日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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パーパルディア皇国についてのアンケートで、皆さんの殺意がさらに上がっていてびっくりしている作者のイーグルです。
皆さん、パーパルディア皇国にどれだけ恨みがあるんですか・・・。

今回の話についての注意事項です。
ほぼ全文がオリジナルの為、誤字脱字と違和感がいつも以上にある可能性があります。(特に最後の部分が・・・。語彙力と文章構成力を鍛えたいです。)

それでも良ければ、どうぞご覧ください。


パーパルディア皇国編-03

時系列は、日本とムーが国交を結ぶ一週間前に戻る。

 

アルタラス王国沖合い

 

世界有数の魔石鉱山を有する国、アルタラス王国に向かっている日本海上防衛軍第七艦隊は、順調に航海を続けていた。

この艦隊の指揮を行っている戦艦さつまの一室では、間もなく接触することになる新たな国との初交流を前に、外交官達が事前の打ち合わせをしていた。

 

「~との事です。何か質問はありますか?」

 

「一つだけ、確認しておきたい事があります。アルタラス王国がパーパルディア皇国に狙われる理由です。世界有数とはいえ、魔石鉱山があるだけで侵攻してくるのでしょうか?パーパルディア皇国国内には魔石を産出する鉱山が無いのでしょうか?」

 

「直接確認したわけではないので、確証出来ませんがパーパルディア皇国内にも魔石を産出する鉱山は複数存在していると思われます。ただ、彼の大国は戦争に次ぐ戦争で、資源不足が深刻化していると思われます。魔石は魔導兵器には、必要不可欠の存在です。そこで、足りない分をアルタラスの鉱山で賄うつもりでしょう。」

 

「それならばアルタラス王国政府との関係を強化し、その見返りに優先的に輸出してもらえれば良いのではないか?まさか、第三文明圏の全ての富を手にするつもりか?」

 

「そのまさかだと思われます。噂では、パーパルディア皇国皇族による世界統治を目指しているとの事です。」

 

その言葉を聞き、日本の外交官達は呆れ顔を浮かべる。

地球の歴史でも世界征服を目指していた為政者や国家は、少なからず存在していた。

ただ彼らは、結果として世界の半分も支配できずにその野望を打ち砕かれている。

様々な言語や文化、人種を一つにまとめるのは非常に難しいからだ。

ましてや、地球より遥かに巨大なこの世界の全てを支配するのは、現実的に見て不可能の事だろう。

そのうえ、パーパルディア皇国は第三文明圏最強であって、世界最強の国ではない。

格上の存在である、ミリシアルやムーとどの様に戦うつもりなのだろうか?

 

外交官達は、パーパルディア皇国の先見性のない馬鹿な野望についての考察を、一旦切り上げてアルタラス王国の話に戻る。

 

「少し脱線してしまいましたがアルタラス王国は、パーパルディア皇国からの侵攻の脅威を受けている国家です。間違いなく軍事同盟の締結を求められる事になるでしょう。我が国の目的は、反パーパルディア皇国勢力を纏め、彼の国の他国への侵攻を防止するのが目的です。ただ、あくまでも相手国の意思が最優先です。その事を頭に入れて、行動するようにしましょう。」

 

「そのことについては、承知しています。ただ、国交締結に際してアルタラス王国がどの様な条件を出してくるのか、少し不安ですが・・・。」

 

「では、アルタラス王国が我が国に対して、要求することを想定してその対策を、これから練りましょう。」

 

日本の将来を担う若い外交官達は、アルタラス王国についての議論を交わした。

この議論は、アルタラス王国との初接触まで何度も行われることになる。

 

 

アルタラス王国 王都ル・ブリアス

 

 

アルタラス王国の王都であるル・ブリアスは、南国のように美しい透き通った海に面する港湾都市だ。

この街の小高い丘の上にある王城アテノール城の一室では、一人の老人が頭を悩ませていた。

この人物の名前は、ターラ14世。

美しき島国アルタラス王国の現国王である彼の悩みの種は、海を隔てた隣国であり列強であるパーパルディア皇国の事である。

 

