作者のイーグルです。
まず最初に、パーパルディア皇国編完結を祝うコメントを多数頂きました。
言葉に出来ない程の嬉しい気持ちになりました。
本当にありがとうございました。
さて、今回より新たな章に突入します。
オリジナル要素がどんどん増えていく事になると思いますが、是非最後までお付き合いしてください。
それでは、どうぞご覧ください!!
神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス
この世界において誰もが認める世界最強の国、それが第一文明圏の盟主、列強神聖ミリシアル帝国である。
遥か昔から古の魔法帝国の遺跡を研究、解析し、強大な力を手にすることが出来た国である。
この長い歴史を持つ帝国の中で最も栄えており、「眠らない街」と呼ばれている帝都ルーンポリスの一角に帝国情報局が存在している。
その帝国情報局は今、この情報局に所属する全ての職員達が寝る暇も惜しんで仕事に取り組んでいた。
彼らがオーバーワークする羽目になった理由は、主に二つある。
一つは、「レイフォルの滅亡」である。
昨年、第二文明圏外に突如として現れた第八帝国こと「グラ・バルカス帝国」によって第二文明圏の列強国レイフォルとレイフォルの保護国パガンダ王国が滅ぼされるという、歴史的出来事が発生する。
この出来事に帝国情報局は、大きな衝撃を受けることになる。
何故なら「文明圏外の国が列強国に勝つことは不可能である」というのがこの世界の常識であり、この常識が破られる事は有史以来一度もなかったのである。
だが、その有り得ない事が現実になってしまった。
この異常事態に帝国政府の上層部は情報局に対し、直ちにグラ・バルカス帝国の事を調査するように命じた。
ただグラ・バルカス帝国の調査については、グラ・バルカス帝国が閉鎖的である事が原因であまり進んでいないのが現状である。
現時点で彼らが把握しているグラ・バルカス帝国の情報は、
・ムーと同じ科学技術立国である。
・グレード・アトラスターという名の戦艦を保有し、40㎝を超える口径の主砲を装備していると予測されている。
・ムーの物より優れた性能の飛行機械を運用している。
などである。
この僅かな情報だけでも、情報局に勤めている面々にはグラ・バルカス帝国が確かな技術力を持っている事を予想することが出来た。
そればかりか下手をすると、一部の技術に関してはミリシアルの物より優れている可能性すら出てきた事で情報局に努めている職員は、気を休める事すら出来ない状況だった。
そして二つ目が第三文明圏から届いた衝撃的なニュースであった。
「なに!?パーパルディア皇国が敗北した!?それは本当か!?」
「ムーの報道機関も繰り返し報道している事から間違いないようです。最新の情報によると、つい先日行われた「アマテラス終戦条約調印式」によってパーパルディア皇国は国名をエストシラント共和国に変更し、国政も大きく変わる事となったとの事です。」
「そんな馬鹿な!我が国と比較すると幾分劣っているとはいえ、列強であるパーパルディア皇国が文明圏外の国に、それも一か月で敗北するなどあってはならない事だぞ!?…それで、パーパルディア皇国に勝利した国、確か二ホン国だったか?この国について何か分かった事はあるか?」
「申し訳ありません、此方も余り情報を得ることが出来ていません。何分、第三文明圏という辺境の地の更に端にある国の為なかなか情報が届かないのです。現時点で判明しているのは「入国検査が他の国と比較にならない程、厳重に行われている事」、「ムー、グラ・バルカス帝国と同じ科学技術国である事」、「回転砲塔を持った戦艦を少なくとも5隻保有している事」、「二ホン国の各地に点在する都市は、文明国どころか下手な列強国よりも発展している」などです。」
「…そうか、兎に角グラ・バルカス帝国、二ホン国の情報は可能な限り集めてくれ。噂話などの真偽性が低い情報もだ。」
「はい、了解しました。」
局員が部屋から退出したのを確認すると、この情報局のトップであるアルネウスは手元の資料に視線を向けながら小さく呟く。
「グラ・バルカス帝国に、二ホン国か…。一体なぜこんな国が文明圏外に突然現れたのだ…。」
資料をペラペラと捲りながら、考えを巡らすアルネウス。
彼らの苦悩は途切れる事がない…。
日本 東京
