転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第53話...傍観

だだっ広い森の一部で早くも聖と魔がぶつかっている。

切り捨てられた魔物が当たり前の様に起き上がり、また突っ込んで行く。傍から見たら世紀末である。

 

シオン達率いる“紫克隊(ヨミガエリ)”はエクストラスキル“完全記憶”と“自己再生”を保有したとえ頭が吹き飛ばされても復活可能な、死を克服した者たちで構成されている。

そして悪鬼と対峙する羽目になっているのは...えーとあれは誰だっけ?

 

《送られてきた情報によれば、聖騎士“光”のレオナードと聖騎士“火”ギャルトの二名です》

 

そうそうそれそれ。いやあのイカレ男が俺に依頼してきた騎士以外の情報を送ってくれたのは正直助かる。

ただ、シオンとの戦いぶりを見るに聖騎士団(クルセイダーズ)なんて連中も対して強くはなさそうだ。お名前だけはご立派だから俺も楽しめるかと思ったが...これは仕事に集中するだけだな。

 

《告。ヒナタ・サカグチがリムル=テンペストと衝突しました。》

あぁ、“見えてるよ”

リムル様がお与えになった仕事は全体の監視と逃亡者の確保、それからディアブロのお守りだ。...なんか自分で言っててちょっと不快になったわ、辞めよう。

テンペスト領土の各地にアカ・マナフを散らばらせて監視、逃亡するやつはそのままアカ・マナフが仕留める、そして本体は...少し離れた空の上からディアブロを見守っている。

究極能力(アルティメットスキル)に進化しているからできる芸当、俺とアカ・マナフが完全に同位体だからこそできているものだ。

全く、あいつ俺のうちの子が究極能力(アルティメットスキル)に進化したこと知らないくせに指示してきやがって俺がどうすると思って指示したんだ?

いや...リムルって俺に指示出すとき「なんとかなる」精神でやってるから何も考えてないな。

 

ヒナタにくっついて来た聖騎士も他が相手をするらしく、ヒナタとリムルは正真正銘の一騎打ち。けどこの感じは俺が助けに入らなくてもどうにでも出来そうだな。

 

「アカ・マナフ、つまんないかもしれないけど監視だけはしっかり頼むよ」

「縺?s」

 

コクリと頷くアカ・マナフの頭を撫でれば気持ちよさそうに擦り寄ってくる。唯一色のある緑色の目が少しとろけているようにも見える。こいつが進化してから撫でるという行為が上手くなったかもしれない。

 

 

「クフフフ...恐怖など一度も感じたことがなかったというのに。はぁ、この私に大司教殺しの濡れ衣を着せ、リムル様の覚えを悪くさせた者共、必ず報いを受けて頂きますよ...」

 

殺気が...ダダ漏れ。

(ハウロウ? これなんかあったら俺が止めんの?)

(やりすぎないことを望むばかりですがなぁ、もしもの時はラルタ様が)

(見捨てやがったなこんちくしょう)

 

 

額を押えて空を仰ぐ。もうヤダ、制御できるかも怪しい配下を作らないで欲しい。

苦虫を噛み潰したような気分で下を見ればエドワルドに丁寧にお辞儀をしているディアブロが見えた。なんとも大司教殺しにピッタリの登場だ。

エドワルドの後ろにいるのは三武仙の蒼穹のサーレと荒海のグレンダ...良かった、俺が用のある女もちゃんと居る。

 

「こっこれはこれは魔王リムルの使者殿、本日はどのような用件ですかな」

「クフフフ何、要件はひとつ...警告ですよ」

「...警告?」

「今すぐ兵を退き、ヨウム殿と和解しなさい。そうすれば知らずに済んだはずの恐怖を味わうこともないでしょう」

 

ディアブロの忠告を小馬鹿にしたように聞き流したエドワルドは笑う。

 

「これは異なことを申すものよ! そもそもこれは我が兄が貴国への賠償金を横領したことが発端。余はそれを回収するべく動いたまで」

「なるほど、あくまで和議を守っていると」

「当然である。寧ろ貴国に誠意を示すべく動いているのだ......もっともその必要ななかったようだがな」

「と、言いますと?」

 

勝ち誇った様にエドワルドがまた笑う。横領したというでっち上げを事実にできる証拠を持ってきているらしい。さて、新王が用意した証拠はどれだけディアブロを困らせられるか...

