「お帰り、リムル。そちらは?」
「あっあぁ、紹介はするんだが...こいつらは?」
リムルは4人のドワーフ族を連れて帰っきた。
交渉はどうやら上手くいったみたいだ。
今リムルは目の前にいる500人位のゴブリンを見て驚愕している。もしこの立場が俺でも、自分が主の村に帰ってきたらしい見知らぬやつが大量にいたら同じ反応をしていただろう。
「リムルに守護して欲しいんだって。詳しい話は部屋でしよう」
「あっ、ああ。カイジン、先にこいつと少し話をするから村を見て回っててくれ」
「あいよ、リムルの旦那」
呼び方からして、結構仲がいいらしい。
2人で部屋に戻ってゴブリン達がやってきた理由を説明した。どこか渋い顔をしているような気がするが、怒られるかな。
「いや、でもヴェルドラの消失の原因は俺だもんな...。ラルタも色々考えてあいつらを受け入れることにしたみたいだし...」
結局、原因が自分にあることが決定打となって受け入れることにしたようだ。後で名付けも行うらしい。俺は名付けはしないが立ち会うくらいはしよう。
「リムル様、ラルタ様!一通り案内終わっちゃったんすけどどうします?」
「入ってくれて構わないぞ」
部屋に入ってきたのはゴブタとドワーフ族の4人だった。
「ゴブタ、確かお前もドワーフ王国に行ってたんだよな。お疲れ様」
「そうなんすよ!もう本っ当に疲れたんす!」
「あぁ、後で愚痴くらいなら聞いてやる」
ゴブタが部屋を出て、全員が腰掛けたところでリムルがドワーフ王国での出来事を話してくれた。
「そんなこんなで、やってきたのがこいつらだ。まず、防具製作職人のカイジン。それから三兄弟の長男ガルム、次男ドルド、三男ミルドだ!」
「そんなこんなじゃないんだよ。なんで、裁判なんて受けてるの?馬鹿なの?」
国の大臣を殴ればそりゃあ、裁判にもなる。
村の主が何をしてるんだとか、行動が迂闊すぎるだとか、エルフと遊んでる場合じゃないだろとか言いたいことは沢山あった。
けど、目的も達成できたようだしグチグチ言うのはやめておくことにした。
「俺は、ラルタ=テンペスト。リムルの助手をやってる」
俺が握手を求めると、カイジンが屈託も無い笑みで手を取った。
「よろしくな、ラルタの坊ちゃん。リムルの旦那から話は聞いてるよ。死食鬼だってこともな」
「あぁ、聞いてるのか。なら話は早い。こっちの姿も見せておこう」
坊ちゃんという呼び方が気になるが、もうこの際どうでもいい
俺は人化を解いて4人を見やる。
「お前たちのことを食ったりはしない、安心して生活してくれ」
その後、1時間ほど話し合いをした。
新しく500人程のゴブリンを迎えた事で村の敷地は明らかに足りない。
その為、引越しをすることに決まった。場所は利便性やこれからの開拓を考えて封印の洞窟近くにすることにした。
この後、広場で全員の合意を得たのち、建築に詳しいミルドを中心に測量班を作り先に向かわせることにすことにした。
結局、リムルの案ということもあり引越しに異議を唱える者はなく測量班は直ちに新天地となる土地へと向かっていった。
残ったもの達は、衣類や細工の製作技術を教わっていた。何人かはとても興味を持っていたみたいだし、この村の生活水準の向上は約束されたものになった。
数日後、俺たちは長い行列を作って新天地へと向かったのだった。
新天地に移住してから数日後、俺はリムルとは別にある事を推し進めていた。
「医術革新」
実は、初めてゴブリン達と出会った時から怪我の処置の仕方が気になっていた。
止血、消毒などが十分にされずただ包帯を巻いただけのようだった応急処置。熱を出していたゴブリンもいて、解熱剤なんてものももちろんなかった。
スラムにいた頃も、怪我をしてそこから病気になって死んでいった奴は何人もいた。
回復薬で簡単に直せるけれど、いつまでも甘えていられては困る。
だから俺は、志願者を集めて治療の仕方を教えたり、森に生えた草などでできる薬を開発することにした。
