転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第41話...後遺症

俺は何を見せられてるんだろうか。

奇跡か必然か。

 

空間移動を使いテンペストへと戻ってきてみれば、リムルの皮を被った大賢者...いや、正確に言えば大賢者を超えた存在が死体の並べられた広場の中心に立っていた。

ベニマル達は全員眠りにつき、町は静寂に包まれている。

 

空から見下ろす俺の横を、一つの魂が通り過ぎる。それが、リムルの“代行者”へと集まっていく。これから始まるのが世界から逸脱した神秘であることがありありと分かった。分かってしまった。

 

『既定の魔素量に達したことを確認しました。これより“反魂の秘術”を再開します』

 

──────反魂の秘術

死者蘇生の秘術

それらの秘術を行使するには莫大な魔素量が必要となり、それを制御する魔力は想像を絶するものとなる。

 

 

結局はリムル一人で全てが解決してしまう。

あれだけの魔素量、きっとリムルも真なる魔王に至ったのだろう。

一万の魂が必要な進化を、リムルは仲間のためにやり遂げた。そして魔王となってシオン達を蘇生する。

 

俺みたいに魔王に“なっちゃった”無価値な奴とはあり方が違いすぎる。

同じくらいの強さのはずなのに、どうしてこうも自分が惨めなのか。

 

朝日が昇る。

その日が、俺以外の全てを照らしている。

 

「あーあ、なんで...帰ってきちゃったんだろ」

 

 

低位活動状態(スリープモード)に入り、リムルがスライムの姿に戻った。シオン達が生き返って嬉しいはずなのに喜びきれない自分が酷く憎い。

気づいていた、少しだけシオン達に嫉妬していることに。リムルにとって生きている俺より死んでるシオン達の方が優先度が高いんだって思って...。「気にするな」なんて言っても本当は迎えに来てくれるのを待っていた。けれど待てど来てくれなかったリムルは死体にかまけていた訳だ。

俺はこんなに醜い思考をする奴だったのか...シオンが死んで泣いてた過去の自分が見たらびっくりするだろうな。

 

 

「で、お前はなんで俺の横に座ってる訳?」

「クッフフ、つれませんね」

「この杖は一人用なんだよ。どいつもこいつも勝手に座りやがって。で?お前誰だよ」

「名も持たぬしがない悪魔です」

「しがない、ねぇ。どうせお前リムルに召喚された悪魔だろ...リムルが魔王になるために殺した人間を差し出されたか?」

「鋭い考察、お見事です」

「ちっ、一言一言癪に障る」

 

「そう仰らずに」と言って悪魔が俺を覗き込んだ。その瞬間、視界にノイズが走った。

悪魔の黒と黄色の配色をした目が黒い影に揺れて俺を見つめている。──────俺に危害を加える影。

 

「俺を見るな!」

 

俺を覗き込む影を振り払って、悪魔を見れば影は形を戻し飄々とした悪魔がそこに座っていた。

......目が、見れない。

さっきのは幻覚だろうか。どうしてこんなにも目が怖いのだろうか。前まで目を見るだけで読み取れた感情が、今はもう分からない。その目が俺を責め立てている。

 

「大丈夫ですか?随分と息が上がっていますが」

「......はっ...大丈夫、何も無い。お前はもう降りろ、俺も降りるから」

 

心配してる風の悪魔が杖から降りて空中で立っている。浮けるんだったら最初から座らないで欲しい。俺の杖は公用のベンチじゃない。

 

 

杖から降りて、眠っているベニマルの横に降り立つ。なんだか懐かしい気分だ。前はよく進化の眠りについたゴブリンやオーガを眺めていた。

 

 

「あ!ラルタの坊ちゃん!!帰ってきたんでやんすか!攫われたって聞いてたのに...」

「えっラルタさん!?無事なのぉ?怪我は無い?」

 

眠っていた者たちを運んでいたエレン達が俺に気がついて駆け寄ってくる。きっと、テンペストの危機を聞きつけてやってきたんだろう。本当に心配してくれていたのか、安心したような顔でエレンが俺を抱きしめた。

 

また、ノイズが走った。

黒い影が俺の体に纏わりついている。人肌の程よい温度が気持ち悪くて、吐き気がする。

 

「......エレン、まだ本調子じゃないんだ。だから、その...離して」

「あっ!ごめんねぇ、ラルタさんのこと本当に心配で...」

 

影が離れれば、それはいつものエレンに戻っていた。エレンとギドとカバル、いつもの三人組の笑い声が耳に届く度、気分が悪くなる。その笑顔も笑い声もまるで俺を責めているようで。

 

拷問の後遺症だろうか。

ヒエラルテめ、面倒なものを置いていきやがった。

 

「少し、部屋で休む。ベニマル達が起きてきたら俺が帰ってきたって伝えて」

「了解でやんす!でもいいんでやんすか?感動の再会とかやらなくて」

「そういうのは柄じゃないから」

「それもそうでやんすね!」

 

手を振って広場から離れる。

部屋に戻るのは本当だが、その前に一つだけやらなきゃいけないことがあった。だから私室とは別の方向に足を向けた。

 

 

 

 

 

 

──────見つけた。

建物の影でヨウムと話をしているミュウラン。

 

「久しぶりかな?クソ女」

「なっ、ラルタさん!あんた無事だったのか!?」

「お前には用はないんだよ、ヨウム。俺が用があるのはその女だけ」

「待ってくれ、ラルタさん。話をしよう」

「話すことなんてない」

 

ミュウランの体が浮かび上がる。

随分と苦しいんだろう、呻き声をあげて顔を歪ませている。

 

