転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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100話...簡易的会議

「大丈夫、何となくお前とは食の好みは合いそうだ。ただの勘だけどね」

 

この男を表す言葉は多分“クソガキ”が適当だろう。最大限こちらをイラつかせる笑みと声色で、死食鬼(グール)が人間と食の好みが合うと宣う。

セイヤ・カミシロというクソガキさをこれでもかと含んだ“歩み寄り”。

はっきりいって下手くそだ。これでも人と歩み寄る事ができるようになった、所謂成長した段階であると思うとこれから先が思いやられる。お生憎様、セイヤの勘はこれから先の未来で否定されるだろう。

 

 

そんな男が皇帝の御膳に出るとなれば自分としても頭痛が痛い。

何故ならばクソガキの親 セイジ・カミシロが皇帝の御膳にて行ったのは正しく愚行であったからだ。

まず頭は下げない。許可なく話し出す。敬語を使わない。あまつさえ、皇帝のご尊顔を隠すその御簾を焼き払おうとする。

勿論、その場に居合わせた上層階級は皆口を揃えて非難を浴びせた。まぁ、それは全くセイジという男には響かなかったのだが。

 

嫌な予感は見事に的中した。

親が親なら子も子である。

セイヤは御簾こそ焼き払おうとはしなかったが、それ以外はきちんとやってくれた。

本当に血縁関係で無いのか確認したくなってきた。

 

 

「問おう。お前は余の軍がテンペストに勝ると思うか?」

「無い。絶対に無理だね」

「理由を聞こうか」

「戦争が数でものを言わせるのは一定の強さまでだ。皇帝含め、この国の連中はリムルを蜥蜴に隠れた水滴か何かだと思ってるかもしれないが...スライムと見くびった先にあるのは“死”だけだ。だいたい──────」

「さっきから聞いてりゃあなんだ!?」

「はぁ...人が話してる時になんだ? 噛ませ犬なら、ワンとだけ吼えろよ」

 

 

セイヤの声を遮って、一人の部隊長が声を上げた。

実力は確かだが、特質するほどとは言えない。その程度の男が何を思ったか危険物体に手を出した。愚かな事だ。

危険物体は扱い方を知らなければ、四方八方に牙を剥くと言うのに。

 

「テメェ魔法が得意らしいじゃねぇか。残念だったなぁ、この国には“科学”があんだ。魔法なんて粗末なもんは必要とされてねーんだよ」

「...科学? あぁ、お前機甲軍団の部隊長なのか。使用してるオイルの匂いでも嗅ぎすぎて、脳細胞が死んだのか? 魔法がどうこうは別に個人の主観だから何を言おうと構わないが...扱いキレもしない技術をあたかも自分の力のように語るのは問屋が卸さないぞ。いっその事その皮膚全部剥がして、お得意の科学とやらで生まれ変わるといい。その頃にはお前はお前でなくなるだろうが、素晴らしき科学の結晶になれると思えば光栄じゃないか?

必要も何も、俺だって科学なんざ必要としていない。必要なのはそれを理解し、扱う事のできる人材だ。そしてお前はそれに該当しない。

前述した通り、お前は皮膚を機械にすり替えて、使われる道具にでも成り果てなきゃ必要性がないという訳だ。

それからもう一つ...俺はそれなりに魔法が得意だと自負している。まぁ、剣の才が絶望的になかったから魔法にシフトチェンジしただけだけども。極めれるものは極めきるタチなんでな。

お前が扱う科学じゃあ、俺には勝てないよ?

何だ? そんな顔をして。茹でダコみたいだな...それとも、顔周辺に血を溜めて俺に食べてとでも行ってるのかな。いいよ、食べてあげる。

───来いよ、俺を殺してもいいぞ? ははっ」

 

 

長たらしく意味の分かりづらい、ただ煽っていることだけがヒシヒシと伝わる言い草に部隊長の我慢が底を尽きた。

馬鹿は不十分な装備で危険物体へと突撃する。

その場に居合わせた序列上位者は軒並みその男の愚かさを笑い、そしてセイヤという男の魔法に目を見開いた。

 

突撃した剣が、セイヤに振り下ろされることは無かった。

剣が床へと落ち、カラカラと成る。なし崩しに持ち主であった部隊長の体も床に倒れる。

 

上位者はその目で見てしまった。

魔法を無効にする科学の鎧を身にまとった男が、魔法によって殺される瞬間を。

 

