FILM RED アンコールが、とてもめでたいです!
今はもう使われていないドックへ、せめてメリー号を隠すために、私たちは夜のうちに行動を起こす。
それぞれができることをやったことで、周りを囲むような張りぼてとはいえ、海軍の船のようなカモフラージュは完成した。急いで塗ったからどうかと思ったけど、遠くから見てみると意外とバレなさそう。
私たちはクタクタな身体に鞭を打って、再び静かな海軍基地に忍び込むことにした。
「あ、メシの匂い!」
「後で作ってあげるから!」
「上じゃなかったか?」
「それを言うなら北だろ!」
「ゾロが方向音痴の理由って…」
「フフッ、目立つ人たちね」
私とルフィ、ゾロ、ウソップ、チョッパー、ロビン、そんな黄金奪還組は目的地へ向かって廊下を走る。
ひんやりとした廊下だと、白いシャツと黒いフリフリスカートだけじゃ寒かったから、黒のニーハイソックスと、赤のパーカーを羽織ってきてよかった。
ルフィは相変わらずノースリーブの赤シャツで、意識して赤をお揃いにしてみたわけじゃないよ。うん。
ていうかロビンの言う通り、どう考えても目立っているね。といっても、見聞色の覇気を使える司令官がいる以上、見つかるのは時間の問題だよね。ウェイバーを回収しているナミとサンジのほうもまだ戦闘は起きてなさそうだけど。
「そろそろ目的の金庫の部屋か?」
「様子はどうかしら、歌姫さん?」
「たっくさんいるね!」
でもこんな単純に待ち構えるのは、司令官の策にしてはちょっと逆に心配になってくる。でもここで引き返すのは、麦わらの一味らしくないよね。
「さっさとぶっ飛ばして取り戻そう!」
「全員で100人切りすれば 600人だな!」
「そんな単純計算かよ!?」
「俺らの10倍は倒せるだろ!」
すでに男子たちはやる気みたいで、私とロビンの不安も吹き飛んじゃうね。
明るい廊下から、私たちは薄暗い大部屋へ入った。
お~ って声が反響するくらい大きくて、それにすっごく大きい金庫みたいだ。もしかすると、海軍の巨大ロボットとか、ルフィだって食べきれないくらいのお肉だってあるかも。
なんてね。
そんな大事な物を、私たちに狙われると分かっていて、この場所に置いているはずないでしょ。
「よーし、ここは俺……が?」
「はいストップ」
早くもギア3なんて大技を出そうとしたルフィの頬を、私はゴムみたいにビヨーンと伸ばして止める。その技は小さくなる反動もあるし、ギア2ほどじゃないとはいえ、身体に負担がかかるんだからね。
「そうだ。ここは慎重に、だぞ」
チョッパーも隠れている人数が分かって怯えるように、蹄を口元に当てて し~ってする。いやもう、バレていると思うけど、そういうところが可愛いよね。
「といっても、あの歯車か?」
「ずいぶんと厳重なようね」
「こういう金庫はこいつを回してだな……」
ウソップはガサゴソと下げている鞄から、聴診器を取り出して、小型の操作盤にそれを当てた。確かに、海軍の人も定期的に開けるから、あの大きな歯車自体を毎度操作するわけにもいかないか。
「おぉ~ 聴診器ってそういうことにも使えるんだな」
「こうやって、数字を合わせていくんだ。ナミのほうが得意だろうが……よし!」
カチッという音と連動して、上の歯車の1つがグルグルと回り始めた。そして、グググと傾き始める。
「ぎゃ~~!?」
「いや、落ちてくるんか~い!?」
私は指を振るって、赤い五線譜は彼らを守るように展開する。
「ウタウタの
重い歯車を受け止めて、私たちの後方へ向かって、飛び跳ねさせてドシーンと落とす。
「「た、たすかったぁ~」」
「ははっ、ビックリ箱みたいだな!」
「こんな面倒な金庫を使ってるのか?」
「もしかして不良品かしら?」
ルフィ、ゾロ、ロビンは振り返って、一歩前へ出る。
「全員構えろ!」
