麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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第88話 青キジ

 

 私たちは無人島で、遭難者たちや海軍大将の1人と出会ったんだけど。

 

 青キジが言うには、のんびり1日も歩けば海軍の駐留所がある島に着くからって、みんなで協力して大きなソリを作った。万が一の時には丸太船にもなる設計で、毛布や食べ物といった荷物も積んでおく。

 

 その本人は『ダラけきった正義』と言っていたように、ずっと呑気にお昼寝をしていた。隠しきれない強さを感じさせるから、私たちからすればじっとしておいてもらえると安心だったんだけどね。

 

「おーい、そろそろ起きろよ」

「すごい、本当に氷みたい」

 

 私とルフィは3メートルくらいある身体をツンツンしてみるけど、氷に触っているかと思うくらいヒンヤリしている。青キジはアイマスクを指で挟んでずらしながら、覇気のない瞳を見せた。

 

 ウソップやナミやチョッパーは『あまり刺激するな~~』って感じでジェスチャーを送ってきている。でも優しそうなおじさんだよ。

 

「ん? あー、そういやそんなことしてたな」

 

 立ち上がると見上げるくらい背が高くて、やれやれって感じで海へ向かう。

 

「さてと……」

 

「待って! 何かが海から向かってきてる!」

 

 すでに青キジは海の中に手を入れている。

 そしてバシャーンって海王類が姿を現した。

 

「あ、あぶねぇぞ!」

「そこから離れて!」

 

「お前らこそ、面倒だから近づくなよ」

 

 急に私たちの身体が動かなくなった。

 いや、彼の威圧に恐怖しているんだ。

 

氷河時代(アイス・エイジ)

 

 目の前の全てが凍る。

 

「なっ……!?」

「あの一瞬で……!?」

 

 見渡す限り、氷の大地になっている。

 

 メリー号が置いてある方角はともかく、これじゃあどんな船だって航行なんてできやしない。青キジと出会う前に、もし逃げることを選んでいたとしても、船ごと凍らされていたと思う。

 

 私たちは背中に冷たいものを感じるほどに、海軍大将の実力に驚かされていた。

 

「少々冷えるんで、あったかくしていきなさいや」

 

 こんなに強大な力を持つのに、彼は優しい声色でそう言った。

 

「これで俺たちでも海を渡れる!」

「あ、ありがとう~!」

「ありがとう海兵さ~ん!」

 

 遭難していた人たちは次々と青キジに感謝を述べるけど、彼は背を向けて表情を見せなかった。いろいろなことに疲れた感じだったけど、誰かを助けられて喜んでいる顔だといいな。

 

「あいついいやつだな」

「コビーもあの人みたいな凄い海兵になりそう」

 

 海軍にも海賊にもいろいろいるってことなんだろう。

 

 遭難していた人たちは私たちにも感謝を言ってから、元気よく氷の大地を歩いていった。ああやって民間の人たちが海を渡れるのは、海軍の良い人達が海の安全を守ってくれているからってのもあるのかもね。

 

 もっともっと自由に航海ができる時代を作らないと。

 

「それにしても丈夫な氷だな!」

 

 彼ら彼女らの背中を見届けた後に、ルフィがピョンピョンと叫んだ。

 

「俺はスケートが得意だぞ!」

「さすが冬島生まれ!」

 

 チョッパーはともかく、ルフィやウソップはたとえ寒くても飛び跳ねてるや。

 

「ちょっと温かい服に着替えてくるね」

「おう! ウタやナミは風邪引かないようにしろよ!」

 

 消しゴムだっけ、そんな名前の虫に刺されたことで私たちが倒れてからだいぶ経ったように思えるけど。あのルフィが()の健康を気づかってくれるの、ちょっと恥ずかしいやら嬉しいやら。

 

 ひんやりとしている腕をさすさすしながら、氷の大地から離れていると。

 

「奔放というか、掴みどころがないというか」

 

 あぐらをかいているところを通りがかった時、彼は呟いた。

 

「えっと? 青キジさん?」

 

「そっくりだな。モンキー・D・ルフィは」

 

 名字を強調するようにそう言った。

 

 私は思わず飛びのいて見聞色の覇気を研ぎ澄ます。そしてルフィも私の前へジャンプしてきた。ずっと見張っていてくれたゾロやサンジも戦闘態勢に入って、ナミはロビンを守るように後ろへ下がらせる。

 

 チョッパーやウソップは、固まったように動けないみたい。

 

「何があったかは知らないが、海賊の道を選んだわけだ、お前は」

 

「じ、爺ちゃんは関係ないぞ!」

「やばっ、そういや内緒にしてるままかも!」

 

 ルフィだけじゃなくて、エースや私でさえ海軍将校にさせるってことで訓練をつけてくれたんだった。もしガープさんと出会ってしまったら、ゲンコツ1発じゃ済まないかも。

 

