日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

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UA12000越えを達成しました。皆様本当にありがとうございます。
初心者の私ですが、これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします。

今回は、ジン・ハーク攻略の前編です。


ロウリア王国編-04

クワ・トイネ公国 マイハーク港

 

ロデニウス沖大海戦の後、海上に漂流するロウリア兵を救助してこの港に帰還した日本艦隊。

艦隊旗艦戦艦いずもに収容されたロウリア艦隊の指揮官シャークンは、この前代未聞な巨大艦に驚愕していた。海戦での圧倒的な戦闘力に加えて、自国の船とは比べることが出来ないほどの快適さ。彼は、日本がこの強力な船を、一体どうやって列強から購入したか強い疑問に駆られ、部下たちの手当てをする日本兵に質問してみた。この船はどこから輸入したのかと。

すると、驚きの答えが返ってきた。

 

「輸入?いいえ、本艦は我が国で建造されましたよ。」

 

信じられなかった。自国は無論建造できないし、列強であるパーパルディア皇国ですらこのような巨大艦の建造は困難だろう。それを、日本は自分の力のみで建造したという。シャークンは、この事に唯々驚くことしかできなかった。

 

いずも艦橋

 

「それで、防衛省は何と言っている?」

 

「はっ、救助したロウリア兵を明日一四〇〇に到着する予定の強襲揚陸艦はしだてに移乗させたのち、ロウリア王国の首都近郊に位置する港を攻撃、その後陸上防衛軍の作戦を支援せよ、との事です。」

 

「やれやれ、全く人使いが荒いな。」

 

そうですね、と副長の海原は上司の愚痴に相槌を打つ。

 

二日後、シャークンらロウリア艦隊の捕虜をはしだてに移乗させて、準備を整えた日本艦隊はマイハーク港を出港し、ロウリア王国へと出撃していった。

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城

 

この城一番の大きさを誇る大会議室で、作戦会議が開かれていた。

 

「パタジンよ、現在の敵の位置はどうなっている?」

 

玉座に座るロウリア王国大王ハーク・ロウリア34世からの質問に、ロウリア軍総司令官パタジンが席から立ち上がり、その問いに答える。

 

「はっ!クワ・トイネ公国から我が国に侵入してきた敵軍は、スマーク将軍率いるクワ・トイネ公国侵攻用に用意したワイバーン本陣を陥落させた後、工業都市ビーズルに向かっていると思われます。しかし、彼らの数は1万にも満たないという報告が上がっております。現在、ビーズル郊外にミミネル将軍指揮する五万の兵力を展開しています。我が国三大将軍の一人であるミミネル将軍ならば、必ず殲滅することが出来るでしょう。」

 

「うむ。スマークの件は、いきなりの奇襲で十分な準備が出来ずに敗北し、結果として国境を突破されてしまった。だが、二度と国境突破などさせるな。くれぐれも頼んだぞ、パタジン!」

 

「ははっ!肝に銘じます!必ずやこの国を守ります!」

 

これで、なんとかなるはずだ。

玉座に深く座りなおしたハーク・ロウリア34世は、そのように考えていた。

 

ワイバーン本陣陥落から数日後、ロウリア王国王都北側港

 

別名ジン・ハーク港ともいわれている港の一角にあるロウリア海軍本部の一室の窓際で、海将ホエイルは、頭を悩ませていた。

目前には、1200隻の軍船が整然と並んでいた。その姿は、常々艦隊を指揮している彼からしても、ため息が出るほど壮観で美しいものだった。どのような敵が相手でも勝てると思っていた。あの時までは。

 

(あの海戦、あれは戦いではない、あれは虐殺だ。)

 

彼は、ロデニウス沖大海戦を思い出していた。

自分たちの攻撃可能範囲外から、一方的に撃破される屈辱と恐怖。まるで、鍛えられた武人と生まれて間もない赤子を比べるような実力差がそこにはあった。

 

「どうすれば、あの海の化け物どもに勝つことが出来る・・・?」

 

彼は、どの様に敵を迎え撃つか考えを巡らせていたが、ふと彼はある空気を感じ取り、頭を上げた。

いやな予感がする。そしてこの空気は、つい最近感じたことのあるものだった。

次の瞬間、目の前に停泊していた軍船が猛烈な爆音をあげて爆発した。爆発した軍船の木片や部品が、港に降り注ぐ。

たった一度の攻撃で、軍船を破壊することのできる存在。ホエイルは、そのようなことが出来る存在は一つしか知らなかった。急ぎ部屋にある、魔導通信機に向かい命令を下す。

 

