虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話   作:投稿するヒゲ

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みなさんお気づきだと思うんですけど、この作品は二期編制作の為エンディングが変わっており、曇らせ要素が薄くなっております。
タイトル詐欺だよなぁ!
ユルシテ…ユルシテ。


第十二話 Resolve to EMOTION's 2

 家に帰るなり部屋に引き篭もった栞子の事を考え、ふと思い出す。

 

 私──三船薫子は、三船栞子の姉であり、もう一人の妹──仲谷結の血の繋がらならい姉だ。

 

 結と私達は少し複雑な関係だ。

 

 栞子が幼稚園に通っていた頃、栞子は友だちをつくる事ができなかった。

 傲慢と言う程ではないけれど、人を寄せ付けずに誰も彼もを警戒した様な態度。幼児としては適切でない様子に、他の同級生は近寄っては来なかったのだ。

 しかし、仕方ないとも言えた。家族で参加するパーティー等では、大人や子どもは、自分達に利益を求めて近づいて来る。それを私達の横で見ていた栞子は自然と他人を警戒する事を覚えてしまったのだ。

 

 そんな時、栞子に話しかける猛者が現れた。

 そう、結だ。

 

 結は栞子の態度をもろともせず、会えば話しかけていた。栞子はその態度が気に入らず、不機嫌さを隠そうとはしない。

 その様子は、私から見ればとても微笑ましかった。結は誰に対しても栞子に話しかける様に、誰がどんな対応をしても気にしない。それが、幼い園児からすればおかしい事に私は自ずと知る事になった。

 

 きっかけは簡単だ。結は、幼稚園でも栞子同様に孤立していた。

 初めは結はどんな園児にも受け入れられていたが、だんだんと結の態度に不気味さを感じたのか、栞子と仲良くしているのが原因なのか、他の園児達は結を遠巻きにし始めた。

 

 皮肉にも、その状況が栞子の興味を惹いた。

 それから栞子は結を観察し始めた。もっと言えば監視だ。幼稚園の時間は殆どを結を観察する為に使い、家に帰れば結の自宅方面を夕方になるまでずっと監視していた。

 

 私は栞子の異様な執着を不思議に思い、結の事を調べてみた。それが深淵を覗く行いだと理解せずに。

 

 結果から言えば、私は結の惨状を完璧に理解したのは中学生の時だ。調べさせた内容はあまりにも酷な内容だったので大まかに伝えられ、残酷な内容は私に伏せられていた。知っていれば、すぐさま助けに行っていたとあの時は後悔したものだ。親の優しさだと理解は出来ても感情がそれを許してはくれなかったのだ。

 

 しかし、こんな残酷な現実を栞子は園児の時に受け止めていた。

 ある日、結が救急車で運ばれる事件が起こる。監視してた栞子が突入し、結を連れ帰って来た。そして両親に頼み込み、結を自分の家で引き取った。

 

 おかしな話だ。

 確かに普通に考えれば、救出までは良いとしても引き取るなんてやり過ぎだ。

 後から聞いた話だが、両親は結を特別だと考えて引き取ったみたいだ。

 結は過酷な生活を強いられる中、母の虐待を受けながら懸命に生きていた。それはあの年齢の子どもができる所業ではない。親が面倒を見なければ生きていけない子どもが、町中を駆けずり回り、ゴミの中を漁り、廃棄残飯や生活必需品などを持ち帰る。そして、家事全般を一人でこなし、親の生活をサポートしていた。

 それが如何に異常な事か解るだろう。普通の子どもなら、一、二回は死んでいる環境だ。

 その良い意味での悪足掻きにも似た生命力を才能として買ったのだ。

 

 まぁ、今ではそんな事関係なく結の可愛らしさにやられて死ぬ程可愛がっているが……。

 可愛がり過ぎて虹ヶ咲学園を支援と言う形で、殆ど買収してしまうなんてやり過ぎだと思う。

 

 少し話がずれた。

 そんな栞子にとっても私にとっても大切な結だが、栞子が引き篭もった後に帰ってきてから様子がおかしかった。

 

 いつも通りに見えて少し悩んでいる様子だ。

 結は、私が何かあったのか聞いてもタブレットに何か書いては消して、ずっと首を捻っていた。

 

 こう言った様子はなかなか見られるものじゃない。年相応に悩む姿に、私は少し嬉しくなった。

 

 子どもの様に喜んでいる姿なんて私がスクールアイドルをしていた時以来だ。

 あの時は栞子も結も、いつもより子どもらしく喜んでくれて嬉しかった。

 

「お姉ちゃんと同じ様に、私もスクールアイドルになりたい!」

『お姉様! その衣装ww似合ってますねwww』

 

 何だろう。

 良い思い出の筈なのに、少し腹立ってきた。

 

 しかし、今の状況は姉として活躍できるチャンスだ。ここでしっかりと決めて、栞子に褒めてもらって、結からはお姉様ではなく薫子姉さんと呼んでもらえるかもしれない。

 

「栞子と喧嘩でもしたの?」

『違います』

 

 違った様だ。

 しかし、反応早過ぎだろ。

 君、さっきまで書いたり消したりしてたじゃん。

 

 もっと聞いてみれば、栞子の事はわからないけど、栞子に虹ヶ咲学園のイベントに出てほしいみたいだ。

 

「大丈夫。栞子ね、ああ見えて昔スクールアイドルになりたいって言ってたんだから。誘えばやってくれるよ」

 

 そう言って、私は結を連れ添って栞子の部屋の前まで行く。

 

「入るわよー」

「ちょっと待t」

 

