名探偵コナン×相棒   作:餌屋

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12「『江戸川コナン』」

 

 

「それで…話って何?」

 

杉下に連れられて、シティビルから少し離れた公園の人気のない一角にコナンはいた。

 

「実はですね。ここ最近、ずっと僕の好奇心を掻き立てていたある疑問が、遂に解決しまして」

「ある疑問…?」

「コナン君、君の事です」

「っ!」

 

名指しされたコナンは、今から何の話があるのか遂に確信に至り身構える。

 

「え、右京さん何か分かったんですか!?」

 

冠城は、実の所杉下が何をしようとしてるのか理解している訳ではない。

ただ森谷が連行された後、杉下が一言「さて、コナン君はどこでしょうねぇ」と言って探し出したのに着いてきていただけだった。

 

「ええ。ようやく、全てが繋がったんですよ」

「それで…一体?」

 

 

「…コナン君。君は、『江戸川コナン』君ではありませんね?」

 

 

「…!!!」

「…どういう事です?『江戸川コナン』君じゃないというのは…本当の名前が分かったんですか!?」

 

冠城が、杉下の指摘に驚きを浮かべる。

 

「…コナン君にも分かるよう順番に説明しましょう。実は最初は、君の事をただの頭の良い小学生としか思っていませんでした。『小学生なのに優秀なものだ』とそのギャップに興味を抱いただけだったんです。しかし君の現場での行動を見て、どうにも優秀『すぎる』と僕は気になり始めました」

「現場…黒川邸の事件の時ですね」

 

冠城が当時杉下がコナンを気になり始めていた時の事を思い出す。

 

「君は鑑識の邪魔にならないよう気を遣いながら、現場に残された物を調べ、推理に必要な要素を集めていました。

普通子供が現場をうろついていたら放り出されるのが関の山です。しかし、君は目暮警部だけで無く周りの鑑識からも『また君か』程度で済むほど信頼を得ていました…驚きましたねぇ。そんな小学生、中々お目にかかる事は出来ません。頭が良いだけでは説明がつきませんよ。

これが一つめ。そしてもう一つ、この時気になったのは毛利さんです。

『眠りの小五郎』の実力…あれは本当に毛利さんの実力なのだろうかと」

「!!!」

「あの時、毛利さんはろくに現場を調べてはいませんでした。その結果、最初は突拍子もないトンチンカンな推理を展開されました」

「…しかしその後急に全く違う推理を始め、見事的中させた」

 

冠城は当時話に上がった疑問点を振り返る。

 

「毛利さんはそれまでの推理を冗談と仰っていましたが、僕にはとても冗談を言っているように思えませんでした。

それにその後急に推理を変えた時の様子もおかしかった…その時コナン君、君の姿が周りから消えている事に気づきました。

勿論、君はまだ小学生。子供が勝手にどこかへ行くなどというのはあり得ない事ではありません…しかし、大人顔負けな程、的確に調査を進めていた君が、突然そのような行動に出るでしょうか。

その時からますます疑問は深まっていきました。『江戸川コナン』とはどういう少年なのだろう、そして『眠りの小五郎』の真実とはなんなのだろう、と」

「それから調べ始めたんでしたね」

「調べていく内に興味深い点が次々と分かってきました。何と、君の戸籍も、住民票も存在しなければパスポートも存在しない。事実上、『江戸川コナン』という少年は存在していなかったのです」

「…つまり、何者かが『江戸川コナン』を名乗っている」

「ええ。更にその後、君が毛利さんに預けられるようになった頃から『眠りの小五郎』の名前が有名になり始めた事が分かりました…ここまでくれば、もはや疑問は確信へと変わる。『江戸川コナンと眠りの小五郎には何か深い関係がある』と」

「例えば、コナン君が毛利さんに調査結果を伝えている、とかですか」

 

杉下の解説から、冠城はあり得る関係性を推理する。

 

