日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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皆さんこんにちは、作者のイーグルです。

私から、皆さんに報告する事がございます。
私は今年の4月から就職し、新しい生活が始まりました。
その影響で、投稿が遅くなる可能性があります。
申し訳ございません。

私が、ここまで本シリーズを続けてこれたのは、皆さんのお陰です。
これからも、頑張っていきますので応援よろしくお願いします。



パーパルディア皇国編-14

 

パーパルディア皇国第三艦隊所属 戦列艦アディス

 

パーパルディア皇国第三艦隊で、最初に日本艦隊を発見した戦列艦アディスは単独で日本艦隊へ向かって航行していた。

 

「ん!?敵艦、発砲しました!」

 

アディスのメインマストに備え付けられている見張り台にいた、水兵がその鍛え抜かれた目で日本艦隊の砲撃を確認した。

アディスの艦長と副長は、この報告に首を傾げた。

 

「奴らは我らとの距離が20㎞以上も離れているのにもかかわらず、砲を放つとはいったい何のつもりだ?威嚇か?」

 

「蛮族どもの行動は、全く理解できませぬ。第三文明圏で最も強力な皇国の魔導砲ですら、射程は2㎞程しかありません。完全に射程圏外です。たとえ億が一、敵の砲が皇国の魔導砲のものより、射程が長かったとしても当たる事はないでしょう。」

 

二人だけでなく、戦列艦アディスに乗艦している全員が、日本の砲撃が自分達に当たるはずがないと考えていた。

だが、とても慎重な行動を行う事で出世して来たアディス艦長は、微かに死の予感を感じていた。

 

「面舵一杯!念のため回避行動をとるぞ!!」

 

艦長の命を受けた操舵主が舵を切り、戦列艦アディスはゆっくりと右へと舵を切る。

舵が効き始め、船が右へと傾き始めた次の瞬間の事だった。

 

天照が発射した80㎝砲弾が、アディスの左舷に着弾、爆発を起こした。

爆発で発生した巨大な水柱に半壊したアディスは巻き込まれ、海面を離れ宙を舞った。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「た、助けてくれー!!!」

 

多くの船員の悲痛な叫びと共に、戦列艦アディスは海面に叩きつけられ、その衝撃で艦内に保管されていた魔石が爆発した事で、乗っていた船員もろともバラバラとなって海の藻屑となった。

 

 

パーパルディア皇国第三艦隊 旗艦ディオス

 

「戦列艦アディス轟沈!て・・・敵の攻撃は砲撃によるものと判明!!射程は20㎞以上!!たった一発の発砲で命中させています!」

 

マストの見張り台からの悲鳴のような報告は、艦橋にいる幹部たちに大きな衝撃を与えた。

 

「な・・・、なななな・・・、なんだと!?20km!?砲の射程が20km以上もあるというのか!!!我が方の10倍の射程もあるというのか!?しかも、たったの1発で命中!?動目標に対する命中率は、距離2kmで発射した我が方の100倍もあるのか!!」

 

「何故、文明圏外の国が我が皇国の最新の魔導砲の性能を遥かに凌駕する砲を持っているのだ!?」

 

「敵の砲の威力は、たった一発で最新鋭の100門級戦列艦を轟沈させるほどの威力がある!射程や命中率だけでなく、純粋な砲の火力についても、我々の認識以上の差があるのかもしれない!」

 

幹部たちは、敵の強大さに対する純粋な驚きと、今まで誇りに思ってきたパーパルディア皇国の戦列艦と比較にならない程に、高い性能を持っている敵の船の性能に絶望する。

彼らが議論を交わしている間にも、索敵の為に先行していた戦列艦が次々と砲撃を受け、爆発、轟沈していった。

更に、彼らの下に最悪の報告が飛び込んでくる。

 

「ほ、報告!敵との距離を計測し直したところ、敵との距離は40㎞以上離れています!」

 

「そ、そんな馬鹿な!?40㎞だと!?間違えたのではないか!?」

 

「それが何度も計測し直しても、同じ結果なのです。間違いなく40㎞以上離れています!!」

 

「な・・・、何だと・・・?そ、それでは、つまり・・・?」

 

「て、敵の船が・・・、距離を測り間違えるほどに巨大だというのか・・・?」

 

