麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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第82話 麦わらの一味③

 

 キツネおじさんは最終戦のコンバットの準備があるとかで、どこかに行っちゃったけど。

 

 1回戦と2回戦の盛り上がりが続いたまま、島はお祭りムードだった。

 

「おい! 追加持ってこい!」

「麦わらのやつ、どれだけ食べるんだ!?」

 

 海軍要塞を出てあまり食べていなかったから、サンジも手伝って作った焼きそばを、ルフィはまるで水を飲むかのように食べていて。

 トンジットさんやシェリーも失った時間を取り戻すように食べ歩きをしていて。

 

「いやん、チョッパーちゃんかわいいわ」

「さっきのチア姿よかったわ」

 

 私やチョッパーは綿あめやお菓子が気に入っちゃったから女子会に混じってて。

 

「こっちは酒が足りないぞ!」

「あの女もなんて飲みっぷりだ!?」

 

 ゾロとナミは大柄な人たちと一緒にお酒を飲みながら空島の冒険の話をしていて。

 

 2人の巨人が海を割った経験とかを興奮して語るウソップや、魚人やサメたちの故郷について聞いているロビンも、食べながら話し相手に囲まれているね。巨人や魚人のハーフの人なんて、ルフィと同じくらい食べている。

 

 完全にピースメインってわけじゃないけど、海賊とのデービーバックファイトや商人との取引を通して、船員や物資をどんどん確保してきたみたい。もしこの海で商売でも始めようものなら、かなり良い稼ぎができるんじゃないかな。

 

「あ、あのー、そろそろいいでしょうか~?」

 

「「「「あ、忘れてた」」」」

「元気出しておやびん」

「ぷぷっ、相変わらずの扱いだな」

 

 デービーバックファイトで仲間になったとはいえ、なんだかんだこれだけの船員が付いてきているのは、親しみやすい船長だからなんだろう。

 いざというときの団結力はなさそうだけど、仕事仲間って感じで上手くやってそうだね。

 

「俺を置いて宴を始めやがって、お前ら遠慮ってものを知らねぇのか!」

 

「いいじゃねぇか! 海賊は歌って踊るんだぞ!」

 

 ぷんすかルフィと喧嘩しているけど、楽しい海賊団だね。

 

「そろそろ3回戦始めよっか」

 

「おう、付いてきな、嬢ちゃん」

 

 それでも、決着はつけないといけない。

 

 デービーバックファイトで選んで引き抜いていたら、じゃあ残された船員はどうなるのって話だもん。そんなの寂しいじゃん。

 

 実況が誘導してくれたから、みんなポップコーンやコーラを持って急造の観客席へ移動していく。

 

 大砲が決めた場所がバトルフィールドなんだけど、元々フォクシー海賊団の海賊船が選ばれた。そういう想定で改造されていたから、さっきの準備も含めて予定通りなんだろう。

 

 船内の控室に案内されながら、詳しいルールの説明を受ける。

 範囲内にあるものならどんな武器も使っていいみたい。勝敗は参ったって言うか、気絶した時点で負け。あと私もキツネおじさんも能力者だから、船から落ちた時点で負けが確定する。

 

 控室の衣装部屋にはアフロとか、モフモフコートとか、気になるのはいっぱいあるけど。

 

「うん、ブカブカだね」

 

 私はいつもの服に男性用の黒いコートを羽織ってから、リボンのついた麦わら帽子を被った。

 

 まだまだ私には似合わないと思うけど、験担ぎになる気がしたから。

 

「ほう、なかなか海賊らしい(よそお)いじゃないか」

「ありがと。カッコいいかな?」

 

 グローブを着用するのは気が進まないな。

 着替えてきたキツネおじさんと船首で相対する。

 

「嬢ちゃん、降参してもいいんだぞ。俺はこのルールにおいて無敗だからな」

 

 キツネおじさんも身に着けていた宝石やアクセサリーは外して、シュッシュッと拳を振っている。上半身は裸だから筋肉が見えるけど、意外にも鍛えているみたい。

 

「そんなの諦める理由にはならないよ。私も負けず嫌いだから」

 