「総員戦闘配置!敵は二ホン国だ!!王都のワイバーン隊にも連絡を入れろ!!」

 

軍船の水兵達は、命令を受けて出港の準備を急いで進めるが、その間にも爆音が轟き、船が爆発していく。

 

「くそ!二ホン国め!!一体いつの間に侵攻して来たのだ!?」

 

ホエイルは、旗艦に向かって走りながら叫ぶ。

その直上では、ミサイルによる攻撃を終え、爆弾と機銃による攻撃に移行したVTOLF-11型戦闘機とNF-5型戦闘機が、轟音を響かせながら港の空を旋回していた。攻撃は極めて正確で、次々にロウリア軍船を撃沈していく。

 

ジン・ハーク郊外 ワイバーン基地

 

「ジン・ハーク港海軍本部からの緊急連絡!!二ホン国と思われる敵勢力と交戦中!竜騎士隊、全騎発進せよ!!繰り返す、全騎発進せよ!!」

 

ホエイルの下した命令によって発信された緊急通信を受けて、竜騎士たちは迅速に仕度を整えて愛騎であるワイバーンに向かう。

この基地に配属されたばかりの新人竜騎士ターナケインも、昼休憩を切り上げて出撃準備を行っていた。短剣を腰につけ、落騎防止用の安全ベルトを全身に装着して、革製の兜をかぶる。

出撃準備を整えた彼は、竜舎に走って向かい自分の愛騎に歩み寄る。

クゥン、クゥンとワイバーンはターナケインに甘えた。

そんな自分の相棒に手を出して、頭を撫でた彼は、手綱をかける。

 

「今日も頼むぜ、相棒。」

 

鞍を取り付けた彼はそれに跨り、滑走路に向かう。

滑走路を見ると、ターナケインの先輩たちはすでに仕度を終え、順番に地面を蹴って空へと舞い上がっているところだった。

 

「おっと、出遅れてしまったか。」

 

ターナケインは、滑走路が空くのを待ってから、滑走路に侵入した。

 

「よし、いけ!!」

 

ターナケインの合図とともに、彼を乗せたワイバーンは走り始める。やがて、離陸可能な速度に達すると竜は空へと舞い上がっていった。

ロウリア王国軍の花形である彼らは、自国を奇襲してきた不届き者を倒すために、一路敵のもとへと向かっていった。

 

ロウリア王国 ジン・ハーク沖

 

ロウリア王国から100㎞ほど沖合いの海域には、空母せいりゅうと空母ほうしょうを中心とした輪形陣を敷いている日本艦隊の姿があった。

ジン・ハーク港の破壊と、港にいる敵艦隊撃破の為に艦載機を飛ばし、この海域で待機していた日本艦隊のレーダーに、新たな敵の姿が浮かび上がっていた。

 

「ロウリア王国王都郊外の基地より、飛行物体が出現しました。数凡そ、120騎。時速約200キロで港に向かっています。」

 

「恐らく、王都防衛用のワイバーン隊だな。しかし、500騎以上撃破したというのに、まだこれだけの数が残っていたとはな・・・。兎に角、作戦の大きな障害の一つであるのは間違いない。航空隊にワイバーン隊が接近していることを伝えろ。迎撃は、上空で待機しているUAVFー11に行わせろ。一騎たりとも逃がすな。」

 

せいりゅうの艦長から出された命令は、日本海上防衛軍の誇るデータリンクによって迅速に航空隊に通達された。

そして、敵ワイバーン隊の撃滅という命令を受けた自立型無人戦闘機UAVF-11は、速やかにロウリア王国最後のワイバーン隊へと向かっていった。

 

ロウリア王国 ジン・ハーク上空

 

100騎を超える竜騎士団は、周囲を警戒しながらジン・ハーク港に向かっていた。その姿は壮観で、王都に住む人々はその姿を一目見ようと皆空に目を向けていた。

新人竜騎士ターナケインも、先輩たちと共に目を凝らしていた。

 

「ん?」

 

「どうした、新人?」

 

「いえ、何か光ったような気がしたのですが・・・。」

 

次の瞬間、先頭を飛んでいたワイバーン10騎が爆発し、空に散っていった。

 

「なっ!!」

 