(くそ、パーパルディア皇国の奴らめ。我が国に理不尽な要求ばかりしおって・・・。彼奴らの狙いは、我が国を外交の場で無礼な態度を取らせ、それを開戦の口実にする算段じゃろう・・・。昔は、あちらの面子を立てれば、それなりの譲歩を引き出すことが出来たが、今の皇国は暴虐の怪物と化しあちこちで戦争を生み出しておる。)

 

ターラ14世は椅子から立ち上がり、部屋の中を行ったり来たりする。

この国は建国以来最大の、危機的状況化にある。

彼は何とかして、この危機を乗り越えたかったが残念な事に、この国には列強と一国で渡り合えるほどの実力はない。数日持てば、十分健闘したと言われるほどの国力や軍事力の違いがあった。

かと言って皇国に下れば、国民全員が奴隷のように扱われることになるだろう。

この国が生き残る唯一の方法は、他国からの軍事支援だけだったがそれも絶望的だった。

皇国以上の国は、世界に三ヶ国しか存在していないうえに、滅多な事で軍を派遣するようなことはしない。もし、派遣されたとしても遠すぎてたどり着いた頃には、この国は滅ぼされている事だろう。

しかし、ターラ14世には一筋の希望が、皇国を蹴散らしてくれるかもしれない国があった。

 

(二ホン国。あの噂の二ホン国が、我が国に味方してくれれば彼の大国の脅威を退けることが出来るというのに!)

 

王室御用達の商人が彼に伝えた噂。

それは、「二ホン国という新興国の軍が、圧倒的物量のロウリア王国軍を一人の犠牲も出さずに撃破した。」

と言うものだった。

初めて聞いた時には、ターラ14世はその情報を出鱈目だと考えていたが、その考えは直ぐに払拭することになった。

その理由は複数の商人が、とても似た情報を次々に挙げてきた事だった。

そのうちの一人は、クワ・トイネ公国で手に入れた新聞や雑誌を献上して来たのだった。

色鮮やかな魔写を多用した文明圏共通の言語で書かれたその雑誌には、列強国の軍艦より遥かに巨大な艦が写っていた。

この雑誌を読み進める内に、彼はある一つの事実を理解する事になる。

 

「二ホン国は列強国以上の実力を、少なくともパーパルディア皇国以上の実力を持つ国である。」

 

(二ホン国と同盟を結ぶことが出来れば、この国を守ることが出来る。問題は、どうやって二ホン国に接触することだが・・・。)

 

日本にどの様に接触するか、ターラ14世は連日頭を悩ませることになる。

だが、その悩みは最高の形で解決することになる。

 

数日後

 

アルタラス王国の王都一の大通りを、一人の男がげっそりとした顔でフラフラと歩いていた。

その姿は、この世界の誰もが予想する列強国のエリートとは思えないものだった。

二日前にこの国に入国したパーパルディア皇国第三外務局のエリートであるクロムは心の中で「馬鹿野郎共」に怨嗟の声を上げていた。

 

(くそ!何が「私は皇国の為にやるべき事をやっただけです。」だ!その有難迷惑な行動のせいで、俺はこの国の方々に頭を下げて回るハメになったんだぞ!一部の連中なんか、俺が本国から来たエリートであると知るや否や、取り繕う為だけに余計な行動をして、更に俺の負担が増えたじゃねーか!くそったれ!自分達の行動が、皇国の品位を落としている事実がなぜ分からないんだ!)

