転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第1話...死亡〜そして転生

「誠也、ここはあまり治安のいい場所じゃない。周りには十分注意しておけ」

 

はい、という俺の返事を無視して父は行ってしまった。

ここはある発展途上国。その中でも最も貧困層が集まる場所、スラム。

そこに父と俺、神代誠也は訪れていた。

 

いや、正確には帰ってきていたと言うべきだろうか。

父と俺は血が繋がっていない。

幼い頃、支援活動の一環として訪れた男、今の父を俺は襲った。金目のもの目当てだった。

何を思ったのかなんて知らない。呆気なく捕まった俺を父は養子に迎え入れた。

スラム街の隅っこで家族も、名前もない飢えてやせ細った子供だった俺は慈善活動家の子供として、神代誠也としてこの場所に帰ってきた。

 

小洒落た服を着て、布切れを巻いた子供の横を通り過ぎる。

彼らに俺はどう写っているのだろうか。ここにいた頃ならわかっただろうに今ではちっとも想像出来ない。

 

それなりに歩いた先にたどり着いたのは適当に掘られた洞穴だった。俺が昔、住んでいた場所だ。

小さな家と家の路地裏、日も通らないような場所。良くもまぁ、こんなところに住めていたものだ。

 

随分と、俺は贅沢者になったんだな…。

 

そろそろ、父のところに行った方がいい。そう判断して元来た道を戻ろうとした時だった。

 

重くて鈍い衝撃と、痛み。

腹部だ、腹部を刺された。なぜ、気づかなかった?昔なら…、こんな近くに人がいたならすぐに、

 

「随分と、染まったな」

地面に倒れ込んだ俺に投げかけられた声は少し低くなっているものの聞き覚えがあった。

「お前っは…、か、わってない…な」

昔、よくつるんでいた男だ。やせ細って小汚い布を巻いている。名前は知らない。

きっと同い年くらいだったとは思う。

 

「俺は、悲しいよ。俺はお前の死体でもなんでも食っちまうような、どんなもんにも媚び売るような姿が好きだったんだぜ。生きてやるって言う強い意思があってさ」

「でも、今のお前は、違うな」

「あぁ、悪い。思ったより刺傷が浅くなっちまったな。まぁ、ゆっくり苦しんで死んでいけよ、お前はスラムの苦しみを忘れちまったみてぇだし」

 

ベラベラと刺させれて苦しんでる俺の横で喋ってたかと思えば、今度は横に腰を下ろした。

俺が死ぬのを待つ気らしい。

 

あぁ、死ぬのか…。今になって、生きたいとそう思ってしまう。

 

《確認しました。刺突耐性獲得・・・成功しました。続けて、物理攻撃耐性獲得・・・成功しました》

 

さっきまで刺された場所が熱かったのに、嘘のように寒い…。

 

《確認しました。対熱耐性獲得・・・成功しました。続けて、対寒耐性獲得・・・成功しました。

対熱耐寒耐性を獲得した事により、『熱変動耐性ex』にスキルが進化しました》

 

クソ、痛い…。痛みってのはこんな感覚だったっけ…。

 

《確認しました。痛覚無効獲得・・・成功しました》

 

さっきから、なんだ…。うるさい。

死に間際に聞こえる幻聴って、こんなにベラベラ喋るのか。

あれだけ感じていた痛みが遠のいて行く。

あぁ、本当に死ぬんだ…。

こんな無様な死に方をするくらいなら、このスラムで本当に死体でもなんでも貪っていればよかった…。

 

《確認しました。死体を主な栄養源とする肉体を作成・・・成功しました。》

 

最後に、殆ど残ってない力を振り絞って、俺を殺した奴の顔を見てやろうと思った。きっと、俺みたいな贅沢者を殺せて満足だろうと思って。なのに、お前は。なんで、お前は。

 

そんなに悲しそうな顔をしてるんだ。

 

「俺を殺せて良かったなぁ...! 次はお前だ...俺がいつかっお前を惨めにっ...、殺してやるよ」

 

あいつに届いてる俺の笑い声は掠れてしまっていて、殆ど力が入っていないのかもしれない。

それでもいい、お前は今どんな顔をしてる?

