転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第10話...討伐に向けて

トレイニーさんの発言によって豚頭帝(オークロード)の存在が確定となり、魔人が手を引いていることもわかった。その魔人は、何らかの魔王の手によるものであるらしい。

それだけではなく、ユニークスキル「飢餓者(ウエルモノ)」という豚頭帝(オークロード)が生まれる時に必ず得るスキルは食べた魔物の性質を自分のものとすることができる。それが、味方全員に反映されるため、オークの目的が多くの魔物の力を奪うことだと分かった。

そうすると、この町はオークにとって食べておきたい餌だらけというわけである。

結局、俺はトレイニーさんの依頼を引き受けることにした。

だいぶ格好つけて依頼を受けたが、これで負けたらどうしよう...。

 

ひとまず、20万の軍勢を相手取るために作戦を立てなきゃいけない。

リザードマンとの同盟も前向きに検討したいところだが...使者がなぁバカだったんだよなぁ。

 

「リザードマンの話が通じる奴と交渉したいなぁ...」

「リムル様、自分が交渉に向かいます。リザードマンの首領に直接話をつけてもよろしいですか?」

 

俺ができるのかと解けば、即答でできると返してきた。やだ、イケメン。

リザードマンとの交渉をソウエイに任せることにして、同盟前提の作戦を立てることにする。

それにしてもリザードマンか...首領がガビルみたいなアホじゃないといいけどな。

決戦の場所はリザードマンの領地になることは確かだが、ソウエイには上手くやって欲しいな。

「俺たちは、ソウエイが同盟を結んでくることを前提に作戦を立てるぞ」

 

スライムボディーを机に乗せて戦力図を見る。

「...このコマを置いたのはソウエイか?」

「ええ、周辺のゴブリンを取り込んだガビルの隊です。気絶したガビルを囲んでしょんぼり沈んでいたとか」

 

なんか...いや考えすぎか?

ガビルの隊はリザードマンの本拠地の裏側にいる。オークを襲撃するためには、リザードマン本隊を本拠地少し離れた場所に置くことになる。本拠地は手薄になるだろう。

 

「ガビルの隊がリザードマンの本拠地を奇襲したら一気に落とせる布陣に見えるな...」

 

あいつお調子者っぽいし、周りに乗せられたらやりかねないな。

「ラルタ。お前はどう思う?...............ラルタ?」

「ラルタの坊ちゃん?体調が悪いのか?」

 

トレイニーさんが去ってから、ラルタは1度も口を開かずに部屋の隅で椅子の上に体育座りで座っている。

どこを見ているのか分からないが、ぼーっとしている。あいつのあのモード...見た目怖いんだよなぁ。ガチで感情が死んでる。

カイジンが近づいて目の前で目をヒラヒラさせても、無視。

 

「おい、ラルタ!大丈夫か?」

「.........」

「おい、無視するなよ!」

 

どれだけ、声をかけてもピクリとも動かない。

こいつ...町の危機かもしれないってのが分かってないのか?ラルタは頭がキレるし、戦場にも出てもらいたいから作戦会議には参加して欲しいんだが...。

 

「おい!ラル「その可能性もあるんじゃない?」

 

もう一度、声をかけようとしたらラルタが急に立ち上がった。

 

「ラルタ?本当にどうかしたのか?」

「ん、いやー。別になんでもないよ。」

「いや、なんでもなくないだろ...。」

 

小首を傾げて、淡々と話す姿はいつもより覇気がない。声もどこか沈んでいるようだし。

 

「みんなは、死体を食べる魔物は嫌みたいだからさ。何があってもみんなの前で死肉なんて貪らないようにしようって決めただけ」

 

少し外の空気を吸ってくると言って、ラルタは出ていった。

 

 

.........やってしまった!

ラルタが死食鬼(グール)だということは覚えていたさ。

何度か自分から名乗ってるし、最初の頃カイジン達にそうやって紹介した。

だけど、死食鬼(グール)が死肉を主食とすることを完全に忘れてた。俺だって、ヴェルドラが封印されてた洞窟にいた時しか死肉を食べてるところを見たことがないんだ、他の奴らに関しては1度も見たことがないだろう。

周りを見ても、皆やってしまったという顔をしている。

「えっと、もしかして...俺たち、ラルタ様を傷つけちゃった感じですか」

「えぇ、多分」

 

ですよね、傷つけましたよね!

