虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話   作:投稿するヒゲ

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後はエピローグです。


第十四話 Resolve to EMOTION's END

 僕は栞子のライブを観て、後方オタク面で号泣していた。

 

 なんて……なんて、えぇ曲なんや。

 ワイは猛烈に感動しとる!

 たぶん某アイドルアニメの泣いているオタク並に顔を歪ませている自信がある。

 

 同好会のメンバーも揃って感動している様子だ。

 そりゃそうでしょうよ。こんなん泣くわ。

 

「凄い……見える……虹が、見えるよ」

 

 侑先輩が譫言の様に何か呟いている。

 小さ過ぎて何を言っているのか聞き取れなかった。

 

 

 僕は栞子の歌を聴きたかった。

 

 まさかあれ程栞子が僕の事で思い詰めているとは思いもしなかったけれど、ファンとして友だちとして、家族として、僕は栞子の歌を聴きたかったんだ。

 

 これで良かったよね、母さん。

 ちゃんとできたよ。

 僕は栞子と、皆と、この世界と向き合う覚悟を決めたよ。

 

 

 これで良いよね、前世の自分(ぼく)

 

 

 僕はステージから目を離して前を向くと、見覚えのある顔を見つける。

 

 マイマザーともう一人。

 あれはどこかで見たような……母さんのもう一人の娘? つまり、僕の実質妹にあたる人物に見える。白い髪にピンクに近い赤色の瞳。左右に丸いお団子の様に髪を纏めた少女。

 

 あれ?

 どっかのスーパースターで見たような……き、気のせいだ。気のせい。

 マイマザーが僕の方に手を振っている気がするけど、それも気のせいだ。

 僕は何も見なかった。いいね?

 

 

 隣の侑先輩が抱きついてくる。

 

「ありがとう結ちゃん! これが、これがスクールアイドルの力なんだね! 凄い、凄いよ! ときめいちゃった!」

 

 あぁ、アニメで見た事ある侑先輩になりましたわ。これは良い兆候ですね。物語が進んだ気がする。

 

……悪い癖だ。

 僕はこの世界を受け入れて、生きていくと決意したんだ。もう、物語とか登場人物とかを気にして皆と接するのは止めないとね。

 

「何を……しているのですか?」

 

 背後から殺気!?

 僕は急いで振り返る。

 し、栞子さん?

 戻って来るのがお早いですね。

 

「栞子、歌凄く良かったよ」

「ッ! ありがとうございます、結。私も歌えて良かったです」

 

 顔を赤くして俯いてしまう栞子。やっぱり皆の前でぶっつけ本番で歌ったから疲れているのだろう。

 

 同好会の皆もなぜが空気が固まったかのように黙り込んでしまう。

 

 なんだ?

 なんの空気だ、これ?

 

「しゃ」

 

 しゃ?

 

「「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」」」

 

 栞子以外の同好会全員が叫んだ。

 うっるせ。

 僕だって話すぐらいするわ。

 

 たじろぐ僕に同好会メンバーが詰め寄ってくる。

 

「話す所なんて初めて見たよ!」

「そ、そうかなかすみん」

 

 かすみん倒れる。

 なぜ!?

 

「可愛い声」

「あゆぴょんの方が可愛くない?」

 

 歩夢先輩、撃沈。

 だから、なぜ!?

 

「ねぇ」

 

 しずくさんが恐る恐ると言った様子で僕に話しかけて来る。

 

「私達の事を順に呼んで行ってもらえる?」

 

 いいけど……なに?

 なんの儀式?

 

 侑たそ、あゆぴょん、かすみん、しずくさん、果林先輩、愛さん、カナたん、せっちゃん、エママ、リナリー、栞子。

 

 僕が呼ぶ毎に轟沈していくメンバーを見て、僕は軽くひいた。

 

 しずくさんと果林先輩と、ついでに愛さんが僕に詰め寄る。

 

「「「どうして私(アタシ)達だけニックネームで呼んでくれないの!?」」」

 

 あっ……。

 やべっ、脳内で呼んでいたまま声に出してしまった。

 

 マズイ、非常にマズイ。

 僕がキモオタも真っ青な呼び名で同好会メンバーを呼んでいる事がバレてしまった。

 

 真剣に向き合うと決めた時から、彼女達への想い方も変えてきた筈なのに。やっぱりいつも呼んでいた癖はなかなか抜けませんな。

 

「ご、ごめんなさい」

「いや、別に謝ってほしいとかじゃなくてね」

「私達だけどうして余所余所しい呼び方なのか聞きたいの」

「うん、うん!」

 

 えっとしずくさんは、なんだかあの日覚醒した君はもう別人の様で……有体に言えば自己主張の塊、所謂変人だからちょっと……。

 

 そんで果林先輩は、やっぱりしっかりしてるし、尊敬出来る先輩だからね、うん。別に他意はないよ。いや、ホント。別にストレートな物言いを恐れて、僕の心のATフィールド全開にしてる訳じゃないからね。

 

 そして、愛さんは愛さんだから(ニッコリ)。

 

「さ、三人とも尊敬できる人間だから」

 

 何重にもオブラートに包んで伝えると、三人はホッと息をついて離れてくれた。

 

 それよりもスクールアイドルフェスティバルは大詰め。

 全力で盛り上げて、最後まで楽しんで終わろう。

 

 今日、僕は転生して初めて心から笑えた気がした。

 

 

 

 

 スクールアイドルフェスティバルも終わり、皆で集まってささやかな打ち上げ会を行っていた。

 

 私は今日この日、生まれて初めての感動を覚えた。

 

 灰色だった世界は終わりを告げ、キラキラと煌めく、色とりどりの世界。

 これが、本来の世界のすがたなんだ。

 

 凄い、スゴイよ結ちゃん。

 

 これが、君が大好きなスクールアイドルなんだね。

 

 今まで感じていたトキメキとは違う。

 純然たる心の底から揺さぶられる感動。

 

 それが世界に彩りを与え、機械仕掛けの確定された現実をも超える(ときめき)

 

 私は、同好会への干渉を出来るだけ避けていた。それは結ちゃんの選ぶ選択を邪魔したくなかったのと、私が関わる事で本来の決められた現実になってしまうのを避けたかったからだ。

 

 同好会には、本来結ちゃんは居ない。それは私の中の異能にも似たなにかが強く確定させていた。そして、栞子ちゃんもこの時期には同好会には入っていない。

 

 そう、結ちゃんは同好会の始まりからもう変えてしまっていた。

 

 そして同好会の各メンバーと関わり、絆を深めていった。私では、今の様な結末を迎えていない。私ではハッピーエンドを目指せない。

 

 果林さんが言う様に、最初の同好会はお互いにメンバーが遠慮していた部分もあった。でも、結ちゃんがいろんな所のイベントへの出演を一生懸命に勝ち取って来るところを見て、各メンバーもいつの間にかいい意味で遠慮がなくなっていった。

 

 彼女は同好会の為なら、大好きなスクールアイドルの為ならなんでもした。その姿が私達に勇気を与えてくれているのを気づいているのだろうか。あの様子だときっと気づいていないんだろうなあ。

 

──本当に凄いよ。

 

 私は今日この日、感動を覚えた。

 そして、私はスクールアイドルの凄さを知った。

 

 私も結ちゃんの好きなスクールアイドルが大好きになっちゃった。

 

 だから責任をとって、これからも私にときめきを見せてね──

 

「ねっ、結ちゃん」

 

 私は晴れやかな気分で、同好会のメンバーに揉みくちゃにされている彼女を見つめた。




やりたい事やりきった感じです。
申し訳ない。
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