日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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読者の皆様、こんにちは。
作者のイーグルです。

今回もまた投稿が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
見苦しいですが言い訳をさせていただきますと、アイデアが浮かばず執筆がなかなか進まなかったのが、主な原因です。


複数に分けて、長い時間をかけて執筆した為、おかしな部分がいつも以上に多い可能性がありますが、それでもよろしければどうぞご覧ください!


パーパルディア皇国編-21

 

エストシラント カイオス邸

 

天照を中心とした日本海上防衛軍第一艦隊に配属されている日本海上防衛軍人達が朝日に作戦の成功を祈っていた頃、同じように朝日にこの計画の成功を祈っている人物がいた。

 

「カイオス様、二ホン国艦隊に合図の「のろし」をあげました。もう間もなく彼らがエストシラント港に突入してきます。」

 

「もう後戻りは出来ないところまで来てしまったか…。各部隊の状況は?」

 

「はっ、ゼクト十兵長の指揮する部隊が各政府機関の周辺に待機しています。また、ポクトアール提督の指揮する部隊が皇族の確保のための行動に移っております。」

 

「そうか…。本計画において政府機能の掌握と皇族、特に皇帝陛下やレミールの身柄の確保は絶対だ。なんとしても成功させなければならない。もしこのクーデターが失敗すれば…。」

 

「我が国の命運は尽きたも同然、ですね…。」

 

「そうだ。だから何としてもこのクーデターを成功させなければならない…。しかしまあ君も博打家だな。まさか我が国の政争に二ホン国を巻き込むとはな。」

 

「それが我が国にとって最善策だったからですよ。」

 

カイオスはクロムと話をしながら、反乱を起こすことを決めたあの夜の事を思い出していた。

 

 

時はカイオス邸にて、反乱を起こすことを決めた日の夜まで巻き戻る。

 

 

「…カイオス様、私に一つ妙案があります。」

 

「なんだね?話してくれ、クロム。」

 

「はい、私が考えた案とは本計画にニホン国を巻き込むという物です。」

 

「な、何だと!?」

 

クロムの出した案にこの部屋にいる全員が驚く。

クロムはこの戦争を終わらせる為のクーデターに、敵対国である日本の手を借りようと言うのだ。

戦争中の敵国にクーデターの手助けをしてもらうなんて、この世界では前代未聞の事であった。

 

「待て待て待て!!我々の戦力が足らないからと言っても、敵国の力を借りるのは前代未聞の事だぞ!?何考えてるんだ、お前は!?」

 

部屋にいる全員の心境を代弁する様に、ヴァルハルがクロムに疑問を吹っ掛ける。

それに応える様に、クロムが話し始める。

 

「我が方の戦力は圧倒的に劣勢です。だからこそ規格外の力を持つ二ホン国軍を巻き込む必要があるのです。彼らがエストシラントやデュロの主力部隊をたった一日で殲滅させたのは記憶に新しい事です。二ホン国軍が再びエストシラントに現れれば、皇都の防衛隊は彼らへの防衛体制を取らざるをえなくなります。」

 

「つまり、我々の敵をニホン国軍に引き付けてもらおうという事だな?」

 

「その通りです。この案ならば確実に反乱計画は成功させることができます。ですが新たな問題が一つ浮かび上がってきます。それはどうすれば二ホン国をこの計画に加担させることが出来るか、です。」

 

クロムの言葉に、一時明るい顔をしたカイオス達の顔がまた曇る。

確かに彼らに何かの見返りを用意しなければ、反乱計画に加担という面倒ごとに首を突っ込んでくるはずがない。

 

「どうする…?我が国の金では決して納得しないだろうし、あの国の性格からして領土の割譲など受け付けるはずがない。奴隷なんてもってのほかだ。どうすればよい…?」

 

「それについても私に考えがあります。此方から出す見返りは戦争の早期終結と全属領の解放、大規模な軍備縮小、そして正式な政府の謝罪です。」

 

「ほう?それであの二ホン国がこの計画に協力してくれるというのかね?」

 

「無論、この条件だけでは首を縦には振らないでしょう。ですが現在の状況とあの国の性格を加味すると、二ホン国がこの条件に合意してくれる可能性が十分にあります。ヴァルハル、ニホン国の戦争に対する考え方についての説明を頼む。」

 