オーク達が死体を食ってるって話した時俺なんてすんごい顔顰めましたもんね!

てか、死肉ってラルタにとっての生命線だよね?

え、俺ラルタ自身を否定したようなもんじゃない?

「なぁ、謝ったらラルタ許してくれるかな」

「謝ってみないことには......」

 

完全にお通夜状態である。

「とっ、とりあえず先のことを考えないとな...」

「そっそうですね...」

 

 

 

 

 

やってしまった...。

いや、さすがに会議中に出てきちゃうのはまずいだろ俺のバカ。

別にいいじゃんか、オークが死体を食べてる事実を知ってみんなが顔を顰めるくらい。

みんなからしたら死体を食べるなんて概念ないんだし、リムルだって捕食者で取り飲むことはあっても口にはしない。

何、傷ついてるんだよ俺!

食べない派が圧倒的に多いんだからそっちに合わせるもんだろうが。

いや、でもなぁ。自分からしたら生きていくための生命線でもある行為を否定されるというのはなぁ。

いやいや、切り替えていこう。これに関しては俺が死食鬼としてこの世界に来た以上、一生背負っていかなきゃ行けない違いなんだ。

とりあえず、戻らないと。

深呼吸をして、来た道を引き返す。

 

会議室に戻ると、お通夜みたいな空気で会議が続けられていた。

「え、何この空気...」

「ラ、ラルタ様!」

入室と同時に全員が俺の名前を呼ぶ。

さすがに、さっきの態度はまずかったらしい。

 

「あっ、さっきはごめん。会議...ちゃんと参加するから」

「その、ラルタ様。先程のわたくし達の態度、ラルタ様を否定するような形になってしまい...申し訳ございません」

 

そして、全員が頭を下げてきた。

勘弁してくれ、俺に頭なんて下げなくていいから!

「頭上げて!さっきのは俺が全部悪いから。死体なんて俺以外食べないんだしさ。俺が逆に理解を求めるようなことを言ったんだ、俺が謝るよ」

 

その後、なんとか空気を変えることができて会議はスムーズに進んだ。

俺は誓った、みんなの前で死体を食わない。そして、変な拗ね方はしないと。

マジで、ギスギス感が凄かったんだ...もうあの空気は味わいたくない。

 

 

 

 

 

翌日。豚頭帝(オークロード)の討伐を行うことが正式に町のみんなに伝えられることになった。

なったのだが...

 

「ぶっ、ふふ。あははは!」

「てめぇ、ラルタ!笑ってんじゃねぇよ!」

「いや、笑うなって方が無理あるだろ」

 

なんともまぁ、素晴らしいお神輿にスライム形態のリムルが乗っている。

さすがこの町の主、風格が違う。

「ほら、リムル。話し始めて」

「ニヤニヤしやがって...」

 

リムルが1つ咳払いをして、オーク軍討伐の経緯と作戦を話し出す。

こちらは少数精鋭でリザードマンと合流し、オーク軍と衝突し、リムルが豚頭帝(オークロード)を討伐する。

作戦が失敗した場合は、トレントの集落に落ち延びる事になる。

簡潔にまとめられた作戦は、昨夜会議で入念に練られたものである。

町の者たちは雄叫びを上げる。

 

続いて、作戦に参加する者達が発表される。

リムルと俺、ランガ、シュナとクロベエを除く鬼人族。そして狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)100組。

町の防衛にはリグルを中心に残った狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)がつく。

町全体で戦準備を始めることとなった。

 

 

 

 

 

