日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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魔王討伐編-04

トーパ王国 魔王支配圏

 

「グヌヌ・・・。おのれ、下等な人間どもが!!」

 

トーパ王国の城塞都市トルメスの郊外にある小高い丘の上で、魔王ノスグーラは自らの魔法で作り出した玉座の肘置きを怒りに任せて叩いていた。

恨めしい勇者一行と彼らに協力していた異界の軍勢に受けた傷を、長い年月をかけて完治し、封印を復活した魔法で破壊し、人間の国に攻め込み幾つかの拠点を落とすまでは順調其の物だった。

 

ところが、人間がトルメスと呼ぶ都市を攻め落としに掛かってから人類国制圧計画は大きく狂うことになった。

 

敵の軍隊の練度としぶとさが魔王の想定以上だった事、自身の魔力の回復の為に食すつもりだった人類を中々捕らえることが出来なかった事など起きたが、時間を掛ければ解決すると、ノスグーラはつい先ほどまではそう考えていた。

 

だがしかし、魔王ノスグーラの下に凶報が走る。

自分の腹心であるマラストラスが行方不明になったばかりか、その強靭さから敵味方共に名の知れた存在であるレッドオーガとブルーオーガが二人が指揮していた魔物の群れもろとも討ち取られたというのだ。

 

「何故だ、何故こんな事に・・・。まさか、あの忌々しい太陽神の使いが再び現れたというのか!?」

 

偉大なる魔法帝国によって生み出された圧倒的な力を持つ自分が唯一敗走を余儀なくされた、異界からやって来た「太陽神の使い」と呼ばれる軍勢が、再びこの世に現れた。

ノスグーラは凶報と現状、そして昼間何度も響き渡った轟音からそう判断した。

 

「今の戦力では奴等に太刀打ちできない。仕方がない、本当は人間共の列強国とやらに使うつもりだったが、切り札を切るとするか。」

 

切り札を使う事を決断したノスグーラは玉座から立ち上がると、魔力を一点に集中し、大規模な魔導の発動の準備を始めた。

 

 

翌日、トルメス城

 

市民の救出と三体の伝説上の魔物を討伐する事に成功した日本陸上防衛軍は、駐留軍団長のアジズの好意で城の貴賓室を借り、そこで夜を明かす事となった。

 

「・・・ふう、まさか害獣退治の任でこんな豪華な部屋で寝泊まりする事が出来るとは、夢にも思っていなかったぞ・・・。」

 

百田は身嗜みを整えながら、トルメス城の会議室に移動していた。

 

今日の話し合いで、どの様に魔王ノスグーラに攻撃を加え、これを撃破するのかを決定する予定なのだ。

だが、今日の話し合いの予定は突如として町の外から響いてきた轟音によって取り消される事となった。

 

「ん?なんだ、何が起きた!?」

 

「隊長!昨日奪還した北門に、魔王が岩の巨人を伴って攻めてきました!」

 

「何!?その巨人の詳細は?」

 

「巨人の名前は「ゴーレム」。ゴーレムの体長は20メートル弱、数は確認されたものだけでも20体以上いるとの事です!!」

 

「クソ!急いで北門に向かうぞ!急げ!!」

 

「了解!!」

 

走りながら装備を身に付け、戦車や装甲戦闘車に乗り込むと今も轟音が鳴り響く北門の方向へと急ぐ。

その最中、ふととある事を思い出した百田は、通信を担当している隊員に話し掛ける。

 

「通信員、港の特務運搬船に「PTX-001」の起動命令を出してくれ。」

 

「「PTX-001」の起動命令ですか?」

 

「ああ、そうだ。もしかすると、アレが必要となる可能性がある。戦闘可能状態で待機させておくに越した事は無い。」

 

「了解です。」

 

 

トルメス北門付近

 

日本陸上防衛軍が救援に向かっている北門では、北門を警備していたトーパ王国トルメス駐留軍が大量のゴブリンと20体程の巨大ゴーレムの群れに大苦戦していた。

 

「くそったれ!!昨日のアレがかわいく思える程の魔物の大群だぜ!!」

 

「愚痴言ってる暇があったら、黙ってゴブリンを叩き落とせ!!」

 