 

「白々しい! 兄上...いやエドマリスやヨウムなどという詐欺師連中と共謀したのは貴様らであろう!? 我が国から二重に賠償金をせしめようなどという卑劣な企み全てお見通しよ!

魔王と名乗った所でリムルとやらも底が知れておる。こうも浅はかな金策に走るとは」

 

浅はかはお前だ馬鹿野郎...どうして?なんでディアブロの殺気に気づかない?

あんまり煽るような事を言わないでくれ、なんかあったらそれを止めるのは俺の仕事なんだ。いいから適当に用意した証拠を出して言いくるめられろこの野郎

 

(落ち着け、あんな男の言葉に流されるな)

(もちろんですとも...えぇもちろん理解しております)

 

思念伝達でここまで苛立ちを伝えられるならもう才能だよ......本当になんでこんなにリムルLoveなのか。

空から見下ろしている俺でもわかるほど大きな身振り手振りでエドワルドがまた悪魔を煽る。

 

「フン...言葉もないか。なぜ企みが露呈したのか不思議かな? いいだろう...では証拠を見せるとしよう。こうして証人も集まっていることだしな。グレンダ殿、あれを...ここに貴様の悪事が記録されておる! しかと見るがいい!!」

 

グレンダが差し出したのは映像が記録された推奨。映し出されたのはレイヒムが死ぬ瞬間。

映像は短く、犯人の姿が映る前にレイヒムの断末魔と共に切れた。

犯人が映っていない映像を証拠とするのは無理矢理すぎる。それをディアブロもわかっているのだろう、それが何を持って決定的なのか疑問を隠せずにいる。

 

「教会の大司教殿を手に掛けるなどルベリオスの者では有り得ない。自分にとって都合の悪い事実を握られている者に決まっている。そう...例えば、横領の事実を口止めしていた悪魔だ。貴様はレイヒム殿を脅した上で情報収集のため彼をルベリオスに送り込んだ。だが彼の信心深さが貴様への恐怖を上回ったのだ! 彼は恐怖を押し殺し教会に真実を訴えた。そして更にその事実を公の場で発表しようとした矢先、貴様に殺されたのだ」

「それは素晴らしい。私への恐怖をただの人間が克服したと? なかなかに面白い冗談です。ですがやはり不思議ですね。犯人の姿が映っていない映像のどこが証拠になるのですか?」

「フン、さっきも言ったであろう。動機を持つのは貴様だけなのだ!犯人は貴様だ、大司教が自らの死をもって貴様をこっ───ゴホッ」

 

──────は?

長い長い演説が不自然な音とで途切れた。

鎧を貫通して肉が抉れる音、エドワルドの腹には剣が突き刺さっていた。

しかしただの剣じゃない。剣に着いているのは持ち手ではなく体。この世の物とは逸脱したガラクタの寄せ集め。ヒエラルテの人工キメラだ。

 

悪魔討伐者(デーモンハンター)! その悪魔を捕らえろ!治癒魔法が使えるものは直ちにエドワルド王の治療を行なえ! 他はあの化け物を討伐!」

 

偉い地位にいるであろう兵士が声を上げる。

あの人工キメラをディアブロの使い魔だと捉えたらしい兵士は記者の群れに隠れていた戦士に命令する。

 

なんでヒエラルテの人工キメラがまだいる?

あれはヒエラルテの持っていた法則を書き換える能力によって作られた物だ。主人を失っても一度書き換えられた法則は残る、でもそれを動かすことはできない。じゃあ誰が動かしているのか。はっきり言って今俺に考えられる選択肢は一人だけ、お父様だ...何考えてるんだかあの人。

 

目を離している隙にエドワルドの治療が終わり、人工キメラは三武仙によって倒されていた。お粗末な治療魔法だ。一命を取り留めたのが奇跡、新王になってそうそう王位を返上するしかないだろう。あれはもう政務ができる体じゃない。

 

ディアブロに襲いかかった悪魔討伐隊(デーモンハンター)達も恐怖で動けなくなっている。仮に新王が死にかけている横で遊び呆けるなんてなんと悪魔なことか。

だけど少し不味い、記者達の中に人工キメラをディアブロの使い魔だと思っている奴らがいる。俺が出ていくか? いや、変にややこしくなるだけか。

 

「ふーん、なかなかやるようだね」

「......あなた方は逃げないのですか?」

「逃げる? 面白いことを言うね。ディアブロだっけ?僕の名前はサーレ、十大聖人にして三武仙のひとりさ。つまり大司教殺し及びエドワルド王殺害未遂の悪魔を野放しに出来る立場じゃないってこと」