 

もう、何も見えやしない。

 

 

「お前の、その人を煽る癖は変わってないんだな」

 

 

 

神代誠也は死んだ。

だがこの時、神代誠也の"魂"は、異なる世界の同一時空に偶然発生した魔物とリンクしたのだ。

目視も出来ない、小さな次元の亀裂。発生した魔素の塊に、リンクした魂。

魔素の塊は、魔物を生み出す元となり、リンクした神代誠也の意思に基づき、その身体を作成する。

本来有り得ぬ天文学的確率で、神代誠也は、異なる世界の魔物として転生する事となる。

まぁ、ほぼ同時にもう一つ同じ形をたどって魔物が生まれている訳だが。

 

 

 

スラム街にいた、小さな子供は。

慈善活動家に養子として迎えられた子供は、父となった男に求められ、多くの知識を技能を身につけた。

友達と呼べるものはいなかった、暖かい家族もなかった、神代誠也では自分らしくはいれなかった。

スラム街にいた頃の生き方は案外俺らしかったのかもしれない。

いや、あんな貧困生活はもうごめんだが。

誰かに程よく媚び売って必死になって生きるのは楽しかったのかもしれない。

 

《確認しました。ユニークスキル「諂諛者」を獲得しました。》

 

もし、次の人生なんてものがあるなら、程よくアドバイスをくれてわがままを聞いてくれるような家族の元に生まれたいな。愛してくれるような...人の元に

 

《確認しました。ユニークスキル「助言者」を獲得しました。》

 

どこか卑しくて、小賢しくて、わがままで、それでも我武者羅に生きれるようなそんな次を望む。

あぁ、死ぬって寂しいな…。

 

 

 

 

 

ポタリ…ポタリ…

頬に水が伝う感覚に不快感を覚えて目を覚ました。

洞窟だ。虹色に輝く鉱石が至る所にある。

いや、なんでだ。は?

俺は確かに死んだはずだ。最後の力を振り絞ってあいつに嫌味だって言ってやった。

なのになんで洞窟にいる。

暑くも寒くもなく快適ではあるが、いかんせん思考が着いてきていない。

俺はどうなったんだ…。

とりあえず、自分の体の確認を、と思って気づく。手が、人のものじゃない。

これ、明らかに動物の手だよな…、しかも四足歩行系の。一体全体、なんの動物の足だ。

 

《解。エクストラスキル「魔力感知」を利用し、視点を切り替えることが可能です。》

 

はい!?誰!?

 

《解。ユニークスキル「助言者」の効果です。主様(マスター)の要望に従って助言を行う事が可能です。》

 

助言者…、俺の中に住んでる人?って認識でいいの?

 

《構いません》

 

助言者は俺の何?味方?

 

《解。ユニークスキル「助言者」は主様(マスター)の要望に従います。》

 

じゃあ、味方な訳だ。

このよく分からない場所で味方がいるのは心強いな。少し淡白だけど、会話もしてくれるみたいだ。

こんな洞窟で1人だったらイマジナリーフレンドを作ってしまうところだった。初めてできた友達がイマジナリーフレンド?勘弁して欲しい。

 

助言者、話をそらしたな。魔力感知がナンタラのやつ、やってくれるか?

 

《膨大な情報量を管理するため「助言者」と同期させました。「魔力感知」を使用します。》

 

その言葉と共に限られた範囲しか見えなかった視界が開けた。はるか先にある岩肌が、草の葉脈までもが見える。

そして、視点が変わる。見えたのは、小さな犬だった。

 

犬?いや、ハイエナか?