「分かってるって!!そっちこそ、あのデカ物何とかしてくれよ!!」

 

「魔導士の魔法が効かないゴーレム相手に、弓矢が効くわけが無いだろ!!」

 

トルメスの街を囲む城壁の上では、モアとガイが大声で愚痴を言いながら魔物の大群の相手をしていた。

北門周辺にいた兵士は合計500人ほどで、全員が優秀な腕を持つ精鋭の兵士だったが、総数一万近いゴブリンと20体程のゴーレムの相手をするのには、質も量も全く足りていなかった。

それに加えて、さらに厄介なのがこの大群の奥にいた。

 

「と言うか、この大群を片付ける事が出来たとしても、どうやって奥にいる魔王の相手をすればいいんだよ!!」

 

「知るか!?そんな事、私に聞かないでくれ!!」

 

「ああ!!もう!!早く来てくれ!!モモタ隊長、キジマの旦那~~~!!!」

 

そんなガイの叫びのような願いが天に届いたのかだろうか?

今にも崩れ落ちそうになっていた北門の大鉄扉を群がっていた魔物ごと文字通り吹き飛ばしながら、二本の角を持つ陸の王者が城壁の外に飛び出して来た。

 

「おっ!!アレは、二ホン国軍の「二本ヅノ」じゃないか!?」

 

「ヒトゴー式センシャが来てくれたか!?アイツなら一騎当千だ!!」

 

モアの言葉通り、城壁の外に出た15式戦車はその自慢の快足で雪原を走り抜けながら、同じく自慢の二門の155㎜砲をゴブリンの大群やゴーレムへと遠慮なくぶっ放した。

一度砲口に火の花が咲けば、ゴブリンが宙を舞い、ゴーレムはただの岩石へと戻っていく。

自分達が大苦戦を強いていた相手が、手も足も出ずに一方的に蹴散らされていく様子は、トーパ王国トルメス駐留軍の面々にとっては最高の光景であり、城壁の彼方此方から大歓声が上がっていた。

 

一方、この日本陸上防衛軍による虐殺ショーに不愉快に感じている者も居た。

 

「グヌヌ、姿形こそ違えどあれは間違いなく太陽神の使いが使役していた鉄竜!!やはり、奴らも再びこの地に、この世界にやって来ていたというのか!?だが、此処で貴様らも終わりだ!!来い、エンシェントカイザーゴーレムよ!!」

 

ノスグーラが指を鳴らすと、ノスグーラの目前の地面が突如として盛り上がり、巨大な人型へと変化していった。

僅か数秒の後、大きな土埃の中から明らかに先程のゴーレムの二倍の巨体を持つ、特大のゴーレムが現れた。

そのゴーレムに、魔王ノスグーラは満足げな表情を浮かべながら、新たな命令をゴーレムに与える。

 

「ハハハハハ!!素晴らしい、素晴らしいぞ!!さあ、エンシェントカイザーゴーレムよ!!あの忌々しい太陽神の使いの鉄竜を蹴散らすのだ!!」

 

主からの命令を受けた巨大なゴーレムは、ゆっくりと足を動かしながらトルメスの街へと向かい始めた。

 

この目を疑う光景を全てその目で見ていたトーパ王国トルメス駐留軍、そして日本陸上防衛軍は完全に氷像の様に固まってしまっていた。

 

「おい・・・、オイオイオイオイ!!!!!オイ!?!?なんじゃありゃーーーー!!!」

 

「でででで、デケェ!?一体何メートルあんだよ、あれ!?」

 

「少なくともさっきの奴の二倍はあるぞ!?」

 

「ってことは・・・・、最低でも体長40メートル!?ウッソだっろ、おい!?」

 

「あんな奴にコイツの砲が効くのか!?」

 

数秒後、日本陸上防衛軍は何とか氷像状態を解除することが出来たが、今度は阿鼻叫喚の声が部隊内を満たした。

それを沈めたのは、隊長である百田の怒鳴り声だった。

 

「全員落ち着け!!民間人なら兎も角、俺たち軍人が敵前で慌ててどうする!?今俺達が動かなかなければ、トルメスに住む多くの住民が命を落とすことになる!?それにあの特大のゴーレムは、魔王の切り札らしい。今の今までアレを出してこなかったのが、その証拠だ。アイツさえ撃破すれば、奴の手札は切れたも同然だ!!総員奮起せよ!!ここが正念場だ!!・・・奴を、超巨大ゴーレムを討伐する!!各車、各員散開せよ!!」