 それに、海へ落ちないよう長いロープを巻いているのも準備万端みたいだね。いつでも取り外せるようにしていて、ここは完全に相手のホームってことか。他にもいろいろな準備をしていそう。

 

「コンバット? ボクシング? 盛り上がっているところ悪いけど、私は海賊として戦うよ」

 

 シャンクスの娘として、海賊のゲームで負けるわけにはいかない。

 

「フェ~ フェフェフェ、ならお手並み拝見といこうか、女海賊!」

 

 目の前の海賊に集中していると。

 

 カーンって急にゴングが鳴る。

 その前から行動を起こしていたね。

 

「行くぜ! ノロノロビーム!」

 

 いつ始まってもおかしくなかったから、見聞色の覇気で読み取っていてよかった。私は横にジャンプしながら指先を向ける。

 

「ウタウタの(ピストル)!」

 

「なっ!? なぜ動けねぇ!」

 

 音の速さで音符に込めたのは、休符の記号。

 継続時間は短いけど似たようなことはできるよ。

 

 次の歌で身体能力を上げながら、私はボクシンググローブの中で拳を握り込む。

 

「ウタウタパーンチ!」

 

「ぶへぇ!?」

 

 私のパンチでは大したダメージにならないけど、海へ向かって吹き飛んでいく。

 

「あぶねぇ!」

 

 早速ロープが巻き取られて、甲板に向かってドシンと背中から降り立った。

 キツネおじさんは開始直後のノロノロビームで、私を海に落とそうとしていたけど、別の作戦に切り替えたみたいだね。

 

「ウタウタの実の能力者、何を仕掛けてくるか分からねぇ」

 

「船内に逃げるつもり?」

 

 船に仕掛けられた矢を飛ばしてきた。

 ノロノロの能力を武器にも応用してきたんだ。

 

 通常スピードの矢と、30秒後に急加速する矢、でもどっちも直線移動であることは変わらないから、五線譜の盾で防ぎきる。

 

「うわっ、すごい量!」

 

 私も甲板へ踏み込めば、見聞色の覇気で対応できないほどの砲弾が巻き散らされていて、今は逃げ回るしかない。船が次々と壊れていくから、必ず攻め込むタイミングはあるはず。

 

「ちっ、逃げ足が速いやつだ!」

 

「それはお互い様!」

 

 覇気で位置は分かるけど、まるでスナイパーのように移動している。ノロノロにした砲弾を踏みながら移動しているから、能力も使いこなしているみたい。

 

「ちっ、慎重なやつの相手はやりづれぇ!」

 

 一度船内へ戻っていったけど、必要以上にこちらから追うのは危険かな。

 

 追ってこない様子を見せたから。

 今度は甲板に出れる隠し扉から出てくる。

 

 普段なら五線譜で剣やハンマーを作るんだけど。

 

「グローブって戦いづらいね! っ!?」

 

「防げると思ったか? グローブを変えてきたぞ!」

 

 とげとげグローブが少しグローブを貫通しちゃって、チクチクと刺された痛みがした。すぐさま甲板の床と平行にノロノロビームを撒いてくるから、私は急いで腕を引っ込める。

 

 逃げる場所として隠し扉の中へ入ったけど。

 

「って、ここ滑り台みたいにされてるじゃん!」

 

「フェ~、フェフェフェ! 油断大敵だな!」

 

 ツルツル滑っていった先に明るい場所が見えて、相手の作戦通りなら海に向かって落ちるところだ。

 

「これで勝ったと思った?」

 

「なっ!?」

 

 私は風の歌で浮いてから甲板へ戻る。

 

「ちぃ! そうだった! あいつは飛べるんだ!」

 

 私の能力は1回戦で見せている。たぶんムジカちゃんによる遠距離攻撃を恐れてか、キツネおじさんはすぐに船内へ再び逃げていく。

 

 動揺している今がチャンスと思って追っていった先には、いくらか壁に鏡があって。

 

 まさかノロノロビームって。

 

「お前の身体能力はそれほど高くないと見た!」

 

「くっ」

 

 しまった、1発ノロノロビームを受けた。

 

「チャンスだ! 九尾ラッシュ!」

 

