硫黄島第一大型艦用埠頭
日本最大の工廠を有する硫黄島の軍港には、実質天照型専用の設備となっている巨大なドックや係留するための巨大な埠頭が整備されている。
上記の通り、普段は天照型戦艦以外は滅多に使用しないこれらの設備だが、今日ここに停泊しているのは、天照型とは全く違う造形の三隻の大型戦艦で流石に天照ほどの大きさではないが、三隻とも現状海上防衛軍の主要戦力として活動しているふそう型よりも巨大な戦闘艦である。
この三隻の中で特に目を引くのが、中央に停泊している戦艦だ。
世界的に見てもかなり珍しいトリマラン型の船体は、ふそう型の1.6倍にあたる640mという規格外の巨体であり、その巨体に見合った武装を施され、その砲口は水平線を力強く睨みいかなる障害も打ち砕くという意思をヒシヒシと感じさせる。
この巨艦の両側を守る様に停泊する二隻の戦艦も、全長450mの巨大艦であり中央の戦艦に負けず劣らずの威圧感を放っていた。
この三隻はこの硫黄島で極秘に建造され、誰にも知られずにひっそりと就役する予定だったが、艤装作業中に日本が異世界に転移するという前代未聞の事態が発生したことで、この三隻の運命は大きく変わる事となった。
地球とは全く違う武力を用いた恐喝まがいの外交、侵攻し植民地化し資源を根こそぎ持っていく帝国主義が横行するこの世界において、軍事力の誇示を全くしないのは流石にまずいという結論を政府は出した。
そこで白羽の矢が立ったのが、硫黄島で秘密裏に建造されていた三隻の新型戦艦だった。
最新の技術を用いて建造された三隻の就役式を大々的に執り行う事で、世界に日本の技術力を見せつけ日本や同盟国への侵略の脅威を少しでも下げる。
その為に、身内のみで簡素に執り行われた進水式とは雲泥の差の就役式が執り行われる事となったのだ。
そんな政治的思惑のある就役式の場には各国の外交官が招かれており、その中には日本との話し合いのために来日したばかりのムー交渉団もいた。
交渉団の一員として来日したムーの若き秀才であるマイラスは、案内された席から身を乗り出し到着直後に購入した使い捨てカメラのシャッターを切りながら、目の前の巨艦の考察をしていた。
(技術研修や兵器購入の交渉の為に再び来日してみれば、まさか二ホン国の最新鋭戦艦の就役式に参加する事が出来るとは!俺は、とんでもない豪運の持ち主だぞ!!・・・しかし、三隻ともかなりデカいな。おまけに俺の見立てが正しければ、装備しているのは間違いなくふそう型の主砲の改良型だ。という事は、あの三隻だけで我がムー海軍主力艦隊の総火力に匹敵してもおかしくはないぞ!!だがそれ以上に・・・)
カメラのシャッターを切るのをやめ、視線を巨艦らの艦尾へと向ける。
日本が保有する現役の戦艦なら、ヘリポートと艦内に格納する為のエレベーターが装備されているはずの艦尾には、ヘリポートの代わりに他の艦には無いモノが装備されていた。
(なんで、戦艦に翼や二ホン国の戦闘機のエンジンノズルに似た構造物が取り付けられているんだ!?特にあの中央の艦だ!艦の三分の一が推進系なんじゃないか!?二ホン国は、戦艦を空に飛ばそうとでもしているのか!?)
