虹ヶ咲のメンバーを無自覚に曇らせる転生者の話   作:投稿するヒゲ

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前回と条件は同じです。


第?話 ネコハオドル

 暗い、暗い部屋の中。

 

 少女は画面に食い入る様に見つめていた。

 その目を血走らせながら、震える指でキーボードを叩く。

 

 カタカタカタカタ。

 

 二つの画面の光だけが僅かに少女の顔を照らしている。その表情は能面の様に貼り付けた無表情。しかし、その顔からは焦りや怒りと言った負の感情が漏れ出していた。

 

・あの同好会のサポーターとか言う邪魔なやつ要ら

 なくね?

・あぁ、居たねそんなやつ

・仲谷結とか言う同好会の寄生虫

・何であんな奴が平然と生きてられるのか不思議で

 しょうがない

・マジでタヒね

 

 誹謗中傷の嵐。

 その虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会を語る匿名掲示板には仲谷結を貶める内容がつらつらと書き込まれていた。

 そこに尊厳など無く、ただ彼女を殺す為の言葉が並ぶ。

 

──消してやりたい。

 

 絶え間なくキーボードを操作する少女は怒りでどうにかなりそうだった。

 歯を食いしばれば口の端から血が流れる。

 

 IDから相手の情報を読み解き、宮下愛に転送する。そして、しばらくすればメッセージに『消去』の文字が表示された。

 

 カタカタカタカタ。

 

そう言えばスレに書き込んだ奴から消え

メッセージが消去されました。

 

「アハ、アハハハハッ!!」

 

 少女は笑う。

 その声を響かせて、ただ笑う。

 

──笑う。

──嗤う。

──ワラウ。

 

 三船栞子も、宮下愛も、他の同好会のメンバーも、誰も、誰も分かってない。誰が一番彼女をまもり、誰が一番彼女を理解し、誰が一番彼女を愛しているのかを分かってないのだ。

 

 分かってないから誰も彼女を救えない。

 分かってないから誰も彼女の変化に気付けない。

 分かってないから誰も……。

 

 もう戻れないあの日々を思い出しては叫ぶ。

 

 どうして。

 どうして、どうしてと少女は嗤う(さけぶ)

 

 宮下愛から連絡が届く。

 

『全部終わったらアタシにも会わせてね』

 

 会わせる訳がない。

 彼女は私のものだ。

 私だけの友だちで、親友で、恋人なのだ。

 もう誰にも彼女を穢させやしない。

 

 ベッドの上で一切の動作をしない肉塊を少女は優しく抱き寄せた。

 

「結」

 

 一睡もしていない少女の瞳からは、絶え間なく血液が流れ出る。肉塊の上にポタポタと流れ落ち、その血液は人間で言う口の辺りで吸い取られていった。

 

 少女は絶え間なく嗤い続けている。

 表情を変える事なく、口を大きく開けて部屋に響かせる。

 

 繋がる心など在りはしない。

 世界はいつだって残酷で、まるで彼女を殺す為だけに動いている様に感じた。

 

 逃げて、逃げて、逃げて……その果てにこの部屋にたどり着いた。

 

 監視カメラに幾重にも重なる多重ロック。

 内からも外からも出られない特別性の部屋。

 

「邪魔な奴は全部私が消してあげるからね。だからそれまではここで、この部屋でずっと一緒」

 

 またスマホに通知音が響く。

 

──『消去』しました。

 

 邪魔な者、害を与える者、全てを消して消して消して、最期にやっと少女は笑えるのだ。

 

 少女は肉塊を大切に抱えたまま……いつまでも、いつまでも嗤い続けたとさ。

 

 めでたし、めでたし。

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