幹部たちの顔が一気に蒼くなっていく。

歴戦の戦士、アルカオンですら頬に冷や汗をかいていた。

 

「提督、間もなく竜騎士360騎が敵艦隊上空に到達します。」

 

「もはや頼みの綱は、彼等だけです。」

 

「頼むぞ・・・・。」

 

提督アルカオンとその幹部たちは、竜騎士による攻撃に最後の望みを託すのだった。

 

 

パーパルディア皇国 第3艦隊所属 竜騎士団

 

「敵艦隊が見えたぞ!!」

 

第三艦隊司令部からの魔導通信による誘導を受け、日本艦隊の姿を水平線上に認める。

敵艦は、誰も見た事が無い程の大きさと速さだった。特に、艦隊の先頭を航行している船は、島そのものが動いているのではないかと、錯覚してしまう程に巨大だった。

竜騎士団全体に、強い緊張が走る。

敵艦は、摩訶不思議な方法で竜母を全て水底に沈め、20㎞近く離れているのにもかかわらず、砲撃を行い、友軍艦艇を次々に沈めていく。

 

竜騎士団長ダイロスは、一時目を閉じると覚悟を決める。

 

「全軍突撃!二ホン軍を滅せよ!!!」

 

「「「うおぉぉぉぉ!!!!」」」

 

自分達は第三文明圏最強の竜騎士団、自分の積み上げて来た全てを信じて、彼らは敵の超巨大要塞艦へと向かう。

 

パーパルディア皇国第三艦隊所属のワイバーンロード360騎が攻撃目標に選び、突撃を敢行したのは、主砲を撃ちながら侵攻していた、日本海上防衛軍第一艦隊旗艦天照だった。

天照の戦闘指揮所では、敵艦隊から発進しこちらに向かって来ている、敵の航空戦力の存在を既に把握していた。

 

「ワイバーンβ型、本艦に突撃を開始した模様!!」

 

「それは好都合だ。一気に敵の戦力を半減させることが出来る!前部陽電子誘導光線砲、用意!」

 

「了解!陽電子誘導光線砲にエネルギー伝達開始!」

 

「敵に照準合いました!発射準備完了!!」

 

「陽電子誘導光線砲、撃ち方はじめ!!」

 

「てぇーーーー!!!」

 

砲術長が引き金を引くと、天照の一番主砲の前方にある円盤状の兵器の外周が光り、天照に襲い掛かろうとしていたパーパルディア皇国の竜騎士団へ向かって、緑色に発光する光の奔流が放たれた。

 

竜騎士団団長ダイロスを含めた、全てのワイバーンロードの下へと飛来した緑のビームは、彼らに声を発する暇すらも与えずに、虚空の彼方へと消し去った。

 

 

天照の艦橋では、ロウリア王国の観戦武官ターナケインが一部始終を目にしていた。

 

(なんてこった・・・。300騎以上のワイバーンが10秒足らずで、全滅してしまった・・・。列強パーパルディア皇国の主力軍の中でも花形と言われる竜騎士団。ひとたび飛び立てば、7つの軍を滅ぼすと言われていた、第三文明圏最強の部隊が一隻の軍艦に呆気なく敗北した・・・。本当に、二ホン国には魔法の類が存在していないのか?科学を極めれば、魔法のようなことが出来るようになるのか?ううむ、これから俺はどうすればいいんだ!?)

 

ここ数日の出来事で、頭がパンク寸前になってしまったターナケインであった。

ただ一つ、彼が理解している事は、「日本と絶対に敵対してはいけない」という事だった。

 

 

旗艦ディオス

 

ディオスの艦橋は、人がいなくなってしまったかのように静まりかえっていた。

いや、静まり返っていたのはディオスの艦橋だけではない。第三艦隊全体が静まりかえっていた。

誰もが、自分の目を疑っていたのだった。

 

「・・・・りゅ、竜騎士団、全滅・・・、しました・・・。敵艦に・・・、被害認められません。」

 

艦橋内に弱弱しい通信士の声だけが、響く。

誰もかれもが、ある事に気付き、それを理解し始めていた。

 

「自分達は、決して勝てない国に敵対してしまった」

 