此処で今まで話をしてきたクロムに代わり、ヴァルハルが話をする為に椅子から立ち上がる。

カイオスやゼクト、ポクトアールらは、唯々黙って彼らの話に耳を傾ける。

 

「二ホン国の戦争に対する考えについてですが、如何やら二ホン国はかなり変わった規則を自らに課しているようです。幾つか挙げますと、「民間人、民間施設に攻撃をしてはならない。」「降伏した敵国の軍人に拷問をしてはならない。また、その生命を脅かしてはならない。」「武力の行使は自国、若しくは同盟国が他国からの侵略を受けた場合のみである。」「武力を用いた外交活動をしてはならない。」等です。これは我が国の常識からすると、かなり異質です。」

 

ヴァルハルの話に、部屋にいる何人かが頷く。

実際、あれだけの武力を持ちながらその武力を見せびらかすこともせず、他国に脅しをかける事もしない日本の外交はこの世界では有り得ない事だった。

この日本の特異な政治体制が覇権主義を掲げるパーパルディア皇国には理解できず、レミールをはじめとする多くのパーパルディア皇国人たちが日本の力を測り間違える結果を生みだすことになったのだ。

此処で再びクロムが話し始める。

 

「さて、本戦争で二ホン国側で参戦しているのはアルタラス王国とフィルアデス大陸解放軍のみです。これは二ホン国が戦後処理を簡潔に済ます為に当事者のみでこの戦争を終わらせるためだと考えられます。ですが、此処にこの戦争で生じた甘い汁を手に入れる為に乱入しようとしている国があります。その国の名前はリーム王国です。」

 

「リームだと!?あの蝙蝠がこの戦争に関わってくるというのか!?」

 

「はい、不確定ですがリーム王国は大規模な侵攻の為の準備を進めているとの情報が入ってきています。恐らく戦争の混乱に乗じて我が国の領土をかすめ取る事と、この戦争で二ホン国によい印象を与える為だと思います。ですが二ホン国にとっては有難迷惑な話でしょう。何しろ戦後処理をややこしくする様な行為を平然とする国が勝手に混じってくるのですから。」

 

「なるほど、つまりニホン国も早くにこの戦争を終結させたいと考えている可能性があるという事か。」

 

その通りです、とクロムは応える。

カイオスは目を瞑り、静かに思考を巡らせる。

 

数分後、彼は静かに瞼を上げ、自分に目を向けるクロム達に自分の考えを伝える。

 

「…私はクロムの博打に賭けてみようと思う。皆はどうか?」

 

「カイオス様がクロムの案で行くのと仰るのならば、私に異議はありません。」

 

「「「同じく。」」」」

 

「「「「異議なし。」」」」

 

「よし、では早速行動に移る事にしよう。先ずはニホン国政府に連絡を入れなければな。」

 

 

その後カイオスらは事前の秘密の取引の結果、屋敷の一室に設置された日本製の無線機を使用して日本政府に連絡を取った。

このカイオス派のクーデター計画とその協力要請に日本政府は大変驚いたが、同時に非常に有難い申し出でもあった。

と言うのも、クロムの予想通りリーム王国の宣戦布告なしの戦争参加は日本政府にとって頭痛の種となっていたからだ。

事実、防衛省の一部では戦後の混乱と新たな戦乱の芽を残さない様にする為に、民間人に多大な被害が出る事が予想されるエストシラントへの強襲上陸と市街地戦でさえもやむを得ないと考えている程であった。

 

そんな中でカイオスらクーデター派からのクーデター計画への協力要請は戦争を早期に終結させることが出来るだけでなく、新たなパーパルディア皇国政府が親日派となる可能性すら抱えた現状で最善の選択肢であった。

 

ただし、これだけでは敵国の反乱に協力する事は出来ない。

カイオス派からの通信を受け取った日から、二日ほどの時間をかけてこの計画に協力する条件を立案すると今度は日本政府側から通信を入れ連絡を取った。

 

日本政府が反乱計画に協力する為の条件の一部を抜粋すると、

 

・本戦争の即時終戦。

 

・パーパルディア皇国の現政体の解体。

 

・パーパルディア皇国の国名と政治体制の変更。

 

・パーパルディア皇国の軍事力の制限。

 

・日本、アルタラス王国への正式な謝罪と賠償。

 

