皆さん、パーパルディア皇国に対する殺意がすごいですね・・・。
回答がまだの方は、お早めにお願いします。
*2月28日、一部改変しました。
第二文明圏 ムー大陸沖合い
ムーと国交を結ぶために、日本から遥々航行して来た日本国海上防衛軍第九艦隊はムー国海軍第二艦隊による臨検を受けていた。
第九艦隊の旗艦を務める戦艦えちごでは、臨検の為にムーの巡洋艦から移乗して来たムー軍人たちが、えちごの規格外の主砲を目の前に固まっていた。
「・・・・おい、この主砲。口径何センチだ?」
「少なくとも、ラ・カサミの主砲よりデカいのは確定です・・・。」
彼らは、一年前に行われていたラ・カサミの就役記念式典を思い出していた。
ムー最新にして最大最強の戦艦ラ・カサミ。
従来艦を凌駕する18ノットの高速性と二基の30㎝連装主砲を備えたその勇ましい姿は、彼らに誇りを与えた。我が国は、とんでもない戦艦を生み出したのかと。
しかし、このエチゴという戦艦を見た時、彼らの誇りは跡形もなく消し飛んでしまった。
この化け物戦艦と比べると、ラ・カサミは玩具同然だろう。
ラ・カサミの物より巨大な主砲を、ラ・カサミの三倍の12門も搭載している異国の巨大戦艦。
現在就役している全てのムー戦艦をぶつけても、この巨大艦を沈めることが出来ないだろう。
彼らは、日本とムーの間にある実力差を実感していた。
一方、ランドが着艦した空母かいようの艦橋では、えちごに並走するムーの巡洋艦を眺めながらかいよう艦長である多々良が副長である寺田と話をしていた。
「で、どうだった?この世界で唯一の科学文明国家の軍人は?」
「はっ!率直に言うと、我々の世界の軍人と大差はありませんでした。列強である事を理由に過度に我々を威圧している様子もありませんでした。」
「クワ・トイネ公国やロウリア王国は、ムーはこの世界の列強国の中では珍しく穏やかな国であると言っていたそうだが、その通りだったという事か。」
「はい、とても平和的に国交を結ぶことが出来そうです。・・・ところで、あれどうします?」
寺田は、かいようの飛行甲板の一点を指さす。
指さした先には異国の航空機に興味を持った甲板要員や整備兵が、シーマリンの周りに集まっていた。
ちなみにこのシーマリンを操って来たランドは、臨検に時間が掛かっている事(えちごでムー軍人たちが固まっているのが原因)と、昼食をとっていない事を聞いた寺田の計らいで艦内の士官食堂に案内され、かいよう自慢のオムライスを「美味い!!」と称賛しながら食べていた。
「ランド少尉の複葉機、確か、・・・・マリンだったか?どうやって、この艦から発艦するつもりだ?」
「カタパルトで発艦させるわけにはいきませんしね・・・・。」
「ジェット機用のリニアカタパルトを羽布張りの複葉機が使ったら、下手したら加速した瞬間にバラバラになるぞ。」
「ですよね・・・。どうしましょう・・・。」
二人はそのことについてとても不安に感じていたが、一人の艦橋要員の言葉がその不安をかき消してくれた。
「あの、艦長、副長。多分、発艦できますよ。」
「ん?何故だ?」
「いやだって、複葉機を運用していた我が国初の空母に、カタパルトなんて代物、付いていませんでしたよ。」
「「あっ」」
当たり前のことを思い出すのと同時に、何故そのことに気付かなかったのだろうと思いながら二人は頭をかいた。
その後、えちご艦内での会談の結果、日本海上防衛軍第九艦隊はムー国海軍第二艦隊の先導の下、ムー屈指の港湾都市マイカルへと向かって行った。
翌日 ムー マイカル郊外
ムー国軍情報分析課に所属する技術士官マイラスは、売店で買った新聞を読みながらタクシーに揺られていた。目的地はマイカルの郊外にある軍民共用のアイナンク空港である。
なぜ、彼が空港に向かっているかと言うと、外務局からの急な呼び出しがあったからだ。
お門違いである外務局からの急な呼び出しとは、何だろうかと彼は疑問に思っていた。
彼としては、情報分析課である危険な国の事を調べたかった。
その国とは、「グラ・バルカス帝国」。列強であるレイフォルを僅か数日で滅ぼしてしまった、謎の多い国である。レイフォルから逃げて来た人の話によると
「城のように桁外れに巨大な艦に首都が破壊された。」
「ワイバーンより高速な飛行機械を運用していた。」
などを話していた。