 

この百田の言葉に、冷静さを失っていた防衛軍人達は我を取り戻すと、すぐさま行動に移った。

街へと向かって歩くエンシェントカイザーゴーレムの左右に展開した15式戦車は、砲塔をゴーレムに向けると一斉に発砲した。

合計16門の155㎜砲から発射された砲弾は、寸分狂わずにエンシェントカイザーゴーレムへと吸い込まれていった。

轟音と共に岩石が崩れ、雪と土埃が巻き上がる光景に誰もがエンシェントカイザーゴーレムの撃破を想像した。

だがしかし、その希望ははかなくも崩れ去る事となった。

 

「き、効いてない!?自走砲クラスの砲弾を16発も喰らったというのに!?」

 

「いや、効いてはいる。効いてはいるが、奴の巨体のせいでまともなダメージになっていない!」

 

「それだけではないようですよ、隊長!アイツ、周りの岩石を吸い上げてダメージを回復しています!!このままではじり貧ですよ!?」

 

目の前の絶望的な光景に悲鳴を上げる防衛軍人達。

だが、百田は笑みを浮かべると無線機を手に取る。

 

「戦車、装甲車はこのまま奴への攻撃を続行。奴を攪乱してくれ。」

 

「しかし、それでは決め手に欠けます!」

 

「落ち着け、誰が戦車で奴を撃破すると言った?特務運搬船に連絡を入れてくれ。」

 

一端言葉を区切ると、百田はエンシェントカイザーゴーレムを睨みながら力強く話す。

 

「奴が切り札を切ったのならば、此方も切り札を切るだけだ!!「PTX-001」の出撃を要請する!!」

 

 

数分前、特務運搬船内

 

一人乗り兵器としては、世界最大の巨体を持つ「PTX-001」を運搬する為に建造された特務運搬船の一室では、専用のパイロットスーツに着替えた「PTX-001」二号機専属パイロットである竹中相馬が、部屋に備え付けられているベンチで不貞腐れていた。

 

「ちぇ、上の命令でこんな寒い所に来たというのに、ずっとここで待機かよ・・・。ああ~、なんか強敵が現れないかな~~~。」

 

「物騒な事を言わないでください、少尉。「PTX-001」が出ない事は良い事なんですから。」

 

「だけどな~~~。」

 

偶々入って来た整備兵にお咎めを受け、更に不満が募る相馬。

だが、その不満感は直ぐに消えることになる。

 

突然、船全体に緊急事態を告げるサイレンが鳴り響いたのだ。

 

「緊急事態発生!!繰り返す緊急事態発生!!トルメス近郊にて、40メートル級巨人出現!現地部隊より「PTX-001」の出撃要請が来ました!パイロットは、直ちに機体に搭乗して下さい!!繰り返します・・・」

 

「・・・少尉?」

 

「俺のせいじゃねえよ!!」

 

ジト目を向ける整備兵に言い返しながら、相馬は「PTX-001」のコックピットへと走る。

相馬は「PTX-001」の巨体に相反して狭いコックピットのシートに座ると、先程までのふざけた態度が演技だったかの様に、真剣な表情でコックピット内の計器を手早く確認し、スイッチやレバーを操作し「PTX-001」を目覚めさせる。

 

「此方α2、メインジェネレーターの起動を完了。いつでも出れます。」

 

「了解した、これより運搬シーケンスを開始する。α2、「PTX-001」を直立させてください。」

 

「了解、α2これより起き上がります。無人運搬機の準備、お願いします。」

 

艦橋と連絡を取りながら、相馬は「PTX-001」の巨体を慎重に操る。

新開発された画期的かつ革新的なメインジェネレーターが発生させた莫大なエネルギーを受けて、機体各所のモーターが唸り声をあげながら「PTX-001」を直立させる。

 

「此方α2、直立完了。運搬用アタッチメント展開します。」

 

「了解、これより無人運搬機のアンカーを接続させます。」

 