進化するにあたって、内撃魔法にも変化があった。相手が俺に恐怖していなくても、体内に魔素がある魔人や魔物だったら無条件にその魔素を書き換えて魔法が使える。

島で人間達にしたみたいに綺麗な花火にしてやる。ヨウムは愛した女の臓物を浴びてどんな顔をするだろうか。

 

《告。リムル=テンペストが作成した擬似心臓を感知しました。ミュウランを殺すことは叛逆と見なされる可能性があります。》

 

...リムル。

本当にやることが一々俺と反対になる。しかもこの擬似心臓、支配するという意図が全くない本当に鼓動するためだけにある。

 

「はっはは、ヨウムゥ?良くもまぁリムルの懐に入ったじゃんか。やっぱり平和ボケした単細胞には信頼だとか愛だとか、そういう巫山戯た感情はいい餌になるのかな?」

「あんたの言いたいことはわかるよ!約束したのは俺だ!でも結果的には誰も死んでないだろ!?だから...」

「結果主義の思考は嫌いじゃないよ。でもさぁ、リムルが許したから俺も許さなきゃいけないわけ?本当、この国はリムルと違う意見を言うことが許されない場所だな」

 

宙に浮いていたミュウランを引き寄せて、俺の足元に落とす。のうのうと脈をうつ首筋を踏みつけた。

 

「あ゛...」

「失望したよ、ヨウム。お前と俺の関係もここまでだな」

「ラルタ、さん」

「はっ、英雄ヨウムとその御一行。これからもテンペストに利益のある行動を期待してるよ。さようなら」

 

腹を蹴り飛ばされたミュウランが鈍い音を立ててヨウムの場所まで転がる。

ミュウラン労わるように抱きとめるヨウムの目は何か言いたげで、けれどもその目からはやっぱり何も分からなかった。

 

紡いできた関係の一つがちぎれた。

 

 

 

 

久々に感じる目覚めの感覚。

 

「あ!お目覚めになられたのですね」

 

懐かしい声と背中に感じる懐かしい感触。あぁ、蘇生は上手くいったらしい。この笑顔が見たかった。

 

「おはようございます、リムル様!」

「...おはようシオン。無事に生き返ったようで何よりだ」

「はいっリムル様のお陰で!ご覧下さい」

 

──────「我ら一同、一名の欠落もなく無事に生還いたしました!!」

 

みんな、笑ってる。

誰も血を流してない。

...良かった。本当に良かった。

 

大賢者のヤツ、円周率並の成功率などと心配させやがって...

 

「リムル様!」

「ベニマル」

「良かった、もうお目覚めでしたか。色々と報告と...それから良い知らせがあるのですが、その前に、目覚めた後の約束を覚えておいでですか?」

「ああ、そうだったな」

 

俺が理性のない魔王になっていないか、合言葉で確認する約束だ。ベニマルが「シオンの料理は?」と問えば俺が「クソ不味い」と答える。シオンが嫌がるだろうから、聞かれないうちに済ませてしまおう。

 

「では問います。『シオンの料理は?』」

「『クソ下「え?私の料理がどうしましたか?」

 

は!?ま...まずい!

この状況は非常にまずい!!

クソッベニマルのヤツ嵌めやがったな!!なんだあの顔、ニヤニヤしやがって...

 

落ち着け、こんな時こそ「大賢者」だ。

おい 大賢...ん?あれ?

 

大賢者にアクセスしようとして気づく。

大賢者が無くなってる!?あと知らないのが増えてる...

 

《告。ユニークスキル「大賢者」は究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)」へと進化しました。》

えっ!?

《急を要する案件のため智慧之王(ラファエル)が対策を提案します。》

えっあ、うん

 

「久々に食べたいのだろう。お前の日頃の努力を確かめてくださるそうだ」

「なるほど!それで私に料理しておけと言ったのですね」

「無論俺は遠慮す「待ちたまえベニマル君。合言葉だったね、もちろん覚えているとも。“ベニマル君が決めた”合言葉は確か...『シオンの料理はクソ不味い』だったかな」

 

はっはっは!どうだベニマル!!

 

「まっ待てシオン!リムル様は目覚めたばかりで混乱されておられるのだ!」

「わかりました...ベニマル。貴方がそんなに私の料理を食べたがっていたとは...遠慮など無用、満腹になるまで堪能させて差し上げましょう」

 

こっわ...すっごい笑み浮かべて去ってったんだけど。智慧之王(ラファエル)...さすがだ。ここで普通にクソ不味いと答えていたらどうなったことか。

 

 

「ねぇ、さすがに目覚めて一番にその茶番はキツくない?」

「...っ!」

「おはよう、リムル」

「............ラルタ」

 

俺を覆うように落ちた影。

ずっと不安でだけど帰ってきてくれると信じていた、俺の大事な友達。

...良かった。これで、本当にテンペストの皆が揃った。

 

「......おかえり!ラルタ!」

「..............................ごめん、俺は町に残ってたのに何も出来なかった」

「気にすんなって!色々大変だったんだろ?事情は簡単に聞いてる。お前は何も悪くないよ」

「リグルドが今祭りの準備をしてる。終わったら俺は色々お前に報告しないといけはい。まぁ、急を要する話じゃないから後々ね」

 

ラルタはどこか疲れた顔で遠くを見てる。今はスライムの姿だから目はないんだが、なんというか目が合わない。

やっぱり攫われた先で色々あったのだろうか。祭りの賑やさがラルタの疲れを吹っ飛ばしてくれればいいんだが...。

 

「リムル様、我らもご挨拶を...」

「ん?ああ、もちろんだ」

 

「じゃ、また後で。俺は一回部屋に戻るよ」

「わかった。ゆっくり休めよ、ラルタ」

「...うん」




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