「・・・ラス君、マイラス君!!」
「・・・はっ!?ムーゲ殿、何かありましたか?」
「既に式典は始まっているんだぞ!?技術士官として、二ホン国の新型戦艦の性能を考察してしまうのは理解しているが、今は式典に集中してくれないか?」
「す、すみません・・・・。」
この交渉団の外交官の一人であるムーゲに注意され、現実に意識を戻すマイラス。
マイラスが現実に戻ってきたタイミングで軍艦にとって重要な事の一つ、艦名の発表が行われようとしていた。
「・・・それでは、これより三隻の新型戦艦の艦名を発表します。艦名とは本来、進水式の時に命名される物なのです。ですが、この三隻の新型戦艦は複雑な事情により進水式は関係者のみの質素なものとなってしまいました。
なので、この場で改めて彼女らの艦名を発表させていただきます。では、厳田防衛大臣。艦名の発表をお願いします。」
今まで話してきた司会者の代わりに壇上に厳田が立つと、ピカピカと光り輝く三隻に対面すると力強く話し始める。
「それでは、艦名の発表を行います!まずは、BB-NX001と002の艦名を発表いたします。命名、BB-NX001をヴィント級一番艦「ヴィルベルヴィント」と命名する!!」
厳田の発表と共にヴィルベルヴィントの艦首に掛けられた幕が外され、カタカナで書かれた艦名が露わになると会場にどよめきが起こる。
「・・・ん?二ホン国人達は、何故あのような反応をしているのだ?いい響きの艦名ではないか?」
「ムーゲ殿、それは二ホン国海上防衛軍の命名規則と相反しているからですよ。」
「それはどういう事です?」
周りの様子に疑問を抱いたムーゲに、マイラスが日本の艦艇の命名規則の事を丁寧に教えていく。
「二ホン国の艦艇の艦名には規則があり、例えば航空機を運用する空母ならば「空想上の動物」を「ひらがな表記」する事が求められます。ヒリュウとかショウカクなどですね。タケミカズチやイザナミなど一部例外は存在しますが。」
「ふむ、なるほど・・・。では、戦艦にもそれがあるというわけだな?」
「はい、二ホン国の戦艦は「旧地名」が元となっており、例えば我が国に来航したエチゴは現在はニイガタ県と呼ばれている地域の旧地名です。唯こちらも、フソウを初めとした例外はあるようですが。」
正確に言うと旧地名ではなく旧国名が正しいのだが、それを説明する為には途方もない日本の歴史を説明しないといけないので、マイラスは旧地名と説明したのだ。
「ふむふむ・・・。では、ヴィルベルヴィントは?二ホン国のどの地域の旧名なのかね?」
「それが・・・、そもそも二ホン国の旧地名どころか二ホン国の言語ですらないようなのです。」
「なに?二ホン国の言語ではない?どういう事だ?」
マイラスとムーゲの周りには、二人の会話の内容が気になったムー交渉団の面々が集まり、二人の会話に聞き耳を立てていた。マイラスは、そんな周りの外交官にも見えるように見覚えのない地形の描かれた地図を取り出し、ある一点を指しながら話し続ける。
「これは我が国や二ホン国が元々存在していた世界、チキュウの世界地図です。今回の艦名に選ばれたヴィルベルヴィントは、私が指差している地域・・・。ヨーロッパと呼ばれる地域に存在するドイツと呼ばれる国の言語で意味は「つむじ風」だそうです。」
「そうか、チキュウの別の国の言語だったのか。だから、二ホン国人達はあんなに動揺していたのか。」
ムーゲらが日本人の反応に納得している間にBB-NX002の艦名の発表が行われ、BB-NX002は「シュトゥルムヴィント」と又もやドイツ語由来の艦名が名付けられ、日本人の動揺がさらに広がることになった。
因みに何故、この二隻の戦艦がドイツ語由来の艦名を付けられたのかと言うと、この二隻がそもそも「海上防衛軍の新型戦艦」としてではなく、「Project Nで開発された最新の装備を施した武装した実験船」として建造されたからなので、既存の命名規則が当てはまらず彼女らの特徴にあった艦名が与えられたのだ。
