転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第56話...経過報告

神聖な宮殿の中央、白装束を纏い神妙な面持ちをもって鎮座するのは七曜の老師が筆頭、日曜師(グラン)

 

「......遅い」

 

苛立ちを隠せずに指で床を叩き、ため息を着く。

作戦を仕切っている火曜師(アーズ)と連絡がつかなくなった。聖騎士のギャルドに成り代わったのが見破られたのだろう。

その援護に向かった月曜師(ディナ)金曜師(ヴィナ)も反応がない。

 

「...作戦は失敗と見るべきだな」

 

ヒナタ・サカグチ、あの女は頭が切れ過ぎる。消えてもらわねばワシの計画の妨げになるというのに。

そしてファルムスで暗躍する悪魔も予想以上に手ごわい。派遣した土曜師(ザウス)水曜師(メリス)木曜師(サルン)からの報告もない...

 

「何をしておるのだ、アイツらは───」

「酷く苛立っておられるようですね、日曜師(グラン)殿」

 

背後から声をかけてきたの、姿のみなら温厚を体現したような男、二コラウス枢機卿だった。

 

「ヒナタの腰巾着...何をしにここへ?」

「ひとつ、面白い発見をしましてね」

 

後ろに回されていた手に持っていたのは水晶、魔王リムルがヒナタによこした伝言の入ったものだ。

 

「発見、だと?」

「これに細工がなされた痕跡が見つかったので復元してみたのですよ。そうしたらとても興味深い内容でしてね...まぁ言わなくても、ご存知ですね。アナタが細工をしたのですから。私はね、アナタ方が何を考えていようと興味無いのです。神ルミナス、その方の寵愛を欲するのもあるいはその力を利用しようと企むのも」

「おかしな言い草よの、神は信ずる者の心の内に───「茶番は結構」

 

どうやら、頭の切れる女の腰巾着をになっているだけあって無駄な程に頭は回るらしい。

神ルミナスが実在することをこの男は気づいていた。どうやらヒナタの意を汲んで気付かぬふりをしていたらしいが。

神ルミナスに興味を示さぬ枢機卿、本当に信仰していたのヒナタだろうか。

 

「貴様───」

「老害は滅ぶがいい...霊子崩壊(ディスインテグレーション)!!」

 

仕込まれていた鍵言式の術が起動する。魔法陣が足元に広がるり、すぐ後に体が壊れるような感覚が走った。

 

「ば...馬鹿な───」

 

 

 

 

.........

......

...

意識がルベリオスの宮殿から慣れ親しんだ自分の屋敷に移る。

ニコラウス...よくもやってくれたものだ。

精神体(スピリチュアルボディー)を憑依させていた日曜師(グラン)を失った...これで神ルミナスの名を利用することは叶わなくなったという訳だ。興味が無いとほざく癖に面倒なことをしてくれた。

まさか霊子崩壊(ディスインテグレーション)を事前に仕込んでいたとは......

 

「───御爺様」

「......あぁ、どうしたんだい? マリアベル」

 

可愛らしい声で自分を御爺様と呼ぶ少女。

神妙そうな顔をしたマリアベルはグレンダを支えるようにして立っていた。

 

「...グレンダ、報告を」

「あっ...あぁ、まずひとつ作戦は失敗したよ。あの悪魔相手に手も足も出なかった。アタイは戦線離脱をして森に逃げたから様子は他のやつから知らされたもんだけどね」

「他?」

 

グレンダは抑えていた右目を晒す。

普段の黄色い目は姿を消し、そこには真っ黒な目が埋まっていた。

その目はグレンダの神経、そして他者に繋がっている。視覚を共有しているのだろう。もしかしたら、何時でもグレンダを操ることもできてしまうのかもしれない。

 

「その目は?」

「......この目を植え付けたヤツからグランベル様に、“セイヤ・カミシロ”が会いたいってさ」

「!...カミシロ」

 

異世界人の名、そしてカミシロという姓。

セイジ・カミシロの息子だろう。

 

「はぁ...わかった、何時だ?」

「まだ未定らしい、時が来たらアタイを呼ぶそうさ」

「そうか」

「グランベル様...魔都リムルの死食鬼(グール)と会うのかい?」

「カミシロという姓を訳もなく名乗るわけが無い。セイジは協力関係にある男だ...その息子と会う以外に選択肢は無い」

「そうかい」

 

