虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話   作:投稿するヒゲ

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お待たせしました。
誤字脱字報告いつもありがとうございます。
二期編制作に伴いプロローグを若干の修正をしております。
オリキャラでオリ主の母が登場します。
後半胸糞展開です。
クライマックスなんで許してください(曇らせとはいったい…)。


第十一話 Resolve to EMOTION's 1

 

「夏合宿! 学園で合宿をしましょう!!」

 

 せっちゃんの突如に行われた部室での宣言。

 

 いったい何事だ?

 

「やりますねぇ」

「夏、始まるわね」

「みんなでお泊り。璃奈ちゃんボード『ワクワク』」

「みwなwぎwっwてwきwたwww」

 

 各人、概ね賛成のご様子。

 しかし、椅子にもたれ掛かり項垂れている人物が一人いた。

 

 どしたん、かすみん。

 なんで、げっそりとしてるんです?

 

「この面子で合宿……大変な事になりますよ」

 

 ひとり、うわ言のように呟いてコッペパンを齧っていた。

 かすみんに何があったんだ……。

 最近のかすみんはやさぐれる事が多い気がする。やっぱり部長という肩書きは伊達ではなく、いろいろと大変なんだろう。

 

 かすみんも気になるが、僕にはもっと気になっている悩みの種がある。

 そっと窓際で一人、空を眺めている栞子に目をやる。

 

──栞子、最近様子が変だな。

 

 果林先輩が加入して、同好会でスクールアイドルとして活躍するようになって少し経った。

 これで同好会のメンバーは、だいたい揃った事になる。しかし、唯一栞子だけがスクールアイドルとして活動してはいなかった。

 確か、栞子もアニメではスクールアイドルとして歌っていた気がするんだけど一向に活動する気配を見せない。

 僕と侑たそと同じ様に同好会のサポートに回っていた。

 

 それに違和感を覚えつつ、今日まで僕は栞子に理由を聞けないでいたのだった。

 

 栞子、合宿頑張ろうね。

 

「えぇ、準備は万全です。学園側への許可は取ってありますので安心して下さい」

 

 ぎこちない笑顔を浮かべる栞子に、僕は結局何も聞く事が出来ず、合宿の日を迎えた。

 

 

「今日は朝からみっちり特訓しますよー!」

 

 提案した張本人である、せっちゃんが元気良く手を振り上げる。僕もやる気に満ち満ちていた。今日は禁止されていたトレーニング。合法的にガッツリと身体を鍛える事ができるんだ。こんなに嬉しい事はない。

 

「むーちゃん、今日は愛さんと競争だ!」

「では、分かれて基礎トレーニングを行います。体力トレーニング以外を行う人は最低でもストレッチだけは欠かさずに行ってください」

 

 スケジュール管理は栞子が行ってくれる。それぞれに適した内容を十分間刻みで調整してくれていた。栞子……僕、そういうとこ怖いよ。

 

「結ちゃん、ちょっといいかな」

 

 侑たそが手招きして呼んでいる。

 どうしたんだろ。僕は今から全力で愛さんと全速前進だッ!!、する所なんだけど。

 

 すまそ、愛さん先行っててくれ。

 

「愛さん、そういう事でしたら僭越ながら不肖、優木せつ菜が相手になります!」

「せっつーが相手ならアタシ、本気出しちゃうよ!」

 

 二人して走って行ってしまった。もはや運動部だな、これ。

 後は、ダンストレーニングや料理係などに分かれていった。

 

 そんな中、僕と侑たそは少し人がいない校舎の影まで移動した。

 

「結ちゃんはさ、栞子ちゃんの事気づいてる?」

 

 そりゃもちろん。

 毎日、家に帰れば一緒にいる中だ。少しの変化でも気づくのが当然だろう。

 

「理由とかって心当たりはある?」

 

 (わから)ないです。

 いつも様子がおかしい時はあるけど、今みたいに抱え込んでしまっている事はなかった。

 

「そっか……私ね、そろそろこの学園で同好会のイベントを開催したいなって思ってるんだ」

 

 そ、それって!?

 

……何だっけ?

 アニメでなんかそれっぽいやつをやった気がするんだけど、何だったかなぁ!

 

 カラ◯ルステージ、ガールズ◯ンドパーティー、スター◯イトステージ……どれもピンと来ませんねぇ。

 

「名付けて! スクールアイドルフェスティバル!!」

 

 それだ!!

 間違いなく、ソレ!(地球儀爆速回転)。

 ここ!……ラブライブ!!

 

 そうだ。ここはラブライブ世界であって他の音ゲー世界ではないのだ。

 

「だからね。栞子ちゃんにも本当の意味でお祭りを楽しんでもらいたいんだ」

 

 そうだね。僕も栞子の事どうにかしたい。

 私……気になります!

 

 よし、いっちょ聞いてみっかー!

