日本国がハーク・ロウリア34世を逮捕した事で終結した「ロデニウス大陸戦争」。
この戦争に勝利した日本はロウリア王国臨時政府と条約を結ぶと、直ちにロウリア王国への支援を開始した。
それと同時に、ロウリア王国に戦力を提供した存在の調査が行われた。
クワ・トイネ公国から、
「ロウリア王国の国力で、あの規模のワイバーンと艦船を用意できるわけが無い。」
という、情報が提供されたからだ。
ロウリア王国臨時最高責任者であるパタジンや捕虜となった海将シャークン、そしてロウリア王国国王ハーク・ロウリア34世への聞き取り調査を行った。
日本の実力を知った彼らは、その力が愛する祖国へと再び向けられない様にするために、何があったのかを素直に話した。その為、短期間で事実が発覚した。
「第三文明圏列強国であるパーパルディア皇国が絡んでいるだと?それは本当か?」
「はい、聞き取り調査を行った全員がそう答えていました。列強国が関与していたと仮定すれば、今回の一件、全て辻褄が合います。」
「そうか・・・。聞けば、この世界の列強国はプライドがとても高いと言う。我が国の事を知れば、確実に服従を強いるだろうな。」
「その通りです、総理。事実、覇権国家であるパーパルディア皇国は、ロウリア王国がロデニウス大陸統一の後、奴隷や資源を寄こす様にと命令していたとの事です。」
今までに得た情報から想像する事が出来る、パーパルディア皇国の危険な思想。
武田は、暫く思考したのち決断する。
「うむ・・・。よし、パーパルディア皇国を仮想敵と認定する。厳田君、直ちにパーパルディア皇国対策を始めてくれ。」
「はっ!」
「それと、吉田君(外務大臣)。」
「はい。」
「これから外交を行う予定の国の選定はどうなっている?」
「外交を行う予定の国は、現在三ヶ国です。第三文明圏の文明国アルタラス王国と文明圏外国フェン王国、そして第二文明圏の列強国ムーです。それぞれの使節団には海賊対策と我が国の力を示す為に、海上防衛軍の護衛が付きます。」
「分かった。だが、あまり相手を威圧しない様に心掛けてくれ。」
分かりました、と外務大臣が答える。
その後も会議は夜遅くまで続いた。
西暦2018年7月、第二文明圏列強ムーに向かう使節団を乗せた戦艦えちごを旗艦とする第九艦隊が呉から、第九艦隊出港から一か月後の8月、アルタラス王国とフェン王国に向かう使節団を乗せた戦艦さつまを旗艦とする第七艦隊が横浜から出港していった。
パーパルディア皇国 皇都エストシラント
フィルアデス大陸で最も繫栄しているパーパルディア皇国の皇都エストシラント。
この都のとある酒場に昼間から酒を飲んでいる男が一人いた。
男の名前はヴァルハル。
ロウリア王国に観戦武官として派遣されていた彼は、戦争が終わる前にロウリア王国から呼び戻され休養を言い渡されていた。
(くそ、頭が固い奴らめ。俺が見てきた事を「精神疾患による幻覚」だと決めつけやがって。くそったれ、くそったれ・・・。)
自分の報告を全く信じない上層部に腹を立てていたヴァルハルは、何度も酒を浴びる様に飲んでいた。
その時、一人の男が酒場に入ってきた。
「おいおい、ヴァルハル。お前、昼間っからどんだけ飲んでいるんだ。」
「うん?ああ、クロムか。」
酒場に入ってきて、ヴァルハルの隣の席に座ったのは彼の親友であるクロムだった。
クロムは、酒場の店主に幾つか料理を注文するとヴァルハルに何があったのかを聞いてきた。
「それで何があったんだ?国家戦略局の若きエリートであるお前がやけ酒なんて。」
「聞いてくれ、クロム。ロウリア王国がクワ・トイネ公国に戦争を仕掛けたのを知っているか?」
「ああ、ロウリア王国がクワ・トイネ公国に敗北したと聞いていたが、そこで何かあったのか?」
「さすが、第三外務局のエリートだな。今回の戦争は、我が国の支援を受けたロウリア王国の勝利に終わると誰もが考えていた。無論、俺もだ。」
「ん?我が国の支援を受けていたのに負けたのか?クワ・トイネ公国が何か新戦術を繰り出してきたのか?」
「それだったら、まだ良かったのだがな。クワ・トイネ公国には支援国がいたのだ。その国の名前は『二ホン国』」
「二ホン国?聞いた事が無いな、第三文明圏外の新興国か?」
「二ホン国は、唯の新興国では無い。ロデニウス沖での戦いで二ホン国が出してきた軍艦は二隻。その二隻は、我が国の戦列艦より遥かに巨大で、しかも回転砲塔を装備していたのだ。」
ヴァルハルの爆弾発言に、クロムは飲んでいた飲み物を思わず吹き出しそうになった。
「回転砲塔だと!?我が国でもまだ開発中の代物だぞ!なぜ、文明圏外の国が持っているのだ!?」
「回転砲塔の技術を持っているだけでも驚きだが、他にも信じられない事が起こった。奴らは300騎以上のワイバーンを、たった一斉射で殲滅してしまったのだ。」
「何だと…。一体何をしたんだ、二ホン国は。」
「俺は海戦で見た事をありのまま報告した。そしたら、突然休暇を言い渡されたんだ。理由を聞いたら、俺が精神疾患を患っているからだとさ。」
これが飲まずにいられるか!と呟くと、ヴァルハルは再び酒をあおった。
そのことを聞いたクロムは、思考にふけった。
(回転砲塔を備えた我が国の戦列艦以上の巨体の軍艦や、300騎以上のワイバーンを撃破した原理不明の攻撃・・・。二ホン国か、唯の国ではないな。まさか二ホン国は、我が国以上の実力を持っている国という事か!?侮れば、我が国が滅びることになるぞ!!)
