作者のイーグルです。
まず最初に投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
4月から始まった新生活の影響で、まともに書くことが出来ませんでした。
また、上記の理由で小説の内容が変になっている可能性があります。
その点もご注意ください。
パーパルディア皇国 工業都市デュロ
時は、エストシラントで緊急御前会議が始まる二時間前に遡る。
パーパルディア皇国最大の生産拠点であるデュロの郊外に建設された軍事基地では、エストシラントからの緊急の魔伝を受け取ったデュロ防衛隊隊長であるストリームと陸軍将軍ブレムと軍幹部が、緊急会議を行っていた。
「皆、落ち着いて聞いてほしい。皇都エストシラントが攻撃を受けた。」
「何ですと!?被害は!?」
「被害についてだが、皇都防衛軍基地は全滅。海軍戦力やワイバーンオーバーロードも大半が撃破され、海軍本部も攻撃を受け、機能を停止してしまった・・・・。」
この最悪の一報は会議室にいた軍幹部や文官幹部達は、一瞬その言葉が理解できず、頭の中で何度もストリームの言葉を繰り返し再生した。
「う、嘘だろ・・・。」
「敵はいったい何者なんだ?ミリシアルかムーか?」
言葉をようやく理解した幹部たちの疑問に、ストリームは言いづらそうに答える。
「各種情報に照らし合わせた結果・・・・、敵は、第三文明圏外の国である二ホン国の軍であると推定されている・・・。」
ブレムはその意外な国名を聞いて、絶句してしまった。
最近噂になっている国、二ホン国。
パーパルディア皇国内では、「皇国を侮辱した文明圏外の蛮族の国」と認識されている国だが、同時に主に一部の商人たちの間で、「列強国でも見ることが無い商品が沢山ある、科学技術が発達した国」とも言われている国である。
大半のパーパルディア人は、商人達の噂話を全くと信じていなかったが、ストリームとブレムは違った。
この二人は、この噂を裏付けるモノを手に入れていたのである。
ストリームとブレムの左腕には、商人から献上された日本製の腕時計がはめられていた。
この時計を初めて見た時、二人はムー製の新型の腕時計かと勘違いし、生産した国を聞いて腰を抜かしそうになった。
この衝撃の一件の後、二人は出来る限り情報を集めた。
開戦直前に収集を始めた為、カイオス程情報を集めることが出来なかったが、それでもある程度の情報を手に入れることが出来た。
情報曰く、「帆のない巨大な船が軍民問わず普及している」や「皇国では貴重なガラスが、皇国の物よりも高品質であり、驚くほどに低価格で売られている」などである。
これらの情報から二人は、日本が普通の国では無い事を理解することが出来たのである。
「とても信じられない事だが、皇都が攻撃を受けたのは事実だ。デュロの防衛体制のレベルを上げる必要がある。」
「そうだな・・・・、全軍に通達。第二種警戒体制に移行せよ。相手は、唯の文明圏外の国ではない。猛毒の牙を隠し持ったヒュドラだと思え。決して油断するな。」
会議の後、直ぐにデュロは第二種警戒体制に移行した。見張りの数を増やし、魔導レーダーの24時間監視、即応部隊の編成へと動き出したのだった。
デュロ沿岸部から300㎞東の空域
日本防衛軍は、敵国の一大生産拠点への攻撃の前段階の偵察任務に、大気機動宇宙機アークバードをその任に充てていた。
パーパルディア皇国側が日本の事をあまり把握できていないのに対して、日本側は衛星軌道から地面に置かれたノートの字を判別する事が出来るほどの、高い観測能力を持つアークバードによって、攻撃目標の防衛体制を全て知ることが出来ていた。
この高精度の偵察情報はすぐさま、日本海上防衛軍第七艦隊と第九艦隊で構成されたデュロ攻撃艦隊へと送られた。
「ふ~む、列強を名乗っているだけあるな・・・。未だにこれほどの戦力を持っているとは・・・。」
「確かにこれだけの軍事力があれば、並大抵の相手には有利に立ち回ることが出来るでしょう・・・。何せ、確認されている船の数だけでも、クワ・トイネ公国やアルタラス王国の倍近くはありますからね。ただ、我々の相手にはなりませんが。」