と、いう絶望的状況に・・・。

 

パーパルディア皇国艦隊の誰もが呆然としている間にも、日本の攻撃は容赦なく続き、次々と戦列艦が漁礁へと変えられていく。

 

「戦列艦マルタス、レジール、カミオ轟沈、ターラスに敵砲着弾・・・・・」

 

絶望的な通信士の声だけが、ディオスの艦橋に響き続ける。

パーパルディア皇国きっての名将、歴戦の獅子とまで呼ばれた第三艦隊提督アルカオンでさえ、この状況に対応できず、ただ額に汗を浮かべ、沈黙していた。

 

皇国の頭脳マータルの考えた作戦も、列強ムー相手ならば効果があっただろう。

しかし、100発100中の長射程砲と、1発で沈むほどの威力のある砲弾なんて、反則すぎる代物ではないか。

「100発100中の長射程砲と、1発で沈むほどの威力のある砲弾」だけなら、まだ何とかなったかもしれない。だが、敵の砲はそれに加えて、恐ろしく装填速度が速いのだ。全く、手の打ちようが無かった。

マータルの考えた作戦は、敵艦隊の圧倒的な戦闘能力を前に全くの無意味となり、味方艦の轟沈だけが続く。

 

敵の砲は、射程が40㎞以上もあり、ほぼ100発100中、かつ装填がとてつもなく速い。

皇国の魔導砲の最大有効射程である2㎞までに近づこうと思ったら、最大船速でも40分以上は掛かってしまう。敵艦は、船速が恐ろしいほどに速いようであり、もっと早く射程圏内に到達できるかもしれないが、戦場でそのような甘い考えが通用するはずがない。

あんな高威力かつ正確な砲撃を、40分も避け続けるのは不可能な事だ。

 

「・・・・すまんな。我らの命は此処までのようだ・・・。貴官らの命、皇国海軍の誇りの為に捨ててくれ・・・。」

 

アルカオンは、命を捨てる覚悟を決めた。

そもそも、皇国の主力部隊が皇都の目と鼻の先で、戦力を残した状態での降伏や撤退が許されるはずがなかった。

彼等には、戦って生き残るか、戦場で散るかの二つの選択肢しかなかったのだ。

アルカオンの決断に、幹部を含めたディオスの乗員全員が、涙を呑んでアルカオンに敬礼をする。

 

「第三艦隊全艦、二ホン国艦隊に突撃せよ!!我らの、皇国の意地を奴らに見せてやれ!!」

 

第三艦隊に所属する、全ての戦列艦の風神の涙が光り輝く。

風の魔石によって生み出された風を帆いっぱいに受け、最大船速で敵の巨大艦に向かって、加速する。

しかし、味方艦は絶え間なく降り注ぐ敵の攻撃を受け、次々と轟沈していく。

 

マータルの作戦計画に基づいて、面の様に薄く広い範囲に展開した皇国艦隊、その面に棒が突き刺さるかのように、日本海上防衛軍第一艦隊が侵攻する。

日本艦隊は、接近してくるパーパルディア皇国の戦列艦を次々と粉砕していき、破壊し尽くしていく。

絶望に包まれ、戦意を失っていく第三艦隊。

 

「二ホン軍の超巨大艦、我が艦の正面に来ます!!」

 

パーパルディア皇国第三艦隊旗艦超フィシャヌス級150門級戦列艦ディオスの正面に、左右に広がっている味方戦列艦を沈め続けている日本艦隊旗艦天照が対峙する。

お互いの距離は、既に40㎞を切っており、敵の射程圏内に入っているのは確実だろう。

 

「提督!北に転進し、二ホン艦隊との距離を取る事を進言します!旗艦を・・・、艦隊指揮能力を失うわけにはいきません!!!」

 

ディオスの艦長が、上官であるアルカオンに進言する。

 

「ならん!!進路そのまま、正面の敵艦に特攻せよ!皇国軍が引くわけにはいかんのだ!!」

 

「し、しかし!!」

 

「敵艦の主砲が動いています!!我が艦に照準を合わせているようです!!」

 

「提督!!早く本艦の進路を変えてください!!」

 

「ならん!!」

 

アルカオンは腕を組み、大声で吼える。

その時、マストの見張り員が悲鳴のような声で絶叫する。

 

