1「出会い」
20XX年4月25日
警視庁本部庁舎3階、組織犯罪対策部 組織犯罪対策五課の奥にて、その日も彼らは長い長い暇な時間を思い思いに過ごしていた。
「『名探偵眠りの小五郎、またお手柄』…か。最近ノリに乗ってますねぇこの人」
そう何気なく、警視庁特命係所属、冠城亘巡査はスポーツ紙を眺めながら自分の上司へ話題を振った。
「えぇ、ここ最近の活躍には目を見張るものがありますねぇ」
同じく特命係所属、杉下右京警部はこよなく愛する紅茶を味わいながら、自らの部下へと目をやった。
「確かこの人、元刑事なんでしたっけ?」
「ええ。元捜査一課の刑事だそうですよ。確か目暮警部の部下だったとか」
「ああ、一課の目暮さんですか。あまりお話しした事は無いですが、僕らにも優しい方ですよね」
「普段我々は伊丹さん達と遭遇する事が殆どですからねえ」
警視庁特命係。
「陸の孤島」「人材の墓場」などと揶揄される部署所属の彼らにとって、正式な仕事とはあくまで「特別に何か命じられたら何でもする」だけであり、何も起きなければただ暇を持て余すだけ、もしくは呼ばれてもいないのに事件へ首をつっこんで捜査を行う、という感じである為、こうして本来は勤務時間中だが雑談に花を咲かせるのも日常風景なのであった。
「そういえば小耳に挟んだんですが、毛利探偵が事件に関わる時、必ずと言って良いほどある小学生が現場にいるそうで」
そういって冠城は立ち上がり、杉下のデスク側へ近づいた。
「ほう?小学生ですか」
「ええ。本来は子供に事件現場を見せるなんて褒められた事ではないんですが、どうにも頭が良いというか発想力がある子供らしく、事件解決に一役買うこともあってか目暮班の方や鑑識の人達とも仲が良いそうで」
「確かに、子供を事件に関わらせるというのは好ましくありませんねぇ…」
「まあ殺人現場とか、普通子供に見せる物じゃないですしね」
とわざとらしく肩を竦めてみせる冠城。
「しかし目暮警部が見逃しているという事はよほど賢い子なんでしょうか」
「らしいですよ?噂じゃあの怪盗キッドの犯行も防いだとかなんとか」
「やけに詳しいのですねぇ…僕にはそちらの方が驚きです」
杉下はそう言いながら冠城へ白い目を向ける。
「興味が出たから『少し』調べただけですよお。何せ暇ですし?」
「全く…それで、その小学生の子は何という子なのですか?」
「確か江戸川コナン君というそうですよ」
「ほぅ…江戸川コナン…面白い名前ですねぇ…」
プルルルル…
とその時杉下の携帯に電話が掛かってきた。
「はい、杉下です」
『やぁ杉下君、突然すまないね』
「お疲れ様です。甲斐さん」
電話の相手は、甲斐峯秋。警察庁長官官房付という立場で特命係の指揮統括役を担っている人物。
杉下とは前任の相棒が居た頃からの長い付き合いである。
『悪いんだが、折り入って君達に頼みがあってね…』
***
「んで、何で僕らが甲斐さんの代役で食事会に…」
その夜。二人は都内の高級住宅街を歩いていた。
「仕方ありません。甲斐さんが急な用事でどうしても参加できないからと仰っていたのですから」
「だからってわざわざ僕らに行かせますかね?しかもあの『黒川大造』の」
「まぁ良いじゃありませんか。あくまで私的な食事会との事でしたし」
「断れば良いのに…」
「確かな事は分かりませんが、行きたくない、でも断りづらい…といった所なのでしょう。何せあの『黒川大造』なのですから」
厄介事を押し付けられた事をぼやく冠城。
そんな事を話している内に、二人は黒川邸に辿り着いた。
杉下が代表して呼び鈴を押すと、間もなく一人の女性が表に出てきた。
「本日はようこそおいで下さいました。杉下様と冠城様でお間違いないでしょうか」
「はい、甲斐峯秋の代理で参りました杉下と申します」
「冠城です」
「お話は伺っております。私、家政婦の中沢真那美と申します」
中沢と名乗った若いその家政婦は、二人に会釈すると中へ招き入れる。
「さぁどうぞお入りください。他の皆様もお待ちです」
中沢に続いて二人は屋敷に入っていく。
屋敷内は高級感あふれる家具や照明で彩られており、如何にもな雰囲気であった。
「さすが、黒川邸。金がかかったお屋敷ですね」
小声で杉下に話しかける冠城。
「外観もそうでしたが、イギリスの古典建築の様式が取り入れられているようですね」
「右京さん、建築も分かるんですか?」
「多少かじった程度ですよ。この辺りには同じようにイギリス古典建築様式のお宅は何軒かあります」
「へぇ、そうなんですね」
と、前を歩いていた中沢が足を止める。
「こちらが広間兼食堂でございます。どうぞお入りください」
中沢が扉を空け、二人が中に入ると既に五名の先客がいた。
高級そうな緑のスーツの男性と、こちらも高級そうな洋服を身に纏った女性。
そして家族連れだろうか、どこか見覚えのある中年の男性と高校生くらいの少女、そして小学生くらいの眼鏡の少年がいた。
「皆様、こちら本日ご欠席の甲斐峯秋様の代理でお越しになられました杉下様と冠城様です」
紹介された二人が会釈すると、その前に一人の男性が歩み出てきた。
「初めまして、自分は黒川の息子で黒川大介と言います」
「この度はお招き頂きありがとうございます」
二人と握手する大介は、傍に座っていた女性に顔を向ける。
「あちらは親父の後妻で…」
「黒川三奈と申しますわ」
そう言って立ち上がり会釈する三奈。
「そして、こちらの方はご存じかもしれませんね。有名な名探偵の毛利小五郎さんです」
紹介された小五郎は立ち上がり、杉下に駆け寄る。
「杉下警部でいらっしゃいますね!私、毛利小五郎と申します!以前は捜査一課に所属しておりました!」
「ご活躍は聞いておりますよ。目暮警部の部下だったそうですね」
「はい!…っと、紹介が遅れました。こっちが娘の蘭です」
「毛利蘭です。よろしくお願いします」
紹介された蘭が立ち上がり会釈する。
「それと、こいつは居候の…」
そう言って紹介された少年は、まるで「余計な事を言いやがって」とでも言いたげな白い眼を小五郎に向けた後、二人に向き直り、
「江戸川コナンです!」
笑顔でそう自己紹介した。
初めましての方は初めまして。
お久し振りの方はご無沙汰しております。
餌屋と申します。
今回久しぶりに小説を投稿させて頂きました。
復帰作はコナンと相棒のクロスオーバーです。
大好きな作品同士一度やってみたかったんや…!
エタらないように執筆頑張ります。
拙い文章、荒い設定諸々あるかと思いますが、どうか暖かく見守って頂ければと思います。