転生したら死食鬼だった件。   作:パイナップル人間

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★91話、92話、93話、同日投稿★
⚠ソウエイ推し注意(カオスドラゴン推し注意)


第93話...取り残された者

「隠密...それは誰にも知られてはいけない存在。それがどうだ? 影から引きずり出された気分は、なぁ、ソウエイ」

 

マリアベルの指示に従って、結界を張った。

後は向こうでどうとでもするだろう。

はっきり言って、今回の俺の仕事はこの結界とカオスドラゴンが変に暴走した時の対処だけ。

 

実に暇だ。

だから、暇つぶしからわざわざ出向いてくれるなんて俺は幸運らしい。

影に潜んでこちらの様子を伺っていた隠密を、草原の広がる大地に引きずり出した。

影ひとつ無い、この場所に。

 

「何の様子を伺ってたんだ? 俺を殺すタイミングか? 可哀想に、俺という不確定要素のせいで今日ここに来たんだろう。まるで俺に殺される為に来たみたいだな」

「評議会ぶりですね」

「そうだな。そっちは? 変わりないか」

「いぇ、大分変わりました」

「へーそう。変わったんだ...お疲れ様。

まぁいいや、死ぬ準備は出来たか? それとももう少し時間が欲しいか?」

「では、少しだけ時間を頂いて」

 

そう言ってソウエイは分身体を数名呼び出した。てっきり俺に対する攻撃準備かと思ったがどうやら違うらしい。

分身体は、ソウエイの後ろにいたソーカ達を掴み影へと投げ飛ばした。

突拍子もないソウエイの行動を瞬時に理解し、各々が影移動で姿を消していく。唯一ソーカだけが、数秒遅れて姿を消した。

 

「ぷっあっはははは! 敵対している奴に時間を貰ってやる事が部下を逃がす? 面白すぎるだろ! アイツらの力全員分を足してもお前の方が強いじゃないか。なら、逆の方が良かったんじゃない?」

「これでいいのです。ソーカ達には未来がある」

「自分には無いって?」

「えぇ」

「へー、これはまた随分とちゃんと言い切ったな。何故? まだお前の魂は進化に耐えられると思うけど」

「無理です、無理なのです......」

 

ソウエイが胸元をキツく掴む。そこは服にシワを作り、手は少し震えていた。

鼻から抜けるように、嘲笑を一つ、顔を上げた。

余りにも穏やかな表情で。

 

「ラルタ様、お慕いしておりました。いいえ、今もお慕いしております」

「......人を通して故人にものを言うなよ」

「セイヤ・カミシロ...新たな名を得ても、俺にはずっと貴方はラルタ=テンペストなのです。俺は未だに貴方と敵対する事に違和感を覚えている。この胸がつっかえる。

リムル様に対する裏切りでしょうか、これは」

「感情までもをリムルが統一しているなら、それは裏切りだ。だがお前は、何を言おうと何を思おうと、俺の前に立っている。それだけが事実。ここでお前が俺の支配下に下だれば裏切りになるだろうが...リムルを思ってそれも出来ないんだろう。

どちらにも踏切が付けずに、お前はここで死ぬ。けれど俺に殺されれば、お前は確かにテンペストの為、リムルの為に生きた事になる」

 

 

話す事なんて、実はそんなに無かった。

ソウエイにとっては心に抱えた蟠りは今もその体を蝕んでいるんだろうか。

周りが俺をセイヤ・カミシロとして敵対視する中、一人だけそれが出来なかった。

微かな残滓を残して、周りと同じように振る舞うのは大変だっただろう。

そして、もう“リムルの為の最上の強さ”を提供出来なくなった。どんな行動を体に心が着いてこない。多分、もうソウエイの心は限界だった。

他の魔物より少し、人間性が強かったばかりに。

 

「お前が死んだら、その死体を心置き無く弄んでやるよ。だって、俺は敵だ。俺がお前を“蒼影”として殺してやる。武器を取れ、本気で来い」

 

ソウエイが背中に携えて二本の忍刀を抜き取る。分身体が現れる。分身体の数はそこまで多くない。多分結界の効果だろう。

結界を壊してやりたい気もするが、マラカイトを危険には晒せない。

 

