日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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作者のイーグルです。
読者の皆様にお伝えしなければならないのが、本シリーズの題名変更とその理由です。

ご存じの通り、題名を「超日本国召喚」から「日本国召喚 ~天照の咆哮~」に変更いたしました。
変更の理由ですが、ただ単純に「名前が単調であったから変更した」です。

いきなり題名の変更をしてしまい、申し訳ございません。




パーパルディア皇国編-09

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

アルタラス王国への侵攻が、御前会議で正式に決定した次の日、エストシラントは大きな騒ぎが起きていた。

事の発端は、この日の早朝に巡回を行っていた艦隊が、エストシラントに接近してくる複数の艦影を発見したことが始まりである。

 

「未確認の巨大船、複数発見。これより国籍を確認する。」

 

という、魔伝を受け取った海軍本部は、何処の国かと疑問を抱きつつ次の一報を待った。

最初の魔信から約30分後、

 

「巨大船は、砲を一門備えた魔導動力(見張りの人間が間違えた)船である。」

 

「巨大船の国籍は、二ホン国だと思われる。」

 

と、哨戒艦隊から立て続けに魔信が送られて来た。

この報告に、司令部の緊張は一気に高まる。

日本国と言えば、監察軍を打ち破り、アルタラス王国を増長させた事で皇帝ルディアスの怒りを買っている国であり、軍内部の噂ではアルタラスの次は日本国に侵攻するのではないかと、囁かれている。

そんな国が、砲を一門だけとはいえ武装した船で此方に向かって来ているのだ。

海軍総司令官バルスは、すぐさま警戒態勢に移行する様に命令するのと同時に、第一外務局に連絡を入れた。

普通は文明圏外国を相手にする第三外務局に連絡を入れるのだが、何故列強国の相手にする仕事の第一外務局に連絡を入れたのか?

それは、前日の御前会議が原因である。

会議の場での、カイオスの発言に不満を持った皇族の一人レミールが、日本との外交権を強制的に第一外務局に移管させるのと同時に、自らが日本との外交の場に出る事にしたのだった。

この一件を受けたカイオスは、(日本の怒りに、油を注がないでくれよ。)と心の底から思っていた。

しかし、同時に彼はそれが無理な事も理解していた。自分の元部下で優秀な素質を持ち、冷静に対応できるエルトならともかく、狂犬というあだ名を持ち皇帝ルディアスに心酔しているレミールが、日本国に失礼な事を言わないはずがない。間違いなく日本の怒りを買って、日本を本気にさせてしまうだろう。

カイオスの脳裏には日本の守護神に破壊され、この世の地獄となったエストシラントが浮かんでいた。

 

そんな中、クロムから日本の艦隊がエストシラントに向かって来ている事を知ったカイオスは、すぐさま行動を起こした。開戦を防ぐことが出来ないとしても、せめて戦争の被害を抑える為に。

 

一時間後

 

エストシラントの沖合では、日本の第11艦隊とパーパルディア皇国の戦列艦がにらみ合いをしていた。

パーパルディア皇国の戦列艦は、舷側の魔導砲を護衛艦に向け、日本の護衛艦も主砲こそ向けていないがいつでも発砲できるように備えていた。

 

一触即発の緊張感に包まれているエストシラント港から、逃げる様に出ていく馬車には、日本の大使として派遣された朝田と篠原が乗っていた。

 

「緊張しますね、朝田さん。」

 

「ああ、何しろ仮想敵国の中枢に飛び込むわけだからな。」

 

日本では目に掛かる事が出来ない中世ヨーロッパ風の街並みを、馬車の中から珍しそうに眺めながら二人は緊張を解す為にの雑談を交わす。

雑談をしている間に、馬車は無事に第一外務局に到着した。

日本では有り得ないほどの豪華な装飾が施された建物に、若干ドン引きしながら二人は係員の案内でこれまた豪華な部屋に案内される。

 

「・・・いくら何でも、豪華すぎじゃありません?」

 

「自国の豊かさを他国に見せつける為だと思うが、確かにこれはやり過ぎだな・・・。」

 