 

脳内で自分やカイオスに恥をかかせた職員達をフルボッコにしながら、クロムは気晴らしのために港の方向へと歩いていく。

島国であるアルタラス王国の市場には、列強国であるパーパルディア皇国でもお目にかかれない鮮度抜群の水産物や新鮮なフルーツなどが沢山売られている。

クロムにとって異国の市場や港を一人で散策するのは、数少ないストレス解消の方法の一つだった。

港に隣接する市場の屋台で、海鮮魚の串焼きセットと数種類の果物から作ったミックスジュースを買うと、港を一望できる日当たりのよいベンチに腰掛ける。

クロムは、絶妙な焼き加減と塩加減の串焼きとさわやかな味の飲み物を堪能しながら、海の方向をぼんやりと眺める。

 

「いい眺めだ・・・。」

 

エメラルドのように光る海を見て、クロムは少しだけ気持ちが落ち着く。

しかし、自国がこの美しい国に魔の手を伸ばしている事を知っている彼は、この国の民に申し訳ない気持ちを抱く。

 

(ルディアス陛下は、一体何を考えておられる・・・。他国と協調し、共に繫栄していく事こそ真の強国へと繋がる道だというのに・・・。まさか陛下は、現体制がとても脆いことに気付いていないのか!?どうすればいい・・・。誰か教えてくれ!!)

 

幼い頃から世界の様々な国を見て回って来たクロムには、今のパーパルディア皇国が大きな過ちを犯している事に、激しい嫌悪感を抱いていた。

そして、そんな皇国を変えることが出来ない自分の無力さに嫌気がさしていた。

 

そんな時だった。

ふと、沖合いに目を向けたクロムは違和感を覚えた。

 

(ん?なんだ、あの影は?島か?いや、あんなところに島はなかったはずだが・・・?)

 

地平線に現れた不審な影。

彼は、暫くそれを眺めていたが、不意に違和感の正体に気付く。

 

「影が大きくなっている・・?動いている!?まさか、船だというのか!?」

 

クロムが驚愕している間にも、その影、いや船影はグングンと大きくなっていった。

港の方でも、この事に気付いたのだろう。

普段よりも騒ぎが大きくなり、港からはアルタラス王国の80門級戦列艦二隻があわただしく出港していくのが確認できた。

呆然としていたクロムだったが、ふと一大事が起きている事を認識すると大慌てでパーパルディア皇国大使館へと走り出していた。

 

(まずい、まずい!俺の勘が言っている、あれは放っておいてはいけないものだと!)

 

彼は大使館に大慌てで駆け込み、警備兵やすれ違った職員を気にも留めずに自分にあてがわれた部屋のドアを開く。そして、部屋に置かれたトランクの中から、望遠鏡と魔導式カメラ一式を取り出すと、再び港の方へと走り出した。

肩を大きく上下させながら食事をとっていた広場まで戻ってくると、先程まではぼんやりとしていた船影は、複数の船と分かる程にくっきりと見えるようになっていた。

まず望遠鏡を、謎の船に向けてじっくりと観察する。

飾り気のない灰色の船だったが、そんな些細な事よりも重要な事に彼は気付いた。

 

(帆を張っていない?ミリシアルの魔導動力船かムーの機械動力船の様な船だろうか?しかし、あのような船は見た事が無い・・・ん?回転砲塔を備えているだと!?一体どこの国の船だ?)

 

特徴的な外見と知識から、ミリシアルやムーの船ではないと考えたクロムは、更に目を凝らしてどこの国の船でも必ず掲げているはずの国旗を探す。

 

(艦尾についているのが、国旗か・・・!?あ、あの旗は!!)

 

艦尾で翻っている国旗を見た瞬間、クロムは自分の顔から血が引いていくのを感じた。

彼は懐から手帳を取り出し、あるページを開く。そのページには、ヴァルハルから聞いた日本国の情報が書かれていた。その中には、日本国の軍船が掲げていた国旗と思われる旗が二つ書かれていた。

一つは、白地に赤い丸が描かれている物で、もう一つは一つ目の旗と同じく白地に赤い太陽が描かれた旗だった。そして、あの軍船が艦尾に掲げていたのは後者の旗だった。

 

(な、なんてこった・・・。あれが、二ホン国の軍艦!!)

