名探偵コナン×相棒   作:餌屋

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2-2「遺留品」

 

 

緑台警察病院。

 

 

杉下と冠城は、車を停めると急いで目暮の病室へ向かった。

 

「目暮十三…ここですね」

「へぇ…目暮警部の名前って十三(じゅうぞう)って言うんですね…」

 

杉下がノックすると中から招き入れる声が聞こえる。

扉を空けるとベッドに横になっている目暮の他に、白鳥、小五郎、蘭、コナンに少年探偵団の面々が揃っていた。

 

「おお、杉下君に冠城君まで。わざわざすまんな」

「とんでもない。お元気そうで何よりです」

「お疲れ様です、杉下警部」

 

皆を代表して小五郎が杉下に挨拶する。

 

「お久し振りです。皆さんも目暮警部の事をお聞きに?」

「ええ。丁度皆でハイキングに行くところだったんです」

「丁度僕達も着いたところなんだ」

「そうでしたか。このような状況ではありますが、お会いできて良かったです」

 

蘭とコナンが、杉下に事情を簡単に説明する。

挨拶を交わしながら杉下とコナンは、目線を合わせお互い笑みを浮かべた。

 

(電話以外で直接会うのは久しぶりですねぇ…)

(まさかここで会えるとは…)

「…それで警部殿、傷の具合は」

「幸い急所は外れており命に別状はないのですが、数日は入院が必要との事です…」

「そうか…」

 

小五郎が目暮に容体を尋ねると、側に控えていた白鳥が代わりに答えた。

 

「使用されたのはハンドガンタイプのボウガンです。警部の事を知っていて狙ったのか、たまたま通りかかったのを面白半分で狙ったのか…その両面から捜査を開始しています」

「なるほど…」

「警察に対する無差別的な挑戦という可能性は無いんでしょうか」

「どうでしょう?警察に対する挑戦、という可能性はありますが少なくとも、無差別という事は無いでしょうねぇ」

「というと?」

 

冠城が頭に浮かんだ疑問を口にするが、杉下がそれを否定する。

 

「警部はジョギング中に撃たれました。という事は、制服やいつものスーツでは無かったはずです」

「ああ、運動する時はいつもジャージを着ておるよ」

「つまりその場合、犯人は服装がジャージであるにも関わらず目暮警部が警察官だと気づいたという事になります。制服警官を狙ったのなら分かりますが、この状況では警察官に対する無差別攻撃という線は無いでしょう」

「確かに言われてみればそうですね…」

 

杉下と冠城の会話に一同が耳を傾ける中、今度は元太が疑問を口にする。

 

「なあなあ、警部のおっちゃん。拳銃持ってたんじゃないのか?」

「ジョギング中に拳銃を持ってる訳無いだろうが…」

 

元太の問いに小五郎が呆れた声を上げる。

その様子に目暮は苦笑いを浮かべながら更に続ける。

 

「それに、例え持っていたとしてもワシは毛利君と違って、そっちの腕はいまいちでな…」

「え?お父さん拳銃上手かったんですか?」

「警視庁内でも一、二を争う腕前だったんだ」

 

蘭が小五郎の過去に驚きの声を上げる。

それに対し答える目暮の話に、冠城は以前角田課長から聞いた話を思い出した。

 

「あ!聞いたことありますね。射撃の腕は天才級だったって」

(へぇ…誰にでも取り柄があるもんなんだなぁ…)

 

コナンは、思わぬ小五郎の特技に笑みを浮かべる。

 

「…ところで、ボウガンを撃ったと思われる場所から妙な物が発見されました」

 

と、話の合間を見計らって白鳥が袋を取り出す。

中に入っていたのは段ボールで作った小さな西洋の剣だった。

 

「なんだこりゃ…」

(…あれ?)

(…おやぁ?)

 

遺留品を見てコナンと杉下は頭に何か引っ掛かりを覚える。

 

(…これどこかで見たぞ?)

(…このデザイン…どこかで…うぅむ、思い出せませんねぇ…)

 

二人は何だったのか思い出そうとするが、中々出てこない。

 

「これが何であれ、こんな遺留品が残されているとしたら…」

「…えぇ、犯人からの何らかのメッセージと考えられますねぇ」

「じゃあまさか」

 

冠城と杉下の推理に、目暮が驚きの声をあげる。

 

「ええ…第二の犯行もあり得るかもしれませんねぇ」

「うぅむ…一体誰を狙う気なんだ…」

 

更なる犯行も予想される中、手掛かりの少なさに頭を悩ませる一同だった。

 

 

***

 

 

翌日早朝、特命係。

 

 

「…あれ?右京さんお早いですね。おはようございます」

 

冠城が出勤すると、杉下が既に自席でパソコンに向かっていた。

 

「おはようございます。少々調べたい事がありまして」

「もしかして、昨日の目暮警部の件ですか」

 

冠城が杉下のパソコンを覗き込むと、西洋の剣に関して調べている所のようだった。

 

「ええ。現場に残されていた段ボール製の剣をどこかで見た事がある気がしましてねぇ」

「ホントですか?それで…?」

「残念ながら、何とも。流石に西洋の剣だけではどうにも手掛かりが少ないですねぇ」

「そうですか…」

「おはようございます」

 

とそこにいつも通り不敵な笑みを浮かべた青木がやってきた。

 