後ろから切りかかってくる青髪を避ける。本体だ。

刀を避けた事で、一瞬傾いた俺の身体に分身体が糸を巻く。早い判断だ。

身体に触れている糸を辿って、分身体に内擊魔法を使う。破裂した分身体は煙の様に消えた。

一瞬目を見開いたソウエイの頭を掴む。

そしてそのまま地面に打ち付けた。角の先が折れて、視界の端を舞った。

地面に打ち付けられたソウエイを宙に持ち上げ、蹴り飛ばす。

ダメージは大きいだろうが、ソウエイは宙で体制を建て直し、またこちらに向かってくる。

 

だが、遅い。

瞬時に懐に潜り込んだ俺の手が、ソウエイの心臓の位置に手を当てる。二人の間に冷気が漂う。心臓の凍ったソウエイはもう動かない。

 

少し冷たい頬に指を滑らせて、首へと運ぶ。

そしてそのまま、頭をねじ切った。

 

「忘れないでいてくれて、ありがとう」

 

──────勝負は一瞬。鮮血が飛び散る。

 

弧を描いた頭を手で受け止める。

無理矢理ねじ切ったせいか、首の皮の一部がベロりと爛れ、そこからポタポタと血が流れている。

それを啜り飲めば、少しだけ喉を潤した。

 

 

生首をお土産よろしくぶら下げて、司令塔を失い血溜まりに溺れた身体へと手を伸ばした。

 

 

その時だった、地面が激しく揺れる。

肌を異質な妖気の風が撫で付けた。

 

《告。カオスドラゴンが最下層に降りてきた模様です。》

 

また激しく遺跡が揺れる。

ガラガラと激しい音が聞こえる。石が崩れる音。遺跡が崩壊し始めている。

 

「チッ......マズイな。崩れるのも時間の問題だ。さっさとここから出るべきだ」

 

《告。魔王ミリムによるカオスドラゴンへの攻撃の流れ弾が結界に衝突。結界の維持が困難です。》

 

なら本当にさっさと帰るべきだな。

結界が無くなれば、マラカイトも流石にキツい。直接戦闘はするなって言ってあるから、今はどこかに隠れてるはず。

さすがにマリアベルはもう死んだだろうが。

 

メーティス、マラカイトの生体反応から居場所を探せ。

もうこんな状態になってきたなら流石にユウキの作戦は終わってるはずだ。カオスドラゴンは捨ておけ。

《了。個体名マラカイトの生体反応を検索

 

──────失敗しました。》

 

「は? ......失敗?」

 

《再度、検索を開始──────失敗しました。》

《生体反応では無く、“造形”として検索を開始───成功しました。

個体名マラカイトの“死亡を確認しました”

殺害者は、リムル=テンペストです。》

 

 

誰かの死、それは預かり知らぬとこで唐突に告げられる。

誰もが、死という最後に感動的な別れが出来る訳では無い。大体の死は、後悔の中に生者を取り残す。

 

 

 

 

 

《告。個体名マラカイトの生体反応の消失を確認しました。》

 

その言葉で身体から力が抜ける。

マラカイト、本当に強かった。全てを不毛にするその力は、突如として究極能力に進化した事で所有者を蝕んだ。それを良しとし、剰え自爆に巻き込もうとしてきたのだ。

こんな所で自爆なんてさせる訳にはいかない。まだ調査隊の面々はこの遺跡内にいる。

ただでさえ車輪が通った場所から、草が枯れ地面にヒビが入る力だ。広範囲に何かさせる事は何があっても阻止しなければならなかった。

 

その身体に俺の刀が突き刺さった頃には、俺の腕は片方失われ、顔も半分程崩れ落ちていた。

 

刀を引き抜くと、マラカイトの身体がまるで今の遺跡と同じようにガラガラと崩れていく。

そして人型であった等信じられなくなった時、風に吹かれてそれらは砂として消えて行った。

衣服と武器だけが残った。

 

消えた、と言うよりかは連れて行かれたと言う方が近い。

多分死亡を確認すると、どこかに転送されるシステムがマラカイトの中にあったのだろう。

 

 

「リムル! あれが“核”なのか!?」

 

ミリムの声で抜けていた力が身体に戻ってくる。そうだ、まだ終わっていない。

身体の再生は結界のせいで、酷くゆっくりだが問題は無い。

ミリムは俺がマラカイトと戦っている間も地道にカオスドラゴンを削ってくれていた。

そして一瞬だけ、確かに核が確認出来た。

 

「ミリム! もう一発でかいのを入れろ! “心核(ココロ)”が傷つく前に俺が回収する」

「任せるのだ! うおぉおおお、竜星爆炎覇(ドラゴ・ノヴァ)!!」

 