顔色の悪そうなグレンダは今にも倒れそうだ。見かねたマリアベルがグレンダに部屋に戻るように伝ええる。きっと他者からの無理矢理の体内侵入に自己防衛が働いてしまっているんだろう。

 

マリアベルは座っている自分の太ももに手を置き、告げる。

 

「エドワルド王は外敵に襲われて負傷、意識は取り戻したようだけど政務を続けられる状況にない。代わりに側近が退任を報道陣の前で表明。次の王位を───“セイジ・カミシロ”に託すそうよ。どうやら、もしエドワルド王が襲われた場合速やかに王位を彼に移す手筈を済ませていたらしいわ」

「...セイジ、なるほど魔王リムルの思惑をギリギリのところで阻止したか」

「えぇ、お手柄ね。けれどセイジはファルムスを東の帝国の属国にするそうよ」

「東...なぜ?」

「あの人の考えてる事はあまり分からないけれど、東の帝国は西側諸国が警戒している国...魔国が国交を結んでいる国は東の帝国を恐れているわ。安全協定を結んでいる以上、東の帝国の属国となったファルムスにこれ以上手を出せば東の帝国との全面戦争になれば、国交を結んだ国も動かざるをえない。だから魔王リムルは手を引くしかない。きっとそういう判断よ」

 

 

後ろ盾がなければ魔国との対立は望めない。

これ以上手出をされればセイジもすましてはいられなくなってしまう。

東の帝国の属国となるとこちらからも手が出せなくなる。少し困りはするが...これからの話は後日すればいい。

セイジの息子、セイヤは父に会ってからこちらに来るはずだ。国王と面会する手間を考えれば息子を橋渡しにするべきだろう。

協力関係を終わらせる訳では無いのだ。それに、魔王リムルの思惑を潰せたことは大きい。

 

「あの魔王の町は危険よ...危険だわ」

「魔都リムルか、危険というのは天使の襲来の事かね?」

「いいえ違うわ御爺様...あの魔王は経済で世界を支配するつもりよ」

「まさか...新参の魔王がそこまで考えていると?」

「本当よ...セイジのおかげで足止めはできたけど、いずれ本当にそうなるわ。だからこそ、潰さなければならいの」

「なるほど、お前がそういうのならそうなんだろうね」

 

 

頭の回る少女。

声も姿も年相応なのに話している内容はその年齢と逸脱している。

 

少女の名はマリアベル・ロッゾ...グランベル・ロッゾ直系の子孫にして───

 

「えぇ、次こそかならず潰してみせるわ。この私、“強欲”のマリアベルの名に懸けて!」

 

転生者。“異世界”の知識を有するロッゾ一族の希望である。

 

 

 

 

 

 

 

「まっまぁ落ち着け、我はキチンと謝るつもりでおるのだ!」

「なんじゃと?」

 

明らかにヴェルドラの声が震えている。

俺の後ろに隠れたヴェルドラは傍から見たら可哀想な捨て犬のようだが、自業自得の結果だ。

 

こいつは最終防衛ラインを任せていたはずなのに、こちらにやってきて堂々とルミナスの正体をバラしたのだ。

本当に空気の読めない竜である。

 

「かつて我は貴様の都を戯れに滅ぼしてしまった。それはものすごく反省している!」

「ほう......? 覚えておったか」

「うむッ...あの時は我も悪気はなかったのだ。若さゆえの過ちというヤツだからして、お前も寛大な心で我を許すがよいぞ!」

 

───ぶちん。

うん、すっごい音がルミナスから聞こえた。

ハッハッハじゃないんだよ、馬鹿野郎。

 

「魔王リムルよ」

「おっおう...なんだ?」

「そのトカゲをこちらに渡せ」

 

カツアゲかな?

まぁ自業自得。たまにはヴェルドラも痛い目を見るべきだ。

 

俺の後ろに隠れていたヴェルドラの首根っこをつかみルミナスに渡してやる。

 

 

「うっ裏切ったなリムル!!」

「裏切るも何もお前が悪いよね」

「うむ...お主はなかなかに物わかりが良いようじゃな───だが、一人まだ分からぬ者がおるらしい」

 

ルミナスは空に向かって手を伸ばす。

顔はしっかりとヴェルドラの方を向き睨みつけているが、その手だけは別方向に魔力弾をため打ち上げた。

 

爆発音が響き、暴風が俺たちの服を強く靡かせた。爆発で生じた煙が風に連れていかれ...ラルタの姿が見えた。

 

「いつまでそこで傍観をしているつもりだ死食鬼(グール)...いい加減降りてこぬか!」

「なっ死食鬼(グール)って...!」

 

ルミナスの声に反応して聖騎士が剣を抜く。

全然気づいていなかったが、ルミナスの口ぶりからしてここにルミナスが来た時からそこにいたらしい。

大丈夫かあれ?すっごい不機嫌そうなんだけど...なんか最近のラルタ、不機嫌かぼーっとしてるかの二択じゃないか?

