米花シティビル前は相次ぐ爆発によって既に大パニックに陥っていた。
警察や消防、レスキュー隊が事態の収拾に当たるが、建物内部は崩れており大人が入っていく事は厳しい状況だった。
「らーん!どこだ!どこにいる!…くっ目暮警部!救助隊は何をしてるんすか!!」
「落ち着け毛利君!落ち着くんだ!」
辺りを探し回るも姿の見えない蘭を求め、小五郎は半ば狂乱状態になりながらも目暮に詰め寄る。
そこに後から到着した森谷も姿を見せた。
「ふふ…」
***
一方、米花シネマ1。
蘭は爆発によって脱出が出来なくなってしまい、取り残された人々と一緒にいた。
そこへ蘭の携帯が鳴る。
相手は新一だった。
「もしもし…?新一なの…?」
『蘭、良かった!まだ電話は繋がるみてえだな!』
「何よ今更…いつもいつも…どこにいるのよ…分かってるの?今私がどんな目に遭ってるか…」
『あぁ、知ってるさ…瓦礫で塞がれた非常ドアの前まで来てるからな』
「え…!」
『ここまでは何とか来れたけど…どうしても開かなくてよ。それよりも蘭、周りにアタッシュケースとかトランクとか、変な物ないか』
「変な物…?」
蘭が辺りを見回すと、椅子の後ろに隠すようにして置いてある紙袋があるのに気づいた。
中身を見ると、デジタル式のタイマーが取り付けられた鉄の箱が入っていた。
「何これ、すごく大きいし重いしデジタルのタイマーが付いてるけど…」
『気をつけろ!そいつは爆弾だ!』
「爆弾…!?」
(くそぉ…教授め、やっぱり一番大きい奴を仕掛けてやがったか…!)
『残り時間は!』
「えーっと、42分7秒よ」
(42分…てことは爆発は丁度0時3分か…3分?)
3分という微妙な時間に、コナンは森谷が言っていた言葉を思い出す。
お前の為に3分間作ってやった、じっくり味わえ
(何なんだ…3分って!)
***
シティビル前では懸命の消火活動が行われているが、瓦礫で埋まっており映画館のフロアまで辿り着くのにまだ時間が掛かる状況だった。
杉下は側に立っている森谷がどうにも余裕な様子を見せているのが気になった。
「随分余裕そうですねぇ」
「ん?…ふっ」
「…配線図を持っていかれたにも関わらず、あなたは爆弾が解除されないと自信がおありのようだ…なるほど、トラップですね」
杉下の推理に一同が驚く。
「ど、どういう事だね杉下君!」
「コナン君の姿が見えない所からも、恐らく工藤君に配線図を渡しに行ったのでしょう。そして工藤君なら、蘭さんを救う為必ず爆弾を解除しようするはずです」
「工藤って奴は、そんな知識まで持っていると?」
伊丹がある意味当然の疑問を投げかける。
「彼の能力は非常に高い。コナン君がためらいもせず工藤君に持って行ったのは、彼なら解除できる確信があったからでしょう」
「まあ工藤君ならあり得そうだが…なら心配ないんじゃないのかね?」
「ええ、本来は。にも関わらず森谷教授の自信は揺らいでいません…なら、彼にも簡単に解除できないようなトラップが仕掛けられている。そう考えるのが自然ですよ」
「なるほど…」
その時、また爆発が起こる。
「警部殿!まさか蘭が…」
「落ち着け!あそこは蘭君がいる場所じゃない!」
小五郎は相次ぐ爆発にどんどん精神がすり減っていた。
「安心しろ。あんたの娘が吹っ飛ぶまで後15分もある」
「…貴様ぁ!!言え!!どうしたら解除できる!!」
また怒りが込みあがってきた小五郎が、森谷に掴みかかる。
「…ふふふ、あの爆弾は特別製でね…最後の一本が運命を分ける。最後の一本がな…」
***
「…よし、切ったよ」
『ふぅ…何とか間に合いそうだな。後は残りの黒いコードを切れば爆弾は止まる』
「黒いコードね…」
残り5分を切っていたが、蘭たちは順調に爆弾を解体していた。
しかし、タイマーが止まらない。
「新一…?黒いコードを切ったけど爆弾が止まらないよ?」
『え?』
「それにまだコードが2本残ってるよ?赤いのと青いのが…」
『何だって!?』
***
『今やっと、4階への階段の通路があきました!』
「急ぐんだ!爆発まで後4分しかない!」
遅々として進まない救出活動に、目暮は焦りを見せる。
その横で小五郎は虚ろな目をしながらビルの方へふらふらと歩いていく。
「ダメですよ毛利さん!」
「蘭…蘭…今行くぞ…」
「落ち着いてください毛利先輩!」
「きっとレスキュー隊が助け出してくれますから!」
「離してくれ!!蘭を助けるんだ…蘭!らぁーんっ!!!」
白鳥と伊丹が小五郎を二人がかりで宥めにかかる。
もはや小五郎の精神は限界に来ていた。
その姿を見ていた森谷が呟く。
「…哀れな父親の娘への愛か…建築に愛は必要ない。人生にもな…」
「…」
杉下はそれを聞き逃さず、怒りの目で睨みつけた。
(もはや、あなただけが頼りです…頼みましたよ。『工藤新一』君。)
***
(まさか、俺を嵌めるためにわざとコードを書かなかったのか…)
「どうする?両方とも切っちゃう?」
『馬鹿野郎!!片方はトラップだ!切った瞬間に吹っ飛んじまうぞ!』
「そ、そんな…」
その時、近くの時計台が0時の鐘を鳴らした。
(後3分…くそっ!どっちなんだ!!)