ミリムも本気だ。

さっきからずっとカオスドラゴンを食い止め続けていたくせに、何故まだ火力が上がるのか疑問は絶えない。が......俺もボケっとはしてられない。疲弊した身体に鞭を打って、心核が現れる瞬間を見極める。

ミリムの魔法が、剥き出しになったカオスドラゴンの精神体(スピリチュアルボディー)を砕き、星幽体(アサルトボディー)までも破壊する。

その隙を見逃さない、次にミリムの力が心核を砕くその前に、魂喰を発動させた。

作戦通り、カオスドラゴンの砕けた心核を手中に収めることに成功したのだった。

 

 

膨大な魔素量を司っていた“核”が無くなった事で、カオスドラゴンは爆発寸前だ。

空中には、空間を歪めるような巨大なエネルギー力場が発生している。力と力がぶつかり、超圧縮させたエネルギー。

次に来るのは反発だ。

 

「リ、リムルよ、不味いのだ! このままでは......!」

「大丈夫だ。アレは俺が何とかする!」

「出来るのか!?」

 

出来るか、じゃない。やるんだ。

ここで失敗すれば、皆まとめてサヨウナラだ。

今この場で、これ以上こちらの戦力を失いたくない。

 

やれるな、智慧之王(ラファエル)先生!!

《是。問題ありません。》

 

本当に、頼もしいよ。

智慧之王(ラファエル)先生が着いている、その事実だけで自信が持てる。

 

「喰らい尽くせ、暴食之王(ベルゼビュート)!!」

 

アレは既に残骸だ。遠慮は要らない。

暴食之王(グラトニー)は猛威を振るう。アレだけの異常なまでのエネルギーの塊を何事もなかったかの如く全てを飲み込んだ。

 

「終わった......のか」

「まだだ、まだ───」

 

《告。カオスドラゴンの“心核(ココロ)”が確認できませんでした。》

──────は? 何言ってんだよ。確かに俺は心核を回収したはず......

《解析の結果、何らかのスキルによって作られた“偽の心核(ココロ)”であると推測されます。

本来のカオスドラゴンの“心核(ココロ)”は既に破壊されているでしょう》

 

 

「そん、な......」

「リムル? どうしたのだ」

「...カオスドラゴンの心核(ココロ)が偽物だった」

「なっ!? という事はワタシの友達はっ!」

「──────死んでた、もう...既に」

「嘘なのだ......嘘だと言ってくれ!!」

「言えるなら言いたいさ! 言ってやりたいよ! でも駄目なんだ。偽物の心核(ココロ)じゃあお前の友達は蘇らせる事が出来ない。もうこの世に、...お前の友達の残滓はどこにも残ってないんだよ!」

 

ミリムが力無く崩れ落ちる。

嘘だ、どうして───そんな事を何度も何度も繰り返し呟き続けている。

マラカイトがカオスドラゴンを使役出来てた理由。それが、心核(ココロ)がすり替えられていたからなら───それを行った犯人は......

 

 

「主よ!」

「ッランガ......無事か」

「えぇ我々は。シオン殿の傷も塞がりました。ですが......ゴブタは───」

「あぁ、分かってる。もう眠せてやろう、俺の中で...せめて安らかに」

 

もう二度と、ゴブタの笑顔は見れない。

一緒にふざけて、馬鹿やって叱られる。楽しいあたりまえはもう訪れない。

 

「───おやすみ、ゴブタ」

 

暴食之王(ベルゼビュート)が静かにゴブタを喰らう。

胸が張り裂けそうだ。こんなにも失う事が苦しい。希望なんてありはしない。

 

「リムル様!!」

「ソーカか......ん? ソウエイはどうした」

「リムル様、ソウエイ様が......ッソウエイ様が!」

「落ち着け、ゆっくり話してくれないと分からない」

「ッソウエイ様が......」

 

ソーカが俺の服を掴み言葉を詰まらせながら何かを必死に伝えてくる。

多分、ソウエイに何かあったのだ。

ソウエイは今回戦闘要員として来た訳じゃない、それなのに何があった?