「いいですよ。 ちゃんと遊んで差し上げます」

「君は一体何者だい? ただの悪魔とは思えないんだけど?」

「リムル様の忠実な執事ですよ」

「そういうことじゃなくてさ」

「もういいだろ? さっさと始末するよサーレ!」

グレンダがサーレの声も聞かずにナイフをディアブロに投げつける。

素晴らしいナイフさばきで人間で言う心臓の位置にしっかりとナイフが突き立てられている。が、ノーダメージ。仕方がないディアブロは物理攻撃無効という耐性を持っている。人間がナイフ一本でどうにかできる相手じゃない。

そんな事より......

 

「アカ・マナフ、逃げたグレンダを追え。適当な場所で捕まえて待ってろ」

「縺?s!」

 

仲間を置いて全速力で逃げたグレンダをアカ・マナフに追わせる。戦力差を感じて逃げ出したんだろうが、騎士の風上にもおけない。アイツには用があるし、逃げられては困るんだ。

サーレも悪魔討伐を押し付けられたことに気づいたらしい。気の毒な男だ。

 

 

 

 

 

「...やってやるさ。お前がそこらの上位悪魔(アークデーモン)じゃないことはわかってる。どの程度の強さかは戦ってみればわかることだ!」

 

振り下ろした剣が悪魔の爪によって防がれる。

一歩も動かずにこうも簡単に防がれてはプライドなんてズタズタであってないようなものだ。

 

「あぁ...正体とはそういう意図の質問でしたか──────悪魔公(デーモンロード)です。私は上位悪魔(アークデーモン)ではありません。リムル様より名を頂いた折、悪魔公(デーモンロード)に進化を果たしたのです。ご満足いただけましたか?」

「なん...だって...?」

 

悪魔公(デーモンロード)は魔王種となった上位悪魔(アークデーモン)の進化先だ。覚醒魔王に近しい存在であり、成長限界は───ない。

ここまで来るといっその事笑えてくる。

何より恐ろしいのはそんな化け物に名前を与えた馬鹿がいるということだ。

グレゴリーは何してる? こんなの一人で相手にできるわけが無い...早く戻ってこい!

 

絶望的な状況だが、その絶望に呑まれている場合じゃない。この場を切り抜けるためにまずは状況の整理だ。

大司教殺しとエドワルド王殺害未遂...恐らくどちらもコイツの仕業じゃない。

この化け物が殺害の記録を撮られて気づかないわけが無いし、わざわざあんな目立つ傀儡を操って新王を殺さなくても幾らでも手はある。

そもそも映像といいエドワルドの襲われた瞬間といい不自然だ。報道陣も訝しんでいる者が大半だろう。

...だとしてもどうして僕がこんな目に遭っているんだろうか。

 

「クフフフ、もっと頑張って面白い技を見せてください」

 

悪魔の声がすぐ近くで聞える。

気づいた時には悪魔の黒く長い爪が目の前にあった。

 

「三武仙でしたか...貴方、人間の中では実力者なのでしょう?」

 

その言葉が感覚神経をなぞり脳に到達する前に体が吹っ飛んだ。

テントが下敷きになったおかげでダメージはそこまでないが、今自分の置かれている状況はよくわかった。

ふざけてる。

僕だって“仙人級”に至っている...それなのに、この悪魔は僕を殺そうと思えば簡単に出来てしまう。

...だがそれをしない。コイツは人命を奪わないように動いているんだ。それなら交渉の余地がある。いや、交渉に持ち込めなければ先はない。

 

真犯人がわかればそれを材料に...

 

真犯人?

事件があったのは筆頭が旅立った後、まるで筆頭の不在を狙ったようなタイミングで...

いや...機会を作ったのか?

もしそうなら筆頭が出て行くように仕向け、僕らに悪魔討伐の命を下した者が真犯人なんじゃないのか?

いや、しかし...古の賢人達だぞ? ましてやエドワルド王を殺害する理由なんて...

 

「サーレよ、応援に来てやったぞ」

 

背後の空間がねじ曲がり、奥からたった今頭に浮かんだ人物達の声が聞こえた。

現れたのは白に包まれた老人達。

 

「共に悪魔を滅ぼそうぞ」

「し...七曜の老師」

 

 

 

 

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