この事を聞いたマイラスは、グラ・バルカス帝国は機械文明でありなおかつ桁外れの技術を持っていることを確信していた。つい先週届いたある物が、その考察を後押ししていた。
それは、レイフォルで撮られた一枚の魔写だった。
そこに写っていたのは、ラ・カサミより遥かに巨大な一隻の戦艦であった。
魔写の裏にはメモが書かれており、「グレードアトラスター」と書かれていた。おそらく、この戦艦の名前だろう。
マイラスが、グラ・バルカス帝国と彼の国が保有するグレードアトラスターに危機感を覚えているの他所に、タクシーは空港に到着した。
タクシーから降りて、空港内の建物のある一室に入ると上官の軍人の他に、外務局所属の局員がいた。
「おお、待っていたよ。早速だが、君にはとある国の実力を見定めてほしいのだよ。」
「とある国?グラ・バルカス帝国ですか?」
「いや、二ホン国という第三文明圏の新興国だ。聞いた事はあるかね?」
「はい、ロウリア王国と戦争になるも僅かな時間で勝利し、周辺国に実力を示した国だと聞いております。」
「さすが、我が軍一の技術士官だな。話が早くて助かる。実は昨日、その噂の二ホン国の艦隊が昨日東海域に現れた。」
「問題は、その艦隊を構成している軍艦です。臨検に当たった第二艦隊によると350m超えの戦艦と空母が一隻ずついたとの事です。」
これがその写真だ。と、マイラスの上官が複数の写真を机の上に並べる。
マイラスはその写真を見ると、自分の目を疑いそうになった。
(デカい!!グレードアトラスターも巨大だったが、二ホンの戦艦も桁外れにデカい!)
「マイラス君、この写真を見て君はどう思う?」
「正直に言って、驚異的としか言えません。何のための機器か分からない物もありますが、我が国のラ・カサミ以上の戦艦であると断言できます。」
「さすがの見解だな。更に話がある。我々の技術優位を彼らに見せる為に、ここアイナンク空港を会談場所にしたら、彼らは飛行許可を願い出して来た。」
「当初、外務局では外交官がワイバーンで飛んで来るのか、なんて現場主義な国かと話題になった。ところがだ・・・。」
「飛行許可を出した所、二ホン国は飛行機械を使用して飛んで来る様なのです。」
「なんですと!!!それで、彼らはいつ到着するのですか?」
「間もなく到着する予定だ。ではマイラス君、最初に言った通り彼らの実力を見極めてほしい。」
日本国の外交官を出迎える為に部屋を出た一行は、建物の外に出た。
マイラスがふと滑走路に目を向けると、日本の飛行機械の先導の為だろうか?複数のマリンが離陸していった。
その後、一向は駐機場の一角に設けられた無線室で日本の飛行機械を待っていた。
暫くすると、無線機から通信が入ってくる。ただ、その内容は彼らを大きく驚かせるものであった。
「二ホン国の飛行機械を目視で確・・・!?!?速い!!マリンより速い!!しかも、マリンよりでかい!!」
「なんだと!?落ち着いて報告せよ!」
「し、失礼しました。輸送型と思われる飛行機械は時速560㎞程の速度で飛行しています!護衛として随行して来た戦闘機は、測り知れない速度です!」
「そ、そんな馬鹿な・・・。」
ムー自慢のマリンより大型であるのにかかわらず、マリンより速く飛行する二ホン国の飛行機械。
しかも、それは輸送機と思われる飛行機械であり戦闘機は速度を測る事すら出来ないという。
(そりゃそうか、我が国以上の戦艦を持っているのだから、飛行機械の技術も我が国以上に発展しているのは当たり前の事か。)
マイラスが一人納得している間に、二ホンの使節団を乗せた飛行機械がアイナンク空港の上空に到達した。
マリン以上の速度で飛行できる事だけでも、彼らはとても驚いていたがさらに彼らの度肝を抜く事が起きた。
二ホン国の使節団が乗っていると思われる飛行機械の主翼の先端に取り付けられたレシプロエンジン(本当はターボプロップエンジン)が90度回転して、地面に対して垂直になると、そのままゆっくりと降下して着陸した。
更には、空港の上空で旋回飛行していた二ホンの戦闘機も、空中で一旦停止すると輸送機と同じように垂直に降下、着陸してきた。
マイラスは自分の目を疑ってしまった。何しろ、航空機が垂直に着陸することが出来るなど、彼の常識では考えることが出来なかったからだ。
(馬鹿な・・・。垂直着陸なんて代物、空想上の存在だぞ!我が国は疎かミリシアルでも、不可能だろう。二ホン国・・・。なんて国だ!)