ターナケインや他の竜騎士たちが驚愕している間にも、次々にワイバーンや竜騎士達は次々にバラバラになって地上へと落ちていく。

 

「お、おい!どうした相棒!」

 

突然、ターナケインの跨るワイバーンが急降下を始めた。彼は新人でありながら、竜と一体化した見事な空中機動が出来たが、ワイバーンが急な行動を起こした場合の対処は、まだ未熟であった。

 

「くっ、空の王者であるお前が恐れを抱いているというのか!?」

 

ターナケインの叱責を受けてもなお、彼のワイバーンは急降下を辞めずに、遂に地上に勝手に着陸してしまった。その着陸の衝撃は凄まじくターナケインの握っていた命綱が千切れてしまう程だった。

 

「ぐえ!!・・・イタタ。畜生、相棒一体どうしたんだ?」

 

自分を振り落とす勢いで着陸した相棒に対して悪態をつきつつ歩み寄ると、ワイバーンは空を見上げながら丸くなり怯えていた。

ターナケインも上空を見上げてみると、そこには凄惨な光景が広がっていた。

 

「な・・何!!」

 

彼らの目の前には、何らかの攻撃を受けて次々に爆発四散していく仲間たちの姿だった。100騎以上いたワイバーン達は、その数をあっという間に減らしていった。

 

この悲惨な光景は、王都の一般市民達も目撃していた。自分達が最も信じることが出来る戦力が自分達の目の前で、次々と撃破されていることに誰もが自分の目を疑っていた。

爆発四散したワイバーンやヒトだった物が、そんな彼らの頭上に降り注いできた。

 

「うわぁぁぁぁ!!なんだ、なんだ!?」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

降り注ぐ血を頭から浴び、阿鼻叫喚の声を上げる商人達や、大きな悲鳴を上げる女性達。

王都全土に、大きな混乱が発生しこの事態に王都の守備隊が気づくまで時間はかからなかった。

 

ジン・ハーク港

 

「な、それは本当か!?」

 

「はい、王都ワイバーン隊は敵の攻撃を受けて壊滅したとの事です。」

 

衝撃的な報告を受けたホエイルは、膝から崩れ落ちてしまった。

この戦争で、我がロウリア王国は歴史に残る程の大損害を、短時間で受けてしまった。

空中戦力は全滅し、海軍と陸軍も半数を失った。

しかも、まだ敵には有効な打撃を与える事すら出来ていない。

どうすれば、敵に対抗することが出来るかホエイルが思考する間もなく、悲劇が彼らを襲ってきた。

 

「ホエイル海将!敵が、二ホン軍が来ました!!あの巨大艦もいます!!」

 

「つ、遂に奴が来たのかー!?」

 

沖合いに目を向けると、ロデニウス沖でロウリア艦隊を蹂躙した巨大な軍艦が二隻向かってきていた。

ワイバーン隊の壊滅、そして自分たちを一方的に撃破した巨大艦が向かってきた事で、ロウリア軍の士気はガタ落ちとなった。それは、ホエイルも同じであった。

どうすればいいのか、彼には思いつかなかった。

ホエイルが呆然としているとき、二隻の巨大艦が爆炎に包まれた。

巨大な風切り音が港に響き始め、心が折れた水兵達は破壊から逃げ出そうと走り始める。

 

「い、一体どうすればいいのだ・・・・。」

 

これが、ホエイルの最後の言葉になった。

 

ドガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

巨大な水柱と雷鳴のような爆音が轟き、爆発が軍船を包んでいく。

水柱と爆音が収まった時、そこには一隻の軍船の姿もなかった。

こうして6年以上の年月と、パーパルディア皇国からの支援を受けて建造された4000隻を超える大艦隊は、わずか一か月という短時間で全滅することになった。

 

その後も、日本艦隊からの攻撃によって港は徹底的に破壊されることになった。

 

その日の夜 ハーク城

 

「こ、この報告は誠か?」

 

パタジンは、手にした報告書を食い入るように見つめていた。

その報告書には、信じられないようなことが書かれていた。

その内容は

 

・ジン・ハーク港に停泊していた海軍艦艇1200隻が、敵の攻撃で一隻残らず破壊された。

 

・ジン・ハーク港もまた甚大な被害を受け、復旧には数年掛かる。

 

・迎撃に出た王都防衛の竜騎士隊は、一騎以外全機撃墜された。

 

である。

 

つまり、たった一日でロウリア王国は、海上戦力と航空戦力を一気に失ってしまったのだ。

今やこの王都を守る戦力は、陸上戦力5万人のみとなってしまった。

 

(まずい!敵がまさかここまで強いとは思ってもいなかった!!だが、敵の陸上戦力を排することさえ出来れば、暫くは警戒して我が国に侵攻してこないだろうから大丈夫だろう。頼むぞ、ミミネル!)