クロムは、この国に大きな危機が迫っていると判断した。
クロムは隣でやけ酒を飲んでいる親友の肩に手を置くと、あることを頼んだ。
「ヴァルハルよ、少し頼みがある。休暇を利用して、二ホン国の事を調べてほしい。」
「ヒック、クロム。お前はおれのことを信じてくれるというのか?」
「お前が公務で嘘をつくとは思えない。そして、今回の事が事実ならば我が国は建国以来の最大の危機を迎えていることになる。そして俺は、あまり自由に動けない。自由に動くことが出来るお前にしか出来ない事だ。」
「・・・分かった。親友の頼みとなれば断れないからな。」
「頼むぞ。」
クロムは、ヴァルハルに二ホン国についての調査を依頼すると、酒場を出て職場である第三外務局に戻っていった。
自室の机に戻り仕事を再開して暫くすると、部下の職員が彼の下に来た。
「何だ?」
「クロム様、カイオス様がお呼びです。」
「カイオス様が?分かった、すぐに行く。」
クロムは書類仕事を一旦切り上げ、第三外務局のトップであるカイオスの下へと向かった。
局長室の前で身嗜みを整えたクロムは、扉を軽くノックする。
「カイオス様、クロムです。」
「入りたまえ。」
部屋に入ると、山の様に積まれている書類に目を通している眼鏡をかけた男がいた。
この男こそ、クロムがこの世で最も信頼する人であるカイオスだった。
「カイオス様、何か御用でしょうか。」
「ああ、クロム。君にしか出来ない重要な任務を与える。至急、アルタラス王国に向かってほしい。」
「アルタラス王国にですか・・・。何かあったのですか?」
クロムが派遣の理由を聞くと、カイオスは眼鏡をはずし疲れた表情をしながら答えた。
「聞いて呆れないでくれよ。アルタラス王国に派遣されている馬鹿共がやらかしおった。」
「またですか!?いくら国力が我が国に大きく劣るとはいえ、相手はれっきとした独立国です。敬意を持って対応しなければならないという事に何故現場の人間、いや、我が国の大多数の人間はその事実を理解出来ないのでしょうか。」
「それは我が国の力を過信し、相手の国を「蛮族」と決めつけて、大きく侮っているからだ。全く、我が国の列強としての地位も安泰であるという保証もないのにな。兎に角、アルタラス王国は我が国に良質な魔石を輸出してくれる国だ。私の代わりに頭を下げて来てくれぬか?」
「はぁ~、分かりました。すぐにアルタラス王国に向かいます。」
「頼んだぞ。」
任務を受けたクロムは、すぐに身支度を整える為に部屋を退出しようとしたが、ふとあることを思い出した。
「そういえば、カイオス様。カイオス様は、『二ホン国』という国を御存じでしょうか?」
「二ホン国?聞いた事が無い国名だな。最近誕生したばかりの新興国か?それがどうした?」
「実は、私の親友から聞いた事なのですが・・・・・。」
クロムは、ヴァルハルから聞いたロデニウス大陸での出来事をカイオスにすべて話した。
最初は軽く聞いていたカイオスだったが、話を聞いているうちに表情はだんだんと厳しくなっていった。
クロムの話が終わる頃には、カイオスは頭を抱えて大きなため息をついていた。
「・・・話は以上です。」
「おいおい、何だその二ホン国という国は・・・。回転砲塔を備えた島のように巨大な軍艦や、ワイバーンの大編隊を一撃で消し飛ばす攻撃だと・・・。しかも、この件に関わった戦略局や第三外務局の一部の連中はこの事を虚偽の報告として片付けただと?この話が事実ならば、二ホン国はミリシアルやムー以上の力を持っている事になるぞ。」
「はい、おっしゃる通りです。このままでは・・・。」
自国の力を過信し、極めて重要な情報を虚偽と決めつけた大馬鹿共に呆れ、大きなため息を出すクロム。
ブツブツと、何かを呟きながら暫く考え事をしていたカイオスは、目の前にいる最も優秀な部下に改めて話しかける。
「・・・クロム、追加の任務だ。二ホン国の情報を出来るだけ集めてくれ。その情報は私の下に直接届けてほしい。」
「了解しました。カイオス様がご納得できる二ホン国の情報を集めてきます。では、失礼します。」
「うむ。気を付けてな。」
日本の事を調べる任務を追加で受けたクロムは、局長室から退室するとアルタラス王国に向かう準備をする為に足早に自分の部屋へと戻っていった。
