うっわ...胡散臭い白装束。
あれが西方聖教会の事実上のトップなのか、まじでそこら辺にいる態度のでかいクソジジイじゃねぇか。
サーレの背後から空間移動でやってきたのは七曜の老師のと呼ばれる三人。
いきなりの登場にすっごーくびっくりしたが、これは都合がいい。
(ディアブロ、あの馬鹿共が来た理由はなんだと思う?)
(雑な証拠隠滅だと)
(じゃあ、アイツら使って上手く自分の印象をいい方に転がしとけ。記者に変な事を書かせればお前の敬愛するリムル様の顔に泥を塗ることになる。どうやら記者もサーレもお前が冤罪の可能性を考えてるみたいだし、上手くやれよ)
(承知しました。ラルタ様は何もしないのですか?)
(今この状況で
少し様子を見ていればジジィの一人が記者の群れに攻撃を仕掛けようとしていた。
状況把握のできないジジイらしい、脳が完全に劣化しきっているんだろう。
悪魔の踏み台にされるなんて、カワイソー。
さて、帰ると言った手前ずっとここで傍観している訳にも行かない。
リムルの方もなんかヒナタの纏っていた服が変わっているようだし、一騎打ちは激化の一途を辿っている。けどもヒナタの様子から見てあと少しで終わるだろう。
少し早めに用事を切り上げて、ちょうどいいタイミングで帰るか...。
アカ・マナフもいい感じに仕事してくれてるみたいだしね。
ジジイ共の枯れた悲鳴に俺の小さな笑い声が掻き消される。
誰も気付かぬうちに体は自然体の色を失い黒い液体として溶けだす。その液体は地にこぼれ落ちることなく、姿を消した。
そして次の瞬間には視界は木々の緑に包まれていた。
縛り上げられて転がされている女が荒海のグレンダである事を確認しながら、アカ・マナフとして形作っていた血液を自分の人化した姿へと変えていく。
初めて使った移動方法、メーティスが考案した「体内転移」である。アカ・マナフと俺が完全に一つになった事で、どれだけ血液を遠くにやってもそれは俺の体の一部でしかない。
その散らばった体を核が動く事で移動する。アカ・マナフと思考の交換を行わなければならない点はあるが、空間を歪めることも無く、移動に制限もない。俺しか使わないから妨害の使用もない。
空間移動と違い、実質同時に別の場所にいることが可能であり、ただ俺の核の位置が変わっただけなのだ。
改良の余地はあるが、試せてよかった。
もっと能力向上に力を入れたい所だが、このぼろ雑巾みたいに転がった女を何時までも無視するのは可哀想だ。
「こんにちは、荒海のグレンダで当ってるよね?」
「くっ...ラルタ=テンペスト...随分手酷いじゃないか」
「元気そうで何よりだ。生きていてくれないと困るんだ。あぁごめんね、その拘束苦しいよね? 解いてあげる」
縄状の血液を見せつけるように指を鳴らして解いてやれば、人間にしては随分と速い動きでグレンダは動いた。
懐から銃を取り出し、俺に向かって発砲しようとしている。
可哀想に、どれだけ速く動いても簡単に目で追えてしまう。あと俺に銃なんて効かないし。
起き上がろうとした体を蹴り飛ばし、グレンダから滑り落ちた銃を手に取る。
転がった体が木にぶつかり、もう一度起き上がろうとするグレンダの腹を踏みつけた。
馬のゲップの方がまだマシなんじゃないかと思う程汚い声をあげたグレンダはやっと自分の置かれた状況を理解したらしい。
背には大きな木、自分の腹には敵の足、そして額には自分の獲物が押し付けられている。
「あんまり変に暴れないで。銃はそこまで扱い慣れてないんだ......間違って変なところ撃っちゃうかも。それともこのまま一発頭の換気でもする?」
「アタイを殺す気はないんじゃないのかい?」
「大丈夫大丈夫、元々スカスカな頭に穴が一つ空いたくらいじゃ死なないって、俺が死なせないもん」
まぁ、死んだ方がマシかも知れないけど。
そう耳元で呟けば、グレンダは懲りずにまた身体を捻り俺には向かってきた。
随分と色々しまい込んでいるものだ。どこからとも無く取り出されたナイフが近づけていた俺の顔目掛けて迫ってくる。俺にナイフ効かないけど。
グレンダが振り切ったナイフは無理な体制から攻撃したにも関わらず、きちんと頭を狙っていた。けれど、ナイフもましてやグレンダの手すらも俺に衝撃を与えることなく貫通した。耳に届くのは肉の切れる音ではなく、水の軽い音だけ。
そして次にグレンダの耳に届いたのは三度の発砲音。右腕の筋肉の起始点と停止点を弾が撃ち抜いたのだ。
俺だったらこの状況、絶望としか言えない。
「あ゛ッ...ぐっ...はぁ、銃は扱い慣れてないんじゃなかったのかい?」
「慣れてないだけで、使えないなんて言ってない。昔、何度か使ったことはある」
「魔国には...っ、銃なんてもんはないはずだがね」
「そうだね、でも別になんだっていいだろ?俺がどうして銃を使えるのかなんて知ったってこの現状をどうにかできる訳じゃない。お前は危機察知能力は高いみたいだし...ねぇ、賢い聖職者様? 俺の言うこと聞いてくれるよね? 大丈夫、殺したりなんてしないから」
「......わかったよ」
「良い子だ」
にこりと笑いかけてやれば、グレンダは体の力を抜いた。
腹に置いていた足をどかして座るように指示をする。素直に座ったグレンダの体を、俺の影から出てきた血液が滑っていく。
顔に辿り着いた時、血液がグレンダの右目を抉りとった。そして空になった右目に血液が集まり真っ黒な義眼になった。
「あ゛ァ......!! 」
「大丈夫? 新しい右目も見えてる?」
顔の前で軽く手を振れば、微かにグレンダが頷いた。ちょっと痛めつけすぎたかもしれない。
転がった本来の黄色の目玉を拾い上げ汚れを振り払う。口に放り込めばドロドロとした液体が溢れ出し、程よい苦味が広がった。
「...悪趣味だね」
「お褒めに預かり光栄だよ。その目、俺と視覚を共有してる。もうお前の神経と繋がってるから抉り取ろうとかするなよ」
《告。グレンダの体内解析が完了しました。グレンダの主はグランベル・ロッゾという男であり、グレンダからはグランベルへの忠義を確認できませんでした。「背教者」の使用が不可能です。》
「グランベル・ロッゾ...お前の主で間違いないね」
「あぁ、そうさね」
「今は時間があんまりないんだ。だから後日お前にグランベルの所に案内してもらう。主にこう伝えとけ、ラルタ...いや、セイヤ・カミシロが会いたがってるって」
グレンダがまた小さく頷いたのを確認して、その口に回復薬の入った結晶を押し込む。
そろそろリムルの所に行かないと怪しまれそうだ...。
「じゃ、呼び出すからその時まではまたね」
手を振って、リムルとヒナタがいる場所にいる血液に移動を始めた。
グレンダ推しの方に謝罪申し上げます。
(ラルタが最低な行動を取る場面、書くのめちゃくちゃ楽しいです)