ふとナミが思いついたように、もし2回戦や3回戦のメンバーを取っていれば、確かに優位になったね。まあキツネおじさんを仲間にすることは全員反対だから、私たちの場合は3回戦まで確実にやることになるけど。
どちらにせよ、3回戦のうち1回も落とす気がないと私が決めたし。負けず嫌いが3人も組むんだから2回戦も勝ってくれると思うし。
「なんで浮き輪が2つあるんだ? ボールは避ければいいのか?」
「いいルフィ、あっちの浮き輪に、相手のボールを入れたらゴールなの」
みんな球技をやったことがなくて、私たちもガープさんの砲弾避けサバイバルしかやったことないから、ルフィにルールを分かりやすく丁寧に説明していく。
そのまとめに、私は顔の前で人差し指を立てる。
「じゃあ、これが1番大事なこと。このボールは絶対取られちゃダメ」
「おう。それはよく分かった!」
ルフィの麦わら帽子の上へボールを乗せて、あご紐で固定してあげる。ルフィが1番取られないように警戒心があるからね。ボールを取られるってことは、帽子ごと狙われることになっちゃうから。
よし、できた。
ふぅ、顔が近くてドキドキした。
サンジやゾロも準備万端っぽいかな。
「敵からボールぶんどって、あっちの浮き輪に入れればいいんだな」
「それは俺たちのゴールだ! お前は自陣と敵陣のゴールを間違えるなよ!?」
仲良くルール確認をしているから大丈夫そうだね。
「不安だ」「不安だわ」
「不安ね」「不安しかない」
慎重派なナミたちはまだ不安っぽいから、監督として最後に何か言っておいたほうがいいかな。
「ルフィはボールと帽子を取られないこと!
ゾロは前だけ見て戦っていいよ。
サンジは私たちが応援してるからね!」
「なんだ簡単じゃねぇか」
「俺は好きにやっていいんだな」
「黄色い声援があれば余裕だ~!」
そう言って、準備運動のために3人で軽く戦い始めたから元気いっぱいだね。『あの3人をまとめるなんて』って聴こえたけど、ふふーん、ナミたちはもっと私を褒めていいよ。
フォクシー海賊団は船長含めてルフィたちの動きにビビっていても、その中から出てきた3人はそうでもないね。秘策でもあるのか、まだ競技の範囲なら勝てるとでも思っているのか。
「ほ~ でっけぇ~」
「少しは歯ごたえがあるといいが」
「あれもクソデカいだけだな」
魚人と巨人のハーフの人は見上げるほど背が高くて、その頭にボールを乗せていた。ルフィはワクワクしているけど、今までの強敵たちと比べれば、ゾロやサンジはちょっとやる気が出てないみたい。
こうなったらって。
私はナミやロビンを連れてメリー号に少し戻る。
そして。
「フレー! フレー!」
応援する時にこの服がいいって言われて、向こうの海賊団に渡されたからね。女子3人で同じ服を着るというのも新鮮でいいね。赤いスカートはフリフリだし、ピンクのポンポンまでかわいいし。
「なに、これ…?」
「球技の応援団が着る服のようね」
ほら、ナミやロビンもちゃんと応援しないと。
「ナミさんウタちゃんロビンちゃん~!」
「やっぱり、あいつ何着ても似合うな~」
「ほらルフィ、お前も手を振ってやれよ」
でもこういう姿をまじまじとルフィに見られるのはちょっとドキドキするかも。
「ルフィー! ゾロ―! サンジー! 頼んだぞー!」
「どんな妨害を考えているか分からないぞ! 油断するなよ!」
チョッパーとウソップの応援も受けながら、フィールドに3人が立った。審判に従って、ボールやコートを選んでいるけど、『何でもいいから早く始めろ』って感じだね。
「なあ! 俺はここで立てばいいのか?」
「ぷぷっ、そこにずっと立ってていいぞ」
「こいつ、緊張感の欠片もないな」
「んあー」
「俺があの大きいのをやる!」
「刀1本もない剣士は下がってろ!」
球技のルールで武器は使えないから、ゾロは私たちへ預けている。それを冷やかしたサンジとゾロは喧嘩していて、ルフィは相手チームとおしゃべりしていて、みんな緊張とは無縁だね。
「ルフィ! 線の中ならどこでも逃げていいから、帽子とボール、絶対取られちゃダメだからね!」
「サンジ君! ゾロ! あんたら協力してボールを入れるのよ!」
「おーう」
「俺1人でもいいぞ」「ああん?」
実況がそろそろ試合の開始しそうなことを宣言した直後、すかさず審判の笛がピーって鳴った。
相手チームはその段取りで決めていたらしく、1番早く動いたのは。
「スリングタックル!」
「おい! いきなりなんだ!」
すぐに大男がまるで投石のようなタックルをして、文句を言いながらルフィはするりと回避する。やっぱりルフィったら球技の試合運びをまだよく分かっていないみたい。