 

ヴァルハルの情報によれば、日本の海上戦力は皇国と比較にならないほどであるという。クロムは、この情報を無事に持ち帰ってきてくれた友に感謝しつつ、魔導式カメラを第七艦隊の先導艦、護衛艦たちかぜへと向けてシャッターを切る。

まず、どれほどの巨体か分かるようにアルタラス王国の戦列艦と一緒に映した後、細部が分かるように倍率を上げて、魔写を撮り続ける。

10枚ほど撮った後、クロムは遅れて入港して来た日本の艦隊に目を向ける。

そこには、先に入港していた軍艦の二倍の大きさの艦が二隻存在していた。

 

「で、でかい。デカすぎる!!??なんだあの二隻の船は!?ミリシアルの魔導戦艦以上の巨体だぞ!!」

 

第七艦隊旗艦戦艦さつまと空母ほうりゅうの規格外の船体に、思わず大声を出してしまうクロムだったが、頭を振って冷静さを取り戻すと、魔導式カメラで二隻の魔写を撮り始める。

 

(なんて、デカい図体なんだ・・・。回転砲塔も馬鹿みたいにデカい。・・・しかし、あの平べったい船はなんだ?あの巨体の船なのに、なぜ砲を積んでいないんだ?ん?何か積んでいるのか・・・?)

 

一通り魔写を撮り終えると、望遠鏡を手に取り平べったい船を観察する。平べったい甲板に置かれた物を観察してみると、ソレは細長い矢のような体に白銀のように輝く翼を備えていた。

クロムは、謎の物体の正体に目を見開く。

 

(あ、あれはミリシアルの天の浮舟!?そ、そんな馬鹿な!!二ホン国はミリシアルの兵器を保有しているというのか!?)

 

慌てて、魔導写真機を平べったい船に向けて、魔写を撮り始める。

撮りながら、クロムは内心とても焦っていた。

それは、日本がミリシアルと同レベルの国力を持っているかもしれないという考えに至っていたからだ。

この世界の誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国。

古の魔法帝国であるラヴァーナル帝国の遺産を解析することで、世界屈指の実力を持つことになった国で、その大国が保有している戦力の一つが「天の浮舟」である。

最大の特徴は、ムーの飛行機械の様なプロペラ機ではなく、魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを使って飛行していることだ。

日本が保有する戦闘機とミリシアル帝国の天の浮舟の外見が似ている事が、彼の考えを後押ししていた。

クロムは、祖国に日本国の脅威を伝える為に魔写を撮り続ける。

 

 

ここで少し時は遡り、アルタラス王国海軍所属戦列艦が第七艦隊所属駆逐艦たちかぜに接触した時まで戻る。

 

アテノール城ではターラ14世や大臣達が、パーパルディア皇国対策会議を行っていた。

ただ、会議室の空気は良くなかった。

会議の状況を一言で言い表すのならば、「会議は踊る、されど進まず」である。つまり、進展なしという事である。

ターラ14世や大臣達は、パーパルディア皇国に対抗するには日本国の助けが必要不可欠である事は理解していたものの、最大の問題点は日本との接点が無い事にあった。

日本が何処にあるのかも分からず、使節団を派遣することが出来ない上に、もし日本にたどり着くことが出来たとしても、果たして日本が自分達に救いの手を差し伸べてくれるかどうかも問題の一つであった。

自ら列強国に挑もうとする国はいないと、誰もが考えていたからだ。

パーパルディア皇国に屈するしかないと、誰かが考え始めた時だった。会議場の扉が勢いよく開かれ、一人の兵士が入って来た。会議場まで大急ぎで走って来たのか、兵士は額に大粒の汗をかき、息を荒げていた。

 

「何事か!?陛下の御前だぞ!!」

 

「緊急事態であります!!港の沖合に、桁外れに巨大な船で構成された船団が現れました!」

 

「なに!?どこの国の船団だ!?何用で来航したか分かるか?」

 