「確かにその通りだが、油断は禁物だ。何しろここは異世界。魔法とか竜とかが当たり前の存在だ。もしかすると、我々の知らない秘密兵器があるかもしれないぞ。・・・航空隊の準備はどうか?」
「空母りゅうほう及び空母かいようからは、何時でもいけるとの事です。」
「よし、航空隊発艦!目標、敵基地及び敵の軍事工場!本作戦は、パーパルディア皇国の力を削ぐ為の最後の仕上げである!この一戦に日本と同盟国の命運が懸かっている!各員奮闘し、努力せよ!」
第七艦隊旗艦えちごのマストにZ旗が掲げられると、二隻の空母から次々に戦闘機が発進していく。
戦闘機たちは空母から飛び立つと、艦隊上空で旋回しながら隊列を組み、一路デュロへと飛行機雲を伸ばしながら飛んで行く。
その飛行機雲の下を、彼らを追いかける様に艦隊が増速を行う。
第二種警戒体制に移行してから30分後
パーパルディア皇国 デュロ防衛軍基地所属 第11竜騎士団第1飛行隊第2飛行中隊
日が沈み始め、透き通った青色に夕暮れのオレンジ色が混じり始めた空を、ワイバーンロードが二騎飛行していた。彼らは、デュロの空の守りを担当するガウスの指示によって、一方がワイバーンの限界高度ギリギリを、もう一方が木々にかすめると錯覚するほどの低空を飛行していた。
高空を飛ぶ若い竜騎士の名は、サルクル。彼の下には、彼の所属する中隊を指揮するマグネの姿も見える。
彼は、祖国に攻撃をしてきた日本軍へ対抗心を燃やしていた。
(どんなカラクリを使ったのか分からんが、蛮族のくせに調子に乗りやがって・・・・、まあ良いか。奴らがデュロに攻め込んで来たら、俺の操縦技術で返り討ちにしてやる・・・。)
その時、
「・・・ん?なんだ?あれは?」
透き通った空に黒い点が浮かんでいた。
「!!」
常人なら反応できなかったが、竜騎士は総じて目が良く、それが見えた。黒い点は異常な速度で彼との距離を詰めてくる。
本能的に命の危機を感じ、手綱を動かして回避行動を取ったが、無慈悲な光景が彼の目に写る。
「つ、ついてくる!?」
黒い点・・・いや、近くに来ると銀色の矢のように見える物体は方向を変えてくる。彼は無意識のうちに魔信の送話スイッチを握っていた。
ついてくる矢。味方の障害となるであろう物を報告しなければ。
だが、その思いは届かず、矢は彼の近くで爆発する。
パーパルディア皇国の竜騎士サルクルは、自慢の操縦技術を発揮する事もなく、空母りゅうほうから発艦したUAVF-11から発射された空対空ミサイルの直撃を受け、撃墜された。
サルクルが撃墜された時、彼の上官である竜騎士マグネは頭上で突然起きた爆発音に、咄嗟に頭上に意識を向けながら、部下の安否を確認する魔導通信を行っていた。
「サルクル、サルクル!応答しろ!サルクル!」
何度も上空を飛んでいた部下に問い掛けるが、反応が無い。
その内上空の黒煙の中から、ワイバーンの一部と思われるナニかがバラバラと降って来る。同時に、矢のような外見の飛行物体が高速でデュロに向かって行った。
この光景を見て彼は、部下が撃墜された事と敵からの攻撃を受けている事を認識した。
「緊急!緊急!サルクルが敵の飛行物体に撃墜された!!サルクルを撃墜したと思われる物体は、08分隊の方に向かっている!!至急回避行動に移れ!!」
「こちら08分隊。マグネ中隊長、攻撃の詳細をお・・・ガキッ!」
「08分隊応答せよ!?応答せよ!?・・・クソッ!!まさか!?」
通信中に相手側から猛烈な雑音が流れ途絶してしまったことに、マグネの脳裏に最悪の予想がよぎる。
身震いしながら、魔導通信機をいじると阿鼻叫喚の魔信が流れていた。
「アスタル!アスタル!チクショウ、08分隊のアスタルがやられた!」
「二ホン軍は高空のワイバーンを狙って攻撃をしている!高空に展開しているワイバーンは、至急低空へ侵入せよ!」
「03分隊、りょ、了K・・・ザザッ」
「畜生!ストールが!こっちもやられた!!」
「来るな、来るなぁ・・・!!ヒィ!!やめ・・・グハッ!」
「05分隊が全滅した!クソ、こっちに来やがった!?」
「ムーのマリンなんて比じゃないぞ!?文明圏外の国が持っていい戦力じゃないぞ!?」
次々と続く仲間の戦死報告。あっという間に味方の竜騎士達が撃破されていき、今までに感じた事のない絶望感がマグネを襲う。