・全属領の解放、並びに各属領、他国から徴収した奴隷の即時解放。

 

・日本が要求した人物の身柄の引き渡し。

 

などである。

 

パーパルディア皇国が今まで積み重ねてきた物や伝統をすべて否定し、破棄する事を迫る日本政府からの厳しい要求にカイオス達は気を失いそうになったが、パーパルディア皇国に住む多くの国民の為に致しかないと日本政府の要求を吞むことにした。ただ、細かい部分は戦争終結後に取り決める事にするなど可能な限りの余地を残す為の努力もしたのだった。

 

こうして何とか第三文明圏屈指の強国の協力を取り付けたカイオスらクーデター派は、準備をしながら決起の時が来るのを見極めていた。

そして、フィルアデス大陸解放軍がアルーニへの猛攻を仕掛けている事を知ったカイオスは計画の実行を決断し、大陸沖で待機していた日本艦隊に決起を知らせる合図である「のろし」を打ち上げたのだ。

 

「カイオス様、全部隊作戦準備完了しました!!後は、ニホン国艦隊が突入してくるのを待つだけです!!」

 

「事前の打ち合わせでは、もう間もなくエストシラント港に突入してくるはずですが…。」

 

ちょうどその時、港の方向から腹に響くような爆音が鳴り響いてきた。

窓から身を乗り出して海の方向を見ると、パーパルディア皇国の戦列艦より遥かに巨大な艦影が幾つも此方に向かって航行していた。

 

「諸君、ニホン国艦隊が突入してきたぞ!!全部隊に作戦開始の連絡を入れるんだ!!我々もパラディス城に向かうぞ!!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

 

パーパルディア皇国 皇都防衛軍仮設本部

 

此処で時間は、日本海上防衛軍第一艦隊が突入してくる少し前まで遡る。

日本の猛攻撃によって破壊し尽くされた皇都防衛軍基地の跡地に作られた仮設基地では、兵達が交代で硬いパンと塩漬けの肉の貧相な朝食を取っていた。

 

「クソ!硬くて不味い!!とても食えたもんじゃないぜ!!」

 

「しょうがないだろ、交通の要所であるアルーニが敵の手に落ちたんだ。食料を生産していた属領からの食料調達が出来なくなって、保存のきくものしかなくなっちまったんだからな。」

 

「……なあ、現状の皇都防衛軍で敵に勝てると思うか?」

 

「フィルアデス大陸解放軍と名乗っている属領の反乱軍ならば、絶対に皇都まで来る事は無いだろうが…。問題は二ホン国だな。」

 

「ああ、我が国の無敵艦隊を壊滅させ、この基地を破壊し尽くしたあの国の軍隊がもう一度来たら、このエストシラントは今度こそ終わりだな…。」

 

「そうだな…。ところでゼクト十兵長の部隊はどこだ?」

 

「一時間ほど前に市内巡回に向かったらしいが…。それにしては帰ってくるのが遅いな。一体どうし…、何の音だ?」

 

雑談をしていた兵士が何かが空気を切り裂くような音を認識した次の瞬間だった。

此処にいる誰もが経験したことのない大爆発が起こり、朝食を取っていた全ての兵を吹き飛ばしたのだった。

 

 

同時刻、パーパルディア皇国 行政大会議場

 

「一体皇国軍は何をしているのだ!!全ての属領の反乱を許すどころか、交通の要所であるアルーニまで落ちるとは!!」

 

各行政の幹部が集まり、国の運営に対する実質的な対策を決定する行政大会議は、皇国の歴史が始まって以来の未曾有の危機を前に紛糾していた。

日本との戦争が始まった直後に起きた日本防衛軍による主要都市、主力軍への攻撃によって第三文明圏唯一の列強国として君臨してきた最強のパーパルディア皇国の姿は既になく、更には日本、アルタラス王国の連名の声明によって全ての属領が反旗を翻し国土は大きく縮小、パーパルディア皇国の国民の食を提供してきた穀物地帯までもがパーパルディア皇国の支配下から離れてしまった。

 

穀物地帯がなくなった事によりパーパルディア皇国の食料自給率は大幅に低下し、最悪の場合日本の攻撃ではなく、大飢饉によって国が亡びる可能性すら出て来た事が彼らの頭を痛める。

 

会議に出席している軍の最高司令官アルデは相次ぐ罵倒を受け止め、胃をキリリと痛めながらも彼らに説明をする。

 