雄叫びと共に突撃した部隊長は、セイヤの元までたどり着く前にその足を停止させた。

バチッと少し静電気の様な音がした後、剣が手から滑り落ちる。次に現れた魔法陣は雷属性の物であり、男の心臓を起点に生成されていた。

後は流れるまま。体内に縮小した魔法陣が効力を発揮する。

体内で発生した雷撃は、鎧を突き破り血肉を空へと飛ばす。その男が最後に、自身の体内に落ちた落雷の音を聞いたのかは不明である。

 

 

「やっぱり噛ませ犬だったな。はぁ...お前だろ、機甲軍団の大将様───カリギュリオ。

仮にも部下を新入りの実力試しに使うとは関心しないな」

「ふっ、何をおっしゃいますかなセイヤ殿。

今回の失態は、その男の独断でございます」

「バレバレな嘘をつくなよ。部隊長が俺を襲ったという事象がある以上、お前の嘘は俺に筒抜けだぞ」

「仮にセイヤ殿の言い分が正しかったとして、何か不都合がおありですかな」

「はぁ...まぁ確かに無い。で? 結果にはご満足頂けましたか? 大将様......」

「えぇ...大いに」

 

カリギュリオの眼帯で隠されていない方の目が訝しげに細められる。品定めといったところだろうか。

実際、今自分もカリギュリオと同じ目をセイヤに向けていることだろう。

セイヤの魔法は何処までも異質だった。

無効を無効するという破天荒さ。常に書き換わり続ける法則の歪な魔法陣。

何よりも序列上位者が目にしたのは、部隊長の魔素が体内で雷を落としたという事実。

セイヤのそれを“魔法”と呼ぶのは違うのでは無いか、そんな思案すらあった。

 

 

しかし『力こそ全て』皇帝はその様を気に入ったらしい。

 

「セイヤ、先程の話の続きを申せ」

「......何処まで話したっけ。あぁそうそう、だいたいあのスライムが強いか弱いかの前にその部下に東の帝国は壊滅させられる。

想像出来るか? 原初の悪魔が“四体” 、どうやって始末するつもりだ。お前達がこれから相手にするスライムの部下は殆ど全て“魔王種”何だぞ」

「待て」

「何だよ、タツヤ。俺今ルンルンで喋ってんの」

「いいから待て、今...君は原初の悪魔を四体と言ったか? 原初の(ノワール) ディアブロと言う悪魔が居るのは知っている。だが......」

「知らなくて当然だろ。だって今だよ? リムルの部下に原初の悪魔が三体追加されたの。

原初の(ブラン) テスタロッサ

原初の(ジョーヌ) カルラ

原初の(ヴィオレ) ウルティマ

全員もれなく名を貰って進化してる。どうするの?皇帝、東の帝国は勝てると思ってるのか?」

「............セイジは今どうしている?」

「え、父さんなら今仕事中だけど」

「仕事?」

「そう。シルトロッゾ王国の王族様を始末しにね。魔王ルミナスと縁があったらしいし、父さんならついでに西方聖教会をぐちゃぐちゃにするんじゃない?」

「そうか。いや何、ならば軍人を全員仙人程度まであげてしまおうと思った迄だ。セイジに伝えろ、実践でしか登り詰められない仙人よりも簡単にそして強くなる方法を考え実践せよと」

「自分で言ってくれる? そういう父さんを使いっ走る話なら」

「任せたぞ」

「こいつ......人の話もろくに聞けないのか」

「それから」

「何だよ」

「お前に将帥の称号を与える」

「えっ要らない」

「元帥 ヴェルグリンドと共に作戦立案を行え」

「えっ嫌だ」

「以上だ。期待しているぞ?」

「えーねぇヤダ」

 

 

最高権力である皇帝からの信任を嫌だと突っぱねるセイヤに周りはイラつき出している。

昨日やってきたばかりの新人が、近衛軍に所属しましてや信任を得るなどという非常事態もそのイラつきに拍車をかけているのだろう。

 

皇帝がチラリと自分に目配せする。

察してはいたが、セイヤは上司の命令は聞いても上司の上司の命令は聞かないタチらしい。

 

「セイヤ」

「なんですか、タツヤ中尉」

「陛下からの信任だ。受け取れ」

「............はーい」

 

 

セイヤは東の帝国始まって以来、最も不服そうに信任を得た者であろう。

 

これから先、東の帝国は大きく変わると予感される。それだけの異分子を、たった今我が国は受け入れた。

それが良き方に行くか悪い方に行くかは定かでは無いが、きっと誰も予想し得ない未来へと今一歩踏み出したのだ。




記念すべき100話がクソほどつまらん話になってしまった......。
もしお手隙でしたら、100話おめでとうと言ってくださいませ皆様方。
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