でぃすいずごっと!   作:檜の棒

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そのさん!

《次はー、〜〜です》

《The next station is 〜〜》

 

車内にアナウンスが響く。

現在、裁人は電車に乗車している。

すぐ横には堕天使が裁人に寄り掛かるようにして寝ている。

 

(………周りの視線が刺さる)

 

時間帯は夕方、乗車してくる客はそこまで多くない。

だがそれが逆に注目を集める原因になってしまっている。

 

 

  無愛想だが優しく妹に寄り添う兄

  その兄を信用、信頼する妹

 

 

周りは大体そんなイメージで見えているのだろう。

だが実際は

 

 

 堕天使を自称する幼女の姿をした怪しい存在を保護し家に住ませている不審者ロリコン

 

 と

 

 保護して貰っている身でありながらも毎日怠惰な生活を送り、その上自身を堕天使だと言い張る変なロリ

 

 

だ。

この事実を今温かい目で見ている乗客に教えたら疑問符が消えない事は確実である。

 

乗客「ねぇねぇ、あれ超可愛くない?」

  「わかるー超尊い…」

 

対角線上の席に座っている、見た目から考えると高校生辺りの女子2人組が裁人と堕天使をネタにしながらひそひそ話している。

電車の動く音もまあまあ大きいが、ひそひそ話は普通に聴こえている。

 

プシュー

《お出口は左側です》

《お降りの際は運転席近くの1番前入口のー……》

 

次の駅に着き、さっきと似たような案内アナウンスが車内に響く。

やはり夕方、乗ってくるのは高校生などの学生がメイン。

 

シュゥゥ

ガタンッ

 

ゴトンゴトン

 

少しだけ乗車客が増えたがやはり2人の隣りに座ろうとする人間は現れない。

ここまで幸福そうな空間を見たことが無いのか、ただただ傍観している。

だが現実はそんな甘々なモノでは無いのは同じだ。

 

(視線が増えた………コワイ)

 

裁人には電車の駆動音と堕天使の静かな寝息しか聞こえない。

だがー

 

「あのー、ご兄弟なんですか」

 

(?!?)

 

先程まで対角線上の席でひそひそ話をしていた女子2人組の片割れ、身長は低く、バッグにはアニメのキャラクターなどのストラップが自慢するように付けられている。

 

「あっ、へ?」

 

「ああすみません迷惑でしたよね、通報してもらって構いません本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

話しかけてきた女子は必死に言葉を付け足しながら謝り、その場から離脱しようとする。

 

だが

 

《ドアが開きます》

 

次の駅に着き、乗客が入り込む。

数が多い。

離れようとした女子が元いた場所には既に人が詰め込まれていた。

 

「あっ…」

 

「………隣り、座って」

 

これが公園のベンチなどで行われているのではなく、運行中の電車の座席で行われているという。

気まずい空気が流れる。

しかしその空気はその座席に座っている女子と裁人の合間にだけ流れていた、超空間限定的な気まずさである、もはや意味がよく理解でき(ry

 

「はぁ………」

 

(俺の方がため息つきてぇわな)

 

 

 

《まもなく、〜〜駅です、お降りの際は運転席近くの左側のドアからお降りください》

 

(やっとか……無駄に長く感じた)

 

次の駅は裁人と堕天使が生活をしている家までの帰路に繋がっている駅だ。

裁人はここに来るまで声一つも発せず、ただただ脳死で待っていた、横にいつまで経っても起きない堕天使に寄り掛かられながら。

 

「おい、起きろ、次で降りる」

 

「むむ……わかった」

 

長いこと睡眠している割には早く反応が返ってくる。

堕天使は閉じていた瞼を擦りながら寝起きの朦朧としている意識を覚醒させようとしている。

真横で座っている女子はさっきまで気まずい空気が流れていた事を忘れ、堕天使の仕草一つ一つに対し、心の中で悶絶していた。

 

(ッッ…やばい………死ねる…マジで可愛い…)

(しかもお兄さん?も結構声かっこいい…)

 

どうやら彼女は語彙が消えるタイプだったようだ。

 

《ドアが開きます》

 

「ほれ、立て」

 

「はいはい」

 

座席から立ち上がり、電車の出口に進む。

 

(ん?この女子校生みたいなのもこの駅なのか…?)

(アレっ、この子とお兄さん?もこの駅で降りるのかな)

 

裁人と堕天使は電車から降り、そのまま駅から一緒に出た。

 

「んんぁぁぁ〜〜〜、ずっと座りながら寝てたから身体がいつもより硬いぃぃぃ」

 

歩道の真ん中で歩きながら背伸びをして身体をほぐす堕天使。

そして

 

先程の女子校生が後ろで歩いている。

しかもずっと同じ方向に。

 

(おいおいおいおいおいおい)

(アイツ不審者か?一体いつまで付いてくるんだ……)

 

「ん?どうした」

 

「あ、ああ何でも無い」

 

「ふーん」

 

(後方注意だな…)

 

 

 

(えっちょっこの人なんで私と同じ方向に進んじゃってるワケ!?)

