うるさい声が聞こえる。無鉄砲で学を知らない野郎の声が。
「お前はこのままでいいのか!?いつまでも奴の思う壺で本当にいいと思ってるのか!?目を覚ませルシフェル!!」
「とっくに目は覚めてるよ。お前こそ目を覚ましたらどうなんだ!?俺たちは負けたんだ。他に味方はいねえんだ、どう足掻いたって無駄なんだよ!!」
「分からず屋め・・・もういい!お前にはほとほと愛想が尽きた!お前とは兄弟の縁を切る!」
「勝手にしろ!せいぜい足掻いて無様に野垂れ死ぬんだな!」
「これから我らは赤の他人だ。何があっても助けんぞ!」
そう言って、白い翼を羽ばたかせながら飛んでいった奴の名はミカエル。
俺の双子の弟だった竜だ。そして今この瞬間から何の関わりもなくなった。
もうあいつの馬鹿な言葉を聞かないでいいと思うと胸がすくような思いだ。
奴とは同じ卵から生まれてきた。竜の双子というのは珍しく、一万年に一度くらいでしか生まれてこないそうだ。
竜の双子が生まれるのは、元々一匹の竜の赤子がその体一つでは強大すぎる力を持ってしまった場合、力が二つに分裂してしまい、魂も二つになってしまうからだそうだ。
俺とミカエルは正反対の性格だった。奴は自由奔放で他の者と関わることを好み、色々な場所を飛び回っていた。ただしあまり頭が良いとは言えず、よく無茶な行動をした。知ったかぶって、よく意味を知らない難しい言葉を言ったりもしていたな。
対して俺は孤独が好きだった。あまり他の竜や他の者どもと関わりたくなかった。あのお方は別だが、他者と馴れ合うなんて性に合わない。生まれ持った性というやつだ。
あまり動くのは好きではなかったし、それについでと言ってはなんだが、奴よりも頭の出来は良かった。
俺たちは正反対だったが、案外うまくやっていけていた。俺たち二匹はどちらも竜族の中ではかなりの力を持っていて、あのお方からも気に入られていた。
そうしてときどき喧嘩をしたりしながらも順調に育っていった。
あるとき、あのお方は“まもなく危機が来る”といって、俺たちにその危機に備えるようおっしゃった。危機がどうであれ、あのお方や俺たちが勝てぬ者などいないと、他の竜も皆あまり心配していなかった。かと言って自己研鑽を疎かにするのはよくないとそれぞれでできる備えをしていた。俺とミカエルも同じで、戦いのための訓練をしていた。
敵が何者であれ、俺は出来る限りあのお方をお守りしようと考えていた。多分ミカエルも同じことを考えていただろう。