転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第76話...反逆者の夢世界

「お前なんか機嫌悪くない?」

「悪くないし」

「ホントかよ、頬膨らませて」

「セイヤってさ、どこまでの嘘を判別できるの。人の感情とかまでいける感じ?」

「なんだよ急に...感情とかまでは無理。ちゃんと事象があって、その事象と違う事を言った時に嘘ってわかる」

「じゃあ誰かがさ、本当はセイヤの事すっごく嫌いなのに好き好き言ってたらわかる?」

「んー......そうだな、言葉だけだと難しいけど。その言葉が事象と連動してればわかる」

「例えば?」

「本当は俺の事が嫌いなのに好きって言って物を渡してくればわかる」

「そっか!」

「どうしたんだよ急に」

「んーん、やっぱり俺の愛情は本物だなと思ってさ!」

「意味わかんないんだけど......で、機嫌が悪い理由は?」

「ずっと森を歩かされてるから! 見ろよ、一面の緑!」

「なるほどね」

 

 

ほぼ半泣きで叫ぶマラカイトの言いたい事も分からなくはない。

父に教えられた場所はファルムス王国西側、イングラシア王国に添う形で存在する山の何処か。そう、広い山の何処かなのである。

いや何処だよと聞きたくもなったが、まぁ教えてくれる訳もなく...渋々この山まで空間移動を使用してここまでやってきた。

 

そしてずっと歩き回っている。

万能感知をフル起動して何も引っかからない。感じれないなら目で見て確認するしかないというなんとも原始的な結論に至り、足を進めて数時間。

出発時は頂点にあった太陽は、気づけば姿を消そうとしている。気が滅入ってきた。

何処を見ても木、木、木...緑、緑、緑。時たま顔を覗かせる魔物を適当に踏み潰すくらいしか気を紛らわせる事がない。

普段あっけらかんとしたマラカイトが不機嫌になるのも仕方がないのかもしれない。

 

 

そしてとうとうマラカイトが音を上げた。

無理も無い、精神的疲労が凄いのなんの。緑色にリラックス効果や疲労回復効果があるなんて、あれは嘘だ。だいたい色が心理的に何かを及ぼすなんてそんなわけがないのだから。

 

流石にこの状態では見つかるものも見つからない。気分転換をするべきだ。

そう思ってそこまで大きくもない湖にやってきた。水色は集中力を高めたり、心を落ち着けたり、解放感を得られたりするからこんな時にうってつけだろう。水は本来透明だけれど。

ん? ......なんか今すごい矛盾した?

それはきっと気の所為だ。俺がそうと言ったらそうなんだ。俺がカラスを白だと言ったらカラスに白のペンキをぶっかけてこい。

けど良くよく考えると夕方の湖は夕日のせいでオレンジ色か...もうなんでもいいや。

 

「あっ! おい見ろよセイヤ!」

「何、どうしたの」

「いいからこっちこっち。なんかすっごいのいる!」

「凄いのって、どうせ魚とかだろ───」

 

マラカイトに習って湖を覗きこめば、そこには魚とは呼べない何かが一匹いた。

異様に大きなそれはゆうに10メートルを超え、ブヨブヨと肥大化したイボの様なもののせいで余計に大きく見える。所々骨が肉を突き破り露出していて、前方には顔一面を覆うように目がいくつも着いていた。

その魚の様な何かがマラカイトの声に反応してこちらを見た。

よく見ると、イボだと思っていたものは水でふやけた人間の顔だとわかる。

 

マジか、嘘だろ。

もはや世界観が違うだろ。普通の山の湖でいていいような存在じゃない。しかもコイツ...めちゃくちゃ強い。勝てない事は無いが、カリュブディスの何倍も強い。

 

《解析が完了しました。個体名セイジ・カミシロの発言と目の前の存在から推測するに、あの魚の中に“世界の入口”が存在します。》

嘘だろ...中って、体内ってことだろ...?

《はい。食べられてください。》

何ほざいてんだこの野郎。

 

「ヤバい! 来てる!」

 

マラカイトの言う通り、魚は湖底から一気に加速しこちらに向かってきている。そして水飛沫を上げながら水面から飛び上がった魚が、大口を開けてこちらに飛び込んできた。

咄嗟にマラカイトを引き寄せ、抱きとめる。マラカイトの体を俺が抱きとめるのと、魚の口に飲まれるたのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

水に沈み込んだような圧迫感。

そして直ぐにそれは消え去り、次に襲ってきたのは浮遊感だった。

魚に食われたら空に投げ出された。

 

「落ちるーー!!」

「うるさいちょっと黙れ!」

 

暴れるマラカイトを抱え直して、何とか地面に着地する。

バシャリと音がして、服にいくらかの血が飛び散る。踝に届く程度の高さの血が地面を覆っていた。

万能感知は使えないし、どこか息苦しい。

 

「うわ...なんだよココ。別世界にでも飛ばされたの俺たち」

「別世界...あながちそうかもしれないな」

「えっ俺ら転移したってこと!?」

「騒ぐな、待てって今解析してるから」

 

 

どうよメーティス、何か分かった?

