虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話   作:投稿するヒゲ

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ギャグ回です。いつにも増して他作品ネタ過剰です。苦手な方は読み飛ばし推奨です。
アニメでしずく回を見た時からこのネタを思いついてました。


第八話 もうひとりの私!?

 僕はいつも通りに部室に向かっていた。

 今日はいつもよりなんだか調子が良い気がして思わずスキップの一つでもしてしまいそうになる。すると、前方の教室前で静かに身を潜めて扉に耳をくっつけているかすみんを見つけた。

 

 何してんすか?

 ただでさえいつも騒々しいのに、まーた悪戯の一つでもしようとしてんすか?

 

「しーッ、静かに。ちょっとこっちに来て」

 

 僕はかすみんに手を引かれて、同じ様に扉に耳を当てる。

 小さく何かが聞こえてくる。

 

 よく、聞こえない。

 動き回っているのか靴の音が頻繁に聞こえた。

 

「中でしず子が一人で何かしてるみたい」

 

 かすみん曰く、最近しずくさんがボーッとしている事が増えて気になっているみたいだ。流石部長、しっかり同好会の事を見ているんですね。改めて感服いたす候。

 

「聞いてみても曖昧な事ばかりで……私も、気が向かないけどこっそり調べてるんだ」

「こんな所でどうしたんですか?」

 

 先日、一緒にオタ活をしたせっちゃんが生徒会長モードで僕達を不思議そうに見つめていた。瞬間的に何をしているのか察したせっちゃんは、持っていた資料を放り出して僕達の側で屈む。

 

「よーくわかりましたよ! スニーキングですね! 私も混ぜて下さい、ワクワクしますね!」

「声のトーン抑えて下さい! しず子にバレてしまいますよー!」

 

 かすみんが一番うるさい。

 これじゃあ、もうバレてるんじゃ……。

 

「なに、してるんですか?」

 

 扉が急に開き、僕達三人は同時に倒れ込んだ。

 顔を上げれば、顔を真っ青にしたしずくさんが僕達を見下ろしていた。その表情は、部屋の電気が付いていない事から目元が隠れていてハッキリとは覗えない。

 

「聞いてたんだね」

「えっと」

「そう、そうなんだ……嘘、ウソ、うそです!」

 

 頭を抱えて叫び出すしずくさん。

 なーんか、ヤバそう。

 いや、ヤバい(確信)。

 

「違う! 違うんです!! 私は、私はあんな」

「しず子落ち着いて! 私は何も聞いてないよ!」

 

 唐突に広がる固有結界。

 僕達は暗闇が広がる劇場の中心に移動していた。

 

 ば、バカなッ!?

 ラブライブ特有の固有結界は曲を歌っている時だけじゃなかったのか!?

 

 そしてスポットライトが光り、黒色のドレスを着て仮面を付けたしずくさんと、白色のドレスを着たしずくさんを照らした。

 

「あなたは昔から隠すのが上手かった」

 

 身振り手振りで、やけに演技がかった動きで語り出す仮面のしずくさん。

 

「怖かったのよね。変な子だと思われたくない。少しだけ周囲と違うだけで、嫌われたらどうしようと常に怯えていた」

「違う! 私はッ! 私は、昔から映画や小説がが好きで」

「それは今だから誰かに言える。幼い頃は周囲の顔色を窺って、大好きな事も誰とも共有できなかった」

 

 仮面のしずくさんは嘲笑う。とうとう、立てなくなってしまった白いしずくさんは声を震わせていた。

 

「そんなあなたが理想のスクールアイドル? 笑わせないで。自分の事も演じなければ他人と関われない臆病者が、大それた願いを抱くものだね」

「うるさい……」

「私はあなた、あなたは私。さぁ、受け入れて本当の(オモイ)を」

 

 仮面のしずくさんが手を差し出す。白いしずくさんが立ち上がり、思いっきり手を払い除けた。

 

「おぉ〜、この展開は本当の自分と向き合って覚醒する系のやつですね! アニメで観ました!」

 