「おや、青木君。おはようございます」

「どうしたんだよこんな朝早く」

「いえ、昨日お二人が目暮警部のお見舞いに行ったと伺いまして、事件に興味があるんじゃないかと…」

「…だったら何なんだよ。ったく捜査の邪魔だから今構ってやれねえぞ?」

「おやあ?良いのかな、冠城亘。折角この俺が『杉下さんが必要かな』と思って捜査資料を持ってきてやったのに。要らないなら俺は帰るぞ…っとおい!!」

「んもぅ…それを早く言えよ…いつもありがとうなぁ?」

 

冠城の素っ気ない態度に帰ろうとする青木だったが、腕を引っ張られて止められてしまう。

青木を捕まえた冠城は頭を撫でながら、猫なで声で宥めに入る。

一言で言えば、いつもの光景であった。

 

「何か分かったのですか」

「…いえ、むしろその逆。何も分かっていません。残念ですが」

 

全く残念そうではないが、杉下の問いに冠城を振り払った青木は、現状を簡潔に纏めた資料を渡しながら答える。

 

「近くの防犯カメラにも怪しい人影は無し。遺留品の段ボールの剣にも指紋は付着していませんでした」

「そうでしたか。捜査状況はどうです」

「いたずらの可能性については言わずもがな、目暮警部個人に対する恨みについても対象者が多すぎて一日じゃあ何も分かっていないようですねえ」

「やはりそうですか」

「申し訳ありません杉下さん。普段の御礼に何かお力になれればと思ったのですが、僕も残念でなりませんよ」

 

未だ全く残念そうではない青木。

そんな青木を白い目で見ていた冠城が、ふともう一つ何か小さな箱を持っている事に気づいた。

 

「…何だ、その箱?」

「ん?ああ、どうせ何も分かってないし、今何か動ける訳でも無いから始業時間までトランプでもして親睦を深めようかと思って…」

「トランプ…?」

 

青木の『トランプ』という言葉に反応する杉下。

 

「…それですよ!」

「…え?」

「貸してください」

 

杉下は青木からトランプを受け取ると、中を取り出し何かを探し始める。

そして一枚のトランプを見つけると、カードと遺留品の写真を比べた。

 

「やはり、間違いありません。あの剣はスペードのキングが持つこの剣と同じです」

「…本当だ。全く同じですね」

「でも、どういう事です?」

「キングは数字で言うと13。目暮警部の名前は十三(じゅうぞう)…13という訳ですよ」

「なるほど…これは偶然じゃなさそうですね」

「…もし犯人がまた事件を起こすとしたら…」

「…次に狙われるのは12に該当する人という事ですか」

「恐らくそうでしょう。問題は、果たしてそのような人がいるのか…」

「…警察関係者って言っても何万人もいますよね?どうやって探せって言うんです?」

 

途方もない調査範囲に青木が皮肉気に笑う。

 

「目暮警部に関係する人はどうでしょう?」

「少なくとも一課に、12に該当しそうな人がいた記憶がありませんねぇ」

「うぅーん…」

 

トランプとの関連性が分かっても、未だ第二の犯行がある場合のターゲットが全く分からず、頭を抱える一同。

 

(12…十二…トゥエルブ…カードで言うとクイーン……クイーン?)

 

その時、ふと杉下の脳内にある一人の女性が思い浮かんだ。

 

「…もしかすると…」

「何か気づきました?」

「目暮警部との関連性は少々薄いですが、一人。12に該当する人に心当たりがあります」

「え?一体誰です?」

「先日冠城君もお会いした、弁護士の妃先生ですよ」

「妃先生ですか…?でも名前に12なんて…」

「妃先生のあだ名、覚えていますか?」

「確か『法曹界のクイーン』って…え?まさか…」

「ええ。そのあだ名の由来は妃先生の苗字。妃は英語で『クイーン』、トランプのクイーンは12です」

「じゃ、じゃあまさか」

「目暮警部との関係性は分かりません…ですが、念の為行ってみましょうか

 

妃先生の事務所へ」

 

 

***

 

 

数時間後、妃法律事務所前。

 

 

「凄い…都内の一等地に個人事務所を構えていらっしゃるんですね…」

 

杉下と冠城は、早速英理の事務所のビルへやってきていた。

事務所を構えている階までエレベーターで上がる二人。

 

「ここです」

 

二人は目的の階に到着すると、目の前にあった『妃法律事務所』の扉をノックしようとする。

 

 

その時。

 

 

 

 

「先生!?先生!!!!!」

 

突然中から女性の叫び声が聞こえてきた。

 

「!!」

「入りますよ!」

 

ただ事ではない雰囲気を察した二人は少々乱暴にノックを済ませると扉を空けて駆け込む。

 

「失礼します!」

「どうかされましたか!!」

 

奥の部屋へ飛び込むと、そこには床に倒れ伏す英理と、その傍で悲痛な声で英理に呼びかける女性がいた。

 

「!?あ、あなた方は!?」

「警視庁の杉下です!」

「冠城です!妃先生を訪ねてきたんですが、一体これは!?」

「警察の…?と、突然先生がチョコを食べたとたん倒れられて…」

「チョコ!?まさか…毒物!」

「冠城君!!急いで救急車を!!」

「はい!!」

 

杉下は、辺りを見渡し机の上に残っていたチョコを見つける。

 

(これが問題のチョコですね…ん?この包み紙についている紙製の花は!)

 

 

杉下が気づいたそれはまさしく、スペードのクイーンに描かれた花にそっくりだった。

 




標的第2話でした。

原作のコナンより先に杉下にはトランプについて辿り着いて貰いました。
本作の青木には都合上要所要所で色々ファインプレーを起こして貰います。
その代わりどこかで痛い目にあってもらおうかな…ふっふっふ。(未定です)


それではまた次回。


TwitterID @esaya_syosetu
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