 任せといて下さい。無二の親友であり、幼馴染、そして家族でもある僕が栞子の悩みをパパッと解決してやりますよ。

 

「よろしくね。私はみんなに話をしておくよ」

 

 

 そして、いろいろあった合宿は栞子を観察する事に徹していたら、いつの間にか終わっていた。

 

 帰り道、意を決して栞子に悩みがあるのか聞いてみた。

 

「なにもありませんよ。大丈夫、私は大丈夫です」

 

 ベロンッ(空気を舐める音)、この味は、嘘をついている味(虚無)だぜ!

 

 結局、それ以上聞く事が出来ずに家の前まで着いてしまう。

 

 

 どうしよう、このままでは何も、何も出来ない。僕は──

 

 

「なんで貴方が居るんですか」

 

 栞子の普段聞かない様な忌み嫌う鋭い声色に驚き、顔を上げる。

 

 すると、かつて見たあの人が──僕の母さんがそこに居た。

 

「質問に答えて下さい。私や結の前に姿を見せないという契約をした筈の貴方が、なぜ私達の前に居るのかと聞いているのです!」

「ご、ごめんなさい……ただ、私は娘に謝りたくて」

「今更ですか。どの口がッ!……帰って下さい!」

 

 二人の言い争いに近所の人達も集まってきた。このままでは再び、ご近所さんから忌避の目を向けられてしまう。それも栞子達もだ。それだけは……それだけは許容できなかった。

 

 栞子、先に行っててくれ。

 

「ですが、結を一人にする訳には」

 

 大丈夫。少し話をするだけだから。

 

「──ッ! わ、わかりました」

 

 栞子は無言で走り去ってしまった。見間違いでなければ、栞子は……栞子は一瞬だけ僕を見て──泣いていた。

 

 

 話をしようか。

 過去(むかし)現在(いま)を結ぶ為の話を。

 

 僕と母さんは話をする為に、夕暮れが照らす公園のベンチに腰を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 私──(あらし)(はつ)は、かつて仲谷結から母と呼ばれていた女だ。

 

 今でこそ、新しい家族も出来て幸せな家庭を持っている私だが、目の前のタブレットを持った無口な少女こそが私の罪の証だった。

 

 少しだけ昔の話をしよう。

 それは『嵐』となる前の、まだこの町に住んでいて、『仲谷』と言う姓を名乗っていた罪人の話を。

 

 前夫を亡くす前の私は順風満帆。それこそ、人生の成功者と言ってもいい人生を歩んでいた。夫とは所謂デキ婚で、愛はお互いに無かったと思う。しかし、彼は多額の貯金を持つ富豪。私は愛など無くてもいいから、安定した生活ができればそれでよかったのだ。

 

 でも、その生活は続かなかった。夫は家を空けて他の女と遊んでいる事も多かったが、それは私も同じ。娘を産んでからも他の男と金と少しの情を求めて会っていた。

 結果、夫は痴情のもつれが原因で命を落とした挙句、複数の金融機関からの借金を押しつけて死んだ。

 

 私の人生が壊れていったのはそれからだった。

 

 事件は大きく、裁判沙汰にもなり、新聞からニュースにまで載った。そして、噂が広がるのは早く、私は淫猥な売女として町中から非難された。

 

 どこに行っても後ろ指刺される日々。元々男に縋って生きてきた心の弱い私では耐えられなかった。

 日々の暮らしさえまともに送れる筈がなく、あらゆる害意が私に襲いかかった。

 

 家に悪戯なら優しいものだ。暴行、誹謗中傷は当たり前。挙句の果てに私を呼べば股を開く女として犯そうとしてくる始末。

 そんな日々に私は精神は取り繕う事も忘れて荒んでいった。

 

 しかし、私の娘──結だけは変わらず側に居た。所詮、夫を繋ぎ止める為の道具としか見ていなかった物が、私が絶望する中そこに居た。

 

 私は迷わず殴りつけた。

 小さな悲鳴が聞こえるが構わず殴る。

 死なない様に加減をし、服から見えてしまう部分には当てない。何かを話そうとした時に私はこう言った。

 

「二度とその声を出すな。お前の声は呪いだ、聞けば誰もを不快にさせる呪言だ」

 

 口止めの意味もあった。私が行っている事も間違いであり、罪である自覚もあったのだ。

 

 しかし、それからも何度も殴りつけた。加減を間違えて意識を失う事もあった。そんな日常の中で結は誰とも会話する事はなかった。紙に書いたり文字での疎通だけをする様になった。その姿が私の怒りをさらに掻き立てる。

 

 道具()でストレス発散をする度に、冷静になった頭で考える。道具()が耐えられなくなり、壊れてしまえばいよいよ私はこの生活に耐えられなくなる。

 

 だから、偶になけなしの金を使い、結と出掛けたり、物をあげたりした。

 

 だが、遂に私は結を殺しかけてしまう。

 

 借金で私が食べる分しか食事を買う事が出来ず、結は幼稚園のおやつだけでは体力が限界だったのだ。その体力で私に使われた(殴られた)

 

 その結果、結の心臓は停止していた。

 

 私は急いで救急車を呼ぶ。

 このままでは私は捕まり、本当に人生が終わってしまう。

 

 救急車と共に結の友だちと名乗る子どもが入り込んで来た。

 

 三船栞子──彼女はこの一帯では知らぬ者は居ない程の大富豪である、三船家の次女だった。

 