 ノックをせずに勝手に扉開ける。わざと音を立てる様に開けると、寝ていても起こしてあげられるから私って親切よね。

 部屋に入り、結が言っていたスクールアイドルフェスティバルの事を話した。

 

「私はスクールアイドルはやりません」

 

 目を伏せる様に呟く。

 

「私には適正がないのです。だから、私はイベントを盛り上げる為に最大限のサポートをする裏方にまわります」

 

 下を向く栞子は辛く、今にも泣きそうな顔でそう私達へと告げた。

 

 これは、当人同士で話をつけるしかなさそうだ。

 

 私は仕方なく、同好会のサイトにアクセスして現状必要な内容を打ち込んだ。

 

 

 

 

 僕は今日も早朝の特訓をする為に外へ出た。

 考えが纏まらない時は、走ってスッキリするに限る。

 

 すると、家から少し離れた所に同好会のメンバーが勢揃いしていた。

 

 本当に何事だろう。

 全員で朝の特訓するんだろうか?

 

「今日はね、少し私達に付き合ってほしいんだ」

 

 どこへ行こうと言うのかね。

 こんな朝早くではどこのお店もやってないよ。

 

 侑たそ──侑先輩に連れて行かれたのは虹ヶ咲学園。

 早朝の学園は誰も居らず、少しだけ不気味だった。

 

「結ちゃんが入学して来てからいろいろあったよね」

 

 あゆぴょん──歩夢先輩が僕の前に来て優しく微笑んだ。その微笑みが僕の心を見透かしている様で居心地が悪かった。

 

「こーんなにか弱いかすみんを、無理やり連れ回して、同好会を立ち直らせてくれたよね」

 

 かすみんに手を引かれ学園内を見回る。まだ入学して半年も経っていないのに思い出深く思える。

 

「私達にまた本当の自分で居られる場所」

「受けいれてくれる場所」

「支えてくれる場所をくれたよね」

 

 せっちゃん──せつ菜先輩。

 しずくさん。

 エママ──エマ先輩。

 三人とも、僕に何かを伝えたいのか真剣にコチラを見ていた。

 

 そして学園内を巡る。

 

「馴れ合いをするつもりはなかったけれど」

「全員がバラバラでも話し合えば」

「繋がっていられる」

「そしてアタシ達に沢山の楽しいをくれたよね」

 

 果林先輩。

 彼方先輩。

 リナリー──璃奈ちゃん。

 愛さん。

 そして、四人が部室棟への通路へ誘う。

 それぞれが僕に思いやりの感じる表情を向けた。

 

 同好会が見える。

 

「だからね」

 

 侑先輩がそう言って──そして、皆が一斉に僕にありがとうと言った。

 

 

 一つ、繋がる。

 

 

 わからない。

 何もわからない。

 なぜ、僕に、こんな僕に向けて、あの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、こんなにも笑顔を向けてくれるのか。

 

 わからない。

 どうして、こんな世界の異物に情を向けてくれるのか。

 

 どうして。

 どうして。

 どうして──

 

 

 タブレットが地面に落ちた。

 

「向き合ってなんて言わないよ」

 

 侑先輩が僕の手を包み込む様にそっと握る。

 

「でもこれ以上自分を傷つけないでほしい」

 

 歩夢先輩が手を重ねる。

 

「私達はいつだって一緒に居る」

 

 璃奈ちゃんと愛さんが一歩側に寄る。

 

「本当のおもいに蓋をしないで」

「ペル◯ナ! ですよ」

 

 しずくさん、せつ菜先輩が僕に笑う。

 

 

 一つ、紡がれる。

 

 

 僕は怖かった。

 皆と向き合うのが、誰かと関わるのが。

 どこまでいっても僕はこの世界の異物で、異常で、僕が存在する事でこの世界が壊れてしまうんじゃないかって怯えてた。

 

 自意識過剰、思い上がり、全て承知の上だ。

 どれほど目を背けても、現実から遠ざかってもその考えは離れてはくれなかった。

 

 そんな時、スクールアイドルを目にした。

 それは僕のヒカリだった。

 この世界が限りなく前世から知る世界である事を認識できる存在。

 

 僕が本当に怖かったのは前世の自分が薄れていく事だった。記憶が、時間が、日々が進むごとに消えていく。僕が生きていた事がなかったことの様に移り変わっていく。

 

 その恐怖が、その哀しみが、その絶望が、いつの間にか僕にスクールアイドルへの執着を生んだ。

 

 

「あなたは私達の為に全力だった」

「だから今度は私達が全力で君の力になりたい」

 

 もう誰がなんて言っているのか認識できなかった。

 

──大好きだから。

 

 僕の頬に何かが伝う。

 それが涙である事なんて初めから分かっていた。

 

 だから、分からない。

 分からない。

 わから──

 

 

 最後に、結ぶ。

 

 

 分からないフリをするのはやめよう。

 

 僕は初めて彼女達の顔を見た。

 

 震えていた。

 瞳が揺れ、唇を噛み、拳を握る。

 彼女達は、僕を傷つけてしまうのではないか、僕を責めて追い込んでしまうのではないか、と恐れていた。

 

 それでも、彼女達は僕を元気づけようと、励まそうと、震える中で勇気を振り絞って、無理やりつくった笑顔を向けて、僕に応援(エール)を送ってくれた。

 

 向き合おう。

 彼女達に。

 彼女達のおもいに答える為に。

 彼女達が向き合ってくれた様に。

 僕も彼女に向き合おう。

 

 それが僕に出来る初めの一歩だから。

 

 気づけば朝日が昇っていた。

 

──みんなに、協力してほしい事があるんだ。

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