麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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第68話 国はスカイピア、都市はシャンドラ、そこに住む人々

 

  カラァ~~~ン

 

  カラァ~~~ン

 

 って、黄金の鐘が鳴り続ける。

 

 私やルフィが満足した後、ゾロ、サンジ、ナミ、チョッパー、ウソップ、ロビンもそれぞれ鐘を鳴らした。だって、こんな貴重な機会はもう2度とないかもしれないからね。

 

 空に浮かぶ小島で私たちは一旦、休息をとっていた。

 

「大丈夫? ヒリヒリするよね?」

 

「こ、こんなの平気だっての」

 

 チョッパーに治療道具を貸してもらって、私はルフィの両手に包帯をグルグルと巻く。昔からよく強がるけど、ルフィだってケガした時は痛いでいいし、泣きたいときは泣いていいのに。

 

「ありがとうナミさん。ナミさんに手当てしてもらえるなんて、最高の気分だぜ」

「まっ、今回はサービスしといてあげるわ」

 

 チョッパーが来るまで、私とナミで無茶をする男子たちの手当てしてたのを思い出すね。

 

「ゾロ、寝てていいんだぞ?」

「お楽しみがあるんだ。寝てられるか」

「チョッパー、こんな感じでいいか?」

 

 満身創痍のゾロの次に、サンジの傷が酷くて、チョッパーやウソップだって決して軽くない。ロビンだって戦ったらしいし、その後にエネルと交戦したみたいで、今回はみんなボロボロだね。

 

 キュッって包帯を結び終える。

 みんな無事に戦いを終えられたことを実感できて、私とルフィはししし って笑い合った。

 

 そういえばロビンは、アラバスタの地下にもあった黒い石をじっと見つめているけど、もう解読できたのかな。

 

「ねぇロビン、なんだったの?」

「美味い飯屋の場所か?」

 

「古代兵器ポセイドン、それがある場所よ」

 

「空島にあるの?」

「それなら見てみてぇなぁ」

 

 私たちの質問に軽く首を振ったロビンもあまり興味がなさそうだ。まあ私たちとしても実物を見ないことには、黄金の鐘以上の驚きはないや。

 

「あれ、こっちも何か書いてあるよ?」

「なんだなんだ、古代の飯屋か?」

 

「『我ここに至り この文を最果てへと導く』……『海賊 ゴール・D・ロジャー』」

 

 その人って確か。

 

「えっ、すごっ」

「ししし 面白いじゃねぇか」

 

 ルフィは被っている麦わら帽子に手を当てながら、笑った。

 

 たぶん、海賊王と呼ばれる前に、先代の海賊王たちもこの空島を訪れたんだ。そしてその一味の誰かが、この古代の文を読めたし、書けるってことにもなる。

 

「ロビン、俺たちも書くぞ!」

「えっと、いいの?」

 

 歴史的に価値ありそうなもので、えっと、落書きなわけでして。

 

「いいわよ。もう誰かさんがすでに文字を刻んだ、この台座なら」

 

「よしっ、『麦わらの一味 参上!! 海賊 モンキー・D・ルフィ』で頼む」

 

 道具を使ってロビンが文字を掘り進める。

 なんとも海賊らしいことをやっちゃった。

 

 次にこの文字を読める人が来たら、呆れて笑っちゃいそう文章だね。

 でもかつての海賊王ロジャーが残した文章になんだか歴史的価値を感じるように、ルフィも海賊王になれば、この文章だって価値が生まれるはずだもん。

 

 せっかくだしってことで、私たちは黄金の鐘をこの小島から降ろすことにした。住んでいた人にとって大事なものだろうし、これからはいっぱい鳴らしてほしいから。

 

 私のムジカちゃんと、ルフィのゴム風船でなんとか、みんなで土がある場所まで戻ってきた。私たちは海賊だけど、なんだか地面があるってのは安心するね。

 

 黄金の鐘はまあ、ここの広場でいいや。

 それに、建物も多くてちょうどいい場所だし。

 

「で、どうする? 船に戻る?」

 

 ひと息ついた私たちに、ナミがそう提案してきたけど。

 

「そんなもったいないことするなよ」

「やれやれだよ、ナミ」

 

「あんたら元気かっ! ……もう」

 

 仕方ない、といった風にナミがテキパキとみんなに指示を出し始めてくれた。神官たちが根城にしていた場所に、食糧庫があるらしいし、そこから調達すればよさそうだね。

 

「みなさ~ん!」

「コニス!!」

 

 その声に私は思わず、ギューって抱きつく。

 

 コニスたちが住んでいた島が壊されたし、コニスにもたぶんいろいろあったんだろうけど、無事でよかった。別れ方もあまりよくなかったから、私たちは涙を流し合いながら再会を喜び合う。

 

「そうだ。これウタさんの帽子ですよね?」

「うぅ~ コニス~」

 

 私の麦わら帽子を、雲ギツネのスーが頭に乗せて運んできてくれた。私はさらに涙が溢れてきて、コニスの胸に顔をぐりぐりと押しつけちゃう。

 この麦わら帽子はマキノから貰ったものだし、お父さんとエースのビブルカードも縫い付けてあって、大切な宝物だから。

 

