転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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第84話...熱も冷めぬまま

結論を言おう。

本城正幸、またの名を“勇者”マサユキ。

この男、想定の何倍もチョロかった。

勿論分かってはいた。何やかんやと話が進む中でリムルを尊敬だか何かして仲間になるんだろうと。最早お家芸の領域、考えなくとも導き出せてしまうテンプレ展開。

しかしだ、しかし、あまりにもチョロすぎる。

何故に寿司と天麩羅を食べたらリムルの配下になる決意が固まるのか。俺に教えて欲しい。

いや、教えられても絶対理解出来ないからやっぱり何も言わないでくれ。

『わかりました。僕は三上───いや、リムルさんの手下でいいです!』って何だ。その言葉で俺は本気で頭を抱えた。理解出来ない生き物に脳が拒絶反応を示したのだ。

....いや待て、リムルの周りにいるヤツらを思い出せ。普通じゃないか? みんなこんな適当な流れで仲間になってなかったか?

なるほど、マサユキはチョロくは無いらしい。至って普通だ。

普通の基準は常に自分と他者の中で尺度の違いがあるものだ。かく言うリムルは普通ではな絶対にないけど。

 

まぁ、別にマサユキが想定の何倍もチョロかろうと至って普通であろうと何でもいい。

俺の目的に対して、マサユキはまんまとハマってくれた。

 

決勝戦から昼を挟んで、開国祭最後の催し。

ダンジョンのお披露目に挑戦者として参加したのだ。理由は俺の予想通り、名の知れたマサユキを利用し、ダンジョンと言う今後の利益になる代物を宣伝しようという話だ。

 

ダンジョン攻略にはカメラマンを務める樹妖精(ドライアド)が居たために、ブレスレットの解除が出来なかった。映像はスクリーンを通してリムル等の誤魔化しの効かない強さを持った奴らが見ている。激しい戦闘もなくブレスレットが消えれば不審に思う可能性もあった。

だからブレスレットの中の血液を使用するのではなく、マサユキの影から影移動で別の血液を送り込みダンジョンの散策を行った。

マサユキの持っているブレスレットは仕方がないからマサユキが風呂に入って誰の目も届かないところで消しておくとしよう。

勇者様は人気者だ。そんな男がつけているブレスレットの一つくらい、盗んでしまう輩もいるものだ。

 

 

「──────お父様、テンペストのダンジョンについての調査報告をしに来ました」

 

ファルナスカ王城の執務室の戸を開けると、そこには父と何故だかダムラダがいた。

ユウキの時と同じように執務机の横に手を後ろに組んで立っていた。

なんだか、異質な組み合わせに感じるのは俺だけなのだろうか。

属国相手のお偉いさんが、会いに来ているという状況でこんな上下関係を感じる立ち位置にはならない。やはり東の帝国での父の位は極めて高いらしい。

 

「なんで、ダムラダがここに?」

「お久しぶりです、セイヤ。セイジ殿から貴方がそろそろ報告に来るとお伺いしたのでやってきた次第です。なにぶん、貴方には多くの頼み事を人ずてに頼んでしまっていますのでね」

「自覚あったのか...はぁ、今書類を一部しか持ってないんだ。帰り際に用意するから受け取ってから帰れ」

「承知しました」

 

クリップボードに纏められたプリントを机の上に置く。少し殴り書きな部分もあるが、特に何か言われることもなく受け取って貰えた。

ダムラダは父の背後に回り、パラパラと捲られるプリントを覗き込んでいる。

こうやって見ると上下関係はあまり無い様に感じる。対等とまでは行かずとも、父は案外近い距離感を許している。

というより、父は俺以外にはそういった礼儀やら作法やらに厳しくない。マラカイトがいい例だ。なんで? 期待されてるとか? ...無いな。

でもこっちの世界に来てからまだ“躾”を受けてないし、めちゃくちゃ甘くなった可能性はある。それか俺が父の言う完璧をこなせているとか。確かに最近はミス一つしていない自信がある。俺ってば凄いじゃん。

 