「はっ、国名は二ホン国。来航目的は我が国と国交を結ぶために、やって来たとの事です。」

 

「「「二ホン国だと!!!???」」」

 

来航した船団の所属する国家の名前を聞いた瞬間、ターラ14世や大臣達は驚きの声を上げ、何人かは席から勢いよく立ち上がった。

ターラ14世、いやこの場にいる全員の手が震えていた。なかには目頭に涙を浮かべている者もいた。

無理もなかった。この国が生き残る唯一の可能性が、日本と国交を結ぶ事。

その希望の国、日本が我々と国交を結ぶために向こうからやって来てくれたのだ。

暫くの沈黙の内、国王が口を開く。

 

「・・・分かった。直ぐに、二ホン国の使節団の皆様を、こちらにお迎えしてくれ。くれぐれも、二ホン国の皆様方を不快にさせない様に。」

 

「はっ!失礼します。」

 

最上級のもてなしをするように兵に通達させると、彼は大臣達の方を向く。

 

「皆、二ホン国との会談をすぐに行えるように準備してくれ。今回の会談には、わしも参加する。各々、全力を尽くす様に。特に、二ホン国との軍事同盟を何としてでも結ぶように努力してほしい。」

 

そういうと、ターラ14世は会議室を後にした。

自室に入り、扉を閉めると椅子に座り大きく息を吐いた。ただ、それはため息ではなく緊張から解放されたときにする安堵の呼吸だった。

 

「・・・神は、神は我らを見捨てていなかったという事か・・・。」

 

 

日本国海上防衛軍第七艦隊がアルタラス王国に到着してから数時間後、アテノール城の大会議室ではターラ14世や大臣が、日本の大使が到着するのを今か今かと待っていた。

一人の大臣は緊張を和らげるために、何度も水を飲んでいた。また、ある大臣は部下の職員と何度も書類の確認を行っていた。そしてついに、彼らが待ちわびていた時が来た。

 

「失礼します!二ホン国の使節団の方々をご案内しました!」

 

「通しなさい。」

 

会談に参加する全員が席から立ち、日本の大使を出迎える。

扉が開くと、アルタラス王国では見た事のない黒っぽい服を着た男性たちが複数人入って来た。そのうちの一人が、歩み出て挨拶をしてきた。

 

「初めまして、アルタラス王国の皆様方。私は日本国外務省の柳田と申します。どうぞ、よろしくお願いします。」

 

「は、初めまして、私はアルタラス王国外務省のライルと申します。二ホン国の皆様、どうぞよろしくお願いします。そして、此方の方が我が国の指導者である、ターラ14世陛下であります。」

 

「よろしく頼みますぞ。二ホン国の使者殿。」

 

「こ、国王陛下でありましたか!?これは、失礼しました!」

 

直立不動で謝罪をしている日本の外交官に、彼は気にしていないと言葉を掛けた。

使節団が席に座ると、国交開設と同盟締結に向けた会談が始まった。

 

日本側は、同盟締結に向けて幾つかの条件を提示した。

その内の条件の一部である。

 

・両国の通貨の為替ルートの設定。

 

・アルタラス王国領海内での海底資源の採掘権。

 

・上記の対価として、日本国による各都市のインフラ整備と新世界技術流出防止法に違反しない技術を提供する。

 

・アルタラス王国国内に、日本国防衛軍の基地の建設を許可する。ただし、アルタラス国民の生活に影響を及ばない範囲で建設する。

 

・上記の対価として、日本国はアルタラス王国防衛の義務を背負う。

 

・日本国、アルタラス王国と共同で科学技術と魔導技術の融合の為の研究を行う。

 

などである。

 

この条件を聞いたアルタラス王国の面々は、思わず顔を見合わせてしまった。

条件通りならば、二ホン国は海底資源の採掘権と、基地の建設を容認すればインフラの整備と技術提供、更にはこの国の防衛をしてくれると言うのだ。これがもし、パーパルディア皇国ならば属国にしたうえで毎年奴隷の献上を要求してくるはずだ。日本側からすれば少し厳しい条件だったのだが、アルタラス王国からすれば、とても破格の条件であった。