そんな号令の下、ピカッってサーチライトが私たちを照らし、200人くらいの海兵があちこちから銃や剣を向けてくる。
ビックリしたウソップやチョッパーはあらかじめ知っていたとはいえ、慌てて操作盤の後ろへ隠れちゃった。
「お前たちは完全に包囲されている! 大人しく投降しろ!」
スポットライトを浴びているみたいで、なかなか気分がいいね。大海賊の娘としても、歌姫としても、こんなに目立つというのはちょっと誇らしいところがあるかも。
「お、お前ら~ 任せたぞ~」
「お、俺はウソップを護衛するぞ~」
「おい。1人あたりが増えたぞ」
「いいじゃねぇか。俺だけでもいいぞ?」
「誰が1番倒せるか競争だね♪」
「歯車が長鼻君たちへ落ちないといいけど」
撃て、という号令が続けて出されたけど。
大きく息を吸って膨らんだルフィが私たちの前へ出てくれる。ここにいる海兵さんたちを率いる隊長さん、まだちょっと指揮が甘いかな。陣形からして、ちょっと密集しすぎているし。
「ゴムゴムの風船!」
「うわ!?」「ひぃー!?」
ルフィに弾かれた銃弾は、散弾のようにあちこちへ跳ね返る。海兵さんたちは慌てて目を閉じて伏せるけど、ルフィの遠距離技のカウンターは磨かれているから。
パリーンって、サーチライトは割れたことによって、さらに大混乱だね。
ゾロは、風船状態のルフィをクッションにして跳びあがって、刀の峰打ちで吹き飛ばす。
ロビンは腕を咲かせて、剣を持ってルフィへ向かう海兵さんたちを
「いいね。楽しくなってきた♪」
ウタウタの
「ひ、怯むな!」「あ、あぶねぇぞ!」
薄暗い場所で彼らは密集している。闇雲に剣を振るうこともできなくて、ずっと単調になっているから、覇気を使わなくたって回避ができる。私はステップを踏むように、次々と斬り伏せていくけど。
「安心安全、ちょっと痛いだけの剣だよ!」
上で走り回っているゾロもそうなっていて、なんだか剣術の模擬戦みたいになっちゃってるね。剣を弾きとばしてペシンと額を叩くと、なんだか頬が赤くなっちゃうのはなんでだろ。
心なしか、ゾロを避けて、私の前へ列ができている気がするし。
「うわぁー! キリがないぞ!?」
チョッパーは大きい人型になってから、力強いパンチで海兵さんたちと戦っているけど、ウソップを守りながらというのは大変そうかな。今回は珍しく中衛にいてくれるルフィがそれに気づいて、少しジャンプしてから伸ばした腕を高速で動かし始める。
「ゴムゴムのぉ~
「腕が伸びた!?」「なんだこの拳の数は!?」
ドガドガって、1つ1つの拳が
そして。
金庫のほうは。
「へへっ、開いたぞ!!」
「「おお~!」」
ウソップの喜びの声で、私たちは戦いながら、意識を金庫のほうへ向けた。
「そ、総員退避ぃ~!」
「ひぃ~!?」「りょうかい~!?」
「ん? なんだ?」
隊長含めて、海兵さんたちは慌てて走って逃げていくから、私たちは金庫を注視する。
ゆっくりと前へ向かって落ち始めている扉で、どう見たって不良品じゃない!?
「「「ぎゃ~~~!?」」」
「やっぱりビックリ箱じゃねぇかっ!」
私や、チョッパーとウソップに、それぞれお腕を伸ばしてくれて、ぐるぐると巻いた後、ピョーンとジャンプしてくれる。
「へぶぅ!?」
ビターンと 床におでこをぶつけちゃったし、変な声が出ちゃったし、ドシーンと大きな扉が倒れた爆音は、耳がキーンってなるくらいだったし。
「うぅ、いったぁ……」
「大丈夫か?」
目の前でキョトンとしていて。私の視界は涙でゆがむし、おでこはじんじんするし、抱えられるように起こしてくれたし。
そして何よりも、私の麦わら帽子を顎紐で引っかかるように後ろへずらしてから。
よしよしって優しく頭を撫でてくれるし。
昔は泣き虫なルフィに、私がやってあげてたのに。
「ぐすっ、私のほうが2歳も年上だもん…」
「はっはっはっ! 負け惜しみってやつか?」
も~~~、ずるい! 生意気!!