「敵艦発砲!!」

 

艦の乗組員全員に、緊張が走る。

 

「敵の砲弾が来るぞ!!取り舵一杯!!総員、衝撃に備えろ!!」

 

ディオスの艦長が、アルカオンの命令を無視し、操舵員と乗員に大声で指示を出す。

艦がもどかしいほどゆっくりと、舳先の向きを変え始める。

 

その矢先の出来事だった。

 

天照の主砲から発射された80㎝の砲弾が、ディオスの右舷に直撃した。

その瞬間、船全体を覆いつくすほどの閃光と巨大な衝撃波が発生し、灼熱の熱風が木造の船体をあっという間に引き裂き、破壊していく。

さらに追い打ちをかけるかのように、艦内に積まれていた魔石や魔術媒体が爆発し、砲弾が生み出した破壊の力と共に船を打ち壊していく。

 

パーパルディア皇国第三艦隊の旗艦ディオスは、巨大な水柱と轟音を轟かせながら、船体が木っ端微塵になりながら、轟沈していった。

 

パーパルディア皇国 エストシラント港海軍本部

 

海将バルスは作戦会議室の窓から、港から続々と出港していく皇国の主力艦たちを眺めていた。

もう間もなく、第一、第二艦隊の出港も完了するだろう。

沖合ではすでに、第三艦隊と二ホン艦隊との戦闘が始まっているとの報告があがっている。

 

作戦会議室には、皇国の頭脳と呼ばれているマータルや、海軍本部に勤めている主要幹部が集まり、机の上に置かれた海図を睨んでいる。

彼らが睨んでいる海図には、次々にバツ印が書き込まれていく。それは先行している第三艦隊の戦列艦が撃沈された場所であり、バツ印の数だけ味方の船が沈んでいるという事である。

 

次々と入る戦況報告に、マータルは焦りの色を隠すことが出来ない。

まさかこれほどまでに、戦闘能力に差があるとは思っていなかったのだ。

マータルが日本艦隊の戦力として予想していたのは、ムーの機械動力船であった。

そこで彼は、もし日本がムー最強の戦艦であるラ・カサミを複数投入したとしても、それを破り勝利することが出来るような陣形を考え、作戦を立案したのだった。

だがしかし、日本の艦隊の戦闘能力は彼の予想を遥かに上回った。

まさか文明圏外の国に、水平線の向こう側から戦列艦を一撃で沈めることが出来る威力かつ、百発百中の命中性を誇る砲が存在しているなんて、夢にも思っていなかった。

 

味方艦が敵に打撃を与える事すら出来ずに、海の底へと沈んでいく事態にマータルは、列強であるパーパルディア皇国と日本の軍艦の性能差は、列強と文明圏外の国の差よりも大きく離れている事を認めざるを得なかった。

 

「・・・第三艦隊旗艦ディオス、撃沈されました。第三艦隊は全滅状態です・・・・。」

 

会議室に、弱々しい通信兵の声だけが響く。

部屋にいる全員が、沈黙してしまった。

誰もかれもが、この現実を素直に受け止めることが出来なかったのだ。

 

「・・・よし!これしかない!」

 

意を決したように、マータルが発言する。

意気消沈していた幹部たちは、皇国きっての天才が新たに考えた作戦に、期待の眼差しを向けた。

 

「海将!第一及び第二艦隊は、最密集隊形で二ホン艦隊に突入させましょう!まさかこれほどまでに、艦の性能に差があるとは想像していませんでした。幸いな事に、二ホン艦隊の数はあまり多くはないようです。圧倒的に高性能な船を保有している奴らを倒すには、数で押しつぶすしか方法はありません。」

 

「・・・・許可する。」

 

マータルの新たな作戦に大きな期待を寄せていた幹部たちは、その発言に内心ガッカリし、コッソリとため息を吐いた。

マータルの考えた作戦は、海将バルスの命令となって、皇国軍主力第一艦隊と第二艦隊に伝えられる。

彼らは命令に従って、速やかに密集陣形を取ると日本艦隊に向かって行った。

 

日本海上防衛軍第一艦隊 旗艦 天照

 