 

「ヴェルドラへの怒りを俺に向けるんじゃない。いきなり魔力弾を放ってきやがって...礼儀を知らないのか? これなら蚊の方がまだ利口だな」

「...ほう、随分と妾に対して失礼だな」

「どっちがだ、その溢れんばかりの怒りはそこのヴェルドラに向けろ。気が済むまでお灸を据えればいい」

「まぁ、元からそのつもりじゃ」

「ちょっ待て、ちょっと待て! 我の意見も聞くべき...ギャババババ───ッ!!」

 

 

ヴェルドラの悲鳴が耳をつんざく。

ルミナスとの戦争は避けたいんだ、気張れよヴェルドラ...!

 

逃げるヴェルドラを追いかけるように空へと飛んだルミナスと入れ違いでラルタが降りてきた。

 

「リムル、色々報告しなきゃいけないことがある...けどまぁ今ここでする話じゃないか。ディアブロに後ほど帰ってくるように伝えたから帰ってきたら一度会議だな」

「どうした、お前から会議を進めるなんて珍しい」

「......はぁ、リムル。作戦は失敗だ、ファルムス王国が東の帝国の手に渡った」

「───え?」

 

東の帝国って多くの国が敵対視している国だよな。

ファルムス王国と東の帝国は元から繋がりがあったのか? ディアブロからは何も聞いていないはずだが...

そんな国の手にファルムス王国が渡った、つまり奪われたってこと。

じゃあ東の帝国は俺たちの動きに気づいてた?

 

ラルタに詳細を聞き質したい気持ちが先走るが、聖騎士達の居る場で話すことではないのは確かだ。

 

「君がラルタ? 初めましてね」

「あぁ、初めまして...聖人様。リムルからお話はつくづく伺ってるよ、会えて光栄だね」

「...はぁ、君ってよく嫌味たらしいって言われない?」

「さぁ? あんまり他者の小言に耳は傾けない性分なんだ。それより聖人様、教会の討伐対象である死食鬼(グール)に健気に話しかけるのは結構なことだけど...まずは後ろでいつまでも状況の掴めていない馬鹿...おっと失礼、お仲間に説明をしてやるべきだ」

「やっぱり君、嫌味たらしいよ」

「そりゃどうも」

 

 

色々聞きたいことはあるが、目の前の問題ももしかしたら深刻かもしれない。

目の前の問題とは何か、それはもちろん教会と死食鬼(グール)の関係である。

ヒナタとラルタの会話はどこかギスギスしているし、ヒナタに剣を仕舞えと言われた聖騎士達もラルタの事を警戒している。

 

やっとまともに話し合いができる状態になったはいいが、やっぱり自分達の生活に紛れ込んでいつ食べられるかも分からない恐怖を与える魔物って言うのは俺みたいなスライム、魔王よりも身近な危険だし怖いのかもしれない。

俺だって前世で人間を餌にする生き物が身近にいるなんて聞いたら怖いし嫌いになる。

 

死食鬼(グール)全体を嫌うななんて無理な話かもしれないが、ラルタの事くらいちゃんと知ってもらわないと。

ラルタは人間も食べないし、何より群れて生活もできる。

交流の中で知っていって貰えるといいけど。

 

 

「我らの宿敵 魔王ヴァレンタインが偽りの魔王で、そして神ルミナスが本当の魔王...? ははっ...そんな馬鹿な」

「事実よ。貴方たちを騙していたこと申し訳なく思うわ」

「ヒナタ様...ヒナタ様はそれを知った上で見過ごしてこられたのですか?」

「その通りよ...管理された平和ではあるけれども、ルミナス様は民を犠牲にしないと約束してくださったから」

 

 

管理された平和、か...。

平和のあり方は様々だけど少し嫌な言い方な気もする。

 

そりゃまぁ聖騎士たちからしたらショックな話だろう。

弱者を救済するために魔物と戦っていたはずが、実際は上層部の筋書き通りだったわけだもんな...