「ダンジョンと言う名の通り、挑戦者には随分と優しい設計になっているようです。ダンジョン内のみで使用出来る“復活の腕輪”なる物もある様です」

「“復活の腕輪”とは?」

「死から復活する物だそうです。作り出しているのはダンジョンの統治者であるラミリス。アレの意思一つで復活の腕輪で何度蘇るかを決められるそうです」

「はぁ...魔王ラミリスも厄介な力を持っていますね。東の帝国としても魔王がテンペストと手を組んでいると言う自体は極めて面倒です」

「心中お察しする。ダンジョンは地下に壺方に百階層あります。形は正方形で、内部構造は数日に一度変更されるようです。十階層毎に所謂ボスモンスターが存在していて、その種類には五十階層以降のボスを記録しています。百階層、最終地点にはヴェルドラがボスモンスターとして待ち構えています」

「ボスモンスター...戦力としては余りに十分すぎる力を有している様ですね。これが不死身の状態で敵対するなど、面倒にも程があります」

「やはり...ラミリスを殺してしまうのが一番ではあると思います。このダンジョンは必ず邪魔になる」

「あの羽虫はギィ・クリムゾンがやけに気に入っている。今の段階で突くのも面倒だ。羽虫は頃合いを見て叩き潰す。ダムラダ、お前はダンジョンの内部情報を周知させておきなさい」

「承知しました」

 

 

ダンジョン自体の性能は戦争になった際に厄介だ。

ボスモンスターは勿論、兵士たちも復活の腕輪で不死身となれば消耗戦になりこちらが負ける。魂の本質を変えることの出来る概念乖離体ならば殺せるだろうが、東の帝国の者達では無理だ。さっさとラミリスを潰すのが吉だろう。

そうなると出てくるのがあの赤い悪魔だ。本当に邪魔だ。目障りなくせに払い除けるには余りにも強すぎる。父は頃合いを見ると言ったが、それはもう少し先の話になりそうだ。

 

それにボスモンスターも頭が可笑しいんだ。

ヴェルドラは言わずもがな、他の者達も軍隊一個を簡単に踏み潰せる。

国一つが持っているにしては武力として大きすぎる。そこの所をリムルは分かっているのか。

 

余りに強大すぎる力を見せることは最早脅しでしかなく、それで掴み取った友好は上下を明確に分ける。

テンペストが手にしたのは難攻不落の地下迷宮ではなく、所詮利益を得るための戦争道具だ。

友好的同盟は所詮主従関係に過ぎず、技術交流は所詮依存だ。

魔物と人間、テンペストと他国、それらの関係は全て馬鹿らしいく不毛なおままごとに過ぎない。

リムルの全てを都合よく思い通りに動かしてしまう才能は、やはり一番の脅威だ。

──────不快だな、その才能。

 

 

 

 

開国祭翌日の夜。

恒例の反省会はガゼルやエルメシア、ヒナタにユウキ、マサユキ等の面々が退室し幹部のみとなっても続いていた。

会議では多くの事が決定し判明した。

ダンジョンの概要や他国との技術交流、商人ダムラダと言う男と魔王ロイを殺害した侵入者の関係。

そして───

 

「それで、リムル様。結論は出ましたか?」

「あぁ、間違いない。クレイマンの言っていた“あの方”というのは、ユウキ・カグラザカだろうな」

「クフフフフ、私もそう考えます。証拠がないのがネックですが、間違いないでしょう」

 

ベニマルの質問への返答にディアブロが同意する。

ルミナスに忠告された時から、疑いは確信に変わってはいた。しかしこれでユウキが黒確定。後の奴らがまだふわふわしていて明確に白黒つけられないのが残念だが、黒寄りなのは間違いのない話だ。最悪繋がりが無くとも別々に敵対してくる可能性も十分にあるしな。

 

俺とシズさんの関係を知る者は極めて少ない。

その情報をヒナタに流したのは東の商人だとヒナタ自身が言っていた。

そして俺は東の商人について面白い話を聞いている。アダルマンやクラマによると中庸道化連など聞いた事がないのだと言う。本当はミュウランにも確認を取りたかったが、生憎連絡が取れなかった。