一時も止まることなく流れる川の水の様に、刻一刻と変化していく戦場の状況。

その状況の変化を一片たりとも見逃さない様にする為に、各種の情報が集められ戦闘指揮所へと伝えられる。

現在のところ、作戦は計画通りに順調に推移しているようだ。しかし、敵国の首都付近にある大きな港から、続々と出てくる敵艦の量は、日本艦隊を緊張させ続けるのには十分な脅威であった。

 

「敵艦隊、密集隊形で航行中!敵艦数、少なくとも400隻は超えているとの事です!」

 

各艦の各種センサー類や、宇宙空間からの偵察で判明した、敵艦隊の隊列とその規模に関する報告があがると同時に、艦隊司令佐々木や艦長倉田、各班の班長等、幹部達に緊張が走る。

 

「密集隊形をとってきたか!!それにしても、400隻だと?いくら何でも、進路上に敵が多すぎる!」

 

「どうしましょう?アルタラス沖の様に、超電磁砲で吹き飛ばしますか?」

 

「いや、それはダメだ。陸から100㎞も離れていない海域での超電磁砲の使用は、民間人への被害が出る可能性がある。他の超兵器群も、同様に使用不可だ。」

 

「となりますと、敵艦隊の中央を強引に突破するしかありませんな。」

 

「問題は、本艦以外の艦の弾薬です。果たして、最後まで足りるでしょうか?」

 

様々な意見が僅かな時間の間に、次々と生み出され議論される。

それを黙って聞いていた佐々木が、意を決したように呟く。

 

「艦隊の陣形はそのまま。砲撃については、天照以外は前方は射程限界、側面は10㎞圏内のみを攻撃せよ。」

 

「し、しかしそれでは危険すぎます!」

 

「それと、後方の空母に航空戦力を要請してくれ。艦隊の攻撃圏外の敵艦を攻撃、進路の確保を頼んでくれ。」

 

「な、なるほど!了解しました!」

 

短い時間の中で、日本艦隊の行動は決められた。

 

 

パーパルディア皇国 エストシラント港 南方50㎞の海域

 

エストシラントから微かに見える程度の距離の海域で、砲撃音が轟く。

海上には砲撃音と爆発音が絶え間なく響き、その音の数だけパーパルディア皇国の戦列艦が沈んでいく。

上空には、空母から発進した戦闘機が飛び回り、パーパルディア皇国の対空火器の射程外から攻撃を加える。

木造の船体に魔導装甲を張り付けた戦列艦では、この苛烈な攻撃に耐えることが出来ず、一撃で破壊され轟沈するか、攻撃で引火し燃え上がるか、至近弾を受けて船体に穴が開き浸水で沈むかの、三択しかなかった。

 

しかし、彼らは、パーパルディア皇国の兵士たちは勇敢だった。

 

一回の音が起きるたびに、数百人の仲間たちが死んでいくにもかかわらず、強大な敵に勇敢に立ち向かっていく。

 

その姿は、正しく国を守るにふさわしい守護者であり、その勇敢な戦士に相応しい壮絶な最後を遂げる。

海上が静まりかえった時には、海上には日本海上防衛軍第一艦隊の艦影と、皇国の戦列艦の残骸が多数浮遊していた。

 

「敵艦隊を壊滅しました!周辺に脅威無し!!」

 

「よし!敵海軍本部に攻撃を加える!天照を前進させよ!!」

 

今まで共に戦闘して来た僚艦と別れた天照は、単独でエストシラント港との距離を更に詰めていった。

 

 

エストシラント港

 

つい一時間前まで平和なひと時が流れていた港は、収束不能の混乱状態に陥っていた。

混乱が起きた理由は単純明快であり、それはパーパルディア皇国第一艦隊と第二艦隊が向かった方向から立て続けに轟音が響き渡り、それが収まったと思ったら、明らかにパーパルディアの物ではない巨大船がこちらに向かって来ているのを、目撃してしまったからだった。

 

混沌とした港の様子を、港の臨時職員として雇われたシルガイアが高台から見ていた。

先程まで港の掃除をしていた彼は、港に接近してくる巨大な影にいち早く気付くことが出来たお陰で、誰よりも早く人気の少ない安全な場所へと避難することが出来た。

 

「い、一体何なんだ・・・。あれは・・・。」

 

シルガイアは、はっきりと姿が見える程に近づいた巨大艦を観察する。

 

(帆や風神の涙が無い・・・。とすると、あれは魔導動力か機械動力で動いているのか・・・?しかし、余りにも大きすぎる!!一体どこの国の船だ?何のためにやってきたんだ!?)