 せっちゃん空気読んで。

 今、そんな目をキラキラさせていい状況じゃないから。

 

「違う! 私は、皆に好かれるスクールアイドルになるんです! 私なら演じられる!」

「それ以上言っちゃいけませーん!」

 

 あの、せっちゃん。せめて台詞と表情を合わせて下さいませんか。すっごいワクワクしてるよね。

 

「あなたなんて……あなたなんて、私じゃない!!」

「……アハハハハッ!! そうだよ! あなたなんて私じゃない! 本当の私は、私だ!」

 

 赤黒いオーラを撒き散らしながら、黒いしずくさんは異形の姿へと……異形の姿、姿へと……あれ? 凄い可愛らしい黒いドレスに変わっただけだ。

 良かった。流石にラブライブでそんな化け物は出ないか。

 

「我は汝、汝は我」

「ど、どうしよう。しず子気絶しちゃったんだけど!?」

「これはあれです。戦いましょう! 戦えば大体何とかなります」

「どういう事ですか!?」

 

 白いしずくさんはこっちに連れて来てっと。

 とりあえず、あの暴走状態の黒いしずくさんを落ち着かせないと。

 

「さぁ、行きますよー! ペ◯ソナ!」

「ペル◯ナって何ですか!?」

「いいから言って下さい!」

「ぺ、ペ◯ソナ?」

 

 かすみんとせっちゃんが、それぞれのライブ衣装へと変わる。

 

 よし、僕も。

 

 カッ、と僕の中で目線だけがカットインする。

 

 ペル◯ナッ!!

 

 一回は言ってみたい台詞を心の中で叫んだ。しかし僕の衣装は何も変わらず、いつもの学園の制服のままだった。

 

 ま、まぁ、僕はスクールアイドルじゃないし。それに、主人公は大体制服姿だから……大丈夫、僕は所謂ワイルド、ジョーカーだから……。

 

「それでどうするんですか!?」

「攻撃するんです。今のしずくさんは本当の自分と向き合えずにいます。ですから、本当の自分と向き合える様に精神的に攻撃するんです」

「それって思ったよりもタチ悪くないですか!?」

 

 その通りである。

 でもまぁ、殴る蹴るをもう一人のしずくさんにする訳にもいかないし、それに精神攻撃は基本ですよね。

 

幾千の呪言(アンチコメント)

 

 凄まじいまでの黒い衝撃波が僕達を襲う。

 少しづつ知名度を上げて来たしずくさんに対する、理不尽な批判がSNSやコメント欄に投稿されていた。

 

──どうでもいい。

──そっとしておこう。

 そう言った集合的無意識の中に潜む悪意。表に出る。顔が知れると言う事はこんなにも辛い事だったんだ。

 

「しず子……いつもこんな悲しみを感じていたんだ」

「そうですね。ですが、それは私達も同じ。それぞれが万人受け出来るアイドルじゃないのは分かっています! なので、まずはこの【幾千の呪言(アンチコメント)】を取り払いましょう!」

 

 せっちゃんがスマホで沢山のコメントを選別していく。

 それは、心温まるコメントや感想。応援してくれているファンの言葉だった。

 

「見て下さい、しずくさん! 確かに沢山の悪意ある批判はあります。私も『優木せつ菜』として二重生活を送っておりますので少しはわかります。しかし、私にも認めてくれた人が居た様に、確かにしずくさんの魅力に惹かれ、応援してくれるファンもいるのです!」

 

 せっちゃんが、かすみんと僕に向けて慈愛の微笑みて浮かべていた。そして、スマホを黒いしずくさんに向けて、もう一度叫ぶ。

 

「目を開いてちゃんと見て下さい! 前を向いて、ファンの皆を見れば分かるはずです。それを邪魔する感想は全部私達が消去(ブロック)します! その果てにある【幾万の真言(全肯定ファンの感想)】を信じて!」

 

 スマホから溢れ出した極太ビームが、黒いしずくさんに直撃する。

 黒いしずくさんは仮面にヒビが入っていた状態で、全身から煙を上げていた。

 

 桜坂しずくよ。

 本当にこれで良いのか。こんなんでいいのか?