一方、一人になったカイオスは、椅子から立ち上がると窓際へと歩いて行った。
「この国は腐っている・・・。どうにかしなければな・・・。」
美しい街並みを有する皇都エストシラントを眺めながら、カイオスはパーパルディア皇国を変える為の行動を開始することを決意する。
第二文明圏 ムー大陸沖合い
どこまでも続くような大空の下、一機の複葉機が飛んでいた。
世界第二位の実力を持つ国、ムーが世界に誇る戦闘機マリンである。
600馬力のエンジンとムー最先端の航空力学を取り込んだ機体が発揮する、時速380kmという高速性とワイバーン以上の機動性は世界の国々に強い衝撃を与えた。
特にワイバーン以上の機動性は世界の国々に強い衝撃を与えた。
ムー海軍の空母ラ・コスタ所属のパイロットのランドが操るのは、ラ・コスタ級で運用する事を前提に改良された艦載機仕様のシーマリンである。
ランドが飛んでいるムー大陸東側の海域は、ムーとの国交を結ぶために訪れる船団や商人を乗せた貨客船が多く来航する海域である。その為、この海域の哨戒任務は重要かつとても多忙な任務なのだが戦闘艦好きであるランドは、なかなか見ることが出来ない他国の戦闘艦を見ることが出来るこの仕事を天職とさえ考えていた。
今日は、どこの国の船を見ることが出来るだろうかと考えていたランドの目に、幾つもの航跡が飛び込んできた。
「こちら哨戒部隊ランド少尉、中型艦二隻小型艦複数で構成された船団を発見。これより、国籍を確認します。」
ムーの誇る無線通信機に、船団発見の報告を入れたランドはその船団へと向かう。
最初は何の疑問を持たずに、船団に向かっていたランドだったが途中で違和感に気付く。
(ん?なんだ、この違和感は・・・。)
その違和感の答えは、船団の全体がよく見える位置に来た所で発覚する。
「な、なんじゃこりゃー---!!」
思わず大声を上げるランド。
彼の目前には、とても信じることが出来ない光景が広がっていた。
中型艦と考えていた二隻の船は、一隻が戦艦、もう一隻が空母であったが問題はその大きさであった。
ムー最大の戦艦ラ・カサミより遥かに巨大な船体を持つ二隻の艦。どちらの艦もラ・カサミの三倍以上の巨体であった。
また、ランドが小型艦と考えていた艦船も、ムーで運用されているあらゆる軍艦より巨大で洗礼された船型をしていた。
数秒間、呆然としていたランドだったがすぐに我に返り無線機に報告を入れる。
「こちら、ランド!発見した船団は、超大型戦艦一隻、超大型空母一隻を含む大艦隊!艦隊を構成している艦は、全て我が国の海軍艦艇より巨大である!超大型艦の全長は、300mを優に超えている!応援を求む!」
「こちら、ラ・コスタ。少尉、300m超えの艦艇とは本当の事ですか?」
「ああ、本当だ!早く応援を寄こしてくれ!」
ラ・コスタの船員達は、最初は誤報だと考えていたがランドの物言えぬ激しい剣幕に事実であると判断する。
空母ラ・コスタは、周りで護衛していた巡洋艦や駆逐艦と共に謎の船団へと舵を切る。
「こちら、ラ・コスタ。現在、我が艦隊が向かっています。少尉、未確認艦隊にコンタクトは取れますか?」
ランドは直ぐにコックピット備え付けの強力なライトを取り出し、スイッチを押し込むがライトは光らなかった。開発されたばかりのライトは、壊れてしまったようだ。
ランドは、役立たずのライトに舌打ちしつつ無線を入れる。
「こちら、ランド。ライト故障により使用不能。コンタクトをとるために、謎の艦隊の空母に着艦する。」
「なっ!危険です、ランド少尉!もし、攻撃されたらどうするのですか!?」
「仮に、この艦隊が我が国に攻撃するつもりならば、このまま航行させている方が危険だ!そうすれば、レイフォルの二の舞になってしまう!私が着艦後、30分以内に無線が繋がらなければ、直ちにあの艦隊に攻撃をしてくれ!」
「・・・少尉、了解しました。死なないでくださいよ。」
無線を切ると、ランドはスロットを上げて謎の艦隊の後方へと向かう。
高度を下げていくと、艦隊を構成している艦の大きさがよくわかる。
そして、ムーの艦艇では必ず発生するものが無いことに気付く。
(ん?排煙が無い!?どうやって、航行しているんだ!?)