日本の実力を目の前の航空機の性能から理解したマイラスが言葉を失っていると、最初に着陸した機体側面の扉が開き、中から人が二人、降りて来た。
辺りを見渡した後、二人はこちらに向かって来た。
「は、初めまして。私は会談までの間案内を務めるマイラスです。」
「初めまして、日本国外務省の御園です。」
「同じく、佐伯です。」
握手を交わした後、一向は空港の外に止められている車に向かう為に歩き出す。
マイラスが、御園と佐伯にこの空港について説明する。
「このアイナンク空港は、我が国初の軍民一体型の空港として計画、建設されました。現在、滑走路は二本整備されており、追加するための用地も確保されています。」
マイラスが話していると、外へと通じる道の脇にピカピカに磨き上げられた一機の航空機が駐機されていた。ムーの最新鋭機マリンである。
(二ホン国の方々に見せる為に、わざわざこの場所に駐機させたな。)
マイラスはそう思いつつ、二人にマリンを紹介する。
「この機体は我が国最新鋭の戦闘機マリンです。この機体の特徴はワイバーンと比べようが無い高い飛行性能と、プロペラと機銃を同調させた新型射撃装置を搭載している事です。」
(さあ、二ホン国の大使殿はどのような反応をする?)
「おお、かいようの甲板で一度見ましたが、やはり美しいレトロな機体ですな。」
「見てください!星型エンジンなんて、僕初めて見ましたよ!ロマンだな~。」
御園と佐伯の反応から、マイラスは日本では旧式機に当たる機体ではないかと考える。
そして疑問を解決する為に、二人に質問する。
「そういえば、貴国の戦闘機にはプロペラが付いていませんでしたが、どの様に推進力を得ているのですか?」
マイラスの問いに答えたのは、ミリタリーオタクである佐伯だった。
「我々を護衛して来たのは、VTOLF-11という戦闘機です。動力はジェットエンジンです。レシプロエンジンを備えたプロペラ機より遥かに高速で飛行できます。」
「それは凄いですね・・・。技術屋である私としては、旧型のエンジンでも手に入れて分解してみたいものですね。」
「一般的な原理や設計図なら、我が国と国交を結ぶことで我が国の書店で入手することが出来ます。また、我が国と同盟を結べば、古いですがジェット戦闘機を輸出することが出来ます。」
「ほ、本当ですか!?」
佐伯の言葉に、驚愕するマイラス。
もし、二ホン国と我が国が国交を結び同盟関係になれば、我が国がまだ持っていない最新技術を手にすることが出来るかも知れないのだ。
マイラスは、上層部に二ホン国と同盟を結ぶ事を上申することを心の中で決めた。
その後、マイラスと日本の使者はムー政府が用意したホテルに向かう為に、ムー製の自動車に乗る。
ムーとミリシアル以外の国の人間は、この技術の結晶である自動車に大きな衝撃を受けるのだが、御園と佐伯は当たり前の様に車に乗車した。
特に驚いた様子の無い二人に、再びマイラスは尋ねる。
「二ホン国にも、自動車が存在するのですか?」
「はい、少し前のデータですが、我が国には乗用車が1億8000万台以上走っています。」
「そ、そんな数の車が走っていると、道が車で埋まってしまいませんか?」
「我が国は、世界一を自負する信号システムが存在していますので、よほどの事が無い限り大丈夫だと思います。」
「は、ハハッ・・・。」
マイラスは彼の、いや、ムーの常識外の事ばかりの話に、短時間のうちに精神的に疲れ果ててしまった。
その後、無事に日本の外交官をホテルに届けた後は、上官への報告を簡潔に済ませると自宅に直帰してベッドに潜ってしまったマイラスであった。
翌日 マイカル市内 ムー国立歴史博物館