特務運搬船の上空で待機していた四機の無人運搬機は、機体の中央部から特殊合金製のケーブルを伸ばすと、「PTX-001」の既定の接合部に接続させる。

 

「此方α2、アンカーの接続を確認した。出撃許可願います。」

 

「此方艦橋、「PTX-001」の出撃を許可します。既に味方部隊が例の超巨大巨人と交戦中です。速やかに現場に急行してください。」

 

「少尉!「PTX-001」はトライアル最中の試作機だ!決して無理をするなよ!」

 

「・・・心配しないで下さい。自分はまだ死ぬつもりは更々ありません。絶対に帰ってきます!!α2、「PTX-001」出撃します!!」

 

掛け声と共に相馬がコックピット内のスティック式のコントローラーを操作すると、四機の無人運搬機が雄叫びを上げながら「PTX-001」の巨体を空中に浮かび上がらせると、その巨体をトルメスの街へと運んでいった。

 

 

20分後、トルメス郊外

 

城塞都市トルメスの北門付近では、15式戦車と09式装甲戦闘車がエンジンを限界寸前まで回し、砲身から発砲炎が絶える事無く、雪原を照らす。

だが、普通の兵器ならすでに跡形もなく消し飛んでしまう程の攻撃を加えても、なお目の前の岩塊の巨人を倒す事は出来なかった。

 

「参ったなぁ・・・。あのゴーレム、巨体由来の高耐久に加えて、あの再生能力が非常に厄介だ。此方が与えたダメージ以上の速度で回復されちゃあ、15式ではほとんど打つ手がないぞ。」

 

「のんきに言っている場合か、イヌガミの旦那!?早い事あのゴーレムを倒さないと、俺達皆死ぬ事になるんだぞ!?」

 

城壁の上で異形の大型スナイパーライフルを手に持った犬神の緊張感の無い声に、ガイが思わず突っ込む。

トーパ王国兵にとって一対多の状況でも無双する15式は、正しく無敵の象徴であった。

その無敵の象徴が、一体のゴーレム相手に苦戦を強いている。

この光景は、極限状態のトーパ王国兵の心を折るには十分だったらしく、あちこちで俯き諦めの表情を浮かべていた。

だが、犬神は全く動じず、時々南の空に視線を移しながら、目の前の死闘を落ち着いて観察していた。

 

「・・・・・なるほど、あのゴーレム、回復能力はすさまじいが回復中は行動がかなり鈍くなるのか。表面を削られた程度でアレだ。ひょっとすると、手足の欠損レベルの大ダメージを受けた時には、完全に動くことが出来なくなるかもしれないな。」

 

「だけど、その状態をどうやって作り出すんだ?あの「二本ヅノ」、二ホン国の切り札なんだろ?切り札が効かない相手にどう対応するんだよ?」

 

「フフッ、切り札ですか・・・。ガイさん、我々、陸上防衛軍トーパ王国特別派遣部隊は切り札を一度も戦場に投入していないですよ・・・。」

 

「切り札を切っていない?どういう事だよ、いn」

 

南を見ながら、小さく笑う犬神に疑問を感じたガイの頭上を突然何かが甲高い音と共に通り過ぎた。

新種の鳥でも通り過ぎたのかと考えた次の瞬間、ガイは顎が外れたかのような大口を開けて動けなくなってしまった。

 

何故なら、何故なら・・・。

 

ガイの目前に、今日一番の爆音を響かせながら、エンシェントカイザーゴーレムよりも巨大な鋼鉄の巨人が降り立ったからだ。

 

「・・・我が国には「目には目を、歯には歯を」という言葉があります。この言葉は、「受けた害に対して、同じ程度の仕打ちをもって報いる」という意味があります。まあ、要するにやられたらやられた分だけやり返すという事です。そう、つまり・・・・。」

 

一瞬にして静まりかえった戦場を見下ろしながら、犬神は大声で宣言する様に叫ぶ。

 

「目には目を!歯には歯を!!巨人には!!!巨人をぶつけるんだよ!!!!」

 

『「PTX-001」バラム、戦闘モード起動!!』

 

 

「PTX-001 戦術歩行要塞 バラム」

 

長い年月と幾つもの壁を乗り越え、この世に誕生した鋼鉄の巨人が今、異界の雪原に降り立った・・・。

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