部屋の内装に感想を漏らしつつ、パーパルディア皇国側の人間を待っている二人。

部屋に入ってから十分後、閉まっていた扉が開き、煌びやかなドレスを着た女性を筆頭に、複数人が入って来た。

 

「貴様らが、二ホン国の大使か?私は、外務局監査室のレミールだ。貴様の国の外交担当だと思ってくれれば、結構だ。」

 

「日本国外務省の朝田と篠原です。急な会談に応じてくれた事に、感謝します。」

 

パーパルディア皇国に良い印象を持っていないが、事前の通告なしの会談に応じてくれた事に、感謝の言葉を口にする朝田。

朝田の丁寧な言葉遣いと見た事もないが清潔に保たれた姿に、国力はともかく国民性は良さそうな国だな、と感じるエルト。

 

「急に来国して、一体何用だ?私は、忙しいので簡潔に頼む。」

 

「それでは・・・。我々はフェン王国での軍事行動に対しての、貴国の意思の確認と軍事行動に対する謝罪を要求しに来ました。」

 

「ハハハハ・・・・。調子に乗るなよ、文明圏外の蛮族め。」

 

笑ったかと思えば、いきなり声のトーンを下げるレミール。

明らかに彼女は、頭にきているのだろう。

しかし、この程度の威圧で臆する朝田と篠原ではない。

 

「我が国は、第三文明圏唯一の列強パーパルディア皇国だぞ!!文明圏外の国なぞ、簡単に滅ぼすことが出来る超大国なのだ!!そんな我が国に、謝罪を要求するだと!?ふざけるのも大概にしろ!!」

 

「外交の場でふざけた冗談を言う外交官は居ません。」

 

「全くなんと恥知らずの愚か者の国なのだ。だが、私はとても寛大だ。お前達に最後のチャンスをやろう。」

 

そう言うと、レミールは部下に書類を朝田と篠原に渡すように命令する。

日本人の感覚からすれば、質の悪い紙に何が書かれているのか、気になった二人が書類に目を通すと、そこには日本の、いや地球の常識では有り得ない事が書かれていた。

一部を抜粋すると、

 

・二ホン国の王は、皇国人とし、皇国から派遣された者を置くこと。

 

・二ホン国内の法を皇国が監査し、皇国が必要に応じ、改正できるものとする。

 

・二ホン国軍は皇国の求めに応じ、必要数を指定箇所に投入できることとすること。

 

・二ホン国は皇国の求めに応じ、毎年指定数の奴隷を差し出すこと。

 

・二ホン国は今後外交において、皇国の許可無くして新たな国と国交を結ぶことを禁ず。

 

・二ホン国は現在把握している資源の全てを皇国に開示し、皇国の求めに応じてその資源を差し出すこと。

 

・二ホン国は現在知りえている魔法技術のすべてを皇国に開示すること。

 

・パーパルディア皇国の民は皇帝陛下の名において、二ホン国民の生殺与奪権利を有する事とする。

 

などである。

日本としては到底受け入れることが出来ない事ばかりが、書かれていた。

あっけにとられた二人だったが、すぐに正気に戻るとお互いの顔を見つめ合う。

少しばかり相槌を打ち合うと、二人はレミールに向き合う。

そして朝田は、足を組み強い口調で話し始める。

 

「ハッキリと言います。なんなのですか、この非常識な要求は!?我が国を植民地にするつもりか!!」

 

「皇国の実力を知らぬ、蛮族の行う愚かな行動だな。お前達の国は我が皇国の近辺にあるのにもかかわらず、我が国の事を知らなすぎる・・・。しかも、貴様達はアルタラス王国を増長させた。決して許されざる行為だ。」

 

「アルタラス王国を増長させた?ふざけるな!!貴国がアルタラス王国を脅かしたのが、そもそもの原因ではないか!!」

 

「黙れ!!貴様たちは、皇国の実力を知ろうとしないばかりか、皇国を侮辱までするというか!!・・・まあ、よい。近頃、貴様達が増長させたアルタラス王国に軍事侵攻を行う。そこで、貴様らは我が皇国の真の実力を知ることになるだろう・・・。お前達が頭を下げて謝罪してくる姿が、目に浮かぶわ。」

 