「…新一」
『何だ?』
「…ハッピーバースデー、新一」
『…え?』
「だって…もう言えないかも知れないから…」
(蘭…)
***
「…なるほど、ようやく分かりました、あの時言った3分とは、工藤君の誕生日を3分間味わえという意味だったんですね」
「…ふふ」
杉下が0時の鐘を聞き、森谷の発言の意味に気づく。
「…悪辣なあなたの事です。仕掛けているトラップも、蘭さんから得た情報を元にしているのでしょう」
「…どういう事です?」
「毛利さん、蘭さんは何か言っていませんでしたか?今回工藤君との約束の為に、何か計画している事などを…」
「…そういえば、蘭も新一も今月のラッキーカラーが赤で…観に行く映画も『赤い糸の伝説』だとか…」
「…それです!!」
小五郎が思い返す数日前の蘭の話を聞き、杉下が仕掛けに気づいた。
「恐らく、最後に赤ともう一つの色のコードを用意しており、蘭さんがラッキーカラーだと赤色を切るように仕向けるつもりなのでしょう。違いますか!」
「ふふふ…もう遅い…残り1分を切った…手遅れだよ」
「…蘭…赤じゃない!!らぁーん!!」
残り30秒。
森谷以外の全員が固唾を呑んで見守る。
10秒。
5
4
3
2
1。
「…ば、馬鹿な」
0時3分。
爆発は起きなかった。
「蘭…」
「解除、出来たのか…」
「やったぁー!!!」
爆発が起きない事から、無事爆弾が止められたと分かり歓喜の声があがる。
森谷は自身の予想が外れた事に愕然とした。
「…どうやら、あなたの負けのようですね」
杉下が、驚愕に固まる森谷に歩み寄る。
「しかし、あなたの美学と言うのも大した物ではありませんねぇ…」
「くっ…私を愚弄するか!!」
「先程、あなたは建築に、人生に愛など必要ない。そう仰いましたね」
「…それがどうしたっ」
「…哀れな人だ。あなたは愛という、この世でもっとも美しい物を理解する事が出来ないのですから…
もはやあなたに、何かを語る資格などなぁいっ!!!!!」
杉下の激しい叱責に、森谷はもう、何も返す事も無くただ俯くだけだった。
***
その後、無事映画館に取り残されていた蘭たちも無事に救出された。
蘭は新一が居ないかと辺りを探し回るが見当たらず、代わりにコナンを発見する。
「コナン君!」
「蘭姉ちゃん!良かった無事で!」
「新一見なかった?」
「あれ、さっきまで居たんだけど…」
「もうあいつ…また勝手に行って…」
「と、ところで新一兄ちゃん不思議がってたよ?蘭なら絶対赤を切ると思ったって」
「だって…切りたくなかったんだもん。新一と赤い糸で繋がってるかもしれないでしょ?」
「へ…」
顔を赤くして赤を切らず青を切った理由を話す蘭に、コナンも顔を赤くして呆然としてしまう。
「…あ、毛利蘭さんですか」
そこに救急隊員が近寄って声をかけてきた。
「あ、はい」
「一応念の為、病院で検査と怪我の治療を…後警察の方が中の様子を聞きたいと仰ってます」
「分かりました。じゃあコナン君、また後でね」
「う、うん…」
そう言って蘭は隊員に連れられてその場を離れていく。
(蘭…あいつ…)
「コナン君」
蘭を見送ったコナンの背中に、声がかかる。
振り向くとそこには、微笑みを浮かべる杉下と冠城がいた。
「杉下警部…冠城刑事…」
「や!お疲れ様!」
「コナン君、少しよろしいでしょうか。
君と、話したい事があります」
ちょい短いですがキリが良いので。
次回、摩天楼最終回。
めちゃくちゃ長文です。(予告)
9月2日、19時更新です。
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