「確かにその可能性も考えました。しかしそうすると、最初の毛利さんのトンチンカンな推理、それに推理の時コナン君がいなかった事に説明がつきません」

「なるほど…コナン君から聞いていればそれで済む話ですからね」

「さて…ここまで分かった所で、僕達は毛利探偵事務所に話を聞きに行く事にしました」

「事務所に来てたの!?」

「ええ。ですが、残念な事にその日皆さん留守にされていました。森谷帝二のガーデンパーティーに参加されていたんです」

「あの日か…」

「その時、運よく『ポアロ』の従業員の榎本梓さんから、ある情報を聞く事が出来ました。今回のパーティーは本来『工藤新一』君が招待されていた。その代わりに皆さんが参加する事になったと」

「梓さんが…」

(そういや蘭が愚痴ってたっけ…)

 

コナンは、当時蘭が新一の事を梓に話していた事を思い出した。

 

「その時、『工藤新一』という新しい要素が出てきた事で、更に僕は疑問を深める事になります。『工藤新一』が記録上最後に活躍した『ジェットコースター殺人事件』以降、一切話を聞かなくなった代わりに『江戸川コナン』が現れ『眠りの小五郎』が有名になり始めた事が分かったのです。果たして、この繋がりにどのような『真実』が隠されているのか…ここまででコナン君、何か聞きたい事はありますか?」

 

杉下は微笑みながらコナンに問いかける。

 

「…ううん。特にないよ。それで?」

「では…さて、ここまで推理が及んだは良いものの、今回の爆弾事件が発生してしまいます。しかしその間も目暮警部や少年探偵団の皆などに話を聞き、いくつかの手掛かりを得る事が出来ました」

「コナン君が工藤君の親戚だと言っている事と、阿笠博士がコナン君に発明品を与えている事、そして少年探偵団の実質的なリーダー、いや手綱役という事ですね?」

「ええ。そしてコナン君が彼らの手綱を引っ張ろうとしている事が分かり、『異様に大人びている』と思いました。逆に言えば『大人のよう』ではないかと…」

「確かに、子供らしくありませんが…え?どういう事です?」

 

杉下の推理に、もはや冠城も理解が追いつかなくなってきていた。

 

「僕は、その時初めて気づきました。コナン君、君は異様に大人びており、現場での調査でも淀みない物を見せていました。それこそ、『以前から探偵だった』かのように…」

「…右京さん?」

「今回の事件、工藤君への挑戦を、彼がどうしても受ける事が出来ないから代わりにコナン君が動いた、と聞いていましたが…もし、『コナン君が自分の意思で率先して動いた』としたら」

「率先して動いたって…コナン君に挑戦が来た訳でもあるまいし……え?……」

 

そして遂に『ある可能性』に冠城も辿り着いたと分かり、杉下は更に笑みを深める。

 

「…ホームズの言葉にありましたねぇ。『全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる』と。

 

工藤君は事件続きで蘭さんに会いに来ることも出来ない?なら何故招待状をポストに入れに来る余裕はあったのか、もっと言えば何故招待状が届いてると気づく事が出来たのでしょう。

 

事件で手が空かないからコナン君に代わりに頼んだ?このような大事件、彼なら自分から解き明かそうとするはずです。

 

『眠りの小五郎』はコナン君のアドバイスによるもの?にしては疑問点が多すぎます。

 

…何故、中々連絡がつかない工藤君が知らないはずの僕の携帯へ連絡できたのか。コナン君にたった数時間前に伝えたばかりで。

 

 

…ええ、そう。そうなんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

コナン君。君は、

 

 

 

『工藤新一』君ですね?」

 

 

 

「………」

 

コナンは杉下の質問に返事をしない。

 

「だとしたら全てに辻褄が合うんです。工藤君が姿を消し、代わりに毛利さんが有名になったタイミングが綺麗に入れ替わっているのも。コナン君が現れたタイミングが丁度その間だという事も。蘭さんに会えない理由も。コナン君が爆弾事件に動いた理由も。全て、説明が付くんですよ」

