転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第11話...出陣の鬨

今、俺たちは工房を訪れている。

リムルが少し前から頼んでいた防具やら、武器やらが完成したのだ。

各々が受け取った服はどれも素晴らしい出来で、とても似合っている。

俺に渡された服は、黒のジャケットとズボン、白のワイシャツというシンプル目のもの。

ジャケットは大きめに作って貰っている上に、肩まで着ていないせいで完全に萌え袖になっている。

シンプル目と言っても、様々なところで手が込んでいて、ジャケットの袖には金の刺繍が施されているし、臙脂色の石のついたループタイまで貰った。

 

「シュナ?こんなに丁寧に作ってくれなくても良かったのに...」

「いえいえ、わたくしが作りたかったのです。お似合いですよ」

 

シュナがズボンの裾を踝が見えるところまで折り返してくれる。

ジャケットやらは社交的な作りなのに、このダボッと感やら俺の着崩し方はマナー講師なんてものが見たら激怒間違いなしだ。

まぁ、怒られても知らないんだけど...。

首にあたるワイシャツの感覚にやっと慣れたんだ、俺は十分がんばった。

 

「へぇ、随分似合ってるじゃないか。ラルタ」

「リムル。リムルも似合ってるよ」

 

リムルは青を基調としたコートやブーツを身につけている。どうやらリムルも皆の服の出来に大満足のようだ。

 

 

クロベエからはそれぞれの要望通りの刀が渡された。

リムルには直刀、ベニマルには太刀、ハクロウには仕込み刀、シオンには大太刀、そしてソウエイには2本の忍刀。

どれもこれも、魔鋼から作られた1級品である。

それにしても、あの大太刀シオンの身長くらいの大きさがあるけれど。カイジンですら両手で何とか持ち上げていたが、なんとシオンは片手でヒョイッと持ち上げてしまった。

鬼人って怪力しかいないのか...。

頭蓋骨とか片手でかち割れそうだな、怖。

 

「ラルタ様にもお渡ししたいものがあるんだべ。ちょと待っててくだせぇ」

「えっ、俺刀は...」

「いいから、ラルタ。大人しく待ってろって」

 

全員に武器の説明を終えたクロベエが急に俺にも武器を渡すと言って裏に戻って行った。

クロベエを止めに入ろうとすると、逆にリムルにとめられた。

それに心無しか、他の鬼人達もニコニコしている。

俺は刀、特に直刀に当たる剣を使う事が出来ない。単純に下手くそなのだ。

 

「リムル、刀なんて貰っても俺は...」

「別に誰も刀なんて言ってないだろ?」

「え?」

 

どうやら俺に渡してくれるのは刀では無いらしい。だったら一体何を?

 

「ラルタ様、これだべ」

ニコニコと笑いながら、クロベエが渡してきたのは布に包まれた棒状のもの。

大体160cmはありそうだ。

 

「ほらラルタ。広げて見ろよ」

リムルやらクロベエやらに急かされて、俺は布を広げる。

そこにあったのは、杖だった。

光沢の入ったダークブラウンの杖には、派手な装飾品は着いていないが丁寧な彫刻が刻まれている。

そして、杖の先には同じダークブラウンで作られたランタンが着いていた。

これも、見事な彫刻が刻まれていて中には薄らと輝いている石が真ん中で浮いている。

この石は、リムルの刀に付いてるやつと同じやつだ。

 

「え...これ」

「お前の杖だよ。皆でデザインを考えたんだ」

 

両手でゆっくりと持ち上げると、俺の魔素が馴染んでいくのがわかる。

数秒後、ランタンに明かりが灯った。

石を中心にして、白い光が炎のよに揺らめいている。

俺のために...皆が考えてくれた。俺だけの杖。

 

ダメだ、顔が過去最高に緩んでいる。

だってこんなにも嬉しいんだ。

顔をあげて、皆にお礼を言う。きっとだらしない顔をしているし、ハキハキと話せてもいない。でも、俺が心の底から嬉しいって思ってることは伝わってると思う。

杖を背中側で横にして持つ。

 

「どう、似合ってる?」

「もちろん、最高に似合ってる」

「そっか...」

 

杖を強く握るとやる気が満ち溢れて来る。

準備が整った、後は湿地帯に行ってオーク達を蹴散らせばいいだけ。

あぁ、負ける気がしない。

 

 

 

 

 

 

リムルと一緒にランガに乗って湿地帯へと向かう。ランガは俺が背中に乗ると言った時に上機嫌にしっぽを降っていた。

そういうばランガには今まで1度も乗ったことがなかった気がする。

こんなに喜んでもらえるのならたまには乗ってやってもいいかもしれない。

他の者も、これから戦ということで随分と高揚しているようだ。

 

町を出発してから3日、嵐牙狼族(テンペストウルフ)のおかげで順調に湿地帯に近づいてきている。

野営支度の最中、リムルにソウエイからリザードマンの首領の側近がオークの集団に襲われているという報告が入った。

野営を中止して、俺とリムルはランガの影移動でソウエイの所まで向かう。

まぁ、何体もいたオークはベニマル達が片してしまったし、情報収集のためにソウエイ生かしておいた上位個体はシオンが大太刀で切り伏せてしまったんだが。

ついでにランガの影移動の技術を頂いておいた。実はまだ覚えてなかったんだよね。

 

リムルの回復薬で側近の子を治療してやって事情を聞くと、ガビルが謀反を起こして首領を幽閉してしまったそうだ。

ガビルは引き入れたゴブリン達を連れてオーク軍を退ける気らしいが、このままではリザードマンの滅亡は約束されたものだそう。

というか、あの兄とは比べ物にならないほど礼儀正しい妹である。

なんであいつだけあんなにバカなのか。

リムルはこのリザードマンを首領の代理として認め、同盟を締結。

力を貸し、首領も助け出してやるそうだ。

 

「ラルタ、ソウエイ。2人で首領のところまで行ってきてくれ。同盟相手を助けに行くのは当然だろ?」

 

どうやら首領を助けに行くのは俺らしい。まぁソウエイもいるし面倒なことにはならないだろう。

俺が湿地帯で暴れられるのはもう少しあとらしい。

 

 




ステータス
名前:ラルタ=テンペスト
種族:死食鬼
加護:暴風の紋章
称号:魔物を支える者
魔法:元素魔法、精霊魔法
ユニークスキル:諂諛者、助言者、変貌者
エクストラスキル:魔力感知
獲得スキル:熱源感知、毒霧吐息、身体装甲、影移動
耐性:物理攻撃耐性、痛覚無効、熱変動耐性ex、毒耐性

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