 

 

「──────死んだよ。俺が殺した」

 

答えが返ってきた。最悪な奴から。

ソーカを後ろに隠し、声の主に向き直る。

ソイツの手には、ソウエイの生首がぶら下がっていた。

 

「外道が」

「光栄な言葉だな。まさかあの王様からそんな言葉を貰える日が来るなんて......今日は素晴らしい一日だ」

 

ソウエイの生首がこちらに投げ飛ばされる。枯れ果てた地面を転げた頭は、俺の足にぶつかって動きを停めた。死んだ目が、こちらを向いている。

ソーカが悲痛な叫び声をあげて崩れた。その腕は、まるで守るようにソウエイの頭を抱えている。

 

セイヤは静かな足取りで、マラカイトの武器であった車輪を回収し、そして衣服の中に埋もれた黒いピアスを拾い上げた。

そのピアスに付着した血を服で拭い、そのまま同じピアスの着いた左耳を着飾る。

まるで二つで一つだった物のように、それぞれから垂れるチェーンがもう片方に取り付けられた。

 

「ここは随分と地獄絵図だな。ミリムはどうした? あぁ、もしかしてあの腐った竜の核が無かったか? はっはは、やっぱり気が付かなかったんだ......カイトがペンダントを砕かなかったか? アレがカオスドラゴンの“心核(ココロ)”、良かったなミリム。お前の目の前で友は死んだんだよ」

「貴様......よくも...ッよくも!!」

「落ち着けミリム、もうこの遺跡は崩れる。長くは持たない!」

「離すのだリムル! ワタシはアイツを許さぬ! ワタシのマブダチの皮を被った化け物め...ワタシがこの手で殺してくれる!」

「ミリムッ......! せめて外に出ないと!」

 

 

セイヤの笑い声が聞こえる。

下を向いて、顔は見えないがその肩がどこまでも愉快そうに震えていた。

苛立ちはあった、けれどそれよりも驚くべき事態がそこで起きていた。

 

セイヤの足音に水滴が落ちたのだ。

雨では無い。枯れ果てた大地を潤す力はその水には無い。

けれど耐えず、少しづつセイヤの地面を濡らす雨が降っていた。

 

「初めてだ。こんな気持ちで泣くのは......初めてだ。“愛してくれる人が居なくなった悲しみ”じゃない、“愛した人が居なくなる悲しみ”。耐え難いなぁ......少しだけ、リムル...お前を尊敬したよ。たった一人でも苦しいんだ、それを何人も抱えるお前は強いな」

 

バッとセイヤが顔を上げる。頬には赤い線が走り、その上をまた雨が伝った。

無理矢理上げた口角の端が引きつっている。

 

「お前は、泣くんだな...セイヤ」

「あぁ泣くよ。だって、こんなにも...悲しい。皆自分勝手なんだ、そうだろ? お前達だってカイトが...マラカイトやマリアベルが死んだ事に何も感じてない。それと同じように俺からしたら誰が死んでも同じだ。

誰が死んだ? なぁ! 誰が死んだ? ソウエイと、腐った竜...後は? あれ、遺跡調査に来てたゴブタが居ないね? 死んじゃったかな、ははっ。ほらお前達は今名の上がった者たちの死に感情を動かされてる。皆そうなんだよ。

だから俺は泣くんだ......」

「その口、剥ぎ落としてやりたいよ」

「アッハハ...今日はっ、勘弁してくれ。手が震えて武器なんて持てない。ミリムも、また次回...な? ほら遺跡が崩れるよ。帰りな」

 

セイヤがくるりと踵を向く。

戦闘をする気が無いのは助かった。今すぐ殺してやりたい気はするが、こちらはもう心も体も限界だ。勝機が不安定だ。

セイヤが空間転移をする瞬間に叫んだ。

 

 

「白い鳥が、血濡れて赤い鳥になったな。ほら、鳥が飛び立った! 誰が...掴み取るかな?」

 

 

液体が収束するように、セイヤが姿を消した。

 

乾いた空気を、焦燥が憤怒が悲痛が揺らしている。最下層の天井もどんどんと崩れてきている。

 

この戦い、引き分けだ。

俺達は、多くの犠牲を払って......ようやく殺し合いのゴングを鳴らしたのだ。

 

 

 




同日投稿ー! お疲れ様です(自分に向けて)
今回で大分色んな人が退場しました。日付を跨ぐと臨場感とか消えちゃうな...と思い同日投稿。
今後ある戦いは平均してマリアベル戦を最低基準にしてバンバン死人が出ます。
頑張れ、リムルとセイヤのメンタル!

(セイヤが最後に言った白い鳥、赤い鳥の意味が分かった方いらっしゃいますか?)←ウザイ奴
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