 

「・・・以上です。なにか、質問はありますか?」

 

「で、では一つだけ・・・。ヤナギダ殿、二ホン国はこの条件を守ってくれるのか?」

 

「はい、その通りです。我が国は、同盟国との条約は必ず守る事を国是としています。ご安心ください。」

 

「そうですか・・・。」

 

外務局の大臣、ライルの質問に柳田はしっかりと答える。

アルタラス王国国王ターラ14世は、事前に得た情報とこの会談での印象と条件で、日本の事を信用することにした。そして、後世に「アルタラス王国王家最大の英断を下した国王」として名が残る決断をした。

 

「では、今回はここまでにしましょう。次回以降、同盟締結に向けた話し合いを……」

 

「いや、その必要はない。日本国大使ヤナギダ殿、我が国はあなた方が提示した条件をすべて飲む。」

 

「「えっ!?」」

 

思いもよらない言葉に、この場にいる全員が固まる。それを他所に、ターラ14世は話を続ける。

 

「すべての条件を飲む。その代わりたった一つ、たった一つだけ貴国に頼みたい事がある。」

 

「な、何でございましょう。陛下。」

 

「今、この国は列強であるパーパルディア皇国による侵攻の危機に、瀕している。いつ滅ぼされるか、分からない状況だ。もし、この国が滅ぼされれば我が国の国民は、奴隷として扱われ惨めな思いを味わうことになる。そんな我々の唯一の希望が大使殿の国、二ホン国なのだ。だから、頼む!」

 

一旦言葉を切り上げ、席から立ち上がるターラ14世。

そして、

 

「我が国に、貴国の軍隊を迅速に派遣していただきたい!我が国を、国民を悪魔の手から救って頂きたい!この通りだ。頼む、我々を助けてくれ・・・。」

 

頭を日本国使節団に下げた。アルタラス王国の大臣や衛兵も、国王に続き、「お願いします!」と次々に頭を下げる。

 

「国王陛下、皆さん顔を上げてください。」

 

柳田は、アルタラス王国の面々が顔を上げるのを待ってから、話を続ける。

 

「皆様の要望である防衛軍の派遣についてですが、私にはこの事を決定する権限はありません。なので、本国に緊急連絡を行い、判断を仰ごうと思います。少しばかり、お時間を頂きますが宜しいですか?」

 

「分かった。ヤナギダ殿、よろしく頼みますぞ・・・。」

 

軍隊の派遣について、使節団が本国に確認を取るという事が決まり、最初の会談は無事に閉会した。

会談が終わった直後、使節団は総理官邸に緊急連絡を入れた。

 

緊急連絡から一時間後、総理官邸

 

連絡を受けた後、総理官邸に各大臣が緊急招集されて、緊急閣議が開催されることになった。

司会を務める職員が、話を始める。

 

「それでは、説明を始めます。本日行われたアルタラス王国との会談において、アルタラス王国国王ターラ14世から、我々の提示した条件を全て飲む代わりに防衛軍の即時派遣を要請してきました。どうやら我々の予想以上にパーパルディア皇国の脅威が迫っていたようです。」

 

「う~む、アルタラス王国に軍を派遣することは事前に決まっていた事だが、即時派遣となると話は別だ。」

 

「総理、一つ提案があります。発言宜しいですか?」

 

「厳田君か、何か良い案があるのかね?」

 

「はい。アルタラス王国は島国であり、我が国と同じように周りを海に囲まれている国です。他国がこの国に侵攻する為には、海を渡り上陸しなければなりません。そこで、艦隊を派遣してアルタラス王国を防衛します。幸い、パーパルディア皇国海軍の主力は戦列艦とワイバーンなので、十分に対応することが出来ます。そして派遣する艦隊についてなのですが・・・、私は海上防衛軍第一艦隊の派遣を提案します。」