ていうか、あの肩のシールドって武器に属するんじゃないかな。
「ぷぷっ、ボールくれたらお菓子あげようか」
「ウタが渡すなって言ってたからな。そう簡単に取られてたまるか!」
ルフィは腕を伸ばしてもう1人の大男の両肩を使って、ゾロやサンジと前衛を交代した。ルフィが逃げ回っていれば、ボールを取られる心配もないね。
それに、いくら巨大魚人のヌメヌメな特性や、ルールで振り回されていても、2人なら十分に戦えている。ただ有効打がなくて、相手のボールを取るのは苦戦しているみたい。
しかも。
「なっ!?」
「靴の裏に刃物だと!?」
ゾロとサンジは追いかけられる。
確かに地面に大きな穴が開いている。
「ちょっと審判!」
「あれ武器に属するだろ!」
「いや靴ですが何か」
「あっちはどう見ても斧だろコノヤロー!」
「もし剣士さんに刀を渡したら反則になるのでしょうね」
ナミやウソップやチョッパーが審判へ抗議しているけど、全く取り合う様子はない。ゾロには武器を禁止しておいて、相手は思いっきり斧をぶんぶん振っているし。
「試合時間がない以上、これは勝負がつくまで続くのかしら」
「サンジ君! ボール取ってさっさと勝っちゃって!」
「ルフィもゾロもファイト~!」
ナミや私に合わせて、ロビンもポンポンをフリフリして応援してくれる。サンジは一度立ち止まってこっちを見ちゃったけど危ないよ。
「は~い!勝ちま~す!」
「どうだ、これでゴールってやつか!」
「ルフィ、お前のボールじゃないぞ」
ルフィがしゃがんで頭を下げて、ボールを相手の浮き輪に入れてみている。でもゾロの言う通り、そうじゃないからね。
実況や周囲が驚いているように、ルフィはいつの間にか敵陣へ入っていた。狙うべきはルフィなのに、ゾロやサンジだけでも、武器を持った3人が圧倒されているってことだね。
たとえどれだけ海賊として武器を集めたとしても、ルフィたちは実力で跳ね返しちゃうよ。
「なんだ、あのデカいやつの頭のボールか。お前ら、他のやつらは任せたぞ」
「ああ。そろそろ飽きてきたところだ」
「剣を持ったやつは俺がやる。ちょうどいいハンデだ」
ゾロとサンジがそれぞれの標的に向けて動き始める。いざとなれば協力して強敵相手に戦うだろうけど、今は各個撃破で十分だね。ルフィはニヤリと笑って指を噛んだ。
「ギア3! 骨風船!」
空気を含んだ腕はまるで巨人のように大きくなって、一度身体を通してから、右腕に集約される。みんな目が飛び出るくらい驚いているのが、知っている身としては面白いね。
キツネのおじさんも能力を使う指が震えている。
邪魔するようならお仕置きするつもりだったけど。
「遅すぎてあくびが出るぜ
アンチマナーキックコース!」
大男のメイスも全く意に介さず。
カウンターキックで打ち上げた。
「無刀流 龍巻き!
曲芸で剣士を相手にできると思うな」
2本の剣を大振りする男に対して。
斬撃のような回転で打ち返した。
「ようはお前をぶっ飛ばせばゴールだろ!
ゴムゴムの
たとえ巨大でヌメヌメしていても。
そのパンチで巨大魚人をぶっ飛ばした。
そして、その巨体は浮き輪を突き抜けていく。
一方的な反則行為すら乗り越えたゴールと同時に、審判はホイッスルを鳴らすしかなかった。なぜならフォクシー海賊団の選手全員が気絶しているから。
相手を気絶させた時点で試合は続行不可能だよね。
やっぱり球技の中でも簡単だった。
「ウタ、勝ったぞ~!」
ギア3の反動で飛んでくる小さなルフィをキャッチすると、やっぱり赤ちゃんサイズでかわいいな。私の腕の中で、キャッキャッと小さな手のひらを振っている。
「うん、えらいよルフィ!」
ルールはよく分からなくても『必ず勝つ』ってずっと本気だったの、仲間が奪われないように守ってくれるためだと嬉しいな。
「あいつら、やっぱり凄いな~ いつか俺もあれくらい強くなりてぇ!」
「よーし、お前たちよくやったぞ! さすがはこのキャプテンウソップの戦闘員だ!」
「フフッ、彼ら3人の相手は力不足だったようね」
「ほら、あんたら喧嘩してないで戻ってきなさい」
チョッパーやウソップやロビンも褒めたたえてくれた。でもゾロやサンジはまだ戦い足りないみたいで仲良く喧嘩していて、ナミが呼び戻している。
ルフィたちへのご褒美に『屋台のもの食べ放題』でも貰おうっと。次の3回戦は個人戦だから、みんなには食べながら気軽に見てほしいし。
「次は私の出番だね」
「ウタもがんばれよ!」
フォクシー海賊団船長はテクニックタイプだけど、一体どんな策を仕掛けてくるのかな。