「現在軍は再建の真っ只中であり暫くは動かせません。再建が終わり次第反乱を抑えるつもり…。」

 

「それはいつだ!?いつになったら軍の再建は完了するのだ!?」

 

アルデの発言を遮り、農務局局長が発言する。

 

「す、少なくとも4ヵ月は掛かります。以前の練度に戻すとなると更に時間が掛かります…。」

 

「そんな悠長に構えている暇は皇国にはありませんぞ!!このままでは6ヵ月、たった6ヵ月で食料がなくなるのだぞ!!統制すればもう少し延ばすことが出来るが、それでも8ヵ月ほどしか持たない!!」

 

半年で食料が底をつく。この事実に、会議場にいる誰もが息をのむ。

それはつまり、パーパルディア皇国の余命はほとんど残っていないという事だ。

農務局局長の話は続く。

 

「一時的に二ホン国と休戦し穀倉地帯を取り返す、若しくは他国から食料を輸入する手続きは出来ないのか?」

 

農務局局長の提案に、出来るわけが無いとアルデは考える。

休戦については日本はそもそも唯の国内問題と見てくれないだろうし、寧ろより攻撃を苛烈に行うだろう。

戦争をしている敵国が弱っている時に手を抜く国が何処にあるだろうか?

 

食料の輸入にしても絶望的だ。

周辺国はほぼ全ての国が日本の味方であり、尚且つ今まで傍若無人の行いをしてきたパーパルディア皇国に救いの手を差し伸べる国が果たして存在するだろうか?

それに万が一食糧輸出の目途が立ったとしても、どの様に日本の警戒網を搔い潜って食料を運ぶのか?

船は当然無理だし、ワイバーンでは精々一人か二人分の一日分の食料しか運べないのだ。

 

アルデは農務局局長の無知に怒りを覚えながら、返答する。

 

「第一外務局局長とも何度も話し合いましたが、一時の休戦や食糧の輸入は不可能です。」

 

「では一体いつになったら穀倉地帯を取り戻せるのか!!蛮族の戦力などたかが知れているだろう!!何故さっさとしないんだ!!」

 

野次が飛ぶ中、何とかそれに耐えながらアルデが話をしようとした時、突如として会議場全体がビリビリと震え、少し遅れる様に何かが爆発した音が響いてきた。

 

「な、何事だ!?一体何が起きた!?」

 

「ほ、報告します!!エストシラント港沖合に二ホン国艦隊が現れました!!二ホン国艦隊の攻撃によって、皇都防衛軍仮設基地とエストシラント港が壊滅的な被害を受けています!!」

 

「な、何だと!!二ホン国艦隊が攻めて来ただと!?クソ!!直ちに迎撃せよ!!何としても皇都を、陛下を守るのだ!!」

 

突如の敵艦隊の出現に驚きつつも、アルデはエストシラントに展開している各部隊に指示を出す。

だがまさか、砲撃から免れ、皇都内に展開している部隊の殆どがクーデター派についているとは夢にも思っていなかったのだった。

 

 

日本海上防衛軍第一艦隊 旗艦天照戦闘指揮所

 

「敵基地への着弾を確認!!」

 

「よし、本艦とふそう、とさは内陸部への砲撃を継続、その他の護衛艦はエストシラント港への攻撃を開始せよ!!」

 

「航空部隊へ指定した施設の攻撃を指示せよ!!決して民間人に被害を出さない様に厳命せよ!!」

 

「クーデター派から行動を開始したと連絡が入りました!!このままパーパルディア皇国軍の目を引き付けておいてほしいとの事です。」

 

「了解した。全艦に通達、「派手に砲撃をして、パーパルディア皇国の目を釘付けにせよ!!」」

 

「ふそうから返信、「我、喜んで皇国軍の目を引き付ける役を引き受ける。」です。」

 

様々な情報と指揮が飛び交う天照の戦闘指揮所では、第一艦隊の司令官佐々木は少しばかり不安を感じ始めていた。

それは、もしクーデター派がパーパルディア皇国の各重要施設の制圧に手こずった場合、民間人に大きな被害が出る可能性が高い大通りや都市の外に通ずる門などにも攻撃を加えなければならなくなる。