「・・・どうやら、我が国と貴国は分かり合えないようですね。失礼させていただきます。」

 

会談をする意味が無いと、判断した日本側は席を立ち、部屋を退出しようとする。

 

「貴様たちの行いに、皇帝陛下は怒りを感じていらっしゃる。アルタラス王国が落ちるまでに、国の行く末を決めるがよい。二ホン国本土の運命も決するであろう。」

 

部屋を出ようとしている朝田に、レミールは余裕な表情で問い掛ける。

朝田は立ち止まると、レミールの問いに応える。

 

「私は、日本の全権大使ではありませんが、これだけは言わせてもらいます。貴国の行いに、我が国の二億一千万の国民は、強い怒りを感じています。この怒りの炎は、間違いなく貴国を焼き尽くすことになるでしょう・・・。実力を知らない?それは、貴国の方ではないか?我が国の実力を知った時の、貴方方の顔が目に浮かびますよ。とても滑稽な光景でしょうね。」

 

「ふん、馬鹿馬鹿しい。」

 

そこまで言うと、朝田は扉の所まで行き、最後にもう一度振り返る。

 

「最後に一つ忠告しておきましょう、レミールさん。」

 

「何だ?蛮族の遠吠えぐらい聞いてやろう。」

 

「・・・我が国の守護神の怒りの雷に打たれることを覚悟しておけ。」

 

朝田は日本の外交官に許される「暗黙の宣戦布告」の言葉を言い切ると、部屋を出て行き扉を勢いよく閉めた。

 

 

馬車に揺られながら、港に戻る二人は終始不機嫌だった。

まさか、初対面の国相手にあり得ない要求をしてくるとは、予想していなかった。しかも、日本やアルタラス王国の事を蛮族と一方的に決めつけ、差別してくるとは夢にも思っていなかった。

 

「・・・これから、どうなるのでしょう?」

 

「間違いなく、戦争状態に突入するだろう。しかも、非常識な要求をしてきたからな。一切の遠慮なく攻撃することになるだろう。」

 

「そうですよね・・・。しかし、あの態度はとてもあり得ないですよ!よく、アルタラス王国は長年我慢してきましたね。」

 

「ああ、そうだな・・・。・・・?馬車が止まったぞ?」

 

港まで止まるはずのない馬車が、急に止まったことに疑問を持つ二人。

そんな二人の下に、馬車の御者と見慣れぬ男が一緒にやって来た。

 

「どうしたのですか?事故があったのですか?」

 

「いや、この旦那が突然馬車の前に飛び出してきまして・・・。何でも、貴方がたに話があるとか・・・。」

 

「そうでしたか・・・。それで、貴方は何の用ですか?」

 

「初めまして、二ホン国の大使殿。私は第三外務局所属のクロムです。少しお話をする時間を、頂けませんか?」

 

「・・・申し訳ないがクロム殿。我々は貴国から宣戦布告ともとれる言葉を受けています。貴方と話をしても、現状況が改善するとは思えないのですが。」

 

「それは、私も私の上官も十分に理解しています。ですが、貴国との対話が出来る環境が我々は用意できます。それに、いくら貴国と言えど話が出来る相手がいる場所に「みさいる」を撃ち込んだり、「せんりゃくばくげきき」による「じゅうたんばくげき」は、しないでしょう?」

 

「「!!!!」」

 

クロムの話に、二人は驚愕する。

まさか、この国に冷静かつ正確に日本の事を調べている人物がいるとは、思っていなかったのだ。

 

「・・・なるほど、話し合いの必要がありそうですね。分かりました、お伺いしましょう。」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

こうして、日本の大使とパーパルディア皇国の知日家の初の会談が行われることになった。

 

 

カイオス宅

 

朝田と篠原、更に途中で乗り込んだクロムの三人を乗せた馬車は、カイオスの自宅の前へと到着した。

何故、会談場所が第三外務局ではなく、カイオスの自宅なのか?