俺の知ってるハイエナより明らかに可愛げがある。ペットの犬みたいだ。

助言者、ありがと。視点は戻しておいて。違和感すっごいんだわ...。

 

死んで、姿が変わっている。

スキルという概念がある。

さすがに、そういうコンテンツに疎い俺でもわかる。「転生」だ…。

 

だからって、ハイエナに転生するのか。

いや、ハイエナって砂漠にいるんじゃないの?しかも群れで。

 

《否。主様(マスター)はハイエナではなく「死食鬼(グール)」という魔物です。》

 

グール?

 

《種族名「死食鬼(グール)」は死肉を主な栄養源とする種族です。死食鬼(グール)の固有スキルとして「人化」が備わっています。》

 

人化が備わっていますって言った!え、言った?

 

《はい》

 

人化しよう。今すぐ、どうやんの、教えてお願い。

 

死食鬼(グール)は意識的に人化出来ます。「人化」を「助言者」と同期させ、所要時間、消費魔素量の削減を行います。》

 

助言者…、お前ほんと有能。

人の姿をとるだけでものすごく緊張する。姿が変わってたらどうする?いや、最悪変わっててもいい。外に出歩けないくらい醜い見た目だったらどうしよう…。

そしたら一生、ハイエナの姿で過ごすか…。

 

もう一度、視点を切り替えて…いざ

 

ハイエナの姿は、瞬きひとつする時間よりも短く一瞬で人に姿を変えた。

髪色が少し変わっているけどそれ以外に目立った変化は無い。背丈は結構小さめだな。

 

ひとつ問題があるとすれば、下半身についてるものが丸見えな事だな。この世界にあるかも分からない公然猥褻罪で捕まりそうだ。服が手に入るまでは人化は封印だな…。

 

助言者、少しここら辺を散策してみよう。

その間に、この世界の常識を教えてくれ。

 

《了。》

 

 

 

 

 

散策中に助言者から色々聞いた。

この世界に漂っている魔素、様々なものがあるスキルなど。死食鬼(グール)という種族についても聞いた。

それから俺の持ってるスキル。

俺の味方である助言者はめちゃくちゃ優秀であることがわかった。

 

ユニークスキル「助言者」

思考加速:通常の1000倍に知覚速度を上昇させ

る。

解析鑑定:対象の解析及び、鑑定を行う。

並列演算:解析したい事象を思考と切り離して

演算を行う

詠唱破棄:魔法等を行使する際、呪文の詠唱を

必要としない。

森羅万象:この世界の、隠蔽されていない事象

の全てを網羅する。

 

この五個が主な能力らしい。

後、俺はてっきりユニークスキルとやらは助言者だけだと思ってたけどもうひとつあった。

 

ユニークスキル「諂諛者」

収集:対象を結晶化させ、体内に取り込む。体内に取り込んでから結晶化させることも可能。対象に意識がある場合不可能。効果の対象は、有機物・無機物に限らずスキル・魔法にも及ぶ。

解析:取り込んだ対象を解析・研究する。作成可能アイテムを創造する。

術式の解析に成功すると、対象のスキル・魔法の使用が可能になる。

倉庫:捕食対象を結晶化の形で収納する。また解析により生成された物質の保管も可能。倉庫に収納されると時間効果が及ばない

隔離:解析の及ばない有害な効果を収納する。無害化を行い、魔力に還元する。

血液:諂諛者の血液を操作可能。接触した対象を結晶化し、代わりに吸収する。スキル・魔法などの媒介、回路とする事が可能。再生の能力を持つ。

 

これまた五個が、主な能力らしい。

この世界のバランスが分からないから一概には言えないけれど、強いと思う。利便性が極めていい。

後、もうひとつわかったこと。このスキル、助言者に服従している。と言うよりは媚びている。

どうやら諂諛者には意思があるらしく、助言者がそれを削除しようとした時に、あなたの役に立つから消すのはやめて!とお願いしたらしい。

諂諛者とは話せないのか聞いたところ、言語を操ることは不可能らしい。でも、俺に血液を使って何かを伝えてくることはあるかもしれないとの事。

 