「ちょ、ちょっと待ってください右京さん!!コナン君が…工藤新一?そんな、だって彼はどこからどう見たって子供ですよ?」

「正直な所、僕も未だに信じがたいと思っています。しかし…それ以外にどうしても、納得がいく理由が思い浮かばないんです」

「それこそ、まだ全て偶然だっていう方が納得できますよ!!そんな…か、仮にコナン君が工藤君だったとして、じゃあ何でこんな姿に!?」

「…これに関しては、あくまで僕の憶測ですが、例えば…阿笠博士」

「…へ?」

「阿笠博士の発明品で、もし子供に戻れる薬というものが存在し、その薬が本当に効いて子供になったは良いものの、高校生の姿に戻れなくなってしまったとしたら…そう考えると、阿笠博士が自らの発明品を彼に惜しみなく渡している事も、贖罪の面があるという風に考えられます。元々阿笠博士のお宅と工藤君のお宅は隣同士、交流もあったでしょうからねぇ」

「…そんな…」

 

冠城は余りに現実離れした杉下の推理に、思わずコナンの方を見つめる。

コナンは、俯いたままだった。

 

「……」

「実際の所は分かりません。確固たる証拠がある訳ではありませんから…出来れば君の口から聞きたいのですがねぇ。如何ですか」

「…はぁ」

 

コナンは、笑みを浮かべため息を一つつき、

 

 

「…父さんから聞いてた通り、流石です。杉下警部」

 

 

これまでとは打って変わり『工藤新一』としての顔で、杉下に向き直った。

 

 

「…話してくれますね?」

「ええ…全てお話しします。まず先に言っておきたいのは、俺の体が小さくなった原因は、博士じゃありません。言うなれば…俺が迂闊だったんです」

 

そうして新一は、全てを語り始めた。

 

 

***

 

 

「なるほど…黒ずくめの男達ですか」

 

新一は、あの日ジェットコースター殺人事件を解決した後トロピカルランド内での取引現場を目撃した事。その後背後から襲われ毒薬を飲まされた事。死んでしまうかと思ったら、体が縮んでしまった事を話した。

 

「俺が生きている事が奴らにバレたら、また命を狙われ周りの人間にも危害が及びかねない…そう博士に助言されて、正体を隠すことにしたんです」

「なるほど…『江戸川コナン』という名前、初めて聞いた時から面白い名前だと思いましたが…『江戸川乱歩』と『コナン・ドイル』から取ったのですね?」

 

杉下は、初めてコナンの名前を聞いた時に感じた事を思い出す。

 

「ええ。蘭に名前を聞かれて咄嗟に思いつきまして…」

「確かに、阿笠博士の発明品による事故で体が縮んだだけなら、まあ阿笠博士の責任になるのを避けたとも考えられますが…だとしてもわざわざ蘭さんにまで正体隠す必要は無いでしょう」

「ええ…博士は小さくなった俺が探偵を続け、黒ずくめの奴らを追えるように色んな発明品を作ってくれただけなんです」

「そうですか…では『眠りの小五郎』も?」

「はい。おっちゃん、偶に鋭い時もあるんですが、杉下警部もご存じの通り普段は頼りないので…『真実』が明かされずに犯人が野放しになるのは見逃せなく…」

「『眠りの小五郎』…もしや麻酔薬でも使っているのですか?」

「ええ…これです」

 

と、新一は腕に巻いた時計型麻酔銃を示す。

 

「この時計型麻酔銃から出た針は体内にすぐ溶け込み、しばらく相手を眠らせます。副作用も基本一切出ません」

「…もはやオーバーテクノロジーですねぇ」

「あれって本当に寝ていたのか…」

 

杉下はあまりの技術力に呆れ、冠城は『眠りの小五郎』が本当に寝ていた事を知り、少し笑ってしまう。

 