波乱万丈の就役式も最後を迎えようとしていた。
一際巨大な戦艦の映像が巨大なモニターに映し出される中、厳田が艦名の発表を行う。
「・・・命名、BB-SX001をふげん級戦艦「ふげん」と命名する!!」
一際巨大な大型艦の幕が取り外され、ふげんとひらがなで書かれた艦名が露わになり、一時を空けた後、大きな歓声が上がる。
「普賢」、それは普賢菩薩の略で、理知・慈悲をつかさどり、また延命の徳を備える釈迦 (しゃか) の右側に立つ脇侍の事であり、新たな技術を搭載し更なる明るい未来へと導き、その未来を守ってほしいという願いを込めて、この名が次世代型新型戦艦へと送られたのだ。
「ヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィント、そしてふげん。この三隻の新型戦艦は、我が国と我が国の同盟国に平和な明るい未来をもたらしてくれるでしょう!!」
厳田が力強く宣言し終えると、三隻の新型戦艦は大型軍艦とは思えない程の加速を式典参加者に見せながら大海原へと漕ぎ出していった。
此処で各艦の性能を、各国の戦艦と比較しながら紹介していく。
日本 海上防衛軍
ふそう型核融合炉搭載型戦艦
全長 390m
全幅 45m
喫水 12.6m
排水量 217060トン
機関 核融合炉(核融合炉二型、出力35万馬力)
推進器 タービン
最大速力 33ノット
巡行速力 18ノット
乗員 1300名
兵装
61㎝三連装砲 4基
228㎜AGS三連装砲 8基
12.7㎝単装速射砲 14基
20㎜三連装パルスレーザー砲 30基
35㎜近接防御火器 30基
VLS 128セル
艦載機 UAVF-11 6機
神聖ミリシアル帝国
ミスリル級魔導戦艦
全長 220m
全幅 28m
排水量 27000トン
機関 魔導機関(出力6万馬力)
最大速力 30ノット
巡行速力 14ノット
乗員 1500名
兵装
38㎝三連装魔導砲 2基
15㎝三連装魔導砲 1基
連装対空魔光砲 26基
ムー
ラ・カサミ級戦艦
全長 131m
全幅 23.2m
排水量 15140トン
機関 ディーゼル機関(出力15000馬力)
最大速力 18ノット
巡行速力 8ノット
乗員 890名
兵装 30.5㎝連装砲 2基
15.2㎝単装砲 14基
7.6㎝単装砲 10基
7.7㎜単装機銃 30基
ヴィルベルヴィント級超高速戦艦
全長 450m
全幅 55m
排水量 255000トン
機関 試製重力子機関N型(最大出力 推定100万馬力)
推進器 試製重力子スラスターN型
通常最大速力 180ノット
巡航速度 40ノット
乗員 500名
兵装 試製61㎝三連装複合砲 4基
試製20㎝三連装複合砲 2基
試製127㎜格納式連装パルスレーザー砲 26基
試製76㎜格納式四連装パルスレーザー砲 50基
35㎜近接防御火器 4基
七連装610㎜魚雷発射管 4基
艦首魚雷発射管 6基
艦尾魚雷発射管 4基
試製VLS 128セル
ふげん級超高速戦艦
全長 640m
全幅 90m
排水量 890200トン
機関 試製重力子機関S型(出力 測定不能)
推進器 試製重力子スラスターS型
通常最大速力 240ノット
巡航速度 40ノット
乗員 600名
兵装 試製61㎝三連装複合砲 5基
試製20㎝三連装複合砲 2基
試製格納式127㎜連装パルスレーザー砲 40基
試製格納式76㎜四連装パルスレーザー砲 74基
35㎜近接防御火器 4基
七連装610㎜魚雷発射管 4基
艦首魚雷発射管 8基
艦尾魚雷発射管 8基
試製VLS 256セル
試製十六連装陽電子誘導光線砲 4基
試製艦首軸線決戦砲 1基
書いておいて何なのだが・・・、一言言わせていただきたい。
いきなり本気出し過ぎではないか、日本海上防衛軍!?
各国の戦艦は疎か、現在の主力艦であるふそう型すら遥かに凌駕するバケモノ戦艦ではないか!?