 

それはさておき、智慧之王(ラファエル)先生?

《はい。》

ルミナスとヴェルドラの攻防を防いでる結界...究極能力「誓約之王(ウリエル)」の“絶対防御”だっけ?

これがあればヒナタの“崩魔霊子斬”も防げたんでは? わざわざ暴食之王で相殺しなくても。

《解。“絶対防御”でも“霊子”は貫通する場合がありました。》

霊子?

《魔素を構成する特殊な粒子です。不規則な動きをするためあらゆう障壁を素通りする性質があります。》

そうなのか。

でも七曜の“三重霊子崩壊(トリニティディスインテグレーション)”は完璧に防いでたじゃん。名前からしてあれも霊子の攻撃だろ?

《是。“崩霊子斬(メルトスラッシュ)”を相殺すると同時に“捕食”しました。その際、狙い通りに霊子の乱数位相を認識することに成功しました。これにより予測防御が可能でした。》

 

なるほどね。

霊子のランダムな動きを解析できたからこそその後の霊子を利用した技も防げるようになったと...狙い通りに?

《なお、魔王ルミナスの行った神の奇跡とは霊子を運用する魔法を指すようです。通常の手段では霊子に干渉できませんが、それを行う手段は判明しました。あとは解析して───》

 

ペラペラぺペラペラ...よくまぁ喋る。

狙い通りってこいつまさかワザとヒナタの技を受けるように仕向けたか?

もし俺が相殺に失敗してたら......!

なんか最近やり方が小賢しくてなってきたんだよなぁ...いや、ラルタの先生は許可なく勝手に色々やるらしいし、確認してくるだけマシか?

 

......だがまぁ、ヒナタのあの攻撃、耐えられるようになりたいとか、使えるようになりたいとか、あの一瞬確かに俺が思ったことだ。

その一瞬の願いを汲み取って即座に実行に移したのだとしたら......俺にはもったいない超絶能力だ。

《否。私は主様の為だけに存在しています。》

あ......なんだよ、嬉しいこと言ってくれる。

ありがとうよ、今後も頼むぜ相棒。

《───はい。》

 

「ソウエイ、彼らを一旦町に案内しようと思う」

「えっ...あの暴れん坊諸軍みたいなの連れてくの?」

「ルミナスを暴れん坊将軍って言うんじゃないよ。全くラルタは...いつかその口の悪さで後悔するぞ」

「余計なお世話だ」

「はぁ...ソウエイ、先に戻ってリグルドに伝えといてくれ」

「は!」

 

 

さて、そろそろ町に向かいたいんだが...話は終着点に向かってきた...かな?

 

「フッフフ...このアルノー騙されませんよ。神ルミナス、いや魔王ルミナスに脅されて......「違うわよ。私はあの方に敗北して従うことになったけれど、その理念に共感したからここまで続けてきたの。ルベリオスが平和で争いがない国なのはルミナス様の加護の下にいるから。これは事実よ...だからね、アルノー。ルミナス様を悪くいうのは許さないわよ」

 

ギロッてしてるよ目が...怖ぇ。

自分の上司がこの目してきたら怖くて次の日やっていけねぇよ。

 

「まぁまぁヒナタもさ、もっと優しく言ってやれよ」

「貴方には関係ないでしょう?」

 

だからその目よ...眼力で魔物が逃げだしそうだ。

けれどこのまま言い争いが続いて仲間割れなんてされたらたまったものじゃない。それとなくヒナタに釘をさせば、以外にも返事をしたのはアルノーだった。

曰く、ヒナタを信じてるからその決断に従うと。

一大事をよくもまぁそんなに軽いノリで決めるもんだと呆れそうになるが、ほかの聖騎士も同じようなものだった。

なんというか...少し意外だ。てっきり頭の固い連中かと思っていたんだが、案外柔軟というか。ヒナタが慕われているのがよくわかる。

 

「それにですね。魔王ルミナスと敵対するというのはつまり...“ああなる”ということですし」

“ああなる”と言ってアルノーが指を指したのはルミナスに絞られて空から降ってきているヴェルドラだった。

ものすごい勢いで落ちてきたヴェルドラは漫画の様に上半身をすっぽりと地面に埋めている。こりゃひでぇ...。

 

「リムルよ! あの頑固者を説得してくれ!我が寛大にも謝っているというのに奴は聞く耳持たぬのだ!!」

 