 

 次に、かすみんが黒いしずくさんに近づいて行く。いつもとは違って、とても真面目な表情だ。

 

「私にはしず子が自分の事どう思ってるのかわからない。けど、どんなしず子も、私は大好きだから! だから、しず子にはこれから先ももっと本当の自分を見せてほしい!」

 

 仮面がどんどんとひび割れて行く。

 

 せっちゃんと違ってなんて良い話なんだ。

 やべっ、涙出そう。

 

「ほう、やりますねぇ。あれは人が生きたいと思える希望(いいくるめロール)。差し詰め【宇宙(ユニバース)】ですね」

 

 せっちゃん頼む。頼むから空気読んでくれ。

 かすみんによる最高友情エンドになりかけていたというのに、また暴走しちゃったよ。

 

「私は、自分が嫌い。怖がりで、そのくせ自分を受け入れて欲しいと思う自分が大嫌い」

 

 黒いしずくさんが仮面の下から涙を零していた。それは紛れもない彼女の本心なのだろう。

 

 僕も何か伝えないと!

 伝われ、この想い!

 

「な、なんですか!?」

「脳内に直接!?」

 

(ファ◯チキ下さい)

 

 あっ、これじゃねぇわ。

 

 だいたい、この固有結界に僕達が居る時点でしずくさんは根本的に誰かに助けて欲しかったんだと思う。

 だから、後は少し背中を押してあげるだけでいい訳だ。

 

 それにだ。

 そもそも、周囲の反応を怖がって素直になれないしずくさんって何が悪いのか。それってとてつもない萌えポイントだよね?

 

 正直、今のしずくさんでも十二分に可愛いと思います。

 

 そんな事を真顔で考えていた僕は、二人がジト目でこちらを見ていた事に気づかなかった。

 

「あの人、本気であんな事思ってるよ」

「流石、結さんです。さすむす!」

 

 マズイ。この空間では何が相手に伝わってるかわからない。どこに行ったんだ僕のタブレットッ!

 

 黒いしずくさんの元に、いつの間にか起き上がった白いしずくさんが対面する。

 

「私、本当は周りなんて気にせず、自分らしく振る舞いたかった。そんな自分を受け入れてくれる人なんて居ない……そう思ってた。でも、一番否定していたのは、私だったんだね」

 

 白いしずくさんは、黒いしずくさんの手を握る。

 

「アナタは、私だね」

 

 黒いしずくさんの仮面が剥がれ落ちる。そして、優しく微笑むと同時に白いしずくさんの中に消えていった。

 

 暗闇の劇場が消え、元の空き教室に戻る。

 

「なんだか全部見られちゃったね」

 

 そんな事を言うしずくさんは、恥ずかしがっている反面、どこか嬉しそうだった。

 

「でも、ありがとう! 皆さんのおかげて、私、吹っ切れちゃった! 見て欲しい、もっと本当の私を見て欲しい!!」

 

 どこか狂った様にそんな事を叫びながら、しずくさんは教室から走り去っていった。

 

「ミッショーン、コンプリート!」

 

 ドヤ顔でサムズアップするせっちゃん。

 もうツッコむ余裕もないぐらい疲れた。

 それは、かすみんも同じ様子で。

 

「これで良かったんでしょうか?」

 

 窓から空を見上げて、黄昏ていた。

 

 しずくさんが変な意味で覚醒してしまった気がする。

 

 そして、おもむろに鞄から例のブツを取り出してこう言った。

 

「コッペパン……食べ(キメ)ます?」

 

 僕は、かすみんの後ろ姿がどうしようもなく哀れに思えた。




こんなくだらんネタ回が文字数一番多いとかいう…。
反省はしているが後悔はしてない。
オリ主メイン回に入ると激重回連打するので許してクレメンス。
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