下手な航空機以上の俊足に、天照の次点となる圧倒的な火力・・・。
最早チート兵器、いや兵器を超えた兵器、「超兵器」と名乗ってもよいのではないかと言うほどの、圧倒的な性能を持つのが彼女達なのだ。
とまあ、怪物的性能を持つ彼女達だが、それを生かす事が出来なければ唯の宝の持ち腐れである。
なので当然、集められたクルー達は海上防衛軍きっての精鋭達が集められていた。
特にふげんには、日本海上防衛軍の誇るエース達が乗艦していた。
そんなエース達を纏める艦長となったのは、幾つもの伝説を作り出したいそかぜ型護衛艦二番艦ゆきかぜの艦長を務めていた古代徹であった。
「全艦に告ぐ、これより本艦はヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィントと共に性能試験を行う。コイツの全力は未知数だ。艦内の全ての物資の固定を再確認せよ、いいか全部だぞ!?下手すると、ベッドや机が壁や天井に突き刺さることになるぞ!」
強い口調で指示を出すと、古代はマイクを定位置に戻し艦長席にドカッと深く座り込むと目の前で特徴的な舵輪を握っていた海上防衛軍の誇る操舵手の一人である、西本が古代に話し掛ける。
「艦長、コイツはいいフネですぜ。ゆきかぜと同じか、それ以上に素直に動いてくれる。このふげんなら、どんな変態軌道でも出来そうな気がしますぜ。・・・ですが、意外でしたね。」
「何がだ、西本?」
「何がってそりゃ、戦艦の艦長になるっていう話を何度も蹴ってゆきかぜの艦長を務め続けていた貴方が、何故急にこんな試作型戦艦の艦長を務める事になったのかですヨ。旧ゆきかぜクルーの間では、議論の嵐が吹き荒れ続けてますぜ。」
「俺が今まで戦艦の艦長を断り続けていたのは、俺の戦法に合わないからだ。確かにふそう型はいいフネだ。火力も装甲も速力もある。だが、加減速や舵の効きが護衛艦と比べるとかなり悪い。だから、俺はずっとゆきかぜの艦長をしていたんだ。」
「ってことは、このふげんは艦長の色眼鏡に適ったってことですかい?艦長にはこれ以上ない朗報ですが、ふげんお嬢様にとってはとんでもない凶報でしょうな?」
「おい、西本!?テメェ、どういう事だ!?」
艦長と操舵手の軽い度付き合い(なお、ゆきかぜでは日常であった)が起こりかけた時、ふげん艦内の物資の固定が終わったとの報告が入り、渋々拳を納めた古代は艦長席のマイクを再び手に取る。
「艦長の古代だ。これより、性能確認試験を行う。増速、速力40ノット。左砲戦用意!」
「了解!増速、40ノット!」
「機関、推進器、全て異常なし!いつでも全開で回せます!」
「火器管制システム、オンライン。・・・あれ?おい、ミカサネットワークシステムは起動したか!?」
「まだだ!クソ、システムの立ち上がりが遅い!戦術補佐システムとしては致命的だぞ、コレェ!?」
「まだシステムが最適化されていないんです!このミカサネットワークシステムには、自己最適化プログラムが組み込まれていて、経験値に基づいた各艦に合わせた最適化が自動的に行われるのですが、その肝心な経験値が全くないので兵装の制御システムの接続や制御に時間が掛かっているんです!」
開始時に少しばかりドタバタとしたもののその後は特に問題は起きず、ミカサネットワークシステムを生かした的確な砲撃や雷撃、更には新世代の艦船用兵器である光学兵器「重力子ビーム砲」を用いた射撃試験や、艦各所に取り付けられた制御スラスターを用いた高機動試験などを順調にこなしていった。
性能確認試験、最後に行われることになったのは「全力航行テスト」。
つまり今まで巡航速度で濁していた三隻が、機関を限界まで稼働させ本気で海上を突っ走る。
この世に生を受けてから一度も「全力疾走」をした事が無かった三隻が、遂にその枷を解き放つ時が来たのだ。
三隻の上空にはヘリやドローンが飛び回り、硫黄島のレーダサイトや各種センサーが三隻の超高速戦艦に向けられる。更には、超高空にメンテが終わったばかりのアークバードが自慢の光学機器を向けて今か今かと待ち構えていた。