難しく考えるとゴチャゴチャするけど簡単に言うと諂諛者→助言者→俺という形で矢印が向いていて間接的に諂諛者は俺の役に立ってくれる。

 

今もそう。喉が乾いたから地底湖の水を飲んでいる俺の横で諂諛者の血液にあたる黒い液体が頑張ってそこら辺のものを回収してる。多分、回収してるものは助言者の指示。

 

この洞窟で目覚めて一週間くらいがたったと思う。なぁ、助言者。俺これからどうしよう。

 

……助言者?ちょっと、返事して

 

《告。前方から魔物が接近中》

 

水を飲みがら呑気に将来の事を考えていたのがいけなかったのか。目の前から迫ってくる水色の物体を避けることは叶わなかった。

 

「キャイン!」

めちゃくちゃ飛ばされたし、めちゃくちゃ動物チックな鳴き声が出た。

諂諛者が血液を使って俺を受け止めてくれたおかげで目立った外傷はない。痛みも特にない。

 

《解。痛覚無効耐性を獲得している為、痛みは発生しません。物理攻撃耐性スキルによるダメージ軽減が適用されました。身体損傷率は3%です。諂諛者の血液を用いて「再生」を行います。》

 

その瞬間、体の中で何かが動き回る感覚があった。ちょっと、気持ち悪い。

でも、所々あった切り傷が無くなっている。

ありがとう、助言者、諂諛者。お前たちがいなかったら、小さい切り傷からばい菌が入って三途の川に向かっているところだったよ。

 

で、俺はどこに飛ばされたんだ?

あの水色の物体は?

当たりを見渡そうとして、気づいてしまった。

ドラゴンに……。

 

(聞こえるか、小さき者達よ)

 

しかも、話しかけてきた。

 

 

 

 

 

小さき者ってのは俺の事だと思う。

人の姿も前世より縮んだけど、いかんせんこのハイエナの姿も小さめ。

まぁ、それはいい。これからめちゃくちゃデカくなるから。この愛くるしいペットみたいな見た目からは卒業してやるから。

 

それに、あのドラゴンが話しかけているもう一つはあの水饅頭だ。

 

《あれは、スライムという種族です。》

 

左様ですか。

 

(おい!聞こえているだろう?返事をするが良い!)

 

ねぇこれ答えた方が良いやつ?

 

《肯。》

 

(はい、聞こえてま(うっさい、ハゲ!)…

 

待って、今の声スライムのだよね。

 

(ハゲ…、ほほぅ、貴様死にたいらしいな)

 

ほら怒ってる。

てか、よくこのスライムハゲとか言えたな。 どうみたって全身鱗だろ。

だけど、ドラゴンはスライムの謝罪でハゲ呼ばわりを許してましてや目を見えるようにまでしてあげるらしい。案外、単純なやつなのかもしれない。

 

このスライム、目が見えてなかったのか。だからってハゲ呼ばわりはしないだろ、普通。

 

(では、改めて名乗ろうか。我が名は暴風竜ヴェルドラ!この世に4体のみ存在する竜種が一体である!!

おい、怯えるなと言ったろうが。それにお前もだ。いつまでも、そんな隅でポケッとせずこっちに来い。ほら、そのスライムの横に、早く。)

 

俺を指さしてヴェルドラとかいうドラゴンが指示してきた。

さすがにこれ以上の傍観は許されないらしい。

まぁ、プルプル震えているスライムを小突いてやってもいいかもしれない。

 

(ねぇ、いつまで震えてんの)

鼻先で小突いて見ると、案外ぷよぷよしてて気持ちいい。後、ちょっとヒンヤリしてる。

(おい、俺をぽよぽよして遊ぶな!ていうか、この洞窟犬もいるのか。)