 

パタジンは、最後の希望を工業都市ビーズルを守るミミネル将軍に託すことにした。

だが、ロウリア王国に逆侵攻して来た日本軍はパタジン達の予想を大きく上回る行動をしていた。

 

夜明け前の淡い月明かりと厚い霧が立ち込め視界が悪い中、王都に向かって一路荒野を進んできた日本の王都攻略隊は王都ジン・ハークから一キロの地点まで接近していた。

 

「やれやれ、作戦で必要とはいえここまで敵拠点まで接近しなければならないのは、かなりのストレスだな。」

 

「はい、現代戦ではまず有り得ない事ですからね。」

 

12式陸上指揮車に乗っていた大内田は、指揮車から降車して敵首都を観察していた。

 

「さてと、敵さんの注意をこちらに引き付けんとな。あの塔を攻撃してみるか。」

 

「ですが、15式の砲撃では市街地に砲弾が着弾する可能性があります。ここは、自走砲に砲撃してもらって、あの塔を破壊してもらいましょう。曲射で撃てば塔だけをピンポイントで破壊することが出来るでしょう。」

 

「いくら敵国の民とはいえ、民間人に犠牲者を出すわけにはいかないか・・・。よし、自走砲隊に砲撃を指示。我々は、このままギリギリまで接近するぞ。」

 

自走砲は、停車して砲撃の準備を整える。

その他は、敵に気付かれない様にライトを消して、静かに敵首都との距離を詰めていく。

 

「師団長、自走砲隊から連絡。砲撃の準備が完了したとの事です。」

 

「よし、全車停止せよ。」

 

15式戦車や兵員輸送車は、その場に停止した。

 

「師団長、攻撃準備完了しました。」

 

「よし、攻撃を開始せよ。」

 

自走砲が爆音とともに砲弾を吐き出した。

そして、飛び出していった砲弾は、敵の監視塔へと向かっていった。

 

日本の攻略隊の最初の攻撃目標となった城壁に等間隔に生えている監視塔では、当直のロウリア兵が見張りの任についていた。

 

「どうだ、何か見えるか?」

 

「いいや、霧が深くて1キロ先も見えないよ・・・・・ん?」

 

「どうした、何か見つけたのか?」

 

「いや、何か光ったような気がするんだが・・・。」

 

見張り兵の一人が望遠鏡でその方向を見ようとしたとき、何かが風を切る音が聞こえてきた。

 

「なんだ?」

 

誰かが呟く。

次の瞬間、彼らのいる監視塔は自走砲の砲弾によって、彼らもろとも吹き飛ばされることになった。

 

自室で仮眠をしていたパタジンは、突然の爆発音に目を覚ましベットから飛び起きた。

 

「なんだ、この轟音は!?」

 

自室の窓から音のした方向を見ると、監視塔の一つが消えており代わりに見たことのないほどの爆炎が上がっていた。彼は慌てて自分の望遠鏡を手に取り外壁の外を覗き込んでみると、見たことのない物体が多数、壁外に展開していた。

パタジンは、直感的に敵の正体を察していた。

 

「まさか、二ホン軍か!?馬鹿な、奴らはビーズルを迂回して広い荒野を進軍してきたというのか!?」

 

日本の予想外の行動に驚くパタジンだったが、すぐさま気を取り直し身だしなみを整えながら軍の指揮所に向かう。指揮所では、軍の幹部たちが青ざめていた。

 

「諸君、現在の状況は!?」

 

「はっ、将軍。敵の魔導兵器で監視塔が破壊されました。現在のところ、南門付近に敵軍が展開しています。」

 

「直ちに騎兵隊に迎撃を命ぜよ!王都防衛隊の各部隊も、南門に集結させよ。」

 

「それが、先程から魔導通信機が不調でして各部隊との連絡がうまくいっていないのであります。」

 

「何だと!故障ではないのか?」

 

