日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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つかの間の平和編-08

硫黄島 試製分割移動型洋上空港 「オアシス」駐機場

 

日本防衛軍にとって最も重要な拠点の一つである硫黄島では、日夜様々な試作機が実地運用されているが、その中でも特に巨大なのが「オアシス」と命名された洋上空港である。

複数隻の洋上プラットフォームが合体する事で現れるこの空港は、その巨体故気軽に離着陸の出来ないアークバードを始めとした「Project A」の巨人機達を何とか遠く離れた海外でも補給できるようにする為に開発され、その為にマスドライバーや巨大な格納庫、簡易的な工廠などの特殊な設備を幾つも持っている。

 

そんな洋上空港の駐機場では、一機の巨人機が空へと飛び立つ為の準備を受けていた。

 

その巨人機の名は、「PA‐XB-0 フレスベルク」。

「Project A」の試作機として開発、建造された試作爆撃機である。

 

この機体の役目は、アークバードや他の巨人機を開発する上でのデータを集める事であり、その為に様々な装備を施している。

横に大きく広がった胴体に格納された格納式の巨大フロートや航空機用VLSやレーザーターレット。アークバードで採用された索敵用のレーダーやカメラ、センサー類のプロトタイプなど本当に様々な装備を施しているが、中でも画期的だったのが推進系だろう。

 

胴体内には、「Project T」で開発された新型動力機関であるプラズマジェネレーターを二機配しており、この大出力機関から得たエネルギーで稼働する6基の推進器こそ、「アークレイピアエンジン」である。

このエンジンの最大の特徴は、「エネルギーのある限り、如何なる環境でも稼働し推進力を発生し続ける事が出来る」という点である。簡単に説明すると、「稼働エネルギーさえ確保できれば、空だろうが宇宙だろうが利用できる燃料いらずのエンジン」である。

 

・・・オマエモカ、航空防衛軍。

とんでもない代物、サラッと作り出してんじゃねーよ!?

燃料の要らないエンジンなんて実現しようものなら、このエンジン巡って国同士の大乱闘が起きても可笑しくないぞ、コレェ!?

 

まあ、一応このエンジンにも「安定稼働するには、最低でも核融合炉並みのエネルギー出力が求められる」という欠点があり、その為にプラズマジェネレーターを搭載しているのだが。

 

とまあ、この反則級チートエンジンを初めて積んだ機体がフレスベルクであり、初飛行した2005年から様々なテスト飛行を延々と繰り返し、貴重なデータを航空防衛軍へともたらしていた。

 

だがしかし、これはあくまで地球での出来事であり、異世界へと転移した時には既に予定していた全てのテスト飛行を終えていたフレスベルクは、アークバードが硫黄島から飛び立った後は専ら格納庫に引きこもっていた。

アークバード飛行後、一度だけフィルアデス大陸解放戦争前に新装備の試験の為に飛んだ後は、一度もエンジンを動かさずにずっと格納庫にいたのだ。

 

何故、防衛省は貴重な巨人機を格納庫に放置同然の扱いをしていたのかというと、10年以上過酷な飛行試験を繰り返し行ったフレスベルクには目に見えないダメージが蓄積している為、大規模なオーバーホール無しにこれ以上飛行させると致命的な事態に陥る可能性が非常に高く、悲劇的な結末を回避する為に、そして日本の航空機技術に大躍進をもたらしてくれた偉大な功労者達を悲惨な事故に合わせたくないという心理的要因が大きく働いた結果だった。

 

ただ、この決定に不満を持ったのがフレスベルクの乗員である。

何百何千時間もフレスベルクと共に空を駆け抜けた彼らからすれば、縦横無尽とまではいかなくても十分に飛行することが出来ると確信しており、それ故に政府の飛行禁止処分はフレスベルクの尊厳を踏みにじるも同然であり、自分達が絶対の信頼を寄せる相棒を再び空へと羽ばたかせる為に何度も飛行禁止処分を撤回させる為の抗議を入れていた。

 

日本政府とフレスベルクチームの間にピリピリとした空気が流れていた時に起きたのが、この異世界の超大国であるミリシアル帝国の使節団の来日である。出迎えの計画の中で彼らが乗った天の浮舟を護衛する事が決まったことを知ったフレスベルク乗員達は防衛省に向かうと、厳田防衛大臣に相棒を護衛機として参加させる事を提案したのだ。

 

当初、厳田は自壊の危険性や護衛としては過剰である事を理由に、この意見に反対したのだが。

 

