虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話 作:投稿するヒゲ
プロローグ的な話なので短いです。
時系列は一話と二話の間くらいからスタートです。
学園に入学して少し経った。
今日は栞子は生徒会に入る為に手続きがあるとかで一緒ではない。
栞子と僕が常に一緒だと思わないでほしい。
というか、栞子が多忙な時は一人の方が多い。ただ、気づけば背後に栞子がいるだけであってだね、知り合いが居ない時は基本ボッチを決め込んでいる。小、中学校と僕はボッチを極めていたエリートボッチなんだぜ……あれ、なんだか前が歪んで見えないや。
ま、まあ、学園に入ってからはクラスでリナリーが居てくれるおかげで寂しくないんだぁ……へへッ、最高だぜ!
ということで、僕は前々から約束していたリナリーの家に遊びに来ていた。
なぜか僕の股の間に座り、無い胸に頭を預けて一緒にゲームをしている。僕が密着具合にドキドキしている間も、画面の中ではリナリーが敵を銃でどんどんと倒していく。
ぼかぁ、FPSは何がなんだかわからないんだな。だから、こうしてリナリーの凄腕テクを後方から見ている事しかできない。くっ、僕にもっとゲームの腕があれば一緒に戦えたのに、悔しい!
「結は、私と一緒に居て楽しい?」
あんだコイツは。
リナリーと一緒に居て楽しくない訳ないだろうが、いい加減にしろ。
僕は一緒の空間で、一緒の空気を吸えているだけで満足だが?
それ以上を求めるってのは贅沢ってもんさ(キメ顔)。
「私ね、結と別れてからボードのおかげで友だちは出来たんだけど……やっぱり壁を感じちゃって」
リナリーは少し言葉を切ってから、僕の方に顔を向けた。
「だから誰かと関わる事が少し怖くて……それでも結とみたいに仲良く、誰かともっと繋がりたい」
画面からゲームの音だけが流れていた。
リナリーのそんな真剣な思いに、僕はなんて答えていいのかわからなかった。
いや、大丈夫だ。
リナリーの悩みを一発で解決する方法があった。
私に名案がある。
リナリー、僕と一緒にスクールアイドルにならないか?
僕はタブレットに書いた文字を勢いよくリナリーの前に突き出した。
「スクール、アイドル?」
僕は同好会のメンバーが歌っている動画を探して見せる。
観てろよ、観てろよ〜。
せっちゃんの歌う動画。グレートですよ、こいつはァ。
「すごい」
そうだろ、そうだろ。
この時点で同好会はスゲェんすよ。
きっと、もう少しで侑たそが合流して本格的に始動するはずだから一緒に同好会に入りましょうね〜。
「私にも出来るのかな」
で き ま す !
出来るったら出来る。
僕が保証する。こんなに可愛いリナリーがスクールアイドルをやらないのは世界の損失と言っても過言なはない。
だから、やろう!
僕も精一杯手伝うから。
「わかった。私もスクールアイドルやってみたい!」
おっしゃ!
ここから始まる同好会の活躍に、是非ご期待下さい!
その後、心なしか元気になったリナリーと一緒にゲームをして遊んだ。
◇
やっぱり結は凄い。
昔から変わらず、私の気持ちを分かってくれる。
結と別れてから私にも友だちが出来た。でも、それは深い関係ではない。学校で会って過ごす程度の間柄だ。
表情を予め描いておくスケッチブック──璃奈ちゃんボード。これのおかげで少しは気持ちを相手に伝えられる。
それでも、やっぱり限界はあった。
会話のテンポに追いつけなかったり、空気が読めなかったり、人と人との会話は奥が深くて難しい。
表情差分だけでは伝わらない気持ちもあれば、拙い言葉で伝わらない気持ちもある。
相手が悪いんじゃない。私が上手く言葉に出来ないから……相手は歩み寄ろうとしてくれていても、勝手に遠慮して私が壁をつくってしまい、深い関係を築けない。
もっと誰かと深く繋がりたい。
友だちになりたい。
仲良くなりたいと思っても、自分ではどうにも出来ずに過ごしていた。
だけど、そんな私とも結は嫌な顔ひとつせずに仲良くしてくれる。
気持ちを言葉に出来なくても、まるで心を読んでいるかの様に欲しい言葉をくれる。
『スクールアイドルになろう! 誰かと友だちになりたい気持ちも、誰かに想いを届けたい気持ちも、きっと届くよ』
虹ヶ咲学園で活動しているスクールアイドル同好会の動画を観せてくれて、そんな言葉を私にくれる。
今まで感じていた不安を一瞬の内に消し去ってくれる。私が行き詰まっていた悩みの解決法を示してくれる。
やっぱり結は凄い。
私は結の体に足を絡めて抱きつく。
スクールアイドルの事はまだ何もわからない。
歌った事もなければ、踊った事もない。
だけど隣に結が居てくれるなら、諦めずに頑張っていける気がした。