 

海上防衛軍第一艦隊、この言葉が出た瞬間、会議室は一気に静まり返った。

この案を提案した彼以外の皆が、驚きの表情で固まってしまった。

数刻の沈黙の後、武田が口を開く。

 

「・・・海上防衛軍第一艦隊。彼女を、天照を出撃させるというのか?」

 

前世界において、日本海上防衛軍の実力は世界一と言われていた。その理由は、圧倒的な練度と他の国の数十年先の技術で作られた軍艦を多数保有していた事である。そんな、日本自慢の艦隊の中でも別格の強さを持っていた艦隊が存在していた。

それが、第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊である。この艦隊には、日本の守り神にして誇りである天照型が一隻ずつ配備されているのである。

桁外れの巨体に、圧倒的な量の武装と一度も破壊されたことのない装甲、そして破格の速力。「一日で大国を滅ぼすことが出来る」とまで言われた、この巨大艦は幾度となく日本や同盟国の「最後の希望」として活躍して来た。

この世界に転移した後、日本政府はこの超巨大艦を異界の国々に影響しない様に運用して来た。

厳田の提案は、この方針に逆行していた。しかも、日本政府内ではこの艦隊を戦争が起こりそうな国に派遣するという事は、「もし、戦争が始まったら同盟国防衛の為に日本が全力を以て対応する。」という警告を与える事と同義であると認識していた。簡単に言うと、パーパルディア皇国と全面対決を行うと言っているようなものだった。

 

「艦隊派遣、これについては私も賛成だ。だがなぜ、海上防衛軍第一艦隊なのだ?他の艦隊でも良いのではないかね?」

 

「確かに、他の艦隊でもパーパルディア皇国を威圧することはできるでしょう。ただ、覇権主義を唱える中世クラスの国が、我が国の艦隊を見て脅威ととらえるかは分かりません。さらにこの世界には、ミリシアル帝国やムーの様に大型の軍艦を、複数保有している国があります。我が国の艦隊を見て「文明圏外の国が、列強の国の船を少数購入して気を大きくしている。」と、捉えられる可能性があります。いえ、甘く見られる可能性もあります。何しろ、我が国の軍艦は大砲の数が一部を除き、少ないですからね。「高が、数門の大砲。襲るるに足らず。」と攻めてくるかもしれません。そこで、規格外の巨体を持つ天照型を派遣することで、パーパルディア皇国を強く牽制します。それに万が一、パーパルディア皇国がアルタラス王国に戦争を仕掛けたとしても、天照型ならばどのような戦略をとっていたとしても対応することが出来ます。さらに、現在の海上防衛軍第一艦隊には戦艦と空母が二隻ずつ在籍しています。あらゆる状況に対応することが出来るでしょう・・・。これが、私が第一艦隊の派遣を提案した理由です。総理、どうかご決断を。」

 

話を聞き終わると、武田は目をつぶって考える。

確かに、彼の意見はアルタラス王国の危機を確実に取り除くことになるだろう。ただ、この案は友好国やまだ接触していない国々に、不信感を与えてしまうかも知れなかった。

 

数分の葛藤の後、彼は目を開くと座っている大臣達を見回しながら、言葉を紡ぐ。

 

「皆、落ち着いて聞いてほしい。厳田君の提案は、皆の考えている通りこの世界のありとあらゆる国に影響を与える事になるだろう。だが、思い出してほしい、我が国の信念を。今、圧倒的強者に脅され亡国の機に陥っている国が、自らのプライドを投げ捨ててまで我々に救いの手を求めてきた。我が国とアルタラス王国、いや未来に生きる全ての人々の為に、たとえ今非難されようとも最善の行動をしようではないか!私は、ここに海上防衛軍第一艦隊の派遣を容認します!」

 

 




14話にして、ようやく天照型登場です。ナガカッタ…。

日本国の守り神の活躍、お楽しみにしてください。
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