《解。世界の基盤が魔素と結合性希少能力(コンパウンド)によって形成されています。

ですが魔素の法則が大きく書き換わっており、魔物の生態に変化をもたらしています。主様(マスター)を転移させた“魚”は元は池に生息するEランクの魔物です。

また、この世界では時間的概念が働いておらず、セイジ・カミシロの所持する亜空間が別世界として書き換えられたものであると推測されます。》

つまり、お父様が元の世界にいた生物やらを持ってきて弄った結果がこの世界か。

 

 

「お父様の作った世界で間違いないらしい。やっと目的地に一歩近づいた」

「じゃあ、あとは“沈黙の塔”を見つければいいわけだ。なら早く見つけようぜ、俺ここに長居したくない」

「それもそうだな......ここに長居は精神がぶっ壊れそうだ」

 

どれだけ精神が鋼でもここに長居をすれば内側から壊されるだろう、そう思えるくらいこの世界は酷いものだった。視覚的に。

 

一歩歩けば血が小さな飛沫をあげるのも勿論、先程俺たちを丸呑みにした魚と同じように変質した魔物が空を泳ぎ地を這っている。

空には四つの月が浮かび、四方から指す月光が歪んだ世界を照らしている。

 

そして無数に立てられた石柱。そこに括り付けられた死体。一つの柱に平均二から四体程括り付けられた死体は腐敗が進んでおり、中には白骨化して地面に崩れているものもあった。

石柱には名前が一つ掘られていた。

死体を確認して気づく。一つの石柱に括られたいくつかの死体は全て同じ人物のであると。

 

《死体の成分が一致しました。ですが、死因は全て別である事が確認できました。》

同一人物の死体が複数ある理由は?

《推測。別時空の死体であると考えられます。個体名セイジ・カミシロが認識している時間の巻き戻しにより発生した“変化”のうちの一つが死因の違う死体であり、それを亜空間に吸収したために同一人物の死体が複数あると思われます。》

時間を巻き戻す......つまり、過去に戻るという事。お父様が時間に干渉している?

《否。セイジ・カミシロと断定できません。別の人物が行っている時間遡行に干渉、もしくは認識している可能性があります。

最も有力な仮説として、時間遡行能力を持つ能力者が過去に飛んだことを確認して意識を次の過去に引き継がせる方法があります。》

 

時間遡行...次の過去。

ループし続ける時間の中での変化が亜空間では引き継がれている。亜空間の所有者が時間の巻き戻しを感知出来ればそれが可能だとして。

普通に生活していて、時間遡行を行われたと気づくことは出来ないはずだ。ならわざわざ時間遡行をしている所有者にお父様が目をつけて、それに習っているという事になる。

理由は? 時間遡行をしている者の目的が父の目的と類似、もしくは利用価値が有るから。

 

夢物語の様な話だが、もし仮に時の輪廻が存在してそれを何度も巡っているモノがいたのなら。時間に干渉できるのだとしたら───

父が俺に聞いた、何年何度繰り返したかという質問。あの真意が何度も同じ時空を巡った結果の質問だとしたら───

この世界は今までお父様が辿った、もしくは認識し続けた全ての時間軸を寄せ集めたものであるという事。

時間軸を超越した何かがここにはあって、それをお父様が利用しているという事。

 

ていうか、何でメーティスは別時空があるって言い切れる訳? それもおかしくない?

《解。世界の言葉からこの世界の概要を受信しました。受信内容が不完全だった為に一部推測を行っています。》

世界の言葉っていつも聞いてるやつだよな。

《否。主様が普段生活している世界とは別の世界の言葉です。この世界で生成されたものであり完全な別種です》

 

 

背筋が震えた。

だって、それはつまり本当に世界をもう一つ作ったと同義じゃないか。

異世界を自由に行き来して、自分で世界を作って、時間を超越し、別時空を認識できる。

そんなのは“神”に等しいじゃないか。

ルミナスの言う神とは違う、世界の始まり。

 

お父様は何者だ?

セイジ・カミシロは、レブルは何だ?

仮に究極能力を行使したとしてここまでの事ができるものなのか。

コンパウンドを使用しているから、可能なのだろうか。いやまず何で法則が大きく異なる世界で異世界の能力をそのまま使える? てゆうか、どうやってまず異世界の能力を覚えたんだ?

だって異世界には魔素なんてなくて......

お父様にしか出来ない事があるのだろうか。お父様にしか使えない、魔素でも異世界の能力でもない何かがあるのだろうか。

俺が知らないだけなんだろうか。

 

 

「───ヤ......イヤ! ───セイヤ!」

「!!......何」

「アレじゃない? 沈黙の塔って」

「え......?」

 

悶々と考えているうちに随分と歩いていたらしい。

もしかしたら、マラカイトは何度も俺に話しかけてくれていて、無視してしまっていたかも。ちょっと悪い事をした。

 

アレと言ってマラカイトが指を指した方向には、空に向かって聳え立つ異質な塔があった。

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