私がチョッパーに治療してもらっているうちに、フォクシー海賊団の片付けがどんどん進んでいるみたい。
3回とも負けたことを気にしている様子もなくて、良いものが見れたってどこか満足そうだね。
「包帯は巻いたからあまり腕は動かすなよ」
「わかったよ、ドクターチョッパー」
そう言ったら、小さな身体をくねくねさせて喜ぶところが可愛いんだから。
「やっぱりウタも、ルフィやゾロやサンジも強かったな! いつか俺ももっと役に立てる男になりたい!」
「んー、私たちの船医はチョッパーしかいないし、空島でも神官を1人で倒したんでしょ。もっと自信を持っていいと思うよ」
そっか、ってどこかホッとした様子を見せた。
アラバスタで七武海クロコダイル率いるバロックワークスと大喧嘩をして。
空島で見聞色の覇気使いのオンパレードだったり、ルフィ以外には無敵とも思える雷人間だったり。
細かく語ればもっとたくさんの人と喧嘩してきた。
ルフィとゾロとサンジは未熟な覇気を完全習得に向けて鍛えつつ、自分たちの技を磨いていて。
あまり戦いを好まないナミやウソップやチョッパーも知識を活かして武器を作っているみたいで。
私やロビンも、いつか自分たちのせいで訪れるだろう荒波を乗り越えるために、能力の応用を模索し続けているけど。
命をかけた激戦ばかりだったから、私たちは知らず知らずのうちに、みんなそれぞれ強くならないとって焦り始めているのかもしれない。
「私のお父さんたちも海賊を楽しんでいたら、いつの間にか大海賊になっていたんだと思うよ」
「へぇ、ウタのお父さん、どんなすげぇやつなんだろ」
綺麗に畳んでひざ掛けにしているけど。
あとでこのコートは縫わなきゃね。
あれこれチョッパーがつぶやく言葉から察するに、さぞ聡明な音楽家でも想像しているのかな。まさか飲んだくれで、世界一の大剣豪で四皇とは思わないだろうね。
立派になってルフィと一緒に会いに行くって約束したけど、まだまだかかりそうかな。
「俺の無敗伝説に泥を塗りやがったんだ!
お前の女とリベンジマッチさせろ!」
「お前こそよくもウタにケガさせたな!
次は俺が相手になってやろうか!」
ルフィとフォクシーのやつ、意外と仲良しみたい。シェリーの件やデービーバックファイトの賭けさえなかったら、友達になっていたかもね。
ていうか、周りが私を見てニヤニヤしてくるから恥ずかしいんだけど。
「はいはい、おやびん落ち着いて」
「ねぇルフィ、そろそろ出航しようよ」
私やポルチェが止めに近づいたら、2人は『ふん!』って腕を組んでそっぽ向いた。息ぴったりじゃん。
先に口を開いたのは。
「ちっ、取り引きだ。どの船員でも俺でも持っていけ」
その『まさか俺かも?』みたいな表情、やめなよ。
ナミたちのほうを見てみると全力で首を振ってる。
「今回はウタがリーダーだったからな。任せるぞ」
「うん。3つ目は最初から決めてたよ。海賊旗をもらうね」
「「「「な~に~~!」」」」
「まさか俺たちの誇りを奪おうというのか!」
フォクシー海賊団が新しく生まれ変わるって意味で、旗を変えちゃおうかなって思っていた。
仲間を賭けるようなデービーバックファイトをやめさせることはできないだろうけど、そういったゲームを挑みづらくすればいいじゃんって。
「そうだよ。だから帆は新しく描きかえるね。みんなでもっとかわいくしようよ」
「か……かわいく……?」
ポルチェたち女子と一緒にデザインを決めて、元々の海賊マークをデフォルメしたのを描いていく。男子たちも暇なのか落書きしているし、どんどんカラフルになっていった。
ルフィが書いた『き つ ね』の文字で完成だね。
「最悪だ……」
フォクシーは膝をついたけど。
「いやん、とってもかわいいわよ」
「ぷぷっ、俺たちらしいかもな」
船長のフォクシーを支えてくれる船員たちは何百人もいて、夢も思想もバラバラだけど、なんだかんだまとまっている。楽しく海賊をやりたい人が集まっているんだよね。