「艦長、全ての準備が終わりました。いつでも全力航行可能です。」
「了解した。・・・外野の準備は終わっているのか!?」
「とっくにとうに終わっていますよ!それどころか早く走れとの催促の嵐ですよ!!」
「よ~~~し、じゃあ・・・。行くとするか!機関出力最大、最大戦速へ!!」
「了解!!ふげん、最大戦速!・・・さあ、お前の本気を見せてみろ、ふげん!!」
試製重力子機関が甲高い咆哮を上げながら莫大なエネルギーを生み出し、そのエネルギーを受け取った試製重力子スラスターが青白い炎を吹き出しながら、ふげんの巨体を一気に前へと押し出し始める。
巨大な水柱を上げながら加速していくふげんに、追いすがるようにヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィントも加速していく。
「50・・・、60・・・、70・・・、80・・・、凄い!加速度が全く衰えない!天照ですら、90ノット辺りで加速度が落ち始めるのに!!」
「そんだけ、速力に振っているんだよ!こいつらはな!?」
上空にいた低速ドローンを振り切り、ヘリコプターすら置き去りにしながらぐんぐん加速していく超高速戦艦。
現時点で最も速い艦船は天照型であり、その速力は120ノットである。
日本の守護神が一世紀もの間守り続けてきた最速記録を塗り替える時を、誰もが固唾をのんで見守る。
その時は遂に、そしてあっけなくやって来た。
「速力、110・・・、115・・・、120!!ふげん、120ノットを超えました!!」
「ヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィント、一秒遅れで120ノット超えを達成しました!!」
「おお!?遂に成し遂げたか!?それで三隻の様子はどうだ!?」
「未だに安定して、加速し続けています!!」
「よしよし、いけ!!そのまま、前人未到の速さまで突き進め!!ふげん!ヴィルベルヴィント!シュトゥルムヴィント!」
最速記録を塗り替え、その記録を更新し続けながら加速していく三隻の超戦艦。
だが、160ノットを超えたあたりでヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィントの両艦の加速度が落ち始め、ふげんとの距離が開き始めた。
このまま、離れていくのかと関係者以外をのぞいた誰もが思い始めたが、風の名を冠した二隻はまだ切り札を隠していた。
「ヴィルベルヴィント、艦尾装甲の展開を確認!!アサルトブースターを起動した模様!!」
「シュトゥルムヴィント、アサルトブースターに点火を確認!!通常最高速度である180ノットを超えます!!」
艦尾に備え付けられた試製重力子スラスターは普段は装甲で覆われており、普段はこの装甲版がスラスターを守る役割を果たしているのだが限界稼働時には、逆に排熱の邪魔となってしまうのだ。
そこで、スラスター周りの装甲を変形、展開し試製重力子スラスターを露出させるとともにスラスターに設けられたリミッターを全解除し、ありったけの加速を生み出す機能が「アサルトブースター」である。
切り札を切ったヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィントの二隻は、前を走っていたふげんに追いつき、追い抜かす。
「190・・・、195・・・、200!200ノットを突破しました!!」
「200ノット、時速に換算すると・・・・時速370km!!ハハッ、とても信じられん!!」
「210・・・、220・・・、未だ加速していきます!」
200ノットを超えてもなお加速し続けたヴィルベルヴィント、シュトゥルムヴィントの二隻だったが、再度加速度が落ちていき最終的に240ノット、時速に換算すると時速444㎞を記録した。