「ぁぐ……」

 

 距離が離れていたから、10発くらいのパンチで済んだけど、とげとげグローブが刺さった場所の痛みを一気に感じる。ノロノロ解除のタイミングで痛みも同時に来るんだ。

 

「ノロノロビームソード!」

 

「一旦離れなきゃ!」

 

 血が出ている身体に鞭を打って甲板へ出ると、ルフィたちが心配する声が聴こえた。

 しかも態勢を立て直す前に、私は足にノロノロビームを受けてしまった。動かないのは足だけだから、なんとか腕で防げるけど。

 

「九尾ラッシュ! ラッシュ! ラッシュ!」

 

 30秒の攻撃を腕やグローブで耐えて。

 

 私はパンチに合わせて衝撃で吹き飛ぶように距離を取った。私はあまり近接戦闘が得意じゃないから、防ぎきれなかった傷はたくさんある。

 

「ハァハァハァ どれだけタフなんだ… 殴るのも楽じゃねぇのに」

 

「ここで負けたら… 仲間を奪われるんでしょ……」

 

 そんなの。

 もうイヤだ。

 

「ならこれでとどめだ!」

 

「なっ! 自爆戦術!」

 

 ドガーンと甲板の下が爆発した。

 

 『ウターーー!』ってルフィの悲鳴が聞こえた。

 そんな諦めが早い女じゃないっての。

 

「げほっ...」

 

 黒いコートがいくらか爆発のダメージを防いでくれたのかな。でもキツネおじさんも受けたとはいえ、私よりは元気そう。

 

「まだ…立ち上がりやがるか……」

 

「私たち… 麦わらの一味は… 諦めの悪さで有名だよ……」

 

 観客みんなが応援してくれている。

 

「俺は銀ギツネのフォクシー! あいつらの船長として負けられねぇんだ!」

 

「私だって未来の海賊王の船員だからね。絶対に勝つつもりでここに立ってる」

 

 私とフォクシーのどっちが味方か敵とか関係なくて、お互いの頑張りに歓声を上げてくれている。たとえ大事な船員を賭けるものじゃなくても、十分ワクワクするゲームじゃん。

 

 でも、今のデービーバックファイトは認められない。

 

もう誰も奪わせないって、決めたから!

 

 ステージと相手の能力は把握できた。

 フォクシーのやつも疲れてきている。

 

 満を持して私はムジカちゃんを呼び出す。

 

「出やがったな、化け物!」

 

 フォクシーには1度見せてしまっていたから、とても警戒していたと思う。だからノロノロビームをすぐに私へ撃ってくることになる。

 今の私では回避する余裕がないけど。

 

 だけどおじさんが分かっていないのは、ムジカちゃんにも意思があるということ。たとえ指示していなくてもその策を発動してくれた。

 

「な! ノロノロビームが跳ね返~て~!」

 

 鏡を1つ取り込ませていた。

 

 あの鏡があった部屋では自分にも撃たないようにしていたから、いくらか動きも悪くなっていて、自分自身にも能力が効くとは思っていたよ。

 

 そして、私が受けたのと、おじさんでは、ノロノロが解けるタイムラグがあって。

 

「3秒もある!」

 

 私は久しぶりにギア2を発動させて。

 身体能力を最大限に上げるけど、やっぱり心臓がドクドクと張り詰めるように痛い。

 

「ウタウタのJETダブルパーンチ!」

 

「や、やめろぉぉーー!」

 

 思い描いた技とは全く足りないリーチを補うために、身体全身で押し込むように。

 両腕のボクシンググローブでフォクシーをドーンと突き飛ばした。

 

「へっ、いいパンチだったぜ...」

 

「うちの船長の見よう見まねだけどね」

 

 そしてドボンと海へ落ちたことで。

 『勝者、麦わらのウタ!!』って実況の声が聞こえたけど。

 

 フォクシーを助けるべく船員が次々と海へ飛び込む姿とか。

 

「ウタ! ケガは大丈夫か!」

 

 慌ててルフィたちが駆けつけてくれることが何よりも嬉しい。

 

「私たちの勝ちだよ、ルフィ!」

 

 

 

 

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