今年最後の投稿であり、つかの間の平和編の最終話です。
次回以降は、カルトアルパス編を投稿していく予定です。
これからも「日本国召喚~天照の咆哮~」をよろしくお願いします。
日本 東京都 大東亜国際会議場
地球でも転移したこの異世界でも、日本の実質的な首都として機能している大都市東京。
様々な政府機関や経済拠点が置かれているこの都市では、どの施設も一日たりとも休むことなく稼働しているが、とある施設だけは全く使われなくなってしまった。
その建物の名前は「大東亜国際本部兼会議場」。
名前の通り、日本が立ち上げた国際組織「大東亜共栄圏」の運営や共栄圏内での政治的課題の解決の為の会議が行われる、地球では最も重要な施設のうちの一つだった。
だが、異世界に転移したことでこの施設を使用する組織が消滅してしまった事で、役割のない施設となってしまい、日本政府にとって大きな負債となってしまったのだ。
このまま解体されるか民間に流されるかもしれないと、一部で囁かれていた「大東亜国際本部兼会議場」だったが、日本政府がこの世界でも大東亜共栄圏を発足させることを決議した事で、この施設は再び国際的な施設としての役割を与えられ、再稼働する事となったのだ。
そんな不死鳥の如く蘇った「大東亜国際本部兼会議場」の待機室の一室内では、日本国総理大臣である武田実成が緑茶を飲みながら、原稿や今日話し合われる予定の議題の再確認を護衛の力を借りながら行っていた。
「ええと、大東亜国際信用金庫関連の資料は・・・・。ああ、これか。で、国際海難救助隊とフィルアデス大陸交通インフラ再整備案はそこか。そして、先進11ヵ国会議での我が国の提案する議題については・・・。」
「総理、スピーチの原稿の確認終わりました。誤字脱字や間違った文法はありませんでしたよ。」
「おお、焔君。すまないね、私の護衛としてやって来てもらったのに、こんなことまで頼んでしまって。」
「いえ、構いませんよ。私達電子人間は、こういった事務的な仕事が最も得意ですから。」
小さく微笑む現実離れした、なろう系小説に出てきそうなスタイルをしている女性型電子人間、「雨宮焔」に武田は彼女の体が本当に機械の集合体であるのかと何度目かの疑問を感じてしまった。
(・・・何度見ても生身の人間そのものだ。ベルカ社の連中、一体どうやったらこの精巧な人間と同サイズの「器」に既存の兵器と同等かそれ以上の戦闘能力を組み込めるんだ?一部で囁かれている「ベルカ社の研究者は宇宙人説」は有り得ないハズなのに事実なのかと考えてしまう。有り得ないハズなのに、な・・・。)
「・・・武田総理、どうかなさいましたか?」
「・・・・ああ、いやなんでもない。ただ少し、考え事をしていただけだ。」
武田の言葉に疑問を感じたのか、首を傾げる日本陸上防衛軍一の実力を持つアイドル的存在の仕草に苦笑する武田。
そうこうしている間に、この世界初の大東亜共栄圏国際会議の開催の時間が迫っていた。
大東亜国際本部兼会議場 本会議場
武田が待機室で書類の確認を行っていた頃、この建物で一番大きな会議室には大東亜共栄圏に加盟した各国の代表が集まり、会議が始まるのを待っていた。
クワ・トイネ公国やクイラ王国、アルタラス王国、そして列強ムーなど「二ホン慣れ」している国々の代表は、各々談笑をしたりするなど余裕を見せていたが、大多数の代表達は初めて来る異界の超大国の威容に落ち着くことが出来ずにキョロキョロと周辺を見渡したり、卓上に用意された水差しから何杯も水を飲んでいた。
それは独立を果たしたばかりの旧パーパルディア皇国属領の国だけでなく、第一文明圏の列強であり本会議にはオブザーバーとして参加している列強エモール王国の使節団も同じだった。(エモール王国の使節団が大東亜共栄圏参加ではなく、オブザーバーとしてこの場にいる理由は、彼の国の貴族の大半が日本の事を「魔導を扱えぬ文明圏外の後進国」と侮っており、大東亜共栄圏参加に反対の姿勢をしているせいである。)
なお、フィルアデス大陸解放戦争の際、盛大にやらかした蝙蝠国ことリーム王国は、この場にいない。
本来ならば、エモールと同じくオブザーバーとして参加する予定だった文明国がこの場にいないのは訳がある。