「いえ、すべての魔導通信機が一斉に故障するのは、とてもあり得ないです。おそらく、敵が何かしらの工作を行っていると思われます。」

 

「ならば、伝令を出せ!それと騎兵隊には迎撃の他に、敵の実力を探るように伝えよ!」

 

「はっ!」

 

パタジンの命令は伝令兵によって、各部隊に通達された。

既に準備を整えていた騎兵隊は、強襲偵察を兼ねた迎撃をするために南門から出撃していった。

 

無論、この騎兵隊の出撃は日本側に察知されていた。

 

「大内田師団長!敵騎兵隊がこちらに接近してきます。数、約400!」

 

「敵騎兵隊を迎撃する!各車、機銃で迎撃せよ!」

 

命令を受けた戦車隊は、主砲同軸機銃と、砲塔上部の機銃を敵に向けて攻撃を開始した。

圧倒的な銃弾の嵐が、勇敢なロウリア騎兵隊を襲った。彼らの鎧は、銃弾を受け止めることが出来ず、次々とロウリア兵は倒れていった。

半数近くが倒れた時、ロウリア騎兵隊は城壁の中へと撤退していった。

 

「敵騎兵隊、後退していきます!」

 

「攻撃やめ!警戒態勢は現時点で維持。」

 

予想外の攻撃を受けたロウリア騎兵隊は、過半数の兵隊を失ったが城壁の奥に撤退することに成功した。

大怪我を負いつつも生還した騎兵隊隊長は、よろめきながらパタジンの元へと向かい彼に報告を行った。

 

「しょ、将軍・・・。敵は、少数ですが礫のような光弾を見たことのないような速度で放ってきました・・・。我が騎兵隊は・・・、過半数がやられました・・・・。」

 

「そうか、ご苦労だった・・・。直ちに手当てを受けるのだ。」

 

この言葉を聞いた騎兵隊隊長は、その場に崩れるように気絶した。

そんな彼を運び出した後、パタジンは次の策を講じる。

 

「敵の攻撃方法は分かった・・・。光弾の貫徹能力が高いのならば防御力重視の重装歩兵をぶつけよう。そして敵の視線を引き付けて、他の部隊に攻撃を加えさせよう。」

 

今度は、分厚い鋼鉄製の鎧と頑丈な盾で武装した重装歩兵と歩兵隊に攻撃を命じた。

 

「我が国を守るために、この命を捧げよ!全員突撃ー--!!」

 

南門から姿を現し、大声を上げて突撃をしてきた重装歩兵たちに、大内田の命令で再び攻撃が加えられた。

 

「グァバ!」

 

「ギャッ!」

 

だが、彼らの鋼鉄製の鎧は日本の銃弾を受け止めることが出来ず、次々と兵隊達は倒れていく。

しかし、そんな彼らに一筋の希望の光が現れた。

 

「おお、見よ!敵の光弾をものともしない者が現れたぞ!!」

 

一人、ただ一人だけ日本の攻撃に耐えている重装歩兵がいた。

彼の持つ盾は、ロウリア軍で正式採用されている物とは違うものだったが、その盾は光弾を次々と弾いていた。

 

「勇者だ・・・。我が軍に勇者が現れたぞ・・・。」

 

「うぉぉぉぉ!!勇者に続け!!突撃、突撃ー--!!」

 

その重装歩兵を目撃したロウリア軍は士気が爆発的に上がり、左右から日本軍に突撃を仕掛けてくる。

その光景は、大内田ら幹部も目撃していた。

 

「冗談だろ、12.7㎜を弾くとは・・・。それに、敵があの盾の騎士に鼓舞されたな・・・。直ちにヘリ部隊に支援を要請しろ!それと、あの盾は出来れば回収するようにしてくれ。」

 

大内田はジン・ハーク港の沖合で待機している空母せいりゅうと空母ほうしょうに待機しているヘリ部隊に上空支援を要請した。すぐさま、8式対地戦闘ヘリ「はちどり」20機が現場へと急行する。

 

このヘリ部隊の存在は、最初気づかれることはなかったが現場まで残り10㎞の地点で偶然にもロウリア軍がこの部隊のことに気付いた。

 

「司令官、ジン・ハーク港の方角から敵飛行物体がこちらに向かって来てます!」

 

「なんだと?それで、迎撃は可能か?」

 

「ダメです。我々にはもうワイバーンは一騎も残っていません。迎撃は不可能かと。」

 

