今この島の気候は過ごしやすくて、私たちは疲れを癒すために無人島へメリー号を停泊させた。とても穏やかな森って感じだから、海賊たちの休憩場所にされてそうだね。
航海の途中でまた水漏れしたこともあったし、修理も兼ねている。
空島で巨大エビに地面へ持ち上げられたタイミングで、ウソップが修理してくれたこともあったけど、本職の船大工って海に潜りながら直すのかな。
何にせよ、早くメリー号を本職に直してもらわないとね。
「おいウタ! そろそろ焼けたんじゃないか!」
「ん? 確かにそろそろ良さそう」
今はみんなでバーベキューをしているところなの。
島でイノシシ1頭は狩猟して、サンジやゾロが加工してくれたけど、保存期間が短い部位以外の多くは保存食に使いたいんだって。
最近ずっと魚だけだったし、そしてバーベキューの準備を待つより早くお肉が食べたいってこともあって、私とルフィでいっぱい取ってきたんだ。
「あんたら、よく食べれるわね」
「ルフィはともかく、ウタのやつまでノリノリだったな」
「ちゃんと美味しく料理したよ?」
「そうだぞ。美味いのに」
昔は森で暮らしていたから鳥やイノシシやクマともまた違って、たまにカエルとかヘビとか食べたくなる時があるんだよね。バーベキュー台には置かないでくれってナミやウソップに懇願されたから、焚火で料理したけどさ。
「ほら、ロビンも美味しいと思うよね?」
「そうね。シェフのおかげかしら」
「おっ、いいもの焼いてるじゃねぇか」
「ゾロも食べるか?」
「あいつら、どんな暮らしをしてきたんだ」
「トナカイの俺より野生的だぞ」
「ナミさん、こっちも準備できたぜ」
「ありがとう、サンジ君」
おぉ~、バーベキューの鉄板には、串に刺さったお肉やお野菜がいっぱい並んでいる。それと並行して野草を使ったナムルまで用意するなんて、まだまだサンジの料理の腕には勝てないや。
焚火を囲んでいた私たちも食べ終わったから、バーベキュー台の周りを囲む。ゾロとナミとロビンとサンジはお酒で、私とルフィとウソップとチョッパーはジュースで、木のジョッキを掲げた。
「それじゃお前ら~!」
『カンパーイ!!』って私たちは宴を始めた。
ルフィにあらかじめ食べさせておいてよかったね。サンジ以外の男子ったら焼けたかどうか分からないのに、争うようにどんどん手を伸ばす。あとでお腹壊さないといいけど。
まあ私もバトルに混ざってもいいけど、サンジが女子用ってことで鉄板を分けてくれたからお言葉に甘えている。ちょうどいい焼き加減でお皿に乗せて渡してくれるから、紳士的だなーって。
この海は何かと危険が多いし、サンジは浮気症さえなかったら優良物件として女子たちのモテモテだろうね。
みんなのお腹が八分目ってところだったとき。
あれ。
「島の人かな、誰かこっちに近づいてくるよ」
「無人島だったわよね?」
「歌姫さんはそう言っていたはずね」
私たちの話を聞いて、男子たちも一旦食べるのを中断したみたいで、私が見ている方向を警戒していると。
やがて1人の男性が見えた。
「か、海賊かい……?」
高級そうな服はボロボロで、瘦せこけている男性は膝をつく。明らかに一般人って感じで、海賊旗がパタパタしているメリー号を見たことで表情が暗くなった。
これだけ弱っていると、今の私では意識してないと覇気で感じ取れないや。向こうから声をかけてくれてよかった。
「渡せる対価は何もない。だが、どうか私たちを救ってほしい」
そう言って、彼は地面につくくらい頭を下げたけど。
「いいぞ」
海賊といってもこの一味には優しい人しかいないからね。お腹をすかせて助けを求める人を見て、ルフィも助けないわけがない。
もう頼まれる前から動いていて、お肉をドッサリお皿に乗せてから、彼の側に置いた。
「遭難者ってことかな? あっちにいるので全員?」
「おいゾロ、さっきの食糧を持ってくるから手伝え」
「怪我人がいるなら俺が見るぞ!」
しっかり意識してみると、彼以外にも何人かの覇気を感じ取れた。サンジやチョッパーもすでに動き始めてくれて、他のみんなも2人のどちらかを手伝うように移動を始める。
「あ、ああ……ありがとう……」
涙を流す男性は、頭を下げたまま感謝を述べてくれた。
客船が難破して遭難しちゃった20人の半分くらいは女性や子供で、それでいて誰もサバイバル技術がなかったみたい。確かに一般の人たちが島を移動するには、天候や海賊でいつ事故が起きてもおかしくないんだろうね。
何度か見たことのある海軍の船とは違って、たぶんそれほど安全な船でもないんだろう。そう考えると私たちが思い描いている新時代では、安全な客船をいっぱい増やすって重要なことかも。