御園と佐伯は、マイラスの案内でムーの博物館へと足を運んでいた。展示物について、簡潔に二人に説明をする。
「では、我々ムーの歴史を手短に説明いたします。まず、各国の方々には御伽噺と呼ばれ中々信じてもらえませんが、我々の先祖は、この星の住人ではありませんでした。」
「「はい!!??」」
二人の使者は驚きのあまりポカーンとした顔をしている。
まさかこの世界に、自国と同じように転移してきた国があるとは思っていなかったからだ。
初めて日本の使者が驚きの表情をしたので、マイラスはしてやったりと思いつつ、説明を続ける。
「遥か古代の時代、前世界では我が国ムーとアトランティスと呼ばれる国が鎬を削っていました。
ですが時は一万二千年前、「大陸大転移」と呼ばれる前代未聞の大厄災が発生し、ムー大陸はこの世界に転移してきました。これは、当時に書かれたと思われる幾つもの資料に残されています。これは、残されている資料を元に製作された前世界の惑星です。」
マイラスは、展示されている惑星儀を取り出す。二人は、何度も見た事がある地理配置に驚愕する。
「「こ、こここ、これは地球だ!!!!」」
「はい?」
日本国の使者をさらに驚かせようと思った矢先、彼らは前世界の惑星儀を指さしながら興奮している。
そんなマイラスの疑問を他所に、二人は惑星儀、いや地球儀を指さしながら見つめている。
「むむ!?南極大陸が赤道付近にありますよ!これ以外は、特に変わったところがありませんが・・・。」
「いや、地軸の位置も少し違うようだ。だが、これは紛れもなく地球だ。」
「マイラスさん、何故南極大陸が赤道直下の位置に?」
「ナンキョク大陸?御二人が指されている大陸は、「アトランティス大陸」ですよ?」
「「アトランティスだと!!??」」
「ええ、そうです。ちなみに・・・。」
南極大陸が伝説のアトランティスであったことに驚愕する二人に、マイラスは地球儀のとある一角を指さす。
指差した地点には、大陸の横にある四つの大きな島が存在していた。
「この島には、ヤムートと呼ばれる国があったそうです。前世界では、我が国一の友好国だったそうです。我が国無き今、どうなっているのか分かりませんが・・・。」
「ちょっとよろしいですか、マイラス殿?」
マイラスの説明に、御園が割って入ってくる。
「どうしましたか?」
「ええ、我が国を説明するのに、最も良い方法が出来ました。」
「はい?どういう事ですか?」
御園の発言に、マイラスは首を傾げる。
御園は、バッグから何かを取り出しながら話し続ける。
「我が国、日本国も別世界から転移して来た転移国家です。この「ヤムート」と呼ばれる島国が、我が国であることは間違いありません。そして・・・。」
御園はバッグから、日本の事を説明するために用意していた地図を取り出すと、地図を開く。
「これが現在のヤムート列島、「日本列島」です。そして、これが我々が転移する前に居た世界の地図です。」
日本地図、そしてメルカトル図法を使用した精巧な世界地図がマイラスに見せられる。その世界地図を見て、マイラスは度肝を抜かれる。確かに、ムー大陸が嘗てあった世界のムー大陸のない世界の地図がそこにあった。
御園が、地図の極点にある大陸を指さしながら言葉を続ける。
「我々の元居た世界では、『太古の昔、高度な文明を持っていたが突如として海に沈んでしまった大陸国家があった』という、伝説が残っています。その名は、「ムー」と「アトランティス」。前世界では、一部の考古学者が探していた伝説の大陸です。・・・あなたが、アトランティスと呼んだ大陸は、極点の大陸となり「南極大陸」と、我々は呼んでいます。おそらく、ムー大陸の転移時に地軸がずれたのでしょう。」