いくら戦争中の敵国に住んでいるとはいえ、一般人への被害は何としても抑えなければならないのだ。

 

砲撃開始から数十分後、佐々木のみならず天照艦長の倉田や幕僚たちが焦りを感じ始めたその時だった。

佐々木が待ち望んでいた情報が飛び込んできた。

 

「司令、アークバードより緊急通信!!パラディス城に白い旗が翻っているのを確認したとの報告が入りました!!」

 

「何!?それは本当か!?」

 

「はい、間違いありません!アークバードからの映像を出します!!」

 

佐々木が指揮所メインモニターに視線を移すと、確かに作戦開始時にはパーパルディア皇国の国旗が翻っていたポールに白い旗が翻っていた。

 

「艦隊全艦、攻撃止め。・・・ここに本作戦完了を宣言する。」

 

一転して静まりかえった戦闘指揮所に佐々木の指令だけが響く。

此処に戦争初期から活動を続けた第一艦隊の戦いは、終わりを告げた。

それは同時に本戦争における、日本防衛軍の戦いに終わりを告げるものでもあった。

 

 

数分前 パーパルディア皇国 行政大会議場

 

突然の砲撃によって大混乱となった会議場。

そんな中で必死に指示を出していたアルデが、更なる細かい指令を出す為に軍務局に移動しようとした矢先だった。

 

「おい!貴様ら、一体何の用だ!!」

 

「うるさい!!我々はこの会議室にいる大臣達に用があるのだ!!」

 

不意に部屋の外で怒号が聞こえたかと思うと、突然大会議室のドアが強く開かれ、武装した軍人70名がなだれ込んできた。

軍人たちはパーパルディア皇国歩兵に正式配備されているマスケット銃を構えながら、会議室に押し入る。

 

「いったい何だ!何事だ!!」

 

突然入ってきた兵達に対して、アルデが声を荒げる。

 

「各人動かないでいただきたい!!この行政大会議場は、たった今掌握した!!勝手な行動をされると命の保証はない!!!」

 

会議室に乱入してきた軍人の代表として、ゼクト十兵長が声をあげる。

 

「貴様らは大馬鹿者なのか!?貴様たちは、この国家の未曾有の危機を前に革命ごっこのつもりか!!!指導者のいない国は全く動かんぞ!!!お前たちはパーパルディア皇国を滅ぼしたいのか!?」

 

アルデの言葉に場が静まりかえる。

だが、ゼクト十兵長はアルデの問いに応える。

 

「ニホン国の力も見抜けずにパーパルディア皇国の破滅の危機を作り出したのは、紛れもない貴方がただ!!我々は愛するパーパルディア皇国を、この国に住む民を大崩壊から救うために行動を起こしたのだ!!」

 

「やはり貴様らは大馬鹿者だ!!ただ皇国の行政機構を押さえただけでは、現在の状況は何一つも解決しない!!!相手が強力無慈悲の軍を持つ二ホン国と破竹の勢いで進軍をしているフィルアデス大陸解放軍がいるんだぞ!!貴様らがこの国を救いたいのならば、何か画期的な具体案か代替案を示してみろ!!!それが出来なければお前たちは本当の愚か者だ!!!」

 

「具体案なら既にある!!!すでに我々のリーダーであるカイオス様が二ホン国と話をつけておられる。我々が皇国内の大掃除をし、今までの行いを改め謝罪し、国の在り方を根本から変える。そうすれば皇国は救われるのだ。」

 

ゼクトの言葉に、場がざわつく。

まさか二ホン国との交渉から外されたカイオスが二ホン国との対話を密かに行っているとは夢にも思っていなかったのだ。

だが、それでも信じきれないのかアルデがゼクトに食い下がる。

 

「なっ!?そんなことが!?カイオスが!? だが、フィルアデス大陸解放軍はどうするのだ?例え二ホン国との戦いが終わったとしても奴らがまだいるのだぞ!!奴らはどうするのだ!?」

 

「それについても問題ない。二ホン国は我が国が降伏をすればフィルアデス大陸解放軍に対し、戦闘を終結させるように手を回してくれるとの事だ。」

 

「そんな馬鹿な!?ニホン国は、敵国である我々を助けるというのか!?有り得ない事だ!!」

 

