私たちはゾロたちと合流してから、ピクニックシートを敷いた場所で屋台の食べ物を食べていた。
フォクシー海賊団はデービーバックファイトを繰り返して仲間を集めているみたいで、私たちの何倍もの船員がいるみたい。仲間になった経緯はともかく、みんな楽しそうにやっているのは海賊として良いことだけどね。
でもかつての仲間を気にしていない感じなところ、あまり好きじゃないかな。
「あんたたち、よく平然としてられるわね…」
「「ん?」」
ようやくナミやウソップも喧嘩に挑む気になったみたいだけど、それはそれとして不安でいっぱいみたい。ゾロとサンジとロビンは勝つ自信に満ち溢れていて、チョッパーも立派な海賊になるべく奮起している。
「最悪の場合、3人があいつらの仲間になっちまうんだぞ。キャプテンウソップが狙われても仕方がない…」
「どうして3回なのよ… 絶対私とウタとロビンが引き抜かれるじゃない…かわいいから…」
「ゲームは多いほうが楽しいからな」
「だってみんな出れたほうが楽しいでしょ」
私やルフィは焼きそばを食べながら、いつも通り声をかける。たとえ相手が強かったとしても負けるつもりはないけど、油断さえしなければ勝てる相手だよ。
クロコダイルやエネルくらいの覇気も全く感じない。
「よく分かってるじゃねぇか」
「確かに見ているだけというのもつまらないわね」
「安心しなナミさん、俺たちは1回も落とすつもりもない」
「もちろん俺もがんばるぞ!」
そんなチョッパーは綿あめを口いっぱいにつけているけど、そんなに気に入ったのかな。
ゾロとロビンとサンジが追加で食べ物を買ってきてくれたから、ナミやウソップもやけ食いみたいに食べ始めちゃった。
「歌姫さん、ルールはどうなっているのかしら?」
「レース、球技、それと個人戦だね」
「よーし! 俺は3回とも出るぞ!」
そういうとこがルフィらしいけどさ。
「1人につき合計2回しか出られないみたい。今回のリーダーは私なんだから、個人戦は譲りなさいよ」
「そうか。ならそれは任せる」
「俺は2回出せよ」
「俺も頼むぜ、ウタちゃん」
レースは人数無制限だけど、確実に勝つために球技はロビンさんも入れておきたかったけど、この3人がやる気満々だから任せるとしますか。
「ならレースは全員参加、球技は3人で行こうか」
「足引っ張るなよ、クソコック」
「ああん? てめぇこそ球技わかってるのか?」
「キューギってなんだ?」
うんうん、息ぴったり。
喧嘩するほど仲がいいチームだね。
「あの3人が組むのか、すげぇ!」
「おいナミ、レースで絶対1回勝っておくぞ」
「ええ。あいつらに任せておけないわ」
「そろそろルール説明が始まるみたいよ」
私たち全員で、レースのルール説明を受ける。
タルを3つ、オール2本、それとロープだけで船を手作りする。海上レースで島の周囲をぐるりと1周して、先着したメンバーがいた海賊団の勝利ということかな。
向こうがルールは決めてきたわけだけど、意外に公平性はあるね。ただし能力者が8人中4人もいる以上、海上というのは私たちが不利になる。しかも相手に魚人の船員も見かけたし。
「樽が3つでは4人乗りボートは無理そうね」
「なら3組になりそうか」
「だけど俺たちは泳げないから」
「じゃあ私とルフィで組むね! だって私は海に落ちない海賊だし!」
「俺だって海に落ちないぞ! しかもいつか泳げるようになる男だ!」
「あいつら何度も溺れているでしょ... こうなったら、ウソップとサンジ君、私たちで1チームは確実に勝つわよ!」
「は~い! ナミさ~ん!」
「そ、そうだな。1隻でもゴールすればいいわけだ」
つまり私とルフィ、ゾロとロビンとチョッパー、ナミとサンジとウソップで、合計3組の出場だね。船作りって点でもこの分け方は良かったかも。
ルフィが樽をバラバラにしたパーツを、2人で一緒に組み立て直す。材料も足りなくて、帆がないから全く海賊船っぽくはならないけど、ボートの形にはなるかな。
早めに完成してから私とルフィは食べながら待っていたけど、スタート地点にたくさんの船が並ぶ。
「ちょっと、その魚はいいの!?」
「いやん、立派な仲間よ?」
ウソップが主導で作った船は十分立派だけど、本職の船大工が作ってサメで引っ張る船は完成度としては1番高い気がする。
「ねぇ、あいつらのあれは何?」
「樽そのものだな」
「漂流した流木じゃねぇか?」
「ずっとそれ転がしていくのか?」
「ああ。本で読んだ船なんだ」
「接続部にとても不安が残るわね」
ゴロゴロと転がる樽を動力にして、チョッパーたちの船がやってくる。私とルフィの船だって海にプカプカしていて、2人で立っていても全く沈没しないくらいすごいよ。
巨大なタル3つで作った船まで作ってきて、向こうは数も多いね。でも私たちの船をバカにするのも、今のうちだから。
「私たちで勝つわよ!」
「その通りだぜ、ナミさん!」
「どれだけオールで漕ぐことになるか…」
「いやん、私たちに勝つつもりみたいよ」
「海で俺たちに勝つ気かい?」
「シャー!」
「さあ、位置について、レディー!」
バンッと銃声が鳴った。
「よし、作戦通り行くよ!」
「あいあいさー!」
私はムジカちゃんの腕を呼び出した。