「巡航速度且つ無茶な機動飛行をしなければ、決してフレスベルクは事故なんぞ起こしません!!アイツは天神を始めとした我が国の軍用機の集大成といっても過言ではありません!!まだアイツは、フレスベルクは空を飛べます!!大臣、お願いです!全責任は我々が取ります!!どうか、どうか俺達の相棒に、ずっと表に出ることなく我が国の航空機技術の発展に尽くしてきたフレスベルクに、最初の晴れ舞台に上がらせてください!!」

 

「「「「お願いします!!!!!」」」」

 

流石の厳田も、フレスベルク乗組員総出の土下座と必死の訴えを退ける事は出来なかった。

それに厳田もフレスベルクの処遇には納得のいかない部分があり、特に一度も公の場に出ることなく、ヒッソリとこの巨人機を歴史の中だけの存在にするには悔しさすら感じていた。

 

「お前達・・・・・。分かった、責任は俺が取る。フレスベルクの護衛任務への参加を許可する。ただし!絶対にオアシスに帰還する事!もし事故なんぞ起こそうもんなら、俺が地獄の果てまで追いかけて始末書書かせるからな!!いいな!?」

 

「・・・・!はい!!ありがとうございます!!大臣!!」

 

こうして、日本防衛軍のナンバー2を説得し飛行許可を取り付けたフレスベルクチームは機体の状態を万全にし、時間の許す限り機体の清掃を行い、機体の表面が鏡の様に太陽光を反射するまでに磨き上げた。

 

 

そして、遂に彼らが待ち焦がれた日。

神聖ミリシアル帝国の大使一行が来日する日がやって来た。

 

「アークレイピアエンジン、1番から6番まで正常に稼働中。異常ありません。」

 

「フラップ、方向舵動作確認・・・。操作タイムラグ、許容範囲内を確認。」

 

「こちら機関室!プラズマジェネレータ異常なし!いい音です、幾らでもぶん回せますぜ!」

 

「対空兵装のロックを再度確認しろ!!大使座乗機に誤射でもすれば、戦争待ったなしだぞ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!??4番レーザーターレットの砲口に蓋がしてねぇぇぇぇ!?てか、主翼の上に転がってるぅぅぅぅ!?」

 

「・・・主翼担当班、主翼上の蓋拾ってこい。4番レーザーターレット担当、後で格納庫裏に来い。いいな?」

 

規格外の大きさ故に艦橋とも呼ばれているフレスベルクのコックピットでは、パイロットや各種オペレーターが機体各所とのやり取りを交わしながら最終確認を行っていた。

前日に取り付けた筈の誤射防止用の蓋が外れていると言う笑えない問題が発覚したものの、それ以外の問題は無く離陸前の確認作業を完了することが出来た。

 

「管制塔、此方フレスベルク。離陸前チェックリスト終了。離陸許可を求めます。」

 

「こちら管制塔、了解しました。一番滑走路からの離陸を許可します。離陸後は、高度6000mで合流ポイントに向かってください。」

 

「了解、エンジン離陸推力にセット。離陸滑走開始!」

 

「了解、離陸滑走開始します。」

 

エンジンを離陸出力に設定し、電磁と油圧の二種類のブレーキを解除したフレスベルクはゆっくりと動き出し、加速を始めた。

 

「現在速力、90ノット・・・95、100、110・・・。120ノット!」

 

「アフターバーナー点火用意!・・・点火!」

 

「アフターバーナー点火、ヨーソロー!!」

 

「150、170、190、230・・・。250ノット超えました!離陸可能速度です!!」

 

「V1!ローテート!!フレスベルク、発進!!」

 

「ローテート!フレスベルク、離陸します!!」

 

轟音と共に戦艦並みの重量の機体がふわりと浮き上がり、オアシス要員からの敬礼を受けながら飛行機雲を引きながら大空へと消えていく巨人機。

その姿は、長年に渡っての運用で蓄積された衰えを微塵も感じさせない見事な飛行だった。

 

日本領海近辺上空

 

アルタラス王国での液状魔石の補給を終えた神聖ミリシアル帝国のゲルニカ35型の機内では、ベルーノら魔導技術者がルバイル空港で目撃した日本製航空機についてやや興奮気味に議論を交わし、ライドルカは新たに購入したペットボトル飲料(主に紅茶系)を飲み比べ、商品名、製造会社、味などをノートに書き記していた。

ライドルカやベルーノが現実を受け入れていた一方で、フィアームら使節団の大半は文明圏外の国が自国よりも優れた技術を有している事を未だに受け止めることが出来ずに、ボ~としていた。

 

