろうぜ~!」
「うんっ! ルフィ!!」
ドンドットット♪ って太鼓の音に合わせて、彼に手を引かれながら騒ぐように踊る。火に照らされた影も、すごく面白いくらいに楽しく揺れている。私は彼といると、いつだってとても幸せに感じる。
踊りの型はなくて、テキトーで。
みんなが踊って笑い続ける。
「あっはっはっ 楽しいなぁ!」
「楽しいねっ!」
満月が輝く時間から、夜明けがくるまで。
ずっとずっと。
ずっとあなたを愛しています。
「お 起きれるかウタ」
「むにゃ~?」
心地よく揺らされて、お日様の光。
「おはよぉー」
「おう。おはよう」
またルフィを枕にしちゃってたのかな。
ギュッと彼の赤いシャツを握っていた。
でも、ごめん。まだ眠いや。
「よし、お前ら。俺たちで黄金を奪って逃げるぞ」
「昨日は無茶したし、眠らせてあげましょ」
「くぅ、ルフィが羨ましいぜ」
「俺、海賊っぽいこと初めてだ!」
「声が大きいぞチョッパー!」
「あの大蛇もよく寝ているようだな」
「もし起きたらそのままお腹の中ね」
私はルフィに背負われて、大蛇の体内から黄金を運び出す光景を、ぼーっと見てた。確かに大蛇が間違って食べちゃったお宝なら、空島のみんなが気づいていないお宝かもね。
少しずつ空島のみんなが起き始めたこともあって、ルフィたちは慌ててメリー号まで走り始める。
「ま、待って~~!」
「このオーゴンをお礼に~!?」
「ごめんなさい~!」
「また来てね~~!」
「お元気で~~!」
「海賊とは騒がしいやつらだな」
「ああ。違いない」
「20年以上前に来た海賊団にいた見習い……、あの麦わら帽子で赤髪、もしやあやつの娘なのかの……?」
「その笛を吹けば! タコバルーンで青海まで降りれますから~! あとウタさん、お幸せに~!」
またね、コニス。
空島のみんな。
カラァ~~~ン
カラァ~~~ン
って祝うように、今日も黄金の鐘が鳴る。