しかし、五本指のうち二名が知らないと答えたのだ。クレイマンは部下すらも信用していなかった。だから中庸道化連の存在を秘匿していた。

だが、シュナが調べてくれた事だが、東の商人については公に接触していたと思われる。アダルマン達も何度かその姿を目撃していて、商人からの相談にも乗ったとの話だ。

つまり、道化達は商人に扮してクレイマンと接触していたという事だ。だがアダルマンによると、居城付近では道化達はその姿を顕にしていたと言う。

 

「外では姿そのまま、城内では東の商人だ」

「中庸道化連と、東の商人。この者達には繋がりがある、そう考えて間違いないでしょう」

「となると、魔王ロイを殺したのは、あの大戦時に姿を見せなかったラプラスって野郎だろうな」

ディアブロもベニマルも笑みを深めてそう言う。道化三名のうち、フットマンとティアは大戦の裏で暗躍していて、その姿をきちんと確認している。クレイマンを裏切りそうな者を先に始末する役目を負っていたようだ。

ならもう一人は何を? と言ったらベニマルの推理通り、ルベリオスに侵入して何かを探っていたと見るべきだ。

 

「俺とシズさんの関係を知る者はラルタを除いて全てが、さっきの会議に出席していた。それで先程東の商人についての質問を投げかけたのさ」

 

会議の終わりに投げかけた東の商人との関係を探る質問。

カバル、エレン、ギドの三名は論外。

ガゼルやエルメシアも、容疑者から外される。フューズやベルヤード、ブルムンド国王夫妻なんかも、疑いが晴れたと言っていい。東の商人との関係性が薄く、明確な動機がないからだ。

そしてヒナタも、利用されそうになった点から考えて黒幕ではない。

 

残るは、ユウキのみ。

 

ユウキは東の商人との付き合いを認めた。

高品質の紙等は東の帝国からの輸入品でらしく、それを大量に用意出来るユウキが東の商人と付き合いが無いとは言える訳が無かった。

言質を取れなかったのは残念だが、悲観する程の事も無い。

俺とシズさんの関係は特殊で、この話を他者に軽々と広げるような者は、明らかな敵対者ということになる。

それに何より、その情報でヒナタが動くと確信出来る人物も言えば───俺にはユウキしか思い当たらない。

 

「恐らく東の商人達の目的は、西側諸国で勢力を広げる事なんじゃないかと思う。それには、教会勢力が邪魔だったんじゃないかな?」

「俺もそう思いますね。あのヒナタとリムル様を戦わせようとしたのも、共倒れを狙っていた可能性がありますし」

「どっちが勝っても問題ない、そういう意図が透けて見えます」

「西側諸国では、評議会と聖教会が二大勢力を築いている。多分だが東の商人は両勢力に働きかけているんじゃないかと思う。そうして徐々に、自分達の影響力を増していたんだろう。それに協力していたのが───」

「自由組合、という訳ですね?」

 

ディアブロの言葉に大きく頷く。

動機としてはこれが一番有り得るのではないだろうか。物的証拠はないが、もうこれは確信だ。

 

「それで、どうしますか? ファルナスカ王国も含めて...」

「ファルナスカ王国はセイジ・カミシロがギルドマスターになってから明らかに自由組合への出資額が跳ね上がったとガゼルが言ってたな。そしてそれと同時期に東の商人が活発に動き出した。ファルナスカ王国と東の商人はグルで、東の商人と自由組合もグル。中庸道化連も然りだ。案外、全部繋がってる可能性の方が高いな」

「今すぐ───」

「相手の出方次第だ!」

 

ディアブロめ、今直ぐ殺してきましょうか...と言いかけたな。それはナシだ。絶対に。

 

「相手の出方で対応は決める。どの組織が何と繋がってるのか定かじゃないんだ。国を危険には晒せない。今後は注意深く用心するようにして、相手の尻尾を掴むとしよう」

「承知。この町に作る支部とやらも、要観察対象に設定しておきます」

「頼むぞ、ソウエイ。ファルナスカ王国の調査といい大変かもしれないが気は抜くな。そして皆も、決して先走る事のないように!」

 