(犬じゃない、お前と同じ魔物だよ。)

 

 

その後ヴェルドラも加わって色々話した。

俺たちの生い立ちやヴェルドラについて。

このスライムはどうやら俺と同じようにして生まれたらしい。ヴェルドラは転生者って言ってた。後、俺と似たスキルを持ってた。

ヴェルドラは勇者に見とれて負けてここに封印されているらしい。

とは言っても、俺は自分の生い立ちを話したあとはずっと傍聴してただけだけど。

相槌とかは全部スライムがしてくれた。

 

(よし!じゃあ、俺たち3人友達にならないか?)

だがしかし、1つ失敗したとすればスライムが突拍子もないことを俺を巻き込んで言い出したことだ。

(この暴風竜ヴェルドラとトモダチだと!?)

(そうだよ、スライム。このドラゴンとお前だけならまだしもなんで俺まで。だいたい会ってからそんなに時間経ってないだろ。)

 

(嫌ならいいんだけど…。てかお前、前世友達0人ボーイだっただろ)

(悪い?)

(いや、なら俺とヴェルドラがお前の最初の友だ。いいよな、ヴェルドラ!)

(そうだな……どうしてもと言うなら、考えてやっても…)

(どうしても、だ。決定な!いいか、友達ってのはなノリと勢いで作るもんなんだよ。)

 

よろしく、と言い合って二人は手を合わせる。

二人があからさまに俺の事を見てるからお前もやれって事なんだと思う。

はぁ、一体なんなんだ。

俺の、丸みを帯びた前足がヴェルドラの爪とスライムのぷよぷよした体に触れる。

なんだか、変な気分だ。ムズムズして、でも悪い気分はしない。

 

(なんだか、そこまで悪い気分はしない。)

(ふふん、そうだろ!)

 

(さて、じゃあこの封印をどうするか考えよう。お前も、友達がずっと封印されたままなんて悲しいだろ。)

(多分)

 

悲しいのかと聞かれると、まだよく分からない。でも、ヴェルドラがこの洞窟で一人消えていくのは、嫌かもしれない。

これが、悲しいってことなら…俺は友達が封印されたままのは悲しい。

 

(でも、俺は力になれないよ。意識があるものを俺は取り込めない。)

(そっか…んー。)

 

その後、スライムとヴェルドラの出した答えはスライムの胃袋の中で内側と外側から解析して無限牢獄を破るというものだった。

随分とむちゃくちゃな事を言っている。

なのに、2人とも生き生きしてて楽しそうだった。友達だからだろうか。

なんの力も貸してやれないのはなんだか悔しい。

 

(じゃあ今から「捕食者」でお前を喰うけど…)

(おっと、その前に。お前達に名をやろう。お前らも我と共通の名を考えよ。同格ということを魂に刻むのだ。)

 

共通の名前か…。田中、鈴木、いや多分こういうことじゃない。

 

(゙テンペスドとかどうだ?)

おぉ...!かっこいい。田中とか鈴木とか言い出さなくてよかった。

(素晴らしい響だ!今日から我はヴェルドラ=テンペストだ!!)

(そしてお前には、リムル=テンペストの名を、お前にはラルタ=テンペストの名を授ける!)

 

ヴェルドラは俺を指さしながらそう言った。

ラルタ=テンペスト。俺の名前。

父の名づけは、こんなに暖かいものじゃなかった。神代誠也という名前は俺を縛るものだった。なのに、ラルタ=テンペストという名前は俺を支えてくれている。包んでくれている。

あぁ、俺。この名前、好きだな。

 

(さっさと、「無限牢獄」から脱出してこいよ?ヴェルドラ)

(任せておけ!そんなに待たせず、合間見えようぞ!リムル、ラルタ)

 

目の前にいたヴェルドラが消えた。でも、俺はヴェルドラがどこに行ったか知ってる。

 

(待ってるよ、ヴェルドラ。俺たち2人で…)

(お前、そういうのは本人に直接言ってやれよ。)

(うるさい)

(お?照れてんか、ラルタさーん?)