「ははは・・・。まさかの歴史的大発見ですね。この事が事実ならば、かつての友好国同士の時空を超えた再会という事になりますね。後で、上層部に報告しておきます。」
その後、マイラスはムー大陸がこの世界に転移してきた後の歴史を、簡単に伝えた。
一通りの説明が終わり、博物館を出た一行は海軍基地へと向かった。
なぜ、一行が海軍基地に向かっているのかというと、ムー国海軍第二艦隊の先導の下、日本国海上防衛軍第九艦隊がこの港に向かって来ているのだ。
互いの戦艦の説明を行う事を事前に決めていたとはいえ、マイラスは不安を覚えていた。
第二艦隊から送られてきた日本の巨大戦艦の報告を思い出す。あの戦艦は、ラ・カサミの何倍も巨大な船体を持つ戦艦だ。これから説明するのが、不安でしかなかった。
マイカル海軍基地の一角には、ムー国海軍自慢の最新鋭戦艦ラ・カサミ級一番艦ラ・カサミが停泊していた。
「御園さん!見てください!!戦艦ですよ、戦艦!!!やはり戦艦は、男のロマンですよね!!」
「佐伯君、ちょっとはしゃぎすぎですよ。しかし、横須賀にある記念艦三笠に瓜二つですね。」
記念艦ミカサ・・・?もしかして、日本にもラ・カサミに似た戦艦があるというのか!?
マイラスは、日本の戦艦を知らないフリをして、御園に質問する。
「日本国にも、戦艦が存在しているのですか?」
「あ、はい。我が国には現在「天照型戦艦」三隻、「ふそう型戦艦」十隻、「とさ型戦艦」四隻が現役で稼働しています。また、「大和型戦艦」が二隻練習艦として、そして現役復帰工事を行っている「きい型戦艦」が六隻存在しています。」
事前情報の通り、日本は戦艦を保有しているようだ。しかも、練習艦や予備役艦も含めると合計二十五隻も存在しているようだ。更に、情報を聞き出すために質問を続ける。
「貴国の戦艦の、主砲の口径は何センチですか?ちなみに、ラ・カサミの主砲の口径は30㎝ですが・・・。」
「大和型は46㎝、きい型ととさ型は51㎝、ふそう型は61㎝、天照型は80㎝ですね。」
「は、80㎝!!!???ラ・カサミの二倍以上の口径ですと!!」
マイラスは、日本の戦艦の主砲口径、特に天照型の主砲口径に驚愕していた。
「そ、そうですか・・・。どうやら、貴国は我が国以上の建造技術を持っているようですね・・・。ところで、先程日本の記念艦がラ・カサミと似ているとおっしゃっていましたが、日本国にも似た戦艦が存在しているのですか?」
「あ、はい。我が国には、三笠という戦艦が存在しています。今から一世紀程前に我が国が「大日本帝国」と呼ばれていた時代に我が国の連合艦隊の旗艦を務めていた戦艦です。その歴史的戦艦とあそこに停泊している戦艦はとてもそっくりなのです。ちなみにこれがその三笠です。」
御園が差し出して来た写真には、確かにラ・カサミと瓜二つの戦艦が写っていた。
「ほう・・・一世紀も前の戦艦ですか・・・。」
マイラスは、思考を巡らす。
悔しい事だが、日本は自国より遥かに進んだ技術を持っているようだ。つまり、ムー以上に科学技術や機械工学を研究し、習得して来たという事だろう。
しかし、二ホン国の事を知ることが出来たのは悪い事ばかりではない。二ホンが一世紀前に保有していた戦艦ミカサは、ムーのラ・カサミと瓜二つの姿をしていた。つまり、技術を磨いていけば自分達も二ホンのフソウ型の様な巨大戦艦を建造することが出来るだろう。
桁外れな巨大艦や、垂直離着陸が出来る飛行機を作ることが出来る国。
しかも、第八帝国(グラ・バルカス帝国)の様に、他国を侵略するような事は無いだろう。
この国に対抗する為に、是非とも仲良くしておきたい。
ぼぉぉぉぉーーーーーー!!!