今では、ある一つのテントを病院として使っていて、かすり傷をおった者はみんなここに来る。
助言者と開発した薬も、ゴブリナ達だけで調合できるように指導したし、薬草や薬品の保管をするための倉庫もミドルに頼んであり、そろそろ完成するようだ。
「森の開拓も順調だな」
「リムルが連れてきた4人、想像以上に優秀だったね」
「あぁ、俺も連れてきて良かったとつくづく思ってるよ」
今、俺たちはリムルの部屋で話をしていた。リムルが推し進めている水路の事とか、俺が開発した薬の事とか。
新天地に来てから色んな物が新しくなった。今話している部屋も仮設テントではあるけど、前の村にいた時の何倍も綺麗になった。隣にある俺の部屋もそう。
それから、俺の着てる服。
木の繊維で作った服から、ガルムの作ってくれた服に変わった。
白いV字Tシャツにダボっとした黒のズボン。
毛皮で作ってある上着は肩にはかけず腕に通した所で止まっている。
ちなみに、この羽織方を最初はリムルに注意されたけど今は何も言ってこないので諦めたんだと思う。
他の皆も、文化的な服装が出来ているようだ。
「リムル様、ラルタ様!」
たわいもない話を続けていたところに、リグルドが駆け込んできた。
森で
「ご苦労だったな。そいつらに会ってみるか。ラルタ、お前はどうする?」
「人間ね...。リムルが会うんだろ、なら俺も行くよ」
俺は、人化を解きながら椅子を降りる。
町に危害を加えられるようなら追い出さなくちゃいけないしね。
そう警戒してたんだが...。うん、なんとも能天気に焼肉をしていた。仮にもここは魔物の町なんだが、こいつらは相当馬鹿なのかもしれない。
それによく見ると、こいつらは洞窟で見かけた3人組だ。リムルも覚えているだろう。
仮面の女はいなかった気がするが、新しい仲間か?
「お客人達、大したもてなしは出来ませんが寛いで頂けてますかな?
こちらは我らの主、リムル様。そしてラルタ様である!」
「えっ、主...。スライムが?」
リムルが主であることに驚きを隠せないらしい。でも、よくよく考えるとムキムキのゴブリンがスライムを主と言ったらこういう反応になるのはおかしい話じゃない。
まぁ、1人無反応に肉を食ってる奴がいるが。
仮面の女は、仮面をつけたまま焼肉を食べている。器用なもんだ。それに、正座だ。
他の3人は正座ではないし、仕草からして日本人...?
「初めまして。俺はスライムのリムル。悪いスライムじゃないよ!」
ぶっ、と噴き出すような笑い声が聞こえる。さっきまで淡々と食事をしていた仮面の女からだ。今の、何が面白いんだ?
他の3人も、スライムが喋ったことに驚いているようだ。
「ごめんなさい、笑ったりして」
謝罪とともに、顔を隠していた仮面が外される。随分と、柔らかく笑う人だ。
リムルは異様に見入っているようだが、なんだ一目惚れか?友達の色恋沙汰に巻き込まれるのはごめんだか。
「俺は、
死食鬼という単語に驚いてはいたようだが、怖がったりはしてこなかった。
いちいち怖がられるのもめんどくさいが、こいつらに関しては危機感が死んでいるのかもしれない。
こいつらは元々3人組のパーティーのようで、
仮面の女はシズと言うらしくここで来る途中に出会ったそうだ。
その後も、リムルに聞かれたことをなんの疑いもなくベラベラと話してくれた。
ヴェルドラの消失を受けて、ブルムンド大国のギルドマスターから封印の洞窟とその周辺の森の調査を依頼されたらしい。
そのギルドマスターは明らかな人選ミスをしたようだが、ヴェルドラの消失は人間側にも影響を与えているようだ。
あの時、洞窟に入ってきたのも調査のためだったのか。
結局、リムルはこいつらを泊まらせてやることにしたらしい。
「気のいい連中だったな」
「あれは、馬鹿って言うんだよ」
気に入るだろうなとは思っていたけど案の定だ。これから先、アイツらと何らかの繋がりができるのかと思うと気分が下がる。