ハハッ!! と皆んなの声が重なる。

そんな中手を挙げたのがシオンだった。

 

「一つよろしいですか、リムル様」

「どうした?」

「城内では、中庸道化連は絶対にその姿を顕にしなかったのですよね?」

「ん? どうしたんだよシオン、確かにそうだけど」

「ラルタという名を聞いて思い出しました。彼は魔王達の宴(ワルプルギス)でクレイマンと“ラプラス”の間に交流があったと言っていました。まだ、アダルマンやクラマの存在は知らず東の商人の話も知らない筈です」

「───!」

 

盲点だった。というより魔王達の宴(ワルプルギス)でのラルタが話た内容なんて大して重要視していなかった。確かにそうだ、明らかに可笑しい。

何故なら、城内でクレイマンと交流を行っていたのは“東の商人”でなければいけないのだから。ラルタがあの大戦の最中に道化達が東の商人に扮していた事を知る方法はない。

 

「ラルタは、あの時点でラプラス達の存在をここまで知っていた?」

「あの大戦中、城に居たのはラルタのみです。あの時点で......裏切られていたのかもしれませんね」

「だったら、テンペストの情報の多くは...もう既に中庸道化連の手に渡っている事になります」

「さっきの仮説が正しいなら、自由組合、東の帝国、ファルナスカ王国の全てに筒抜けだ」

 

あぁ、そうか。こんなに明確に“裏切られていた”のか。

悲しい筈なのに、何故かしっくり来た。

そして湧き上がるのは───憎しみだ。

先程の会話からも分かる通り、もう誰もラルタを様付けで呼びはしない。敵対者に示す敬意は無いのだ。

 

「いつからだろうな、裏切り始めたのは。最初からという事は無いはずだ」

「ラルタはずっと国にいました。交流を隠蔽するのは難しい。なら、最初に国を離れた時というのが一番有力に感じますね」

「となると......ファルムス王国が攻めてきた時、か」

「彼は、確かにシオン達の死を泣いていた筈なのに...何故」

「分からないよ。アイツの考えてる事なんて分かった試しがない。

けど、これでラルタの居る場所も絞られたな。イングラシア王国、ファルナスカ王国、東の帝国、このどれかだ。そして───」

「ファルナスカ王国が一番怪しい?」

「あぁ、あそこが一番こそこそ動くには持ってこいだ」

「ファルナスカ王国にいるなら、叩くのは難しいですね...」

 

物証なく国を突く事なんて出来ない。

それはユウキ、自由組合も同じだ。

 

「ま、推定無罪の法則ってのが、俺の前世の国にはあってさ、“罪が確定するまでは無罪として考える”的な感じなんだよ。だからといって油断するなよ? 特にラルタは...覚醒魔王に進化している」

「! ......そう、なのですか?」

「あぁ俺と同じタイミングでな。俺自身も戦って勝てるか分からない。だから、油断するな」

 

俺の言葉に、幹部達がしっかりと頷く。

果たして、ユウキはセイジ・カミシロは───ラルタは、何を考えているのか。

 

俺やヒナタ、それにクレイマン。

東の商人や、自由組合、もしかすると評議会までも。

全てが、手の平の上だ。

一体誰の手の平に乗せられている?

もしかしたらこの三名のうち誰かも手の平の住人でしかないのかもしれない。

黒幕が確定しない。

 

今はしっかりと準備をして、対決の時を待つのみだ。

 

楽しい祭りは終わった。

これから待つ複数との化かし合いを思って、俺は憂鬱な気分で溜息を吐いたのだった。




セイヤ(ラルタ)痛恨のミス。やっぱり完璧になれない。

転スラはどうしても会議が多いので、セイヤに関係ない話は全部端折ってます。分かりずらかったら申し訳ありません。
次からはマリアベル編、実はめちゃくちゃ書くのが楽しみです。ここから先がこの2次小説の本番なので。
後相談ですが、もしかしてこの小説、展開が早すぎますか? 他の方の2次を見ていると80話は大体ワルプルギスあたりなので...もし早すぎるとかこのシーンとか入れて欲しいとかあったら教えてください。
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