 そんな彼女に結が一命を取り留めた後に告げられる。

 

「あなたに、あの子の母親である適正はありません。それ相応の金銭は用意します。即刻この町から立ち去り、二度と私達の前に姿を見せないで下さい」

 

 その後の事はあまり覚えていない。

 私は、気付けばそれ相応の立派なマンションで、普通の生活なら困らない金額が口座にある通帳を片手に呆然としていた。

 

 乾いた笑いが漏れた。

 

 通帳の額をもう一度確認する。

 結局私は、自分の娘を売り飛ばす事で安定した生活を手に入れたのだ。

 

 初めからこうすれば良かった。私に似て、美人な娘の事だ。将来は確実に美女になる。誰にだって売れた筈なのだ。寧ろ、大富豪である三船家に引き取って貰えただけ私に感謝して欲しいものだ……と、当時は本気でそう思っていた。

 

 けれど。

 けれど、違うのだ。

 私は、自分の罪に気づいていなかった。

 

 今の夫とは結が産まれて間もない頃に出会った男だった。一夜限りの関係ではあったけれど、運悪くその時に妊娠した。そして彼の懇願で子どもを産んで、引き取ってもらったという少し複雑な経緯を持つ男だ。

 

 そんな彼が私を心配し、連絡してくれたのがきっかけで私は彼に好意を持つ様になった。彼と私は同じ様な罪を背負う中であった事から気が合った。

 その内結婚し、赤ん坊の頃に引き取ってもらった娘を見て──私は初めて号泣した。

 

 初めて恋をし、初めて真っ当に生きてみて、ようやく私は自分の罪の重さに気がついた。

 

 ぎこちなく私を見つめる娘を見て、私はもう一人の娘を思い出す。

 

 散々な扱いをした。

 どれだけ謝っても許されない。例え、地獄に堕ちても尚許される事ではない大罪だ。

 

 そんな罪に今更気付くなんて。

 そう、今更、今更なのだ。

 自分が幸せな生活を送れるまで忘れていたぐらいだ。

 

 私は、確かに娘を愛していたのだ。

 

 こんな私が話しかけると嬉しそうな返事をしてくれていた。こんな私と出かければ、楽しそうにはしゃいでいた。

 

 どうして、どうして忘れてしまっていたんだろう。

 私は、目の前の苦難ばかりに目を向けて、結との幸せな時間を忘れてしまっていた。

 

 なんて、なんて愚かで罪深い。

 

 泣き崩れる私を夫が慰めてくれた時誓った。

 結の分まで、今目の前にいる娘を幸せにしよう。今はもう、娘とも呼べない彼女の分まで愛を注ぐと。

 

 そして月日は過ぎ、娘がスクールアイドルに興味を持ち、一緒に動画を観ている時だった。

 

 とあるスクールアイドルの動画に、見覚えのある顔が映った。

 私と同じ銀髪に、特徴的な左右で違う瞳。髪を乾かされているのか幸せそうな顔をしている。その姿を私は食い入る様に見て、そしてコメントを打ち込んだ。

 

──『結』

 

 その動画のスクールアイドルが虹ヶ咲学園の生徒である事を知った。

 

 私は、どうしても結に会いたくて、会って謝りたくて、三船の家まで来て待った。

 

 そして今、結と向き合い話をする。

 いまだに話そうとせず、タブレットを使って意思疎通をする姿を見て唇を強く噛んだ。

 

──もう話していいよ。

──どうか声を聞かせてほしい。

 

 どの口が言えようか。

 謝る事さえ烏滸がましいと言うのに。

 かつて罵った言葉が私の胸を引き裂いた。

 

「ねぇ、今は楽しい?」

 

 何を言っていいかわからない。

 きっと、このありきたりな言葉すら震えていたのだろう。

 

『楽しいよ』

 

 結はタブレットをコチラに向けてくる。

 

 当たり前だろう。

 酷い扱いをしていた私と過ごしていた日々に比べれば、幸せな生活をしているに違いない。

 

 でも、そんな結の瞳は私を見てはいなかった。

 

 結は、産まれてから一度も私を本当の意味で見てはくれていなかった。親しくなった人なら誰でも気づけると思う。結は、本当の意味で人を、誰かと真剣に向き合った事がない。

 

 言い訳にもならないが、そんな理由もあり、私は結を最初は不気味と感じてしまっていた。その不安を道具として扱う事で目を逸らしていたのだ。

 

 私は、今母親として最後にしなければならない事を理解した。

 

 きっと初めから結とこうして向き合っていれば、少なくとも結とだけは一緒にあの苦難の中で生きていけていたのだろう。

 

 だけどもう遅い。

 最後、最後だ。

 私に出来る最後の役目だ。

 恨まれてもいい。

 謝罪ではなく、最後に伝えたい。母があげられる娘への贈り物。

 

「結」

 

 伝える。

 いつまでも目を背けていた私が、最後に向き合うのは──

 

「いつまで目を瞑っているつもりなの。あなたを大切に思っている人と、しっかり向き合いなさい。今日は、それだけを言いに来たの」




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