雲一つない快晴の空の下、クワ・トイネ公国軍第六飛竜隊に所属する竜騎士マールパティマは、ワイバーンに跨り公国北東方面の警戒任務に就いていた。
公国の北東方向は、海ばかりが広がり陸地の類は存在しない。
この哨戒任務はクワ・トイネ公国の隣国であり、人族至上主義を掲げるロウリア王国と緊張状態が続いているため、軍船による迂回、奇襲攻撃に備え見つけた場合即座に祖国防衛に対応すためである。他にも、小さな懸念事項があった。それは、一週間前に何もないはずの北東方向から、強い発光現象が発生したことである。何かしらの事案が北東方向から発生する可能性があるため、彼は相棒を公国の北東の空に飛ばしていた。
一瞬、空のかなたに何かが光った。
「―――!?、なんだ!あれは」
自分以外いないはずの空に、何かがいる。
それは、あっという間に点となり影となった。それは、ワイバーンより大きく、速く、そして羽ばたいていなかった。味方の騎でないのは、明らかだった。
彼はすぐに、通信用魔法魔法具を用いて本部に報告を入れる。
「我、未確認騎を確認。これより、対象に接触し確認を・・・・!?」
その先は、言えなかった。なぜなら、その所属不明機はすでに轟音を立ててマールパティマの真横を通り過ぎていたからだ。
その物体は、灰色の体色をしていて羽ばたいていない翼の先端や胴体の一部が緑や赤色に点滅していた。
彼は、あわてて振り向くと未確認騎はすでに空のかなたへと消え去っていた。信じられないことに不明騎はワイバーンの数倍以上の速度で、飛んで行ったのだ。翼も羽ばたかせずに。
「司令部、未確認騎は信じられないような速度でマイハーク方向に進行した。繰り返す、マイハーク方向に進行した。」
この報告を受けて、マイハークの司令部は蜂の巣をつついたように上に下へと大騒ぎとなっていた。
マールパティマは、公国一の目の良さを誇る。そんな彼が発見してから、報告している間に不明騎は通り過ぎたのだ。つまり、不明騎が常識外れの速さでここ、マイハークに接近しているのだ。
クワ・トイネ有数の経済都市マイハークが攻撃を受けたら、それこそ軍の威信にかかわる。
通信魔法で、待機していた飛竜隊に
「未確認騎が一騎、マイハークに急速接近中。領空に侵入した不明騎を発見次第撃墜せよ。繰り返す、発見次第撃墜せよ。」
と、指令を出した。
地上待機をしていた10騎と上空哨戒をしていた8騎、合計18騎が不明騎を待ち構えていた。
幸運なことに彼ら飛竜隊は、不明騎に正対することができた。報告によれば、不明騎はワイバーン以上の高速でこちらに接近しているという。ならば、攻撃チャンスは通り過ぎる一瞬、一度しかない。
彼らは、人生で最も集中をし火炎弾の発射タイミングを見計らったが、未確認騎が見えたと思った時にはすでに横を通り過ぎ、振り返ればマイハークの上空に到達していた。
「未確認騎、発見するも攻撃できず。繰り返す、攻撃できず」
マイハーク防衛騎士団団長イーラは、慎重にその物体に近づいて行った。
飛竜隊の防衛網を楽々と突破し、まるで雷のような速度でマイハーク上空を通り過ぎて行った不明騎は南門から500mのところに、何かを投下して飛び去って行った。近づいてみると、それは長さ1m、直径50㎝程の筒状の形をしていた。筒は上部が開閉するようになっていて、内部に何かが入っていた。
その何かを筒の外に出そうとしたとき、彼女は何かを押した気がした。
「皆様、初めまして。我々は日本国です。まずは、貴国のー--」
クワトイネ公国 政治部会
「これが、マイハークに侵入した不明騎の落としていったものですか」
クワトイネ公国首相カナタは、目の前にある物体と書類を見ながらつぶやく。昨日、マイハーク上空に不明騎が侵入し目の前にあるものを入れた金属製の筒を投下し去っていったことを、クワトイネ防衛、軍備をつかさどる軍務局から報告を受けた。不明騎が落としていったもののうち、書類のほうは未知の文字で書かれていて何が書いてあるか分からなかったが、もう一つの音声の出る薄い箱状の物体からでる音声はこの国で、一般的に使われている言語だったので、理解することができた。
記録されていた音声を要約すると、
*不明騎は日本国という国家に所属するものである。
*領空侵犯してしまったことに対する謝罪
*日本国に関する簡単な説明
*日本国が別世界から転移してきたこと
*日本国が我が国との同盟を望んでいること
*同盟締結の為に外交官を乗せた艦隊を派遣していること
などであった。
「皆の者、この一件。どう思う、そしてどう対処する」
情報分析部所属の一人が手を上げ、発言する。
「情報分析部の調査によれば、今回の所属不明騎は列強第二位のムーが開発している飛行機械に酷似しています。ですが、ムーの開発している飛行機械は最高速度が350㎞/hほどであそこまでの速度で飛行できる飛行機械は存在していません。また、音声の出る物体についても、ムーが開発した蓄音機という機械がありますがここまで小型の蓄音機はムーにも存在していないと思います。」
「まったく、未知の。しかも、下手をしたら列強国を上回る技術を持っている国ということか。」
出席者は全員、頭を抱える。相手は自分たちでは足元にも及ばない列強国並みの実力を持つ国にかもしれないのだ。ただ、音声上だけとはいえ、領空侵犯を謝罪し、我が国と対等な同盟を望んでいる謎の国、日本国。
どのように対応すべきか悩んでいる政治部会に、突然外交部の若い外交官が、息を切らして、飛び込んできた。明らかに、非常事態だ。
「何事か!!!」
外交部の長である外務卿が声を張り上げる。
「報告します!公国北海上にて、二ホン国を名乗る大船団が現れました!二ホン国は、我が国との会談を強く望んでいます!」
報告を要約すると
*本日早朝、第二艦隊が350mクラスの艦艇二隻を含む船団を発見。
*臨検を行ったところ、日本国と名乗った。
*我が国に対して、敵意はない。
*我が国との同盟関係構築のための会談を望んでいる。
*そして、領空侵犯に対してあらためて、深く謝罪をする。
この報告に、政治部会に参加する誰もが、カナタの手元にある小さく薄い蓄音機と読解不明の文字が書かれた書類を見る。記録されていた音声通りだった。一部の人々は信じられなかったが、昨日、あっさりと都市上空に侵入されたことや、350mという考えられないほどの巨大船の報告もある。
日本国の実力は本物である。
クワトイネ公国首相カナタは、日本国の特使に合うことを決断した。
天照型無双は、ロウリア王国戦までお待ちください。
登場自体は、二話以内に登場させるつもりです。
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