ヘリコプターは疎かムーのマリンより速く、ミリシアルのエルぺシオ3の巡航速度を超える速度で航行する450mの巨艦。
だが、試験は未だ終わっていなかった。
「機関長!アサルトブースター、起動!試製重力子機関のリミッター全解除!」
「了解!」
「西本、舵しっかり握れよ!こっからだぞ!!」
「任せてください!伊達に操舵手四天王と呼ばれていませんぜ!!」
「海上防衛軍一!とは、言わないのか?」
「流石の俺でも、八咫烏の操舵神の腕には敵いませんぜ!アサルトブースター点火まで、あと5秒!・・・3!2!1!点火!!」
ふげんの艦体各所に設置された試製重力子スラスターを覆っていた装甲が変形、展開した次の瞬間、想像を絶する轟音と共にふげんの船体が飛び跳ねるように前進していく。
天照に次ぐ巨大艦であるふげんが、その巨体を覆い隠すほどの水しぶきを上げながら高速航行する様は、見るもの全てを圧巻させるものだった。
「280・・・、285・・・、290・・・、295・・・、300!!艦長!本艦ただいま、300ノットを突破!!」
「二次大戦の戦闘機並みの速度か!!西本、まだ舵は利くか!?」
「ちょっとばかし過敏になっていますが、大丈夫です!」
「305・・・、310・・・、315・・・、317・・・、319・・・、320・・・。艦長、加速が止まりました。本艦の最高速度は、320ノットです!」
320ノット、時速に換算すると時速592㎞。
これがどれだけ恐ろしい事か分かるだろうか。
簡単に言うと、「現時点で全速力で疾走するふげんに追いつく事が出来る航空機は日本製航空機のみであり、それ以外の国の航空機では追いつく事が出来ない」という事だ。
ミリシアル帝国自慢のエルぺシオ3や第二文明圏で暴れまわっているグラ・バルカス帝国のアンタレス艦上戦闘機でさえ、ふげんに追いつく事は疎か並走する事さえ出来ないのだ。
更に恐ろしいのがふげんの火力、装甲は海上防衛軍第3位という事だ。
「最後の試験に取り掛かるぞ!取り舵一杯!全砲門を左舷へ!!」
「了解!全砲門を左舷へ!」
「サイドスラスター、起動!取り舵一杯、ヨーソロー!!」
最大速力を維持しながら船体を傾け、旋回を始めるふげん。
彼女の通常火器の中で最大の威力を発揮する61㎝砲が、海上に設置された標的に全て指向した次の瞬間、砲身内が青色に光り輝き始める。
「主砲、重力子砲・・・。撃ち方、はじめ!!」
「主砲、うちーかたはじめ!!」
砲術長が引き金を引くと15本の砲身から青色のビームが発射され、発射された青い光線は寸分狂わずに標的に向かい、的を完全に蒸発させた。
「目標に全弾命中!標的は蒸発しました!」
「よし、本艦の最大速力でも新型の火器管制システムはきちんと機能しているようだな。・・・性能確認試験の終了を宣言する。巡航速度まで減速した後、硫黄島に帰投する。」
「了解、アサルトブースター停止。減速用スラスター、エアブレーキ、起動。巡航速度まで減速します。」
巡航速度まで減速をしながら、硫黄島の方向へと転進する三隻の超高速戦艦。
いつの間にか空は夕暮れへと変化しており、青く輝く大海原と合わせて非常に美しい光景を生み出していた。
後日、三隻の超高速戦艦は防衛庁直轄の新設艦隊「第二特務戦隊」に所属する事となり、ふげんが初代旗艦に就く事となった。
後に幾つもの海戦に参加し、畏敬の念を込めて「音速戦隊」と呼ばれる事となるのだが、それはまた別の話・・・。
今回登場した超高速戦艦ふげんは、pixivで活動されている第零遊撃部隊様の「超高速巡洋戦艦 普賢型」にインスピレーションを受け、第零遊撃部隊様ご本人のご許可の元、本作に登場させる事となりました。
URLを後書きに貼っておきます。
「超高速巡洋戦艦 普賢型」https://www.pixiv.net/artworks/112952180
第零遊撃部隊様のURL https://www.pixiv.net/users/26464887