「…どうやらあなた方は私のような一兵卒よりも二ホン国の事を知らないと見える。やはりカイオス様の仰っていたように情報は上に行くほど簡素化され、都合の良いように捻じ曲げられるのだな。まあいい。もう問答する気はない、動かないでいただこう。」

 

「…貴様ら、後悔するぞ。」

 

行政大会議場はクーデター派により、無血制圧された。

 

「後は皇帝陛下と皇族だけか…。後は頼みましたよ、カイオス様。」

 

 

同時刻、パーパルディア皇国 パラディス城

 

 

「カイオスよ、これは一体どういうつもりだ?」

 

パーパルディア皇国皇帝ルディアスは、静かに目前に立つカイオスを睨みつける。

ルディアスの横にはクーデター派の軍人が彼を囲むように立つ。

 

「皇帝陛下、皇国の、この国に生きる民の為に、しばし動かないで頂きたい。」

 

カイオスは自らの周りを武装した兵が囲んでいても、なお皇帝としての風格を失わないルディアスの目を見つめながら話す。

 

「革命か。お前がこのような事をするとはな。だがこれからこの国をどうするのだ?まさか無計画ではあるまい。」

 

「私は極秘に二ホン国との交渉を行ってきました。非常に厳しい条件を叩きつけられましたが、この国に生きる民の為に、全てを呑む覚悟を私は心に決めました。」

 

「…それで、貴様は我をどうするつもりだ。」

 

「皇帝陛下は今後政治に口を出す事は金輪際許されません。ニホン国との講和会議の後、新たに生まれ変わる我が国の保護の下、静かに余生を送ってもらいます。不満はあると思いますがこれが精一杯でした。」

 

ルディアスは、しばし沈黙すると口を開く。

 

「…我の扱いについては分かった。ではレミールは、他の皇族はどうなる?」

 

「交渉の結果、他の皇族の方々に関しては一生政治にかかわらないという条件の下、引き続き我が国での生活をすることを許されました。ですがレミール様については二ホン国側が必ず引き渡す様に言及してきております。レミール様の二ホン国への引き渡しは免れる事は出来ません。」

 

「…そうか。」

 

皇帝ルディアスとカイオスが話をしている最中、扉が開かれクロムが数人の軍人達ともに部屋に入って来た。

クロムは一礼を、軍人達は敬礼を皇帝ルディアスとカイオスにすると報告を始める。

 

「カイオス様、ポクトアール提督の部隊が皇都にいる全ての皇族の身柄を確保しました。また、ゼクト十兵長の部隊も無事に各行政機関を制圧したとの事です。」

 

「そうか、すべて上手くいったな…。ところでクロム、その顔の傷はなんだ?」

 

「あ、これですか…。いえ、レミール様の確保の時に彼女が物凄く暴れまして…。偶々通りかかった元海軍軍人であるシルガイアのお陰で何とかなりましたが、下手をすれば取り逃がすところでした。」

 

「な、なるほど…。そのシルガイアとかいう元海兵には、十分な褒美をやらなければな…。さて、この反乱の最後の行動に移らなければな。今すぐに国旗を降ろし白旗に交換するのだ。早くしなければ二ホン国艦隊の砲撃が大通りや門にも降り注ぐことになるぞ。」

 

「了解しました。では、失礼します!!」

 

駆け足で出て行くクロムらを見ながら、ルディアスは考え事をしていた。

 

(まさか、我の代でこのパーパルディア皇国が戦争に敗れるとはな…。世界の制覇は、皇国にはあまりにも大きすぎる野望だったという事か…。)

 

日本、アルタラス王国とパーパルディア皇国との戦争が開戦してからちょうど一か月後のこの日、パーパルディア皇国運営の最高指導者は、皇帝ルディアスからカイオスへと移行した。

 

カイオスは直ちに日本政府に対し、クーデターはすべて上手くいった旨の報告を行い終戦の手続きを始めたい事を伝えた。

カイオスからの連絡を受け取った日本政府は、防衛軍とフィルアデス大陸解放軍に戦闘停止を発信したのだった。

 

 

後日、カイオスを中心として設立されたパーパルディア皇国暫定新政府は、全世界に対して日本とアルタラス王国、フィルアデス大陸解放軍に降伏する旨の声明を発表した。

 

それは、今まで第三文明圏の唯一の列強国として君臨してきたパーパルディア皇国の侵略と繁栄の時代の終わりを告げるものであったのだ。

 

 

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