(うるさいって言ってんだよ!)

 

 

 

 

 

‪▽

この日、世界に激震が走った。

天災級モンスターである暴風竜ヴェルドラの消滅が確認されたのだ。

300年前に封印されていたとはいえ、そこは天災級モンスター。

消滅と見せかけて、別の地方で新たな脅威として再誕していないとも限らない。

しかし、消滅の報告より20日が経過するに到って、西方聖教会が暴風竜ヴェルドラの完全消滅を宣言したのである。

 

その原因を作った魔物たちはそんなこと露知らず、呑気なものだが。

 

ヴェルドラを食ってから30日がたった。

俺は今、ラルタとともに出口を探しながら歩いている。

道中、採れるものは色々回収しておいた。

今は何をしてるかって?

ズバリ、スキル開発である。この先魔物と遭遇した時に戦う手段を持ってないのはヤバいならな。

だけど、一つ気になるのはラルタだ。

ヴェルドラが封印された場所からここに来るまで歩く以外でなにか動いてるところを見かけない。草を食べたり水を飲んだりはしてるけど、スキル開発をしたりとかはしてない。

たまに、ラルタの影から黒い液体が出てきてるからそれで戦うのか?

 

(ラルタ、お前もう少し動いた方がいいんじゃないか?体なまるぞ、ただでさえ俺と違って筋肉とかある訳だし。)

(あのね、スライムのリムルには理解できないことかもしれないけど。俺は、死食鬼(グール)なの。食べ物を食べないと飢えるの。わかる?)

(え、でも草とか食ってたじゃん)

 

《解。種族目「死食鬼(グール)」とは死肉を主な栄養源とする魔物です。植物や水で空腹を紛らわすことは出来ても、根本的な空腹は補えません。》

 

ラルタがこの世界に来て1ヶ月と1週間。

つまり、37日間も満足のいく食事がとれてないってことか!?

 

(ラ、ラルタ!早く外に出よう、魔物を探そう。俺は水刃があるし何とか戦える。さすがに友達が横で餓死は俺が病む!)

(うるさ、わかった。じゃあ、移動しよ。)

 

そう言うと、ラルタは歩き出す。

とてとて音を鳴らして歩くラルタとぷよぷよ音を鳴らして歩く…進む俺。なんとも可愛らしい空間である。

 

ラルタは言った、俺と2人でヴェルドラを待っていると。だから、洞窟の外に出ても俺たちは2人行動になる。

まぁ、元々離れる気はなかったんだけどな!

せっかく同郷のやつがいて友達になったのに洞窟出たらはいさようならなんてあんまりだろ。

 

でも、実際。俺はラルタの事はまだよく分からない。

享年17歳。スラム街生まれの日本育ち。

話を聞く限り、慈善活動家にとっていい宣伝にするために育てられたんだろう。

感情がない訳では無い、ましてや結構明るい性格をしている。後、人をよく煽る。

でも、人間関係を築く事は諦めてしまっている。

ラルタは、この第二の人生をどう思ってるんだろうか。

 

どこか、犬みたいな(ラルタが言うにはハイエナ)、それでいて可愛さのある小さな体の横を並んで俺は、先に進む。

 

次にヴェルドラと会った時、笑って話せる面白エピソードを用意しておいてやろう。

 




ステータス
名前:ラルタ=テンペスト
種族:死食鬼
加護:暴風の紋章
称号:なし
魔法:なし
ユニークスキル:諂諛者、助言者
エクストラスキル:魔力感知
耐性:物理攻撃耐性、痛覚無効、熱変動耐性ex


ラルタの助言者はリムルの大賢者と違って、結構勝手です。YES/NOはしてくれない。
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