威厳溢れる暴風竜が涙目だ。

哀れというか、自業自得というか。ルミナスをそろそろ止めるべきか、死なないし諦めろというべきか悩んでいれば、ヴェルドラのお腹に細いルミナスの腕が回された。

 

生と死の抱擁(エンプレイスドレイン)

「みっ...ギャババーーー!!」

 

《告。暴風竜ヴェルドラの爆発寸前だった妖気が安定値まで減少しました。》

 

え? あぁそうか、ルミナスのあれは魔素を吸収する技なのか。

抑え込んでいた妖気をぶっぱなして辺りがディストピア化する───なんて未来は回避できたわけか、とりあえず。

《是。ついでに「激痛」と「不快感」を情報としてヴェルドラに逆流させている模様です。》

 

マジかよ、相手を甚振るための技じゃねぇか。怖っ...拷問用かよ。

 

「ところで気になっていたのだけれど、彼ってまさか...」

「あぁ、そういえば紹介がまだだったな。人型だけどヴェルドラだよ。今は取り込み中みたいだからまた後でゆっくりと紹介するよ」

「まっ待ってくれリムル! いまッ今紹介を───」

「ほう? まだ余裕がありそうじゃな」

「いい加減にしろ、煩い、目障り。いつまでその茶番を続けるんだ。お灸を据えてもいいって言ったのは確かだけどね、チンタラチンタラいつまで続ける気だ」

 

 

ルミナスの怒りに震えた声すらもかき消してラルタが怒鳴る。顔が死んだように無になっている。やばい...あれは限界を迎えた時の顔だ。

 

ルミナスの腕の中にいたヴェルドラを引き寄せて、地面に投げ飛ばす。

獲物を取られたことにルミナスもまた苛立っているようだ。

 

「なんじゃ貴様は、妾に歯向かう気か」

「あ? やっぱり吸血鬼なんざ蚊の方が幾分も利口だな。何が歯向かうだ、勝手に俺を下に見てんじゃねぇぞ」

「貴様...その減らず口、すり落としてくれようか」

「なんだ? やるか? お前から手を出した瞬間、俺は正当防衛でやり返すからな」

「まぁまぁ落ち着けって! な? ラルタの言い分もよくわかるから少し落ち着けよ」

「命令するな。それに、お前もだぞリムル、いつまで聖騎士の生産性のない会話を見守る気だ? ディアブロから思念伝達が来てる、もう会議室で待ってるんだ。ゆっくり? 急ぐべき事態だと俺は思うけどねぇ」

 

矛先が俺に向いたらしい。

これは相当ご立腹だ。でもこいつ何にイラついてるんだ? 前は機嫌が悪くても来客の前では丁寧だったのに。それに言葉使いとかももっと柔らかかったし、煽り癖はあっても人を下にするような言い分は少なかった気がするけど。

なんか嫌だなぁ...少し注意しておくか。

 

「わかったよ、そろそろ移動しよう。それからラルタ、お前少し言動が目に余るぞ。場と立場を弁えろって」

「立場だ? 俺はなんだ? この場で一番下か?」

「別にそう言ってるわけじゃないだろ!」

「君たち、会議があるの? 忙しいのかしら」

「あぁ悪かったなヒナタ。こっちの話だ。とりあえずうちの町に来てもらう。和解の宴と洒落こもう」

「え...? でも大事な会議なのでしょう?」

「それとこれとは別さ」

「ほう、宴か」

 

げっルミナスも来る気かよ...。いやここは逆に来てもらってヴェルドラとラルタの失態で苛立った心を落ち着かせて貰うかべきかもしれない。あわよくばイメージ向上に繋げられるはず。

 

「ええと、ラルタの事は悪かったな。少し口が悪いんだ。ヴェルドラの事は...もういいか?」

「無論許さん。許さんが、しかし今日の目的は配下の尻拭いじゃ。その死食鬼(グール)の事は...今回はこちらに否がある。許してやっても良い」

「何が許すだ」

「あー!よし! ならさっさと行こうぜ!」

 

とにかく、これでやっと誰かの思惑に踊らされず互いの言葉で話し合えるんだ。

会議をさっさと済ませて宴を開きたいもんだ。俺自身も少し疲れたしな...。




多分、この話のラルタは一生苛立ってそう。禿げるぞ。
もしリムルがラルタのことを信じてなかったら、ラルタの変化から何か勘づかも。
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