一方此方はパーパルディア皇国関連の厄介事が解決し、ようやく一息つくことが出来た日本。
「争い事は終わった。さあ、これから平和を謳歌しよう!」
と、地球と同じような平和を楽しもうとした矢先、第三文明圏の北側にある国トーパ王国から、日本に再び厄介事が舞い込んできた。
しかも、その内容がかなり「異世界ファンタジー」感を感じるものであったのだ。
「魔王が復活したから撃破する為に軍を送ってほしい、か…。正しく、異世界だな。」
「ドラゴン、エルフ、ドワーフ、魔法と地球では創作物上の存在がごく当たり前に存在にいる世界なので、どこかに魔王と呼ばれる存在がいるのではないかと考えていましたが、まさか本当に存在しているとは夢にも思いませんでした。」
「ああ、全くだ。しかも人を喰う化け物とも聞いている。そんな怪物を大陸に野放しにするわけにはいかん。幸いな事に相手は魔物、つまり害獣退治という形で容易に軍事力を派遣することが出来る。」
「はい、その通りです。…しかし大臣、これは一体なんです?」
予想外の事態に、苦笑いをしながら話をしている厳田に一人の職員がパッドの画面を見せる。
そのパッドの画面には、魔王討伐作戦の名前と魔王を討伐する為に派遣する防衛軍部隊の指揮官の名前が表示されていた。
それぞれ、
魔王討伐作戦「オペレーションモモタロウ」
・陸上防衛軍トーパ王国特別派遣部隊隊長 百田 太郎
・同部隊分隊長 城島 仁史
・同部隊分隊長 猿渡 学
・同部隊分隊長 犬神 剛
である。
作戦名や部隊長、分隊長の名前からして誰が見てもあの日本人なら誰でも知っている有名な昔話を連想させるものである。
「これ完全に遊んでますよね、大臣?」
「いや、ただのゲン担ぎだ。この世界の人々曰く「魔王は二本の角が額から生えている」との事だ。つまり、奴は鬼そのものと言っても過言ではない。鬼を退治するのは桃太郎とそのお供の仕事だろう?」
生真面目な厳田が冗談じみた事を口にした事で、会議室の面々は全員が笑みを浮かべてしまった。
少しばかり笑った後、熱い緑茶を一口飲んだ厳田は、普段の真剣な声で話を再開する。
「さて、此処からはとても重要な事を話す。本作戦において敵軍の戦力がどれほどのものかを判断する為の情報が無い。この件について総理や他の大臣と話し合った結果、ありとあらゆる事態を想定して部隊や兵器を編成する事が決定した。本作戦での主力は15式戦車を中心とした機甲部隊だ。だがこれだけでは強力な敵戦力が出現した時、何処まで対応できるか分からない。そこでだ、本作戦の切り札としてPTX-001を投入する事にした。」
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
「Project Tを実戦に投入するのか…。」
「ですが大臣!PTX-001はまだ武装が完成しておりません!!いわば未完成の状態です!!そんな不完全なモノを実戦に投入するなど、愚の骨頂ですぞ!?」
「現在の陸上防衛軍の保有する兵器で最も強力なのは、PTX-001だ。確かにPTX-001の武装は完成していない。だが完成していないのは「外付け武装」であり、「内蔵武装」は既に完成しているし、何なら射撃試験まで行っている。それにPTX-001本体の頑丈さは戦艦並みだ。多少の攻撃では問題にはならん。」
「ですが…。」
厳田の発言に全員が驚愕し、一部の職員がそれに反対するが厳田は陸上防衛軍の火力不足になる可能性を指摘し、PTX-001の投入の意見を変えなかった。
「ではもし火力不足になったらどうするのだ?海からの支援はあまり期待できないぞ。魔王軍の侵攻予想ルートは海から遠く離れているから戦艦からの艦砲射撃は不可能だ、艦対地ミサイルや艦対艦ミサイルでは弾薬が不足する可能性が高い。空軍も海軍ほどの火力は、「まだ」持っていないぞ。」
「航空防衛軍の天神ならば、十分な火力を提供する事が出来ます。」
「馬鹿野郎!天神は戦略爆撃機だぞ!!今回の作戦は一応害獣退治なんだ。害獣退治に戦略爆撃機なんて代物使ったら、国民から色々と突っ込まれるぞ。」
「ならアークバードを使いましょう!あれに搭載されている光学兵器ならかなりの火力が出ます!」
「無理だ。アークバードは現在硫黄島にてオーバーホール中で動かせない。」
「なんてタイミングだ。こんな肝心な時にアークバードが使えないなんて…。」