戦準備の傍ら、俺とリムルの私服が作られた。

どうやら、リムルが俺の分も頼んだようなのだ。

着物っぽいものから、ラフな服など色々。

一体いつから作り出したのか、結構な量の服が渡された。中にはリムルとお揃いのものもいくつかある。

今着ているのは、紺色のワイシャツに黒色のセーターという前世でも来ていたような物だ。

ズボンもラフなもので踝が出たものになっている。

俺にも服を作ってくれたことは嬉しいとは思うけれど...。

リムル、俺が首元に布が当たるの苦手なの言わなかったな。

セーターはいつも通り三角筋がある辺りで止めればいいのだが、ワイシャツはボタンを開けても首にあたる。

これは慣れるしかないかな...。

どうやらシュナとシオンは俺の服は今着てるみたいなテイストでこれからも作って行くようなので、荒治療で治るしかないだろう。

上着?無理。ワイシャツがめちゃくちゃ上品な生地でできてるから慣らそうとしてるだけで、上着の生地は多分慣れることは無理。

シュナも可愛い着こなしですねって言ってたし、多分こうやって着る前提でデザインしてくれるだろう。

先程まではリムルとお人形さんをしていた訳だが、リムルに女ものの服が渡されたところで逃げてきた。

俺は、リムルと違ってきちんと男性体だからあんなフリフリワンピースは着ない。

もらった服は普段着にしようと思っているものだけ諂諛者で収納して、着物などは部屋に置いた。

 

森を歩いていると、いつもの川沿いに着いた。

ふむ、せっかくだし戦準備として新しいことを試そうかな。

実は、最近新しいスキルを獲得したのである。

リムルにお願いして、シズの持っていたユニークスキル「変質者」の構成データを送ってもらい、俺と助言者で俺に合わせてスキルを作ったのである。

作ったと簡単に言っているが、結構大変だった...。

さて、新しく手に入れたユニークスキル。

その名も「変貌者」

やれることは至ってシンプル。

スキルやら魔法を統合したり分解したりして、新しいものを得ることができる。

まぁ、変質者をベースに作ってるからだいたいは一緒なんだけど...。

実はこれ、結構便利で精霊魔法を契約なしで打つことができる。

元素魔法を習得した後、他にも何か欲しいなと思って精霊魔法というものに手を出してみた。

精霊魔法というのは本来、精霊と契約することで使える魔法なのだけれども。

もちろん最初は精霊と契約して簡単なデータを取得しなければいけないのだけれど。

下位精霊なら案外そこら辺にいる。

だから、大体の属性の下位精霊と一時的に契約して助言者にデータを集めてある。

そのデータを元に元素魔法の原理と俺の魔素を掛け合わせて、いちいち精霊と何かしなくても精霊魔法が使えるのである。

意味があるのかと聞かれれば、ある。

俺が精霊魔法を撃つ分にはあんまり大差は無いけれど、諂諛者に撃たせる場合は多いにある。

諂諛者はいちいち精霊と契約なんてできないし、俺が契約して諂諛者に送るのも手間でしかない。

模倣された精霊魔法といった方がいいのかもしれないけど。

精霊の力を借りてる訳じゃなくて、発火源は俺の魔素なので、元素魔法と感覚は変わらない。

 

 

昨日やっと、助言者から全部の解析が終わったと報告を受けたので、試しに打って見る。

よし、まずはイフリートが使ってた魔法を試してみよう。

川に向かって手を伸ばすと、そこに赤い魔法陣が浮かぶ。

精霊はいない。完全に俺の魔素のみで発動された魔法陣である。

 

(炎火爆獄陣(フレアサークル))

魔法陣から炎が吹き上がる。川の水が蒸発したのかシュュっと音がなる。

なかなかの威力だけど、やっぱり精霊と契約してやるよりは威力が下がるな。

これは俺の強さに影響してるんだろう。

色々、魔物を食べて魔素を増やしていかないと行けないな。

このユニークスキルは色んなスキルと魔法を掛け合わせて新しい魔法も作れるらしいから色々試したい。

リムルから声をかけられるまでは練習するかな。

頑張るぞ、助言者。

《了》

 

 




ステータス
名前:ラルタ=テンペスト
種族:死食鬼
加護:暴風の紋章
称号:魔物を支える者
魔法:元素魔法、精霊魔法
ユニークスキル:諂諛者、助言者、変貌者
エクストラスキル:魔力感知
獲得スキル:熱源感知、毒霧吐息、身体装甲
耐性:物理攻撃耐性、痛覚無効、熱変動耐性ex、毒耐性



自分にはない習慣や思考って知識としてあっても、ふとした時には忘れてますよね。
精霊魔法を模倣って多分いけると思うんですけどどうですかね、神聖魔法を模倣してた人もいますし...。
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