そんな仲間たちを守る手段としてデービーバックファイトをしているのかどうかはわからないけど。
「船員を増やしたいなら、もうデービーバックファイトに頼らなくていいんじゃない?」
「だが...俺が無敗だから付いてきたやつもいるはずだ」
それなら私に負けた時点で、あんなに海へ飛び込まないと思う。ポルチェたちは小柄な船長の腕をひっぱり上げて立たせる。
「おやびんはおやびんだから。私たちを守るために頑張ってくれてるわよ」
「ぷぷっ、別に船長が強いから付いていってるわけじゃないからな」
これだけ楽しい海賊団ならどんどん仲間は増えると思う。もし引き抜いた船員の仲間たちも呼ぶことができたなら、それこそ連合海賊団になるじゃん。以前会ったクリークくらい規模が大きくなっていきそう。
「おまえ"ら"~~」
もうフォクシーのやつ、泣き虫だから大泣きじゃん。
しししってルフィもニコニコしている。
「俺はそんなにお前好きじゃないけど、屋台のメシは美味かったし、ゲームも楽しかったからな。またいつか宴をしよう」
「けっ、お前なんかに泣き顔見せてられねぇな」
ルフィがそう言うと、フォクシーはごしごしと袖で涙を拭いた。そしてまたキツネっぽい笑いを見せる。
「フェ~ フェッフェッフェッ!」
次はどんな手を使ってでも勝つってことかな。
「覚えておけよ、麦わらども!
お前らさっさと出航の準備だ!」
「「「へーい!」」」
あれだけの人数がいても厳しい感じは全くなくて、自由な雰囲気で楽しんでいる海賊団に会えたのは嬉しいね。私たちがフーシャ村を出てから、あんな愉快な海賊団にはまだ出会えてなかった気がする。
「ねぇルフィ、気づいてる?」
「ああ。分かりやすいやつだな」
新しくなった帆を掲げる船に向かっていくフォクシーの足取り、まるでスキップでもするくらいに軽いものだね。
それを見届けて、私たちも仲間のところに戻ろうとするけど。
「おーい、お前らが無事でよかった!」
「ヒヒーン」
トンジットさんとシェリーの声だ。
「あの人数の海賊たちと戦って無事に済むとは...何から何までありがとう」
「おいおい、まだ村まで送ってないだろ」
「そうそう! お礼はその時に取っておいてよ」
「あんたらまた勝手に」
「まあまあナミさん、人助けのようだ」
事情を聞きたそうなナミたちに説明するけど、やれやれと承諾してくれた。
たとえ地図がなくても、ロングリングロングランドの10個の島、その全体的な周囲を1周すればそのうち見つかるからって。
えーと、10個の島を頭に思い浮かべて。
「骨付き肉みたいなものか?」
「私はドーナツ食べたくなってきた」
「それって美味いのか!」
「はいはい、とりあえずおじいちゃんの荷物を持って船に戻りましょう」
そう言ってテントに一度戻るけど。
グラグラと地面が揺れていて、大きな音が聞こえる。
「な、なんだ!?」
「周囲に海底火山なんてないはず!」
「何かがこちらへ掘り進めているみたいね」
「おい! 何か出てくるぞ!」
「「「「モグラ?」」」」
「モーグラだ!」
地面から出てきたのは首が細長いモグラで、この島特有の生き物かな。
さっき声を発したのはモーグラのヘルメットの中にいた人で、チャンピオンベルトを腰に巻いた少年が姿を見せた。
そしてどこか似ていて。
「おめぇらこそ何者だ。ここは俺の爺ちゃんの家で...」
「おぉ...」
感極まったトンジットさんが駆け寄って、2人は涙を流しながら抱擁を交わす。
定期的にテントへ干し肉や乾パンを運んでいてくれて、やっぱり忘れられてなんかいなかった。たとえ10年離れていても家族なんだ。
私は隣にいるルフィへ体を寄せる。
「よかったね」
「爺さんも寂しくなくなるな」
シェリーとモーグラもうんうんと頷いた。
また家族や村の人や動物たちに囲まれる生活ができるだろうね。