(何度か曲がり角あったけど全部同じなんだけど!)

(もしかして………私の事が全部知られちゃってる?!)

(いやいやいやいやいやいや、そんなスパイ映画じゃあるまいし……)

 

 

 

「堕天使」

 

「なんだ?」

 

「急ぐぞ」

 

「なんで」

 

「………観たい番組がある、動物特集のヤツ」

(勿論嘘だが)

 

「観たい番組、動物特集……急ぐしかあるまいな」

 

「よし、じゃあ走るぞ」

 

「えっちょっと、待って走れないッボク走れないッッ」

 

「だぁぁもう!ホレ!」

 

裁人はいきなりしゃがみ込み、堕天使に背中に乗るよう促す。

 

  ━おんぶで走り、謎の女子校生から逃げる作戦━

 

「そうそう、きさまはボクの足になるのだ!」

「ボクのふとももで欲情するなよ〜?」

 

「俺にはワラビーの赤ちゃん映像が待っているんだ、貴様のももなぞ毎日触れる、後だ後」

 

「ぇぇえー!」

「わ、ワラビーの赤ちゃんにボクのむにむになふとももが、負けた…」

 

(えっちょっおんぶしだしたと思ったら走り始めた!)

(しかも私の住んでる家の方向!?!)

(ヤバい!なんかヤバい!)

 

裁人は背中にロリを背負いながら全速力で走る、いや逃げる。

そして女子校生は家に行かせまいと全速力で追う。

 

「ぬぐっ急に走り出したから肺がっ」

 

「はっはっはー!風になった気分だ!もっと上げろーーー!!!」

 

「もうメーター振り切ってますぅぅぅぅぅ!」

 

「限界超えなきゃ明日は無いんだろ?!」

 

「ホワイトタイガーの子育て映像の為に限界超える馬鹿が何処に居るんじゃあ!ぬぐぉおおお」

 

言っている事とは裏腹にグングンとスピードを上げていく。

 

「待てぇぇぇぇぇぇい!!!!」

 

「何ッッ」

 

だが女子校生も速度を上げてきている!

ローファーを履いてるにはおかしい速度、スカートが風にたなびいてバサバサと音をたてる。

大きく腕を振りながら、リズムを一定に保ち速度を下げないように走る。

もう周りの目なんて眼中にない、ただ目の前の二人組をなんとかして捕まえて家に行かせないつもりだ。

 

「なんだあのおなご!裁人知ってるか?」

 

「知らねぇよ!!!」

 

「待ってくださぁああいッッ!」

 

「待てって言われてまつ人が居るか!てかなんで俺が待つんだよ!関係ないじゃねーかァ!!!」

 

「何がなんだかさっぱりだぞ裁人…」

 

「俺もだよ!」

 

自室まであと少し、女子校生は距離を縮めてくる一方、裁人は堕天使を抱えながら走っている事もあって体力が消耗、速度が段々と落ち始めている。

 

「見えてきたッッ、ぐぬぉおおおお!!!」

 

右側に見える一軒家へと走り込む。

 

 バタンッ

 

勢いよく扉を閉める。

 

「まぁてぇい!開けろぉぃ!!」

 

「ここ俺んちだからァ!関係ないんだよテメェは!!!」

「何勘違いしてるか知らねぇけど俺一般人だからぁ!!!普通後ろから知らん人に付きまとわれたら逃げるやろがいッ!」

 

「あっえっ?!」

 

「早う帰れや!!!」

 

扉には鍵がかけられている、何度かドアノブを回すも動かない。

それは彼がこの家の鍵を持っているから、つまりこの家の所有者か使用者だという事を示している。

 

「ああああああごめんなさいマジで本当ごめんなさい!!!」

 

「………なんだよ帰れはよ」

 

「なんか勘違いしてましたぁああああぁぁぁぁぁぁ…………」

 

謝罪の叫びは段々とフェードアウトしていったのであった…

 

 

 

 

「………はぁ」

「一体どんな勘違いしたら追いかけ回す思考になるんじゃ…」

 

「悪人面だから?」

 

「んだとォ?二度とメシ食わせんぞ」

 

「あひぃ!裁人は世界一イケメンで行動も全部全部ぜーんぶカッコいい!!!」

 

「もっと」

 

「世界中の美女が惚れるレベルのイケメン!二次元から出てきたような行動力!!ハーレム物の主人公!!!」

 

「………………」

 

「あ、え…あう………」

「さ……裁人だぁーーーーいすきッ!!!!!」

 

「……………」

「許す。」

 

「くはぁ…生きた……」




あの女子校生?は裁人の家から2つ離れた所にある家に住んでます。ほぼ近所です。
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