フィルアデス大陸解放戦争に参加することが出来ず、講和会議にも参加することが出来なかったからだろうか?リーム王国は戦後の混乱期にあるエストシラント共和国に密入国し、パーパルディア皇国の武器や技術を持ち出したり、海賊を装った艦艇を用いた私掠行為など考えられる限りの「信用の低下」を促す行為を行い尽した。
極め付きは、エストシラント共和国の宝ともいえる魔導技術を研究していた者たちの拉致だ。
「政情不安定なエストシラント共和国からの救出」という名目で行われていた、前代未聞の集団拉致事件は偶々拉致現場に遭遇したエストシラント共和国海軍臨時総司令官シルガイアによって発覚し、陸軍臨時指揮官ゼクトが直々に指揮するエストシラント共和国陸軍と、カイオスからの要請を受け派遣された雨宮焔率いる日本陸上防衛軍第一電子特戦隊の手によって、拉致被害者全員の救出と実行部隊を捕縛することで間一髪防ぐ事が出来たが、少しでも遅れていたらエストシラント共和国の復興に欠かせない優秀な人材が、リーム王国へと連れ去られるところであった。
この一件を受け、日本政府はエストシラント共和国への支援の強化と緩和措置を行うのと同時に、フィルアデス大陸の各国に厳重な警戒態勢を、特に優秀な研究者や技術者に警護を付ける事を強く勧めた。
そして全ての元凶のリーム王国については、リーム王国王都ヒルキガに直接乗り込み(どれぐらい怒っていたのかというと、使節団の護衛にフル装備の二個小隊と一個護衛艦隊を付けるぐらいである。)、今までの非常識な行為に猛抗議を行った上で、今後同様の事を行えば、日本政府は「如何なる」対応をとると宣言した。
この宣言の後、リーム王国の非常識な行動はぱったりと無くなったが、だからといってリーム王国への信頼が回復したわけではない。
国際的な信用のない国を、国際関係を良好にし国際協調を生み出す為の大東亜共栄圏に参加させるわけにはいかないと判断した日本、クワ・トイネ公国、クイラ王国、アルタラス王国はリーム王国へのオブザーバー権を剥奪。リーム王国を国際協調の輪から追放したのだった。
閑話休題
とまあ、開催前に一悶着が発生したが、蝙蝠王国関連以外の問題は発生せず、無事に第一回新大東亜共栄圏国際会議の開催日を迎えることができたのだった。
記念すべき第一回目の国際会議の壇上に最初に立ったのは、常設国際組織開設の為に各種根回しを行なった日本総理大臣、武田実成であった。
「今日、この日を迎えることができた事を、私は大変誇りを感じております。この大東亜共栄圏は、嘗て我が国が存在した世界「地球」において、国際協調と平和を築き守ることに大いに貢献してきました。他者から虐げられ、何かを奪われ続けていた国々。そういった国々の世界的影響力は極めて小さいものですが、そういった小さな力でも一つにまとまり、互いの弱点を補い長所を伸ばすことで力を持つ大国相手にも対抗できる術を手に入れることができるのです。事実、地球において大東亜共栄圏は開設時、先進国がたったの一カ国しか存在しない貧弱なモノでしたが、僅か30年余りで先進国並びに先進国と同等の発展を遂げた国が幾つも誕生し、世界で最も影響力のある国際組織となりました。」
「本世界に転移してきた後、私を含む日本国政府はこの世界にも大東亜共栄圏を設立しなければならないと、強く実感しました。全人類共通の敵であるラヴァーナル帝国の復活が近づいて来ているのにも関わらず、弱きものを虐げ、私腹を肥やす大国の存在。一向に進まない対魔帝対策の現状。ただでさえ、他の文明圏から大きく遅れを取っている第三文明圏はこのまま行けば、我々は間違いなく滅びの道へと歩んで行ってしまう事でしょう。私は我が国は無論、クワ・トイネ公国やアルタラス王国をはじめとした八十カ国を超える多様な文化を持つ国々がただ黙って滅ぼされるのは、我慢ならない事です。」
「だからこそ、我が国はこの世界初の常設国際組織「新大東亜共栄圏」を設立する事としました。この組織の設立は我が国日本だけの力では、とても不可能な事でした。クワ・トイネ公国やクイラ王国、アルタラス王国、トーパ王国、列強ムー国を始めとしたこの会議場に集まるすべての国々の協力が無ければ、成し遂げることの出来ないモノです。」