「ポートガス・D・ウタだったか? そっちの麦わらの嬢ちゃんはどうにも似てないが、まあ同じ穴の(むじな)というやつだろう」

 

 『やっぱお前ら、死んでおくか?』と殺気が浴びせられた。

 

 私は歯を食いしばって膝の震えを止めるけど。

 あのルフィでさえ恐怖で震えているなんて。

 

「東の海からアラバスタにかけて、その成長の速度は見張るものがある。まさかルーキーが七武海の一角を落とし、そしてニコ・ロビンすら一味に取り込むとは」

 

「やっぱりお前、ロビンを捕まえに来たのか!」

 

 そうルフィが激昂するけど、青キジは意にも介さず、話を続けた。

 

「懸賞金というのは何も強さだけじゃない。政府に及ぼす危険度を示す数値もある。8歳にして7900万ベリーの賞金首になったこいつは、裏切りによってここまで生き延びてきたわけだ」

 

 多くの海賊団がロビンの隠れ蓑として壊滅したって。

 

「だから何が言いたいんだ?」

「てめぇ、ロビンちゃんに恨みでもあるのか?」

 

 ゾロは刀を引き抜いて、サンジはいつでも蹴れるよう足を構えた。

 

「恨みなんざねぇが、一度取り逃したことはある。あの時はまさか、ここまでの疫病神になるとは思わなかったが」

 

「昔のことは関係ない。重要なのは今だ」

「そうだな。壊滅したってのは他の海賊団の話だ」

 

 サンジは本心からそう言っているみたいで、ゾロも挑戦的な笑みを浮かべた。

 

「お、落ち着け、おまえら!」

 

 一触即発という雰囲気を、ウソップが慌てて止めるようとするけど、残念ながら逃がしてくれるような雰囲気じゃなくなったかな。

 

「私を捕まえたいならそうすればいいわ!!」

 

「あららら。もう少し利口な女だと思っていたが、そんなに……」

 

 青キジの周りに多数の腕を咲かせて、ロビンはその巨体に関節技を決めた。もし生身の人間だったら骨が折れるくらいの一撃だけど、相手は自然系だからその実体が捉えられない。

 

「粉々になったぁー!?」

「に、逃げるぞ、みんな~~!」

 

 たちまち砕けた氷の塊は動いて、人の姿を取り戻していく。冷静さを失っているウソップはメリー号に向かうけど、海戦は私たちが不利だし、しかも少しでも背中を見せればやられる。

 

「命を取る気はなかったが……」

 

 消えた!?

 

「ロビン、後ろ!!」

 

 見聞色の覇気ですら、1度見失うくらい速かった。

 

 さっきのは海軍要塞の中将も使っていたけど、やっぱり地面を高速で蹴って移動する体術なんだ。いつの間にか青キジの手には氷で造形された剣があって、その凶器でロビンを斬り裂くような動きを見せている。

 

 私やルフィは遠距離攻撃の体勢に入るけど、まだギアを上げてないから間に合わない。

 

「「っ!?」」

 

 ナミやロビンは驚きで対応できず、ギュって目を閉じた。

 

切肉(スライス)シュート!!」

 

「あらら、追いついてきちゃった?」

 

 間一髪で、サンジのキックが氷の剣を蹴り飛ばしてくれたんだ。

 

武装! 三刀流 鬼斬りィ!

 

 さらにゾロの突進技が青キジの身体を吹き飛ばしてくれた。

 

「剣士さん… コックさん……」

 

「よっしゃー! さすがだお前ら!」

「すっげー! 全く見えなかったぞ!」

「たとえ自然系だろうと武装色の覇気なら!」

 

 ウソップやチョッパー、ナミは緊張したまま喜んでいるけど、なぜか草原には一滴も血が落ちていない。確かにゾロの斬撃は当たった音がしたはずなのに。

 

「覇気を扱える船員がいるとは末恐ろしい一味だな、モンキー・D・ルフィ?」

 

武装 ゴムゴムのJETガトリング!!

 

 ドガドガドガってルフィが追撃を入れてくれるけど、たとえ武装色の覇気でも実態を捉えられてない。身体に空洞ができるように氷が砕けるだけで、どんどん再生しちゃってるんだ。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 手応えがないことにはルフィも気づいているだろうけど、それでも攻撃を続けているのは待っていてくれるからだ。

 私はムジカちゃんを完全に()び出して、あの時の大技をしっかりとイメージする。

 

「ゾロ! サンジ!一旦離れて!」

 

 よしっ、ルフィも一度後退した。

 

「いくよ、ムジカちゃん!

 ウタウタの火拳!

 

 大きな火が、砕けた氷を溶かしつくすように包み込んだ。

 

 

 

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