「私だってアークバードが使えるのならばアークバードに任せるさ。だがアークバードは点検の為に動かせない。となれば、たとえ試験中の兵器でも動かすのもやむを得ないという判断に至ったというわけだ。」
「…分かりました、PTX-001の実戦投入を私は支持します。」
激しい討論の末、最終的に投入反対派が折れ、PTX-001の二号機を投入する事に決まった。
因みに、日本の守護神こと天照型戦艦を投入する話が出なかったのは三隻ともそれぞれ重要な任務があり、その任務から外すことが出来なかった為である。
一番艦天照はアルタラス王国周辺にてフィルアデス大陸の監視の任務を行っており、二番艦須佐之男は新兵の訓練中で日本近海から動けず、三番艦八咫烏は日本海上防衛軍総旗艦の任で同じく日本近海から離れることが出来ないのだ。
更に言うのであれば、天照型の火力は害獣駆除には余りにも過剰であり、本作戦には適さないと判断されたのも大きかった。
さて此処で唐突に、且つ大きく脱線することになるが、今回救援要請を出して来たトーパ王国とは何か?そしていつ日本と接触したのかを簡単に説明させてもらう。
トーパ王国はフィルアデス大陸の北東「魔物大陸」という別名を持っている大陸、グラメウス大陸に繋がる細い地峡の中央部に位置する文明圏外国である。
この国はパーパルディア皇国が第三文明圏の覇権を握っていた時代でも、フィルアデス大陸で独立していた珍しい国でもある。
何故この国がパーパルディア皇国に攻め滅ぼされなかったのかと言うと、この国はグラメウス大陸の魔物をフィルアデス大陸に入らせない為の、いわば「門番」としての役割を担っており、いくら傍若無人なパーパルディア皇国であったとしても神話や伝説で語られる強力な魔物からこの大陸を守っている国に対して、余り無礼を働くことが出来なかったのである。
そんな特殊な経緯を持つトーパ王国が日本と接触したのは日本、アルタラス王国とパーパルディア皇国との間で起きた戦争「フィルアデス大陸解放戦争」の最中の事である。
日本の発展ぶりをその目で見たトーパ王国の大使達は最も自国の為になる事、つまり日本との国交の開設と各種同盟と条約の調印を迅速に行った。
この行動は結果として、魔王の復活という前代未聞の事態に最高の形で機能することになったのである。
因みにトーパ王国の領海で港の一角に山が出来る程の大量のカニが取れる事が発覚すると農林水産省の職員や漁業関係、飲食業、更にはカニをこよなく愛する多くの人々が様々なメディア、特にインターネットの掲示板で大歓声を上げる事になったのはまた別の話である。
閑話休題
この会議から一週間後、全ての準備が終わった魔王討伐部隊は日本から北端の地へと出発していった。
魔王討伐作戦「オペレーションモモタロウ」に参加する戦力については下に記載したとおりである。
15式戦車 八両
09式装甲戦闘車 十二両
高機動車 十両
PTX-001 一機
兵員 約百名
強襲揚陸艦はしだて、おおすみに分乗した魔王討伐軍とPTX-001を積載した専用船が港から出港するのを見送った後、厳田は防衛省に足早に戻ると人払いをした後にとある場所に電話を掛ける。
「…ああ私だ。単刀直入に聞く、「特一号艦」は動かせるのかね?…なるほど分かった。では命令を伝える。直ちに出港し、此方が指定するポイントに向かってくれ。…そうだ、誰にも気づかれる事無く行動してくれ。…ああ、頼むぞ。」
電話を終え、受話器を静かに戻すと厳田は窓の外を見ながら呟く。
「此方が打てる手はすべて打った…。だから一人も欠ける事もなく帰ってこいよ…。害獣退治などで殉職したら此方とて遣り切れないからな…。」
用語説明
09式装甲戦闘車
全長 9m
全幅 3.5m
全高 2.5m
重量 30トン
乗員 2名+兵員8名
主兵装 35㎜機関砲
副兵装 対戦車誘導噴進弾発射器 二基
7.7mm機銃
最高速度 90km
陸上防衛軍で長年運用していた先代装甲戦闘車の代替えとして、開発された装甲戦闘車。
15式戦車に採用している自動化システムを先行採用し、少人数での運用を可能にした。
また、最高速度も15式と同じにすることで混成運用を容易にする事にも成功していた。
計画当時、主兵装により大口径の機関砲にする予定であったが、兵站の都合から海軍艦艇に採用されている35㎜近接防御火器と同じ機関砲を採用することになった。