「「「えええ~っ!!」」」
って実況や周りが目を驚くのが面白いね。
私とルフィは船をしっかりと握り込む。
「ウタウタのぉ~! ロケット!」
ムジカちゃんは私たちの船を投げてくれて、サーフボードが空へ浮き上がるように前へ進んでいく。本来この速度で海に落ちれば、船に大きなダメージがあるけど。
「そろそろ!」
「おう! ゴムゴムの風船!」
ふわりと海面に、バシャンと音を立てて乗る。
できる限り丈夫に作っておいてよかった。
後方を見れば、サメの船や、ナミたちが追ってきている。
さらに遠くでは、ゾロがオールを上手く使って相手の樽爆弾を吹き飛ばしていて、レース開始直後からハチャメチャだね。
海賊だから相手からの妨害はあると思っていたけど、正々堂々とレースってわけじゃなさそうだね。
「何度もやると船が壊れちゃうから一旦漕ぐよ」
「はっはっは! 俺たちが1番乗りだ!」
でも実況が言っているように、しっかりと追ってきているみたいだね。それに攻撃体勢に入っている。
「攻撃が来るよ!」
「見せてあげて、魚人空手を」
「海面割り!」
「なんだ!? 水が迫ってくるぞ!?」
海面を叩いた衝撃波が飛んできている。
海上で急な回避をするには。
「ウタウタの
すぐにルフィは理解してくれて、片腕で船を掴んでから。
「ゴムゴムの
私が創った五線譜を叩いた反動で、船は横方向に飛んで回避する。
「いやん! がんばって追いついて!」
「シャー!」
「腕が生えてきた!?」
後方にはウソップやロビンもいるから、海上での妨害なんて余裕だよね。私たちを追いかけてくる船はどんどん遠ざかっていく。
しかもゾロなんて。
「一刀流 三十六煩悩鳳!」
飛ぶ斬撃で他の船を粉々にしちゃっている。
その興奮もあってチョッパーの動きも速くなっているみたいだね。ナミやサンジが妨害に対してしっかり指示してくれて、3位と4位で追ってきてくれているし。
「良いこと考えた! ゴムゴムのスクリュー!」
ねじねじと腕を動かして、ルフィが船の動力になってくれる。にしても思ったより距離が遠くて、まだムジカちゃんに飛ばしてもらうには早いね。
前方へ見えてきたのは大きなサンゴ礁で、その中で海流がグルグルと渦巻いている。ナミなら余裕で越えられるだろうけど、私たちにとっては最後の関門になりそうだね。
「フェ~ フェッフェッフェ!」
あのキツネのおじさん、しかも矢で煙幕を打ち込んできた。出場者以外から妨害してくるなんてとても海賊らしいね。
モクモクとする中、海水に腕をつけていたルフィは限界でフニャフニャなっているし。
そうだ。
煙幕なら外から見えないじゃん。
私はサンゴ礁に降りてから、ルフィと船を掴んでフワフワと風の歌で浮く。
「やった!」
そうして、あたかもサンゴ礁を抜けたように見せた。
「あれ、いつの間に!?」
「運が良かったのかな。さっ、進もう」
このレースに審判がいるか知らないけど、実況が気づいてないなら大丈夫そう。その間にルフィも復活したから、これでいつでもムジカちゃんでゴールできるね。
キツネおじさんの妨害は止まらず、途中で看板に騙されたり、おばあちゃんのコスプレで一度止まっちゃったり、偽物のゴールでぬか喜びしたり、そうしていると遠くへ本物のゴールが見えてきた。
それでも諦めず、追ってきているということは何かがあるということ。
「ノロノロビーム!」
「「ビーム!?」」
謎の光線を受けて、私たちは大体30秒くらい動きがゆっくりになったのかな。思考はそのままでキツネの高笑いを見させられたけど、たぶん悪魔の実の能力者だろうね。
「よし、戻ったぞ! 今のうちだ!」
「ウタウタのロケット!」
ムジカちゃんが投げてくれた船は、ゴムゴムの風船をしてくれたとしても、海に落ちた頃にもうボロボロだけど。
「あっ! お前ら! もう1発くらっていけ!」
「ぷぷっ、奥の手を見せちまったな、お頭」
実況がゴールって言ってくれているから。
今度こそ。
「私たちの!」
「勝ちだ~~!」
お祭りムードだからか、敵の海賊なのに賞賛の声がする。もし船員や旗を賭けにしないなら、競い合って心の底から楽しめるものだったかもね。
待ってる間、もう妨害しないようにキツネおじさんをポコポコと殴っていたら。
続いてナミやサンジやウソップの船、ゾロとチョッパーとロビンの船も無事にゴールした。
ナミやウソップはまず1勝したことに号泣していて、チョッパーも1人の海賊として頑張ったからゾロに抱き着いて号泣しているね。
「もう急造船で航海するのはこりごりだわ…」
「か、勝てたぞ~ 腕がしぬぅ~」
「俺もがんばったよな! なっ!」
「ああ。お前は俺たちの樽船で船長だったぞ」
「フフ、大番狂わせの結果ね」
「よく考えてみれば、あの2人が組めば最強か」
そうして今回の賞品として、私たちはトンジットさんの馬であるシェリーを、まずは取り返すことができたんだ。『ありがとう』と頭を下げている1人と1匹が離れ離れになることがなくてよかった。
「それにしてもお疲れさま! みんなでゴールできたね!」
「よーし、お前ら! 屋台の食べ物で宴だ!」
「食ってる場合か!」
「あんたらは2回戦の準備しなさい!」
こんな仲間や友達を賭ける喧嘩、あと2回とも圧勝してやろうね。