マグネの僚騎サルクルは、隊の中で最も若い血気盛んな若者だったが、周囲の人間に気を使うことが出来るハキハキとした性格の持ち主で、とてもいい奴だった。
アスタルは竜騎士の中では大人しいが、つい先月長男が生まれとても幸せそうだった。
竜騎士は栄えある皇国軍の中でも、最も殉職率が低かった筈だ。
「チクショウ!家族になんて説明すれば・・・・・、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
マグネがワイバーンロードの上で慟哭した直後、03分隊を全滅させたUAVF-11から発射された空対空ミサイルが着弾し、マグネは爆発の中に消えていった。
数分後、パーパルディア皇国 デュロ防衛軍基地
皇都エストシラントの防衛軍基地と、同等の設備を有するデュロの防衛軍基地の建物の内の一つにある空の守りを統括する防空司令部では、誰もが青ざめた顔で立ち尽くしていた。
一時間前までは平和そのものだった空に、大きな変化が起こったのは十分前の事であった。
突然、東の空を守っていたワイバーンロードの反応が魔導レーダー上から消えた。
当初レーダー手は、レーダーの故障かと考えたが他のワイバーンロードの反応が次々と消えていくのを見て、飛竜隊が何者かの攻撃を受けている事を知覚した。
レーダー手はすぐさま、上官にこの事を報告した。
「た、大変です!ワイバーンロードの反応が、複数消滅しました!敵の攻撃を受けていると思われます!?」
「なに!?そんな馬鹿な!?故障ではないのか!?」
「いえ、魔導レーダーは正常に稼働しています!間違いなく、現在進行形で敵の攻撃を受けています!」
「クソッ!全飛竜隊に迎撃を命じろ!全てのワイバーンを空に上げるんだ!通信手、展開している飛竜隊と連絡はとれるか!?」
「そ、それが・・・。魔信が混乱しており、此方の命令をうまく伝達できません!」
通信手の悲鳴のような報告を受けた上官が、ひったくるように魔導通信の受話器を奪い取ると、スピーカーに竜騎士達の報告が出力される様にするのと同時に、上空の竜騎士達に命令をしようとする。
「マグネ中隊長がやられた!!第二飛行中隊は全滅だ!!」
「低空のワイバーンもやられているぞ!?どうすればいいんだ!?」
「此方、10分隊。我が隊は敵の攻撃によって、壊滅寸前!誰か助けてくれ!」
通信機からは、竜騎士達の悲鳴か絶望的な報告のみが聞こえる。
「ば…馬鹿な!!被害を受けた部隊は相当の距離が離れているんだぞ!!」
「落ち着け!!マグネを撃墜した物体が他の分隊を攻撃したのであれば、敵は桁外れの速度で飛行していることになるぞ!!ムーのマリンはおろか、神聖ミリシアル帝国のエルペジオでも不可能な速度でだ!!」
「多方向からの同時攻撃だろう!!でなければ、現状の説明がつかん!!」
「一体何が・・・、何が起こっているんだ!!」
信じられない報告に騒然とする防空司令部の幹部達を他所に、魔導レーダーの味方を表す光点が次々に消えていく。上空で哨戒中であった部隊だけでなく、緊急発進したワイバーン隊の光点すらも、次々と消えていき、遂に最後の光がレーダー上から消えた。
「み、み、味方の飛竜隊・・・、全滅しました・・・。敵に・・・、敵に制空権を奪われました・・・・。」
震える声で通信士が報告すると、騒然としていた部屋があっという間に静まり返った。
暫くの沈黙の後、防空司令部の幹部の一人が、未だに現実を受け入れられない様子で防空司令部に備え付けられた緊急アラートのボタンに向かい、それを押す。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ、という音と共に陸上基地全体に非常事態を知らせる警報音が鳴り響き、緊急事態が発生した事を基地にいる全てのパーパルディア皇国軍人に知らせた。
この警告音が鳴り響いた基地内では、兵士たちが初めての事態に驚きつつも各々の武装を身に着け、それぞれの配置へと急ぐ。その他にも備え付けの対空用のバリスタを東の空へと向け、更には対地用の牽引魔導砲を引っ張り出し、敵の来る方向へとそれらを向ける。
パーパルディア皇国デュロ防衛隊は、史上初めての防衛体制に移行したのだった。
パーパルディア皇国の悪夢、その目覚めの光は、未だに彼らに降り注ぐことは無い・・・・。