「大東亜共栄圏は、世界から試される事となるでしょう。第二文明圏は元より、最も発展している第一文明圏でさえ達成した事のない常設組織の設置。これから起こり得るあらゆる出来事にどの様に対処していくのかを、世界が注目する事でしょう。ですが私は確信しています。敵味方、格差、思想の違いを乗り越え、一つに纏まることができた我々ならば、いかなる困難が我々の目前に立ちはだかって居ようと必ず乗り越えることができると。」
「最後に改めて各国政府のご理解とご協力に、感謝します。本当にありがとうございました。」
壇上の武田が頭を下げると、最初はまばらだが次第に大きな拍手が巻き起こった。
この光景を見たエモール王国の使節団達は、争いが絶えず、最も遅れているはずの第三文明圏の国々が一つに纏まっていくのを確かに感じた。
「それではこれより、新大東亜共栄圏国際会議を開催いたします。まず最初の議題についてですが・・・。」
こうしてこの世界初の、のちの歴史書で最も重要な組織の一つとして記録される常設国際組織の第一歩が踏み出される事となったのだった。
日本防衛庁直轄地 硫黄島 地下秘密ドック
日本の国防に関わる極一部の人間しか知らない、日本の最大機密施設である地下ドックの一角では、特一号艦こと「・・・・」が整備と補給、各種データを地下ドックの極秘サーバーへの移動など、様々な作業を受けていた。
各種作業の監督を行なっていた特一号艦の艦長、前原は自分の後輩と面会していた。
「そうか、お前の乗る新型試作潜水艦。ついに艦名が決まったのか。」
「ええ、少しばかり時間を喰いましたがね。試作高速重攻撃型潜水艦伊10001号「電光」と命名されました。一週間後に各種試験に臨む予定です。」
「ほう、電光か。艦の特徴を捉えた実に良い名前じゃないか。噂によるとたった一隻で数個護衛艦隊を相手にできる化け物だと聞いているが。」
「ハハハッ、先輩の特一号艦と比べたら赤ん坊みたいなモノですよ。それに本命は、アッチですから。」
前原の後輩にして 潜水艦電光の艦長を務める宮本が指差す先には、建造中の様々な艦船が所狭しと並んでいた。建造度合いも艦によってバラバラで、完成間近の艦もいれば、骨組みだけの状態の艦もいる。
そのどれもが完成の暁には、非常に強力な性能を持って生まれてくるのだ。電光はそれら次世代艦の中でも最も保守的な設計だった為に、最も早く竣工したのだった。
「・・・できる事なら、特一号艦や電光、建造中のアイツらに役目が来ないことが一番良いのですが、そうもいかないですよね。」
「ああ、不穏な動きを見せる国が複数確認されているし、魔王ノスグーラを製造したとされる魔帝も、もう間も無く現出するとの事だ。そうなれば間違いなくコイツらは、最前線で戦う事になるだろう。」
「本当、物騒な世界ですよね、ココ。地球での平和が恋しくて堪らないですよ。」
「確かに物騒だが、悪い所だけじゃない。この世界にも地球より良いところは沢山ある。それらを守る為に、俺達は努力して行かなければならないんだ。」
そうですね、先輩と返す宮本に小さく微笑みを浮かべながら、手にしたマグを傾け、コーヒーを飲む前原。
そんな2人をただ静かに「・・・・」は見守っていた。
用語説明
雨宮焔
日本陸上防衛軍第一電子特戦隊の隊長を務める女性型電子人間。
世界初の電子人間Z•O•Eから数えて六番目に誕生した初の女性型電子人間で、少し頑固だが人当たりの良い性格をしている。亜音速で空を飛び、彼女用に設計されたエネルギーセイバーを振るう雨宮焔は、世界最強の剣使いと言われており、国内外にその名が知られている。
なお、彼女の現実離れしたスタイルと顔は、彼女のボディ制作を担当した技術者の性癖の暴走によって誕生したものである。
日本陸上防衛軍第一電子特戦隊
強力な戦闘能力を有する電子人間のみで構成された特殊部隊。
その任務は、敵地侵入や破壊工作、諜報活動、要人の護衛など多岐に渡る。その為、実力は極めて高く訓練などで相対した部隊から「絶対に敵対したくない」、「彼らと戦うぐらいなら、抗命罪で処罰された方がマシ。」と、言わしめる程である。