「眠らせた後、この蝶ネクタイ型変声機でおっちゃんの声で喋っています」

「じゃああの時右京さんに電話したのは…」

「変声機で工藤新一の声を出しました」

「まさかその靴も何か機能があるのですか?」

「ええ。これはキック力を格段に上げる事が出来ます。子供の力じゃあどうしてもボールを蹴るのも弱くなって、もし犯人が襲ってきても反撃できないので…」

「それはまた…」

「…法律に触れかねない『正しいやり方』では無いのは俺も分かっています」

 

新一は一瞬ためらうように俯くが、優作の言葉を思い出し杉下の目をしっかり見つめ返す。

 

「父さんから聞きました…杉下警部、あなたは『法』を遵守する事が大切と考えていると」

「…ええ」

「…俺も、そう思います。ただ。俺にはこれ以外に方法が思い付きません…」

 

新一は、言葉を続ける。

 

「…奴らは神出鬼没。どれくらい大きな組織なのか、どこに奴らの仲間がいるのか、得体が知れません。実際、最初お二人が俺を探っていると知った時も奴らの仲間かと疑ったくらいでしたし」

「確かに…君からしてみれば我々を疑わざるを得ないでしょうねぇ」

「正直、誰を信じていいかも、どうやって奴らに近づくかも分からないくらいです…でも、俺は諦めるわけにはいかないんです。体を元に戻すまで…『真実』を解き明かし、奴らの組織を潰すために」

「…」

「どうか、俺に協力してくれませんか」

「…協力ですか」

「俺に力を貸してください、お願いします」

 

そうして新一は杉下に深々と頭を下げる。

 

「…」

「右京さん…」

 

冠城は、過去杉下と衝突した時の事を思い出し不安そうに、だが真剣な表情で声をかける。

 

「…確かに、君の言う通り僕は『人は犯した罪を法で裁かれなければならない』と考え、警察官としてどんな事情があれども『法を第一に考えなければならない』と思っています」

「…」

「しかし…いえ、そもそもの話なのですが果たして罪に問う事が出来るでしょうか?」

「…え?」

「麻酔銃で毛利さんを眠らせていたのも、その靴で犯人に反撃したことも、全て『江戸川コナン』という存在しない子供が行った事です。その正体は工藤君でしたが、しかし…果たして『工藤新一=江戸川コナン』と証明できるでしょうか」

「それは…」

「理屈は通っていても、科学的に証明する事は現状出来ません。それに冠城君、体内で吸収され消えてなくなる針や、何も意識障害や副作用が無い麻酔薬など聞いたことがあるでしょうか?」

「…いえ、ありませんね」

「例え罪に問おうと思っても、倫理的な問題はさておき、法律的にはそのような技術が存在していると証明する事と、それが果たしてどのような罪に問えるのか疑問が残ります。工藤君も、開発した阿笠博士も、罪を証明し立件する事は難しいでしょうねぇ」

「杉下警部…」

「もっと言えば、悪意を持ってやっているとは到底思えません。その点からも、例え立件しても不起訴になる可能性の方が高いでしょう」

「…それでも、杉下さんは彼らを逮捕するつもりですか」

 

冠城は、杉下の考えが読めず、まさかと思い少し怒りを見せる。

 

「…いえ?」

「…え?」

「今のはあくまで法に則った場合の話です。勿論、法に即り罪を償うべきという想いがゼロだとは言えません。それが僕の信念ですから。しかし…彼らを逮捕して本当に良いんでしょうか」

「…」

「話を聞くに、黒ずくめの男達の組織はかなり不気味な物です。どこに仲間がいるか分からない以上、警察内部にも紛れ込んでいる可能性は否定できません。もしそうなら、今彼らを逮捕しようとすると…工藤君が生きている事が分かってしまいます」

「勿論、そうすれば僕達も含め、関わりのあった人間全てが危険に晒されますね」

 

冠城は、新一が生きている事がバレた時のリスクを改めて言葉にする。

 

