転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第64話...魂の友に願う

爪に乗せられた二つの重さを今でも宝物の様に覚えている。

 

───語れるほどの前世なんてないんだけど。スラムっていう貧困街の生まれで、この横にいるスライムと同じ国育ち。

スラムで適当に生きてたら捕まって攫われて、名前を貰って育てられた。

別になんで俺だったのかは知らないけど、礼儀とか思考とかそういうのを植え付けられた。俺を攫った父は慈善活動家だったけど子供がいなかったから、まぁその穴埋めだと思う。

あと話せることは...んー、無いな。求められた通りに生きてただけ。

 

それだけ言って話は終わりという態度をしたラルタにあの手この手で質問をして前世を聞き出したのも何処か記憶に新しい。

リムルとラルタは対照的とまでは言わずとも、話し方や仕草には確かに違いがあった。

長い時を生きてきたが人との関わりはそこまで多くもない我には、何がその違いを作るのかはよく分からない。だが、その違いは確かにリムルとラルタという別の存在を確かにするものであったと思う。

 

それが少しづつ変わっていった。

リムルの胃袋の中でラルタの変化を見守ってきた。

最初はそこまで大きな変化はなかった。

リムルの周りに増えていく者達と少し面倒くさそうに、仕方がなさそうに接していた。

シズという女が現れ消えるとラルタはよく笑うようになった。リムルの周りにいる魔物たちに慈愛のような眼差しを向けるようになった。淡々としていた話し方が抑揚を持ち、何処か緩い話し方になった。

我にはそれが良い変化には思えなかった。まるでラルタという存在が、リムルに近づいたように見えたのだ。都合良くリムルが好む形に変わっていったように見えたのだ。

それはリムルとラルタという二つの存在、その違いを揺るがすような出来事だった。リムルとリムルに都合の良い“何か”がそこにあるだけ。

けれどその“何か”は確かにラルタと呼ばれ、ラルタと名乗っていた。

まるでラルタ=テンペストという存在がリムルに都合の良く形を変える物であるように。

 

大鬼族(オーガ)が仲間として加わった後からはその変化が顕著になった。

豚の罪を飲み込んでからはまるでラルタすらもが変わり果てた自分をラルタ=テンペストとして扱った。

“ラルタ=テンペスト”という存在をラルタの中にいる何か核が守っているようだった。その何かはラルタを変えてラルタを与えた。何か核は確かに何かを求めてラルタという皮を変化させた。

 

その皮が剥がれたらしい、もしくは不必要になったらしい。

リムルが魔王となり、胃袋から出てきた時に見たラルタはラルタではなかった。

皮を浸透して核が滲み出ていた。核は不必要になった皮を邪魔だと暴れ、苛立っていた。

けれどそれと同じくらい核は外に怯えていた。もしかしたら中にあった核は皮を持たずに外に出たことがなかったのかもしれない。

ラルタはラルタ=テンペストを捨て、新しい皮を探している。それか作っている。

 

だからラルタに提案した。

自分探しの旅に出てみるのはどうかと。奥の奥にある核が持つ本質がそのままに表すことの出来る“自分”を見つけるべきだと思った。

リムルの胃袋からしか見ていなかったために断片的にしかラルタを見ていなかったが、その核はあまりにも不安定だ。幾度と変えた皮に核は疲れていた。

 

 

だから少しだけラルタの中にいた“何か”を見た気がした。

今回の事件、はっきり言ってしまえば我は見ていた。扉を挟んで声を聞いていた。

 

──────変わったんじゃない、辞めただけ

 

変わる前のラルタでも変わった後のラルタでもない。我の知らない何かの言葉。

何かはラルタという存在を継ぎ接ぎに必要とされたものを取り付けて変えることを辞めたらしい。

 

愛を求めて、求める核を守って。

そして不必要になった皮を捨てた。

皮肉にも声を上げて暴れるその姿を“らしい”と思った。“何か”らしかった。

だから止めることなく姿をくらませたラルタを見送った。

友の旅立ちを見送る事にした。

 

 

何もかもを知らずに、何もかも気づいていた。

リムルには何一つ話さなかった。リムルがこれを知れば怒るだろう。

けれど我は、テンペストという三位同位体が崩れようともリムルやその配下が傷つこうとも、一人ぼっちのあの核が自分らしくいれることを望んだ。我では望んだものを与えられぬと知っていたから。

 

ラルタ=テンペストの友として、“何か”にできることはそれだけだった。

何も言わずに友を傷つけて友を見送る、それしか我には出来なかった。

友にさようならを、我の知らぬ“核”に行ってらっしゃいを。

魂の友に、何かが自分らしく、求めたものを手に入れることのできた幸せな未来を願う。

 

 

 

そんな事を縁側を歩きながら考えた。

断罪を願うようにつらつらと友への罪を思い浮かべる。そしてまた、罪を一つ重ねる。

 

昨日も騒がしかった宴会場、聖騎士達はまだ来ていないらしい。

リムルを初めとする幹部達は暗い顔をして宴の準備に取り掛かっていた。

せっかくの宴がこんな重い空気など我には耐えられぬ。

 

「クアッハハ! リムルよ、何をそんなに辛気臭い顔をしておる。 今日はすき焼きなのだろう?そんな気持ちでは美味い肉も不味くなるわい!」

「......なんでお前はそんなに楽しそうなんだよ。ラルタが俺達を裏切っ───」

「リムルよ! 我らはテンペスト! 名を共有し魂を繋いだ存在だ。嵐は消え去りまた現れるのだ。我が宣言してやろう! ラルタはまたお前と交わる事になる。自分探しの旅くらい好きにさせてやれ、友の旅立ちをそんな辛気臭い顔でするんでない」