よく見るとほとんどの艦船が煙突と思われる構造物が無かった。
どの様な機関を搭載しているのか、ランドは疑問に思いつつも超大型空母へと接近していく。
未確認艦隊の中央を航行する超大型空母は、従来の飛行甲板に斜めになった甲板を加えた見たことのない甲板構造をしていた。
(飛行甲板の一部が斜めになっている・・・。何故、このような構造を・・・。まさか、発艦と着艦で使い分けているのか!?いや、それにしては発艦距離が短い。どの様に、発艦するんだ?)
一度、空母の上空を通過すると乗員と思われる人がこちらに手を振っていた。
(どうやら、こちらに敵意はないようだな・・・。)
空母に着艦する為の旋回をしつつ、ランドは超大型空母の乗組員の様子からこの船団がムーに対して敵対意識を持っていない事を確信した。
空母の後方に着くと、マリンを操って着艦姿勢に入る。超大型空母の甲板では、作業員が大慌て艦内へと退避をしていた。
「そりゃそうか、連絡もなくいきなり着艦しようとしたら、誰だってビックリするしな。」
甲板の様子を見ながらつぶやくと、ランドは最終着艦姿勢になる。
すると、艦尾に備え付けられた装置が光り始める。
(着艦誘導装置だと・・・。我が国でも開発中の物を実用化しているというのか。一体この艦隊は、どこの国の艦隊なんだ?)
ムーで開発中のランプ式着艦誘導装置に驚きつつも、ランドはエンジンスロットルを上げる。これは、着艦に失敗した時、すぐに上昇する為だ。この動作をしないで着艦に失敗すると、海に墜落することになってしまう。それは、絶対に避けなければいけない事だった。
ムー最新鋭の星形9気筒600馬力のエンジンが唸りを上げる。このシーマリンには、空母着艦用のフックが備え付けられていたが、この広い飛行甲板ならばそれを使用する事無く止まることが出来そうだった。
前輪が甲板に接した後、後輪をすぐに接地させてブレーキを目一杯かける。
ランドの操縦するシーマリンは20mほど滑走した後、無事に停止した。
「ふぅ・・・、何とか無事に着艦できたな・・・。」
無事に降りることが出来たことに安堵しつつ、ゴーグルを上げて、シーマリンから降機する。
その間に、艦橋から青い服に何かを羽織った者達がこちらに駆け寄って来た。
万が一に備えて、ランドは腰のポーチのリボルバーのグリップを握る。
だが、彼に掛けられた言葉は彼を安心させる言葉であった。
「失礼します、ムー国の方ですか?」
「え?ええ、その通りです。私はムー国海軍第二艦隊空母ラ・コスタ所属のランド少尉です。」
「そうですか!私は、日本国海上防衛軍第九艦隊所属空母かいようの副長寺田です。」
「二ホン国?聞いた事のない国名ですが、我が国に何用でしょうか?」
「我が国は貴国との国交を結ぶために、遥々第三文明圏からやって来ました。」
「なるほど・・・。貴艦隊は間もなく我が国の領海に入ります。国交開設が目的ならば、此方に向かって来ている第二艦隊に通信を入れるが・・・。」
「はい、是非お願いします!」
「分かりました。少し、お待ちください。」
すぐにランドはシーマリンの無線機で艦隊の所属は二ホン国という国である事、彼らに敵意が無い事、そして国交を結ぶことを望んでいる事を伝えた。
新しいアンケートを始めました。
皆様のご意見をお待ちしています。
ただ、すぐにアンケートの回答を終了する可能性がありますのでご注意ください。