そんなこんなで、みんながバーベキューに混じってくれて、涙を流しながら久しぶりにお腹いっぱいになるまで味わってくれる。
私たちのことは手配書で見たこともあるらしくて、その懸賞金の額からもっと悪い海賊だと思っていたってビックリしていた。あとしゃべるトナカイのチョッパーにもね。
食べ終わって航海技術的にも私たちが送らなきゃって話し合って、あちこちから物資を集め始めた。ルフィが元々20人前くらい食べている気がするし、保存食を倍にすれば大丈夫でしょ。
「えっ……」
急に、凍りつくような覇気を海の向こうから感じた。
「どうしたウタ?」
「ねぇルフィ、ヤバイ人が来るかも」
こんなのクロコダイルやエネルの比じゃない。
もっともっと強いと思う。
「自転車だ。こっちに来てる」
「どうしたお前ら? 海に自転車なんて……ウソォ!?」
ルフィが目を細めてそう言うと、ウソップもゴーグルで確認してくれた。私の目でも何とか見える頃には、誰かが海の上で悠々自適に自転車を漕いでいる様子だけど。
その間に、他のみんなも海岸へ集まってきた。
「ま、まさかっ……」
「どうしたんだロビンちゃん!?」
「ロビンがこんなに取り乱すなんて!?」
ロビンが過呼吸になるくらい怯えている。
そして『海軍大将 青キジ……』と呟いた。
「「「「「た、大将~~~!!」」」」」
この前に会った海軍基地のおじさんでも中将で、しかも私やルフィが知っているガープさんでも中将で、その1つ上の階級なんだ。あくまで階級だけなら海軍の中で2番目に偉い人ってことになる。しかも大将は3人しか選ばれないはず。
「あんたら、すぐに出航準備! 逃げるわよ!」
「そ、そうだな! 海軍の大将が来る前に!」
「お、お前らも早く乗り込め!」
「落ち着けお前ら! 海戦は不利だ!」
ナミやウソップやチョッパーが慌てているところを、ゾロの一喝が止めた。
「こいつの言う通りだ。海をああやって渡れるなら、メリー号に乗り込んでくるだろう」
サンジが考え直させたように、もうメリー号の上では戦いを避けないといけないから。
「……それに、彼は20年前の時点で、周囲の海を凍らせることができるほどの実力者よ」
「「「はぁ!?!?」」」
聞いている限り、凍結系の能力なんだろうけど、能力の規模が私たちとは違いすぎる。たぶんシャンクスたちがいるようなステージにいるんだろう。
「あ、あの! ではこういうのはどうでしょう!」
さっき助けた人たちから、今回は見逃してくれるように大将にお願いするって言ってくれた。青キジがどんな人か分からないけど、海軍の偉い人なら話が通じることに懸けるしかないよね。
でも、もし攻撃された時は、全員で戦うしかなくなる。
「お前ら、来るぞ」
漕ぐスピードは変わらず、海に氷の道を作りながらやってくる。
そして青キジは海岸へ自転車を停める。私の2倍あるんじゃないかって思うくらい高身長の男が、白い息を吐きながら歩いてきた。
「なかなか良い覇気を持ったやつらがいると思ったら、ルーキーだったか」
ルフィと対面して彼は『似てるな』と呟いた。
さらにロビンを守るように囲む私たちを見て。
「黒髪の女に、珍しい紅白の髪……
あらら、さらにオレンジ髪の嬢ちゃんまで」
「おいお前! ロビンとウタとナミに何の用だ!」
まるで眼中にないってされてルフィは激昂した。
慌ててウソップは刺激するなって言うけど。
なぜか青キジから敵意は感じなくて、でもちょっと不快感はあって。
「いやなに、スーパーボイーンだと思ってな」
「てめぇ! このクソ野郎!」
サンジが思わずツッコミを入れてくれたけど、こんなやつが海軍大将なんだ。私は思わず胸を隠しちゃった。
「あー、とりあえず横になっていいか」
そう言って草が生い茂る場所へ移動してから、手に持ったコートを枕代わりにしてダラダラし始めた。まるでポカポカする春の心地よさを味わうように、大あくびをしている。
「そう警戒するな。俺は散歩ついでに、アラバスタにいたっていうニコ・ロビンを確認しにきただけだ」
「じゃあ、私たちを捕まえるわけじゃないの?」
「なんだお前、爺ちゃんくらいテキトーだな」
『あの人と同類扱いはやめてくれ』って言って、青キジは楽しそうな様子を見せる。ミホークさんに会ったときのように、なんだか親戚のおじさんっぽいね。
それにしても凄い覇気なのに今は揺らいでいて、いろいろなことに疲れたって感じだ。海賊と海兵で敵同士なのに、ちょっと相談に乗りたくなってくるかも。
このまま、戦うことがなければいいんだけど。