「...俺はラルタを追放したんだ。次なんてあってもそれは今までとは違うだろ」

「それでもラルタであろう! 我はラルタが変わろうと最後までラルタを友と言える。お前は違うのか?」

「もちろん、友達だけど...」

「それならば、友として今は笑ってやるといい! さぁ宴だ! もっとキビキビと準備せい、そこも何をいつまでも暗い顔をしておる。今日の宴はルベリオスとの親睦でもあり、ラルタの旅立ちを祝福する宴だ! ほれ!肉だ肉!」

 

どんよりとした空気に響く我の声はどこか場違いで、我の話す内容も見当違いなものだ。

そうだろう、リムルとラルタが次に交わる時、それはきっと元の関係と同じではない。

我はラルタ=テンペストという存在がもうこの世界に居ないことを知っている。それでも目の前の友には言わぬのだ。

目の前の友に、嘘を一つ、罪を一つ。

それがラルタ=テンペストの友であった我にできる愚かな行い。

 

───もう居ない友に届かぬ笑い声を。

 

 

 

 

 

 

 

宴の準備を進めるゴブリナにちょっかいをかけに行ったヴェルドラを何処かぼんやりと眺める。

全くいつもいつもヴェルドラは場違いだ。空気を壊すというか、よく言えばムードメーカーだ。今はそれに感謝しなきゃだな。

 

ベニマル達も何処か面食らってはいるが、少しは気持ちも楽になったのだろう。

ラルタの旅立ちを祝福する宴───物は言いようだな。今回の事件、皆にも思うところがあるはずで色んな事を考えたはずだ。

けれどこんなにも今回の件を前向きに捉えたのはヴェルドラだけだろう。

 

「リムル様、俺なんか力が抜けちゃいました」

「奇遇だなベニマル、俺もだよ。友達の旅立ちか、そりゃ笑ってやるべきだよなぁ」

「良いではありませんか! リムル様が笑いずらいのであればこのリグルドから笑いましょう!!」

「...リグルドはそれでいいのかよ」

「良いですとも。今宵の宴、リグルドは今までのラルタ様への感謝だと認識しました。たとえ人が変わろうとラルタ様への感謝は変わりませぬ!!」

 

ここにも一人、陽気な奴がいたみたいだ。

今回の事件の一番の被害者がこう言うなら深く考えても仕方ないのかもしれない。

 

 

 

「あら、リムル。貴方少し顔色が良くなったわね」

「んっ...はは、ヒナタこそ温泉をこれでもかと満喫してるみたいじゃないか」

「ラルタの件は残念だけれど、その様子なら心配なさそうね」

「たった今心配いらなくなった所だよ」

 

ラルタがルイと戦って負けたという設定を追放した事に変えなきゃいけなかったから、事件の後ヒナタの所に行った。その時はものすごく俺の顔色が悪かったらしく随分と心配させてしまった。

詳細は省いたが追放したことを伝えた時のヒナタの驚き顔には少し笑ってしまった。それくらい驚くべき出来事だったのだ。

 

俺の様子を見て安心したらしいヒナタはお風呂上がりのホカホカ感も相まってどこか優しげだ。他の皆も楽しげに聖騎士達との会話をし始めている。

 

心残りはあれど、いつまでも悩んでいられる訳では無い。これに関しては暴風竜様々だ。

 

重たい濁りを飲み込んで、夜は深けていく。

どうかヴェルドラの言った事が事実になればと願って。

 

 

 

───数日後

神聖法皇国ルベリオスの法皇庁は魔国連邦テンペストとの不可侵条約の締結を発表した。

人々は驚き戸惑ったが、その事実はゆっくりと浸透してゆく。こうして人と魔物の新たな関係が模索されていくことになるのだ。

 

それと同時に魔国連邦テンペストは死食鬼(グール)の追放を宣言した。

死食鬼(グール)・ラルタ=テンペストは攻撃性を含んでおり、ジュラ・テンペスト連邦国の法律及び秩序を乱すおそれがあると判断を下した。

そのため、該当者を国外追放処分とする。』

その事実はいとも容易く受け入れられ、テンペストは英断をしたと褒め称えられた。

そしてゆっくりとテンペストに訪れる人間は数を増やしていった。皆が口々に「心配事が無くなったから」と言って。




友達であり続ける事を選んだ竜。
ラルタ=テンペストの皮を被った“何か”、それはきっと本能。本能はただずっと愛を求めている。



俺は、この生き方を誇る。俺が、守りたい者を守れる事を誇る。
だから、俺は罪だとは言わない。
どこか卑しくて、小賢しくて、わがままで、それでも我武者羅に生きれるんだ。
興味の無いものを甚振って楽しんで。
死肉を貪って強くなって。
守りたい者を守るんだ。
醜くても、非道でもそれでもいい。
死食鬼として生まれて、この町の副主として今ここにいる。
俺の今までの行為も、これからする行為も全部俺が俺として生きていくためにすることだ。
これは覚悟だ。
他の言葉でなんて言い表せない。
俺が俺として生きていく覚悟だ。
自分に嘘はつかない。
苦い汁を啜ってでもこの立場に立ち続ける。
それら全てが俺の覚悟。
俺は他人から見たら最低な奴かもしれない。
それでもいい。
ラルタ=テンペストは覚悟の中で生きていく。
どこぞの欲張りさんだって喰えない覚悟だ。
──────第15話...覚悟への応答 より抜粋

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(死ぬのはリムルから見て味方と敵両方です。ラルタからしたら敵とどうでもいい人両方です。)

これから先、ラルタ回において原作キャラを殺すか殺さないか考えあぐねています。言ってしまえば原作では生存するはずだったキャラが死んでもいいか良くないかを聞きたいです。

  • 原作キャラ死亡OK
  • 原作キャラ死亡NO
  • どちらでもいい
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