「くそ!ワイバーンが後10騎でもあれば迎撃できるのだが・・・。」

 

この破壊された基地に急遽作られた臨時の防空司令部では、誰もが何も出来ないことに誰もが意気消沈するが、その時この仮の指揮所に一人の竜騎士が兜を脇に抱えてやってきた。

 

「司令官、私に行かせてください!」

 

「君は?」

 

「第二竜騎士隊所属のターナケインです。私に任せてください。」

 

「任せてくださいと言われても、敵の飛行物体は20騎もいるぞ。勝算はあるのか?」

 

「大丈夫です。敵はおそらく我々の航空戦力が壊滅していると考えていると思います。その油断に付け込み奇襲を仕掛けます。そうすれば、敵も警戒して撤退できると私は考えています。」

 

「ふむ・・・。分かった。君の案に任せる、やってみてくれ!」

 

「はっ!」

 

司令官から許可を取ったターナケインは、愛騎に跨り出撃していった。

彼は前回の航空戦の経験から、ミサイル攻撃を警戒しながら低空飛行で日本のヘリ部隊へと向かっていった。

そして、遂に日本ヘリ部隊を目視圏内に捕らえた。

 

「来た!やるぞ、相棒!!」

 

地面スレスレで飛行していたターナケインは、自分のワイバーンを鼓舞しながらヘリ部隊の死角から一気に接近していった。

彼は、他のヘリからの攻撃を受けないようにするために、最後尾のヘリに目標を定めた。

愛騎は口内に炎を貯めて、導力火炎弾の発射態勢に入った。

 

「化け物め!堕ちろ!!」

 

彼の合図で、ワイバーンの口から導力火炎弾が放たれ、ヘリへと向かっていった。

 

「やったか!?・・・・何っ!?」

 

ターナケインは、この攻撃は当たると確信していた。

だが、そのヘリは攻撃が当たる寸前で機体を旋回して攻撃を躱した。

 

 

ターナケインからの攻撃を受けた「はちどり」を操縦する大塚1尉と伊藤2曹は、突然の奇襲に冷や汗をかいていた。

 

「危なかったな・・・。お前が機関砲の動作チェックをしていなかったら、間違いなく喰らっていたな。」

 

「ええ、偶然とは言え、肝が冷えましたよ・・・。」

 

伊藤の言う通りターナケインの攻撃を避けることが出来たのは、伊藤が機関砲とガンカメラの同期テストをしていたら、偶然こちらへ向かって急上昇をしてきたターナケインの姿を見つけ、咄嗟に操縦桿を操作したからである。

 

「しかし、敵のワイバーンは全て撃墜したはずだろ?一体どこに隠れていたんだ?兎に角、あれを喰らったらこちらも危ないな・・・。」

 

「そうだな・・・隊長、こちら18番機。奴は自分達が引き止めます。行ってください。」

 

「こちら、一番機。単独は危険だ!複数で掛かれば確実に落とせるぞ。」

 

「隊長、陸さんの応援には一機でも多いほうが良いと思います。隊長達は先に行ってください。」

 

「・・・・・・すまない。頼んだぞ。」

 

「了解!!」

 

大塚は操縦桿を操作して機体を部隊から離れると、ターナケインの注意を引き付ける様に飛行を始める。

 

「さぁーてと、勇敢な竜騎士殿。お前の相手は俺たちだ!」

 




補足説明
8式対地戦闘ヘリ はちどり
主回転翼直径:13.41m
胴体幅:3.28m
全長 17.7m(回転翼含む)
全高 4.9m
自重 5,165kg
発動機 HE T280 ターボシャフト 2基
最高速度 時速450キロ
実用上昇高度 6,400m
航続距離 2000km
武装
30㎜対地ガトリングガン 1門
18連装対地ロケットランチャー 2基
空対地ミサイル 8基
乗員 前席:副操縦士兼射撃手、後席:操縦士(計2名)

2008年に正式採用された最新型戦闘ヘリ。
最大の特徴は、対地用の大口径ガトリングと最大57㎜を超える複合装甲である。
前世界では、圧倒的な対地攻撃能力で戦車キラーとしてとても恐れられた。
また、名目上は対地用だがある程度の空戦能力もある汎用性の高いヘリでもある。

パーパルディア皇国について

  • 原作通りに存続する
  • 滅亡一択、慈悲はない
  • 作者が自由に決めて

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