虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話 作:投稿するヒゲ
過度な期待はしないで下さい。
プロローグ
僕は転生者だ。
もういろいろと面倒なので説明は省くけれど、クッソ美少女に産まれ直したチート転生者なのだ。
「結、貴女の髪はいつも綺麗ですね」
超デカイお屋敷の一室で僕の銀髪を溶かしてくれているのは栞子ちゃんだ。
そう。あの『
あの、ラブライブの作品に登場する『三船栞子』なのだ。
お察しの通り、この世界はラブライブ世界であり、『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が存在する世界なのだ。
余談ではあるが、他のラブライブ作品で登場する『μ's』や『Aqours』などのユニットもテレビやネットで確認している。
アプリ時空なのかアニメ時空なのかわからないが、ともかくラブライブキャラが存在する世界に転生したのは間違いない。
気づいた当初は開いた口が塞がらなかった。
すぐさま栞子にそっと顎を手で押さえられて戻されたけども、それぐらい驚き、呆然とした。
僕は前世での記憶はもうほとんど無いけれど、ラブライブはアニメ程度しかしらない浅いファンであったのは確かだ。
そんな僕がこんな幸運に恵まれてしまっていいのだろうか。そう思い、自覚した当初は戒めとして人生を終わらせようとした事もあったが栞子達に泣きながらに止められたので渋々控えめに生きている。
ガチファンの皆さんには申し訳ないと思いつつも今、僕は栞子の家に住む事になっているのだ。
もう色々とキャパオーバーで、つい自戒行為に走りそうになるが、理性で耐えに耐え、僕は彼女達の歌手活動を前世のファン達の分まで最大限に応援すると誓っている。
僕自身も彼女達が輝いている尊き姿を見たいという欲もある。
だからこそ、今日虹ヶ咲へと入学してからは全力で支援していくつもりであります。
「よし、これで準備完了ですね。では一緒に行きましょうか」
僕は頷き、鞄を持って栞子と学校へ向かった。
◇
隣を歩く彼女は、差し出した私の手を握り返してくれる。あの時握れなかった彼女の手から暖かな温もりを感じた。
彼女──
結との出会いは幼稚園まで遡る。
彼女は私──『三船栞子』では無く、唯の栞子として接してくれた初めての友人だった。当時は幼く、その有り難みを感じていなかった私は、結の大切さに気づくのはもっと後になってからではあったけれど、大人しめな性格の私に笑顔で話しかけてくれたのは彼女一人だった。
そんな結と過ごす日々は、私にとってかけがえのない大切なものになるのに時間はかからなかった。三船の家の事で遠巻きにする周囲の人間の事など気にならない程に輝いていた。
彼女が笑顔の裏で、どれほどの苦難が隠されていたのかも気付かずに。
結は、私と仲良くする事で周囲から反感を買い酷いいじめを受けていた。悪口はもちろん、直接的な暴力、挙句の果てには先生方からさえも不平な扱いをされていた。私が止められれば良かったのだけれど、彼女の受ける責め苦は私に隠されて実行される事が多く、当時の私では止められはしなかった。
それに、彼女は自宅に帰っても尚苦しめられていた。彼女の母は早くに夫を亡くしたシングルマザーであった。そのストレスからか、周囲からの悪い影響からか、彼女の母は結に対して碌な食事を与えず、ストレス発散の為のサンドバッグにしていた。
そして一番残酷なのは私だ。
彼女が苦しんでいた事に気づきもしないで、中学になるまで何の疑問も抱かずに過ごしていたのだから。
私が結の惨状を知ったのは、彼女がクラスメイトの男女複数人に性的暴行を受けそうになったと知った時だ。彼女は服を剥かれ、今にも辱めを受ける直前だった。
その後の事は憶えてない。
犯行に関わっていた生徒と見過ごしていた教師が日本から消えたという事実を後から聞いたのを思い出せる。
それから幾度となく結が直面していた問題を、裏で手を回して解決する日々が続いた。
これで少しは彼女が笑顔で過ごせるようになると思った。
だというのに結は、ある日自殺未遂を起こしてしまう。彼女は包丁で自分の腹を裂こうとしたのだ。
たまたま現場に居合わせた私は、なんとか説得に成功して暴挙を止めることができたが、いくら周りを改善しても彼女の精神が回復しない事を実感した。
私は生まれて初めて家の権力を使った。
父に頼み込み、彼女を私の家で保護する事にした。権力や財力といったものは、今まで私にとって疎むべきものであったがこの時ばかりは感謝の念が絶えなかった。
辛い境遇や今までの地獄の様な日々で彼女の心が壊れてしまったのか、結は声を出す事はしなくなった。表情も殆ど変わらず、意思表示は頷いたり紙やスマホによる文字での疎通が主体だ。
しかし、そんな彼女にも興味を示すものがある。
──スクールアイドル
姉である三船
終始、ピョンピョンと飛び跳ねて姉さんの歌う姿を応援していたのを憶えている。
それを機にスクールアイドルに興味を示し、虹ヶ咲学園へと入学したいと、無気力な彼女が初めて願った願望に私は大いに喜んだ。
残念ながら姉さんは適正が無かったのかスクールアイドルを辞めてしまったけれど、彼女が新しい希望を持つ事に繋がったのなら無駄ではなかったと言える。
「今日から虹ヶ咲に通う事になりますが何か問題があれば相談して下さいね」
結は静かに頷く。
かつての過ちを繰り返さない為にも私が彼女を守護らねばと、結の顔を見てより一層深く思った。
オリ主はラブライブキャラや周囲の人間が美男美女過ぎて緊張から話せません。尚、周囲は過去のトラウマから話せないと勘違いしてる模様。