好き!!
たぶんメロメロでデレデレな表情を隠したくて、ギュッとルフィの胸元へ抱き着く。今の感情に合わせて、ぴょんぴょんするようにポニーテールが跳ねてしまうから、ますます恥ずかしいや。
「さて。財宝はないな」
「あの絵はゾウ? 魚?」
「んでー、どうすんだよ」
「他の場所を探しましょうか」
ゾロたちだけで話しているのが耳に入って、惜しみながらもちょっとだけルフィから離れて、私はパタパタと手のひらで熱を冷ます。
えーと、黄金はここにはなかったし。
司令官さんに直接聞いてみるしかないのかな。
ここで戦い続けたら、いつかは親玉として出てくるとは思う。
「ご苦労」
そんなとき、わざわざ入口の扉を開けてくれて、やってきたのは。
「誰?」
「誰だ?」
「ゾロたちと捕まってたやつ」
「コンドリアーノだ」
「シェパード中佐ね」
「何しにきたんだ?」
「麦わらの諸君、私は海軍本部特別監査官、シェパード中佐だ」
ちょっと震えるような声で、なんだか怒っているみたい。
「貴様らに味あわされた数々の屈辱……!」
ルフィとウソップとゾロとロビンが、へぇーって興味なさそうに声を出した。うちの者たちが、ご迷惑をおかけしたみたいです。
覇気で探ってみても、そんなに強そうな感じはしない。なんなら海兵さんたちより弱いように思える。
「やれやれ、私が指揮をしたのに、たかが前半の海の海賊たった6人も捕まえられないとはな」
「しかし中佐、彼らを甘く見ては……」
うるさーい! って隊長さんに怒鳴っているし、イヤな上司って感じ。
話も長そうだね。
私はさっきの仕返しで頬をビヨーンビヨーンしてやっていると、ルフィは音符のように飛び跳ねるポニーテールが気になって遊んでくる。
「麦わらども! 緊張感というものがないな!?」
「「終わった?」」
腕を振るわせながら中佐さんは、部下の人に命令する。ガチャガチャと目の前で、巨大な武器か何かを組み立てている。
「「「「おぉ~」」」」
私やルフィ、それにチョッパーやウソップも、その完成品にパチパチと小さく拍手をする。
「よっこいしょぉ! これは海軍本部が開発した携帯型バズーカ砲、その名も『
重そうに、そのカッコイイ砲身をこっちへ向けてきた。
追加で説明してくれているように、海軍の主砲と同等の威力というバズーカ砲が目の前にあるってのは、海軍の科学力っていうのかな、なんか凄いね。
「よしっ、来いっ!」
ルフィが危険そうだったら、撃つ前に止めようかと思ったけど。
「望み通りに木端微塵にしてやる!」
バズーカ砲の引き金を引くと、確かにドガーンって巨大な爆音が鳴る。ただし彼らの後方で。
「「「えぇーー!?」」」
「あ、中佐、逆のようです」
「ん? あー、説明書はどこだ?」
「「「っておいっ!?」」」
開けてくれた鉄の扉はさらにボロボロで。
海兵さんたちみんなも怪我無く、なんだか楽しそう。
「でかしたぞ~ コンドリアーノ!」
「何しに来たんだ、あの野郎?」
「ロビンのやつ、遊んでやがる」
「まさしく武器に振り回されているね!」
咲いた腕によって、コンドリアーノ中佐は砲身を振り回されたり、引き金を引いてあちこち撃たされたり、私たちを捕まえるどころじゃないくらいにお祭り状態だね。
「フフ、行きましょうか」
「よーし、黄金どこだ~~!」
足の速いルフィの背中を、私たちは追いかけていく。
黄金の場所はさっぱり分からないし、こうなったら私たちの船長の運に任せるしかないかな。
「黄金……メシはどこだ~~!」
「食堂に行かないでよ!?」
あーもう、相変わらず嵐のよう。
まさか食堂にあるわけ……ないよね?