「その点からも、彼らを罪に問う事は、更なる悲劇を生む可能性が非常に高い…もはや僕には、法に即る事が絶対に正しい判断だとは言えません」

「右京さん…」

 

これまででは考えられない杉下の言葉に、冠城が静かに驚く。

 

「…工藤君、一つだけ約束してください」

「何でしょう…?」

「先程話した通り、法的な面では君と阿笠博士を罪に問えるか難しいところです。

しかしそれでも、君の行っている事は非常に問題があると言わざるを得ません。特に時計型麻酔銃、あれは使わなくて良いならなるべく使わない方が良いでしょうねぇ。君の為にもなりません。せめて必要最低限に」

「…はい」

「更にいうならば、倫理的な面でも問題があります。毛利さんはあなたの力を自分の力と勘違いしてしまっている訳ですし、蘭さんはずっと騙している状況な訳です。それに、君の事を友人と思っている探偵団の皆の事もあります。

…良いですか。どうか、元の体に戻った時には、自らの行った行動、作った状況、全てを必ず清算し、彼らに筋を通すようにしてください。

それは『江戸川コナン』としての贖罪、とも言えるでしょう。その方法はその時の君に任せます。

そして、元に戻ってからは今度こそ、法を守る事で正義を示す事…約束できますか?」

「…はいっ」

「…よく、話してくれましたねぇ」

 

そういって杉下は、新一の前にしゃがみ込み優しい微笑みを浮かべて今は小さな肩に手を乗せる。

 

 

「もうあなたは、一人ではありませんよ」

 

 

 

「…杉下警部…」

「…これからも、険しい道のりが続くと思いますが、僕達に協力できる事があれば、いつでも連絡をください」

「俺も協力させて貰うよ。そんな得体の知れない組織、君一人に任せてはおけない。ですよね?右京さん」

「勿論、冠城君の言う通りです。警察官としても、私個人としても。君が『真実』を追い求める限り、協力する事をお約束します」

「…っ…ありがとうございますっ…」

 

新一は、改めて杉下に深々と頭を下げる。

 

 

 

こうして、工藤新一に、心強い味方が出来たのだった。

 

 

 

***

 

 

 

翌日昼、特命係。

 

 

「よっ、暇か?」

「ええ、暇です」

「暇ですよ~」

 

今日も角田課長が、コーヒーを入れに特命係へ顔を出した。

 

「爆弾魔の森谷帝二、やっと供述を始めたそうだぞ。送検も時間の問題だろうな」

「そうですか、それは何よりです」

「一課じゃ、15年前に両親が死んだ別荘の火事についても念の為追及してるそうだが、そっちは中々難しいみたいだな」

「確かに別荘の火事は森谷帝二の犯行であると非常に疑わしいですが、もう証拠も残っていないでしょうしねぇ。残念です」

「ま、これで世間を騒がせた事件も一件落着って訳だ。これで少しは平和になると良いんだがねぇ…」

 

角田は話したいことを話し終えるとコーヒーをすすりながら自席へ戻っていく。

 

「…確か、工藤君が事件に関わったっていうのは内密になったんでしたっけ」

「ええ。あくまで、捜査上森谷帝二の犯行であると判明しただけという事になりました」

「ま、工藤君が活躍したなんて分かればどうなるか分かったもんじゃないですしね」

「しかし…黒ずくめの組織ですか…」

 

杉下は、昨夜新一から聞いた組織について考えていた。

なお、周りに事情を知らない人間がいる場合はコナン、事情を知る人間だけなら工藤と呼ぶように二人は決めている。

 

「…一体何者なのか。そして何が目的なのか」

「工藤君の体を小さくした毒薬といい…非常に危険な組織である事は確かですね。僕らでも調べてみます?」

「…いえ、今は止めておきましょう」

 

冠城は杉下が意外に消極的な事に驚く。

 

「あれ?右京さんなら早速動くと思ったんですが…」

「何も情報が無い以上、動きようがありませんし、もし我々が調べ始めた事を察知されれば何が起きるか予想がつきません。残念ですが、無策のままで動くのは現状危険すぎます」