「すみませ~ん。皆様ご無事ですか~?」

「父上!?」

 

 コニスのお父さん、それにみんなも無事だったんだ。

 一旦、別の階層に避難してたんだけど、もう住む場所もないから、この島に移住することを決めたみたい。

 

 元々エネルが率いた神官たちが独占していただけで、相当広い土地でもあるし、いいことだと思う。でも私たちはあまり関わっていなかったけど、空島の人と先住民の争い、それ次第なのもあるのかな。

 

 広場の中心にある黄金の鐘を挟んで、お互いの派閥が牽制し合っているようにも見える。

 その中から、それぞれ1人ずつこっちへやってくる。

 

「麦わら……、やったんだな?」

 

「まさかあのエネルを倒すとはな」

 

「バズーカのやつ! ペガサスのおっさん! お前らのおかげでエネルのとこまで行けたぞ。助かった!」

 

 仮面がないのは初めてだけど確かにあのバズーカの人だし、装備は失っているけどガン・フォールのおじいちゃんだ。どっちも包帯まみれでボロボロだし、立つこともやっとに見える。

 

 ある意味、派閥のリーダーって感じだけど。

 もうルフィにとって2人とも友達だからね。

 

「で、お前らもみんなに手伝うように言ってくれ!」

 

 ルフィの友達は、無茶ぶりに苦労するよ。

 

「ああ。お前の頼みならな」

「はてさて、何をすればよいのだ?」

 

「宴だぁ~~~!」

 

 ギクシャクしていたみんなの雰囲気を、ルフィは笑いに変えてしまった。

 

「宴か。そういえば初めてかもしれん」

「もう誰1人、戦いなど望んでいないようだ」

 

 さっきまで堅そうな2人だったのに、表情が一気に柔らかくなって、ルフィの提案を快諾した。

 

 こうなってはもう、立場も生まれも関係ない。

 

 ルフィもいっぱい食べて踊り回って。

 ウソップも雷も耐える輪ゴムを見せたり。

 サンジもいろんな料理を作り合ったり。

 ゾロもいろんなお酒を味わってみたり。

 ナミも戦士や騎士たちと飲み比べたり。

 チョッパーも大蛇たちと踊ったり。

 ロビンもご老人たちと歴史的な話をしたり。

 

 私もコニスたちといろんな音楽を共有し合う。

 民謡に込められたメッセージ性は感動するくらい強いし、楽器だって珍しいものだらけだった。私は歌を新しく作ることが多いけど、みんなが踊るくらいにノってくれるのが嬉しい。

 

「お~い ウタ~! お前も踊ろうぜ~!」

「うんっ! ルフィ!!」

 

 ドンドットット♪ って太鼓の音に合わせて、彼に手を引かれながら騒ぐように踊る。火に照らされた影も、すごく面白いくらいに楽しく揺れている。私は彼といると、いつだってとても幸せに感じる。

 

 踊りの型はなくて、テキトーで。

 みんなが踊って笑い続ける。

 

「あっはっはっ 楽しいなぁ!」

「楽しいねっ!」

 

 満月が輝く時間から、夜明けがくるまで。

 ずっとずっと。

 

 

 ずっとあなたを愛しています

 

 

「お   起きれるかウタ」

「むにゃ~?」

 

 心地よく揺らされて、お日様の光。

 

「おはよぉー」

「おう。おはよう」

 

 またルフィを枕にしちゃってたのかな。

 ギュッと彼の赤いシャツを握っていた。

 

 でも、ごめん。まだ眠いや。

 

「よし、お前ら。俺たちで黄金を奪って逃げるぞ」

 

「昨日は無茶したし、眠らせてあげましょ」

「くぅ、ルフィが羨ましいぜ」

「俺、海賊っぽいこと初めてだ!」

「声が大きいぞチョッパー!」

「あの大蛇もよく寝ているようだな」

「もし起きたらそのままお腹の中ね」

 

 私はルフィに背負われて、大蛇の体内から黄金を運び出す光景を、ぼーっと見てた。確かに大蛇が間違って食べちゃったお宝なら、空島のみんなが気づいていないお宝かもね。

 

 少しずつ空島のみんなが起き始めたこともあって、ルフィたちは慌ててメリー号まで走り始める。

 

「ま、待って~~!」

「このオーゴンをお礼に~!?」

「ごめんなさい~!」

「また来てね~~!」

「お元気で~~!」

「海賊とは騒がしいやつらだな」

「ああ。違いない」

 

「20年以上前に来た海賊団にいた見習い……、あの麦わら帽子で赤髪、もしやあやつの娘なのかの……?」

「その笛を吹けば! タコバルーンで青海まで降りれますから~! あとウタさん、お幸せに~!」

 

 またね、コニス。

 空島のみんな。

 

 

 

  カラァ~~~ン

 

  カラァ~~~ン

 

 って祝うように、今日も黄金の鐘が鳴る。

 

 

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