それは、至極単純な事で「盗聴される可能性が低い。」という一点にある。

この国の皇帝ルディアスは、日本と日本の味方をする国に攻撃を加える様に命令を下している。おまけにカイオスは、日本との外交に口出しできない状態にある。そんな彼が勝手に日本の大使と会談をしている事がバレれば、最悪一族皆殺しになってしまう可能性がある。それを出来るだけ避けるために彼は、会談場所に自宅を選んだのであった。

 

「今回の一件、誠に申し訳ない。」

 

簡単な自己紹介の後、カイオスは朝田たちに謝罪をした。

パーパルディア人は傲慢な性格の持ち主が多いと聞いていた朝田は、カイオスが最初に謝って来た事に驚愕する。

 

「い、いえ。貴国の噂を聞いていたので、ある程度は覚悟していました。」

 

「ですが、第一外務局の連中が貴方がたに不敬を働いたのは、揺るぎようのない事実です。本当に申し訳ない。」

 

「・・・ひとつ、質問をしてよろしいでしょうか、カイオス殿。」

 

「何でしょうか?」

 

「何故、貴方とクロム殿は、我が国の兵器の名前を知っていたのですか?今日会ったレミール殿は、我が国の事を全く知らなかったようなので・・・。」

 

レミールの名を聞いた時、カイオス達は心の中でしかめっ面をした。

やはり、先日の会議の場で日本の事を話しておくべきだったかな、と後悔しつつもカイオスは質問に答える。

 

「私が知っていたのは、彼ら・・・。クロムとヴァルハルの二人のお陰です。特に、ヴァルハルが正確な戦闘情報を我々に届けてくれなかったら、私やクロムも二ホン国の真の実力に気付くことはなかったでしょう。」

 

「戦闘情報・・・?まさか、ロデニウス大陸戦争にヴァルハル殿は居たというのですか!?」

 

「はい、小官は国家戦略局からの命令で、観戦武官の一人としてロデニウス沖の海戦に参加していました。」

 

「そう、だったのですか・・・。」

 

「では、何故パーパルディア皇国の政府は、我が国の事を知らないのですか?」

 

「とても恥ずかしい事なのですが、実は・・・・。」

 

カイオスは、国家戦略局がヴァルハルの報告を「文明圏外の国がそのような事が出来るのは、あり得ない」という理由で、虚偽の報告として片付けてしまった事や、正確な情報を得ずに日本の実力を評価してしまったことなどを話した。

全てを聞いた朝田と篠原は、パーパルディア皇国の杜撰な情報収集と情報精査に心底から呆れてしまうのと、会談でのレミールの対応に納得した。

 

「なるほど・・・。会談でのレミール殿の対応が、よく分かりました。」

 

「この国は、今まで戦争に勝ち過ぎました。戦争に勝つのが当たり前、世界を支配し富を独占するのは自分達であると誤認している。大使殿の会談相手のレミールは、正にその典型的な例です。」

 

「このままいけば、現実を見ていない馬鹿な上層部だけでなく、我が国の罪のない国民まで戦火に巻き込まれることになるでしょう。私たちは、その様な事態だけは何としても避けたいのです。」

 

彼らの言葉は、本気で言っている重みのある言葉だと、二人は感じた。

勿論、朝田や篠原からしてもパーパルディア皇国の民間人を戦争に巻き込むのは最も避けたい事である。戦争とは国家間での問題解決の方法の一つであり、それに罪のない民間人を巻き込むのは、何としても防がなければならない事だった。

 

「う~~む。・・・・では、こうしましょう。我が国の無線機をこの館に設置してみるのは、如何でしょう?これなら、いつでも連絡を取ることが出来ますし、この国の誰かに傍受される可能性もグッと低くなります。」

 

「おお!それは有り難い!!」

 

「では、機材の搬入の日時と方法は・・・。」

 

その後、日本の大使とパーパルディア皇国の知日派の秘密の会談は一時間半ほど続いた。

会談を終えた朝田と篠原は、すぐに第11艦隊に合流するとパーパルディア皇国を出国していった。

 

この日、パーパルディア皇国には大きな絶望が降りかかる事が確実となった。

だがしかし、同時に小さな希望の光も生まれた日でもあった。

 

 

 

日パ会談から三日後、一つのニュースが第三文明圏から世界中に駆け巡った。

 

「第三文明圏の新興国二ホン国、パーパルディア皇国に宣戦布告。」

 





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