 

シルガイアが疑問に思っていると、要塞艦の巨大な大砲が動き、何かに狙いを定める。

何を狙っているのかと、シルガイアが大砲が向けられた先に視線を移して行くと、そこにはある一つの豪華な建物があった。

シルガイアの顔から、血の気が一気に抜けていく。

 

「あ、あれは、海軍本部!!ま、まさか!?」

 

次の瞬間、巨大な艦砲が火を噴いた。

天照の主砲から発射された砲弾は、数秒足らずでパーパルディア皇国海軍本部へと着弾し、大爆発を起こした。

彼はとっさに、パーパルディア皇国海軍の最高責任者であり、学生時代の親友である海将の名前を叫んでいた。

 

「バ、バルス!!!!!」

 

彼の叫びをかき消すように、爆炎と轟音をたてながら、豪華な装飾が各所に施され威厳と威容を放っていた海軍本部が、跡形もなく崩れ落ちていく。

他国を恐怖で支配し続けてきた列強パーパルディア皇国、その恐怖、力の象徴であった海軍本部が崩れて落ちていく音は皇都エストシラントにこだまする。

ここにおいて、パーパルディア皇国は、海軍全体の指揮能力を喪失したのだった。

 

海軍本部への80㎝砲弾の着弾で発生した爆発音と衝撃音が、混乱状態にあった港に木霊する。

港にいた誰もが、崩れ落ち燃えている海軍本部の建物を見て呆然とし、本部の建物を破壊した存在を見て恐怖に震え上がる。

 

「な、何だよ、あれ・・・・。」

 

「海軍本部が・・・、海軍本部が吹き飛ばされちまった。」

 

「列強の本土が攻撃を受けるなんて・・・。これは、夢なのか?」

 

「魔帝だ・・・。魔帝が復活したんだ!!」

 

港は、更なる混乱状態へと陥る。

一般の民間人や商人が内陸部へと走る傍らで、港の兵が港のあちらこちらに備え付けられた魔導砲の下へと走り、砲を天照へと向けようとするが、天照からの正確な砲撃で砲台は火柱を上げる。

続いて弾薬庫にも砲弾が命中し、港全体に猛烈な爆発が発生し黒煙に包まれていく。

 

「ちくしょう!ちくしょう!!あんな化け物に対抗できるはずがない!!!」

 

シルガイアは、震える足を懸命に動かしながら、エストシラント市内へと向かって行った。

 

日本海上防衛軍第一艦隊による攻撃により、パーパルディア皇国海軍の主力艦隊は軒並み壊滅し、海の底へと姿を消した。

また、エストシラント港は天照からの砲撃を受け、港湾施設と武器弾薬の貯蔵庫を完全に破壊され、軍港としての機能を完全に失った。

 

この一連の攻撃により、第三文明圏の唯一の列強として他国を圧倒してきたパーパルディア皇国海軍は、実質的な壊滅状態となった。

 

 

その日の夜 皇城パラディス城

 

「それでは、これより緊急御前会議を始めたいと思います。」

 

パーパルディア皇国が危機的な状況に陥った時のみに開催され、普段の会議では必ず行われる根回しを全く行わず、それぞれの部署からの生の情報をぶつけ合う会議が始まろうとしていた。

会議は国のトップ、皇帝ルディアスを筆頭として、国の重役が顔を連ねる。

 

会議に出席している皆の顔は暗く、誰一人として笑顔を見せる者はいない。

会議に参加している面々には、日本との戦争を招いた皇族レミール、日本との外交を行っている第一外務局の局長エルト、この中で最も日本の事を知っている第三外務局局長カイオス、軍全体の指揮を執っているアルデも含まれている。

 

今、パーパルディア皇国の未来を左右する、重要な会議が始まろうとしていた。

 

 

パーパルディア皇国の悪夢は、ようやく半ばに入ったばかりだった。

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