「こちら機長です。間も無く本機は、二ホン国の領空へと入ります。なお、二ホン国より三機の護衛機が本機を先導、護衛を行う予定となっております。」

 

「・・・・お?ようやく二ホン国の領空ですか。いやはや、二ホン国の紅茶系飲料の飲み比べに夢中になっていたらあっという間でしたな。」

 

「・・・暢気なものですね。我が神聖ミリシアル帝国の優位性を奪うかもしれない国にもう間もなく到着するというのに。」

 

「確かにその通りですが、二ホン国が文明圏外の国としては異常に発展しているのは変えようのない事実です。事実は事実として受け止め、彼の国に対して優位に立てる分野を見つける事が最重要なのでは無いですか?」

 

「分かっていますよ・・・・、ですg」

 

フィアームの言葉を遮るかのような、雷鳴の如き轟音がゲルニカ35型の機内に響く。

ミリシアル帝国使節団が何事かと窓をのぞき込むと、そこには彼らのプライドを壊すものが飛んでいた。

 

「なっ!?そ、そんなバカな!?あれは!?」

 

「天の浮舟だと!?しかも、あの姿は・・・・!?」

 

「・・・我が国の物よりも洗練されている。いや、遺跡から発掘された魔帝の天の浮舟にそっくりだ!!」

 

「こんな事が・・・、こんな事があってたまるか!?文明圏外の国が何故我らより洗練された天の浮舟を有しているんだ!?」

 

ゲルニカ35型の両脇を守護騎士の如く飛ぶNF-5型ジェット戦闘機の姿に、ミリシアル帝国の外交官は戸惑いを隠せない。自国の最新鋭機エルぺシオ3よりも洗練された造形の翼や、離れているのにもかかわらず聞こえてくる力強いエンジン音に呆気にとられていると、ベルーノがある事に気付く。

 

「・・・おや?確か、二ホン国は三機の護衛機を付けると言ってましたよね?だが、今ここにいるのは二機だけだ。もう一機は何処に行ったんだ?」

 

「あれ、本当ですね。二機しかいない。故障して引き返したのか?・・・機長、二ホン国から何か連絡が来ていないか?」

 

「いえ。何の連絡も来ていませんよ?もしかしたら、あの雲海のせいで逸れたのではないでしょうか?」

 

日本製、というか地球製の大型航空機では絶滅した開放型のコックピットに入り、機長に話しかけるライドルカは機長が指さした目前に広がる雲海に視線を移していた。

だからこそ、使節団の中でいち早く目の前の異変に気付くことが出来た。

 

「・・・ん?雲海の一部が盛り上がってきていないか?」

 

「あっ、本当ですね。確かに雲が盛り上がってきています。」

 

「なんだか、まるで何かに押し・・出さ・・・れ・・・・・。」

 

突然コックピット内で黙りこくってしまった三人に違和感を覚えたフィアームは、仲間を押しのけながらコックピットの入口へと向かいながら三人に声をかける。

 

「ライドルカ?おい、ライドルカ!何があ・・・った・・・・。」

 

コックピットに入ろうとしたフィアームも固まり、明らかな異常事態が起きたことを察した使節団の面々はコックピットの入口に集まり、そして絶句する。

 

何故なら、フロントガラス目いっぱいに広がる巨大な黒い影が、目に飛び込んできたからだ。

そう、この暗い影の正体こそ日本航空技術が産み出した巨人機、フレスベルクであった。

 

「・・・な、何だあれは?あれも飛行機械だというのか?」

 

「・・・・いや、それにしては余りにも大きすぎます!?翼長の目測、優に700mは超えてますよ!?」

 

「・・・えーと、詰まりあのバカでかい飛行機械は、ミスリル級よりも大きいという事か?」

 

「間違いなくミスリル級よりも大きいと断言できます!!あれだけの巨体、一体どうやって浮かせているんだ!?エンジン推力か!?いや、未知の魔導を利用しているのかもしれないぞ!?」

 

「バカなバカなバカな!?!?あのような巨体の飛行機械を、第三文明圏外の新興国が作れるはずが無い!?あってはならんのだ!?」

 

「ですが、目の前の光景は間違いようの無い事実です!!受け入れるしかありませんよ!二ホン国は唯の文明圏外国ではありません!!二ホン国は我が国と同等、下手をすると我が国以上の国かもしれないのですよ!?」

 

ミリシアル帝国使節団の激しい言い争いは、彼らの心情を現しているのかもしれない。

結局、この激しい口論は空港への着陸態勢へと入る事を機長が伝えるまで続いていた。

 

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