マイラスは汽笛の音が港に響いた事で、思考の海から現実へと引き戻された。
湾の方向に目を向けると、ムーの巡洋艦二隻に先導されながら、一隻の超巨大戦艦が入港して来た。
「マイラス殿、あれが日本が世界に誇るふそう型戦艦九番艦えちごです。」
佐伯が入港して来た戦艦を紹介する。
港で働く民間人や軍人達は、ラ・カサミより遥かに巨大な戦艦が現れた事に、上を下への大騒ぎとなった。
この出来事は、ムー国民に「二ホン国という第三文明圏の新興国が、ラ・カサミを上回る戦艦を持つ」という第一印象を与え、その事実は彼らに大きな驚きをもたらす事となった。
技術士官マイラスのムーの案内が終わった二日後、日本国とムーの会談がマイカルで始まる事となった。
ムーの外交官達は、人生で一番のプレッシャーを受けていた。
理由は、昨日読んだマイラスの報告書である。
その報告書には、とても受け入れることが出来ないことが書かれていた。
・二ホン国は、我が国を遥かに凌駕する科学技術がある。
・ムーにある工業製品の大半は、二ホン国にも存在しており、完成度は二ホン国製の物が高い。
・上記に加えて、二ホン国には我が国では研究中の物や空想上の物まで存在している。
などが、報告書には書かれていた。
信じたくはないが、報告書にはVTOLF-11やマイカル港に停泊する戦艦えちごの写真が載せられていた。
軍事にはあまり詳しくない彼等でも、日本が桁外れの実力を持っている事を理解する代物だった。
これだけでもとんでもない事なのだが、ある二つの情報が彼らにメガトン級の衝撃を与えた。
それは、
・二ホン国は転移国家であり、我が国がこの世界に転移する前に友好があった島国ヤムートである可能性が非常に高い。
・二ホン国の国力は我が国は疎か、ミリシアル帝国よりも上である。
である。
もし、一つ目の情報が正しければ、一万二千年前に別れた同盟国と奇跡の再会となる。それは、とてもうれしい事だった。理由の一つに、外交をスムーズに行う事ができる可能性があるからだ。
ただ、問題は二つ目の情報だった。
この事が事実ならば、二ホン国はこの世界で誰もが認める世界最強の国神聖ミリシアル帝国より、格上の存在という事になる。
報告書には執筆者であるマイラスが、なぜこのような考えにたどり着いたかが書かれていた。
それによると、ミリシアルの戦闘型「天の浮舟」より高速で飛行する二ホンの輸送機や、音より早く飛行する垂直離着陸が出来る戦闘機、御園から聞いた二ホンの自動車の数、世界最大の戦艦であったミリシアルの「ミスリル級魔導戦艦」より巨大なふそう型の存在が、マイラスが二ホン国がミリシアルよりも格上の存在であると結論付けた理由だった。
この報告書の内容は、ムーの首脳部を大混乱に陥れた。
ただ、二ホン国はグラ・バルカス帝国と比べると、とても穏やかな国の様である。
更に国交を結べば、まだ見た事のない高技術を手に入れることが出来るかもしれない。
ムー首脳部は、「拒否する理由はない」として日本と国交を結ぶ事を決定する。
ただ、経験したことのない格上の相手との国交締結の為の会談に参加することになった外交官達には、経験したことのないプレッシャーを受けることにはなったが。
二日間の会談の結果、日本国とムーは国交を結ぶ事となった。
以下が、両国間の同意事項の一部である。
・ムー国は、日本国に、今世界の情報の提供と第二文明圏の国家に対して、仲介を行う。代わりに日本国は、新世界技術流出防止法で許される限りの科学技術の提供を行う。
・日本国、ムー国間の為替ルートの設定。
・日ム軍事同盟の締結。
・上記の同盟により、新世界技術流出防止法に違反しない兵器の提供をムー国に行う。
・ムー国の技術者や学生、学者の留学を、日本国は許可する。代わりにムー国は、ムー国内での日本主導による港湾都市開発を許可する。
などである。
こうして、世界第二の列強国ムーと第三文明圏外の国日本は、国交を結び、対等な同盟関係となった。
この一件は、ミリシアルを始め、世界中に衝撃を与える事となる。
一方日本では、ムーが地球から転移して来た国家であるという事実が、日本中に衝撃を与えた。
ある新聞の一文が、日本人の心境のすべてを物語っている。
「我々は、独りぼっちではなかった。」