「じゃあ、どうするんです?」

「今は、工藤君と連絡を取りつつ、奴らに関する情報が来るのを待ちましょう。焦らず、確実に」

「…まあ仕方ないですね。にしても右京さんがまさか『法に則る事が絶対に正しい判断だと思えません』なんて言うとは…驚きました」

 

冠城は昨夜、杉下が言った今までを考えるとあり得ない発言を振り返る。

その横で杉下はしつこい冠城に白い眼を向ける。

 

「…まだ言いますか。まぁ、僕としても驚いています。まさかこのような結論に至る事があろうとは…」

 

 

(…それも、特殊過ぎる事情と…彼の『真実』を追い求める姿に好感を覚えたから…なのでしょうかねぇ)

 

 

 

「次はいつ会えるでしょうか。楽しみですねぇ、『江戸川コナン』君」

 

 

 

 

 

「摩天楼」完。

 

 

 

次回「標的」編。

 




以上で「摩天楼」完結です。
驚異の7903文字。詰め込みすぎたかな…笑
そして後書きも長いです。(主に言い訳)
よろしければ最後までお付き合いください。




以前後書きで触れた、右京の落としどころは、本編中に書いた通りです。
そもそも、コナン=新一という事が科学的(現実的)に立証できない以上、法に問う事は難しいと思いますし、阿笠博士のオーバーテクノロジーは、現代の法律に即していません。
麻酔銃は本当にどうしようって感じでしたが、麻酔針が消える、副作用が起きている様子が一切ない、あくまで眠っているだけ、という所からまだギリギリグレーという結論に至りました。
そして黒の組織の脅威という特殊すぎる事情、また、二人に悪意がある訳ではない事、そしてコナンの『真実の追及』という決意、これらが大きな要素として右京の判断に影響した形です。
一応、相棒原作でも相手や事情によっては逮捕を見送ったりしたケースもあった筈でしたし。

非常に悩ましい問題でしたが、「あくまで二次創作として楽しい話にしたい事」、「断罪系にしたくなかった事」、「これ以外に出来る限り両方の作品の要素を残しつつの最善な落としどころが思いつかなかった事」、「書きたかった最終地点を曲げたくなかった事」もあり、このような形に落ちつきました。
なので原作は名探偵コナンにし、あくまでコナン世界の物語をベースにし相棒の要素を組み込んでいくという構成の考え方でした。

正直、賛否両論ある事は…もしかしたら否の方が多いかもしれませんが…覚悟の上です。
「こんなのコナンじゃない」「こんなの相棒じゃない」「こんなの杉下右京じゃない」
そんな風に思われる事があってもそれはもう仕方ないかと思います。
それほど、両作品は愛されている作品であり、両極端な作品だと思いますので。

以上長々と言い訳失礼しました。ご理解頂ければ幸いです。


さて、次回からの事です。

当初は摩天楼編で連載終了の予定でした。
そもそも最初短編カテゴリで投稿を始めたので。

しかし、見向きもされないだろうと思っていたのが予想を大きく上回る反応を頂けた事で、今後の展開についても色々考えるようになりました。UAがある限り、続けていこうかと思います。

これからはリアルの都合もあり完全に不定期更新となりますが、気長にお付き合い頂ければと思います。

次は「14番目の標的」編です。今から書きます。
…これはこれで悩ましい要素が沢山あるんです。
なんなら今後FBIやら公安やらが出てくるともっと悩ましい事になるのは分かってるんです。
例で言うと拳銃とかカーチェイスとかライフルとか拳銃とか違法捜査とか拳銃とか拳銃とか(ry
どーしよマジで…



最後になりましたが謝辞を。

多くのUA、お気に入り、評価、感想、本当にありがとうございます。
とても励みになりました。

これからもどうかお付き